No.532737

中二病でも恋がしたい!Lite おっぱい星人 温泉 凸ルート

中二病lite 作品集3編 凸寄り


コラボ作品
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2013-01-16 23:58:31 投稿 / 全13ページ    総閲覧数:1874   閲覧ユーザー数:1778

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中二病でも恋がしたい!Lite おっぱい星人(ライト・スタッフ)

 

 

『勇太ってば。起きて~。もぉ。毎朝寝ぼすけさんなんだから♪』

 私はいつものように布団を揺すって愛する彼を起こしに掛かる。

『まだ眠い~。後、5分だけ~』

 だけど勇太はなかなか起きてくれない。布団をしっかりと握り締めて出てきてくれない。

『起きてくれないと遅刻しちゃうよぉ~』

 本当はまだ時間がある。でも、ちゃんと食事を採って身だしなみを整えてから登校するにはもう起きてもらわないと困る。勇太にはいつも格好良く健康でいて欲しいから。

『六花がいつものアレをしてくれたらすぐに起きるんだけどなあ~』

『アレって……アレのこと?』

 勇太からの提案を聞いて耳が急に熱くなる。

『そう。愛する彼女からの熱い目覚めのキッスのことだぜ』

 キッスと聞いて顔全体が熱を持った。

『どっ、どうしてもしないとダメ?』

 恥ずかしがりながら聞き直す。

私と勇太は正真正銘の恋人同士。

 キスだって何度もしたことはある。

 でも、それでも私からキスするのはやっぱり恥ずかしい。

『してくれなきゃ起きない』

 勇太はキッパリとした口調で断言した。

『うにゅぅ~。わっ、分かったよぉ』

 恋人のお願いに弱い私に断るという選択肢は存在しなかった。

 顔を真っ赤にしながら勇太に顔を近付けていく。

 ドキドキが止まらない。でも、勇太に起きて欲しいから。

 そっと彼の寝顔に顔を近付けて──

『六花の唇……いただきっ♪』

 顔を上げた勇太に唇を奪われてしまった。

『ウプ……っ』

 勇太の突然の行動にはいつも驚かされる。

 でも、大好きな彼だから……安心して彼を受け入れる。

 彼の腕が伸びてきて私の背中に回る。力を抜いて彼に引き寄せられながら私達はずっとキスを続けた。

『もぉっ。お兄ちゃん、お義姉ちゃん。早く起きてくれないと、学校に遅刻しちゃうよっ!』

 私達のキスは義妹の樟葉が痺れを切らして室内に飛び込んでくるまで続いた。

 

 

「イッツ・ジャスティスっ!!」

 小鳥遊六花は鏡に映った自分の制服姿を再確認しながら毅然と叫んでいた。

「これが死海文書に記されし人類のトゥルールート。トゥルールートへと到達することで人類補完計画は真の発動を迎えるっ!」

 両手をクロスさせながら熱く魂を迸らせる。限界超えて滾らせる。

「ゆっ、勇太と結婚して、赤ちゃんを産めば人類は新たに補充、じゃなくて補完される。勇太との赤ちゃん……ぷしゅぅ~~っ」

 六花は勇太と一緒に赤ん坊を抱いている光景を想像して熱暴走を起こしていた。

「って、固まっている場合じゃない!」

 再起動して再びポーズを取り直す。ポーズがJOJO立ちになるのは人類である以上仕方がなかった。人類は他の立ち方を知らないのだから。

「勇太との結婚、じゃなくて人類補完計画を実現する為に……まずは勇太を起こしに行かなくちゃ」

 六花は足取り軽くベランダへと出る。ロープを伝わって真下の勇太の部屋の外へ。

 

 

 窓に鍵が掛けられていないことを確認して室内へと入っていく。

「勇太……おはよう」

 勇太を起こさないように小声で挨拶しながらベッドの上へと降り立つ。頬を染め上げて胸の鼓動をバックミュージックにしながら。

「六花さん。おはよう」

 反応したのは勇太ではなかった。

 布団が捲れ上がって白いネグリジェ姿の小柄な少女が上半身を起こす。

 富樫樟葉が今にもこの世すべてを呪い殺しそうな瞳で六花を見ていた。

「じゃ、邪王真眼は真の最強っ! さっ、最強……っ」

 六花は全身をガタガタと震わせながらウルトラマン的戦いの構えを取った。

「今は六花さんの相手をしている気分じゃないの」

 樟葉は黄昏の瞳を眠ったままの勇太へと向けた。

「勇太が、どうかしたの?」

「寝言を聞けば分かるよ」

 六花はおそるおそる勇太へと近づいていく。

 至近距離から見る勇太の寝顔にドキドキする。

 けれど、その興奮を一瞬で冷ます不穏当な寝言を勇太はほざいてくれたのだった。

 

「へへっ。俺、Dカップ以上の巨乳の女の子としか付き合わないって心に誓ってるんだぜ」

 

 六花の心は瞬時に凍てついた。

「この偽一般人は一体何をほざいているの? 馬鹿なの? クズなの? 死ねば良いのに」

 こんなにも心が凍りついてしまったのは家族が崩壊したあの時以来だった。

「現実を無視したただの世迷言だよ」

 いつも感情の起伏が乏しい樟葉が更にサバサバした口調で説明してくれた。

 六花は自分の胸に手を当ててみた。ボリュームがないわけではない。少なくとも凸守早苗や樟葉よりは大きい。

 けれども、勇太が望む基準まで達するかと言われると──

「Dの領域までは後、7cm足りない」

 恨みを込めた瞳で勇太を睨む。

 その7cmが意味することを考えた場合、六花は勇太に憎しみをぶつけずにはいられなかった。

「胸の大きさで女の価値を決めようだなんて、お兄ちゃんは中二病を通り越して外道に堕ちちゃったんだね」

 樟葉が自分の胸に手を当てながらプルプルと震えている。まだ中学1年生である樟葉の場合、後9cmの開きがあった。

 

「大体、漫画やアニメ以外でDカップ以上の持ち主なんてほとんど存在する訳が……あっ」

 樟葉は言いかけた所で言葉を切った。

「そう。プリーステス、丹生谷森夏。多分五月七日くみんも……勇太の周りには巨乳族が確かに存在する。それが勇太を増長させている」

 六花は厳しい顔で頷いてみせた。

「どうする? 狩る?」

 樟葉は瞳を細めた。

「3人とも戦闘力は強大。迂闊に手を出せば返り討ちに遭うのは必定」

 六花は首を横に振った。

「でも、それじゃあ巨乳族にお兄ちゃんを盗られちゃうかも知れないよ。わたしたちにはできないような胸を使った奥義を使ったりして」

 樟葉が自分の胸に手を当てながら憤っている。

「私たちも修行して早急に巨乳族の仲間入りを果たすしかない」

 六花はキッパリと言い切った。

 

「でも、修行ってそんなことで大きくなれるの? 日本人の若い女性のサイズは大半がAかBだから、Dに達するなんて……」

「プリーステスが中高校生時代にしていた修行を不可視境界線精神と時の部屋で行えば私達にだってあるいは……」

 六花は渋い表情で一縷の可能性を述べる。

「不可視境界線精神と時の部屋?」

「私の実家近くの山中にある時の流れが通常とは異なる小屋のこと。1年間と1日修行しても、1年間しか時間が経たない画期的時間節約空間!」

「それじゃあ、365年間居れば……1年分お得なんだっ!」

 樟葉は瞳をパッと輝かせた。主婦的感覚に長けている樟葉にとってお得というキーワードは心にビシッとくるものだった。

「私と一緒に修行の旅に出るか? 辛く厳しい旅になる」

 六花は試すように目を細めて樟葉を見た。

「六花さんこそわたしの修行についてこられるの? Dの領域に先に辿り着くのは……わたし、だよ」

 樟葉は自信満々に答えてみせた。

「フッ。まだ義務教育課程の小娘の分際で抜かしてくれる」

「若いわたしの方が六花さんより可能性に満ち溢れているよ」

 2人は顔を見合わせながら笑った。

 

「善は急げ。今日から早速出発しよう」

「うん。それは構わないんだけど……」

 樟葉はいまだ目を覚まさない兄を見て思案顔になった。

「わたしと六花さんが同時にいなくなったら、丹生谷さんやくみんさんにお兄ちゃんを狙われるんじゃ?」

 恋のバトルにルールはない。六花と樟葉がいなくなった空白をライバル達が見逃すはずがない。それが樟葉の懸念だった。

「その心配はもっとも。でも、対応策は考えている。レッツ召喚っ!」

 六花は自信満々に指を鳴らしてみせた。

 

 

 

 30分後。携帯メールで呼び出された凸守早苗が勇太のベッドの前に立っていた。

「小鳥遊六花の第一のサーヴァントっ! ミョルニルハンマーのハンマーの使い手、凸守早苗っ! 召喚の命に従って参上なのデスっ!!」

 ツインテールの房をブンブンと振り回しながら問われてもいない自己紹介を行っている。

「六花さん。この人はまずいんじゃないかな?」

 樟葉は凸守とは目を合わさずに六花に尋ねる。

「問題ない」

 目を閉じながら力強く頷いて返す。

「でも、凸守さんもお兄ちゃんのことが……」

 樟葉は尚も心配そうな瞳で再び尋ねた。

「凸守がDの境界線を越えることはない。だから、安全」

 六花は凸守の乙女の夢がいっぱいに詰まった部分を見た。モンゴルの遥かなる大草原を連想させるその部位に、ついドヤ顔になってしまう。

「確かに、凸守さんならお兄ちゃんの好みのラインに到達することはないよね」

 樟葉も凸守の中二病ハートが詰まった部分を見た。つい、ドヤ顔になってしまう。

 

「凸守に大事なお願いがある」

 六花は改めて凸守に向き直って話を切り出した。

「凸守はマスターのサーヴァント。どんな願いでも無問題なのデ~ス」

 自信満々に応える凸守。

「そう。なら……」

 六花は瞳を鋭くして後輩少女へと重要な使命を告げた。

「私と樟葉がパワーアップの修行から帰ってくるまで……勇太のことを命を懸けて守って欲しい」

 六花の言葉を聞いて凸守の瞳が大きく丸く見開いた。

「なっ、何故富樫勇太を凸守に……? 偽モリサマーでも問題ないのでは?」

 凸守の体は微かに震えていた。意味が分からない。そんな動揺が見て取れる。

 凸守と六花は主従関係であると同時に恋のライバルでもあるのだから。

「凸守が、適任だから。他には任せられない」

「凸守がっ、適任っ!!」

 瞳を輝かせるツインテール少女。サーヴァントを自称する少女はシチュエーションと使命に弱かった。

「凸守に任せるデ~ス! マスターたちが帰ってくるまで、富樫勇太は凸守が如何なる危険からも守り抜いてみせるのデ~ス」

 敬礼しながら誓う凸守。その瞳は使命感に燃えていた。

 

「それじゃあ行ってくる」

「行ってきま~す」

 30分後。荷物をまとめて部屋を出て行く六花と樟葉。

「富樫勇太の護衛は任せるのデ~スっ!!」

 敬礼しながら2人の出発を見送る。

 六花たちの姿はやがて朝日の光の中に隠れて見えなくなった。

「留守は……凸守に任せてくださいなのデ~ス」

 敬礼を解きながら凸守は改めて誓い直す。

 そして右手を胸へと当て直しながら顔を真っ赤に染めた。

「これはつまり……マスターと樟葉は富樫勇太を凸守に譲ってくれた。そう思って、いいんデスか?」

 勇太との甘酸っぱい日々を連想して頭が茹で上がる。思考が滅茶苦茶になっていく。

「ちっ、違うのデスっ! マスターはそんなつもりで富樫勇太の護衛を託したのではないのデスっ!」

 必死に頭を横に振る。

 けれど、眠っている勇太の顔を見るとどうしようもなく妄想が膨らんでしまう。

「このっ! 早く起き上がれなのデスっ! 起きて凸守をいつもの凸守に戻すが良いのデスよっ!!」

 凸守にできることは、勇太を攻撃することで気を紛らわせることだけだった。

 

 

 

 

 樟葉が六花と出発して数時間。2人は遂に目的地に到着した。

「ここが不可視境界線精神と時の部屋」

 六花が目の前に広がっている真っ白いタイル床が広がる空間を指しながら説明している。

「なるほど。ここが十花さんがあの運動神経とナイスボディーを培った場所」

 樟葉は重々しく頷き返した。

 外観は小さな部屋の筈だったのに中に広がる空間はそれよりも遥かに広い。確かに物理法則が通じていないように思える。

「プリーステスはここで中高6年間修行に励んでいた」

「6年間も待っていられないよ」

 樟葉は首を横に振る。

 飢えた獣のように遠慮がないライバルたちが長い時間待っていられるとは思えなかった。

 早く修行を完遂させて兄の元へ帰らなければならない。

 けれど、そんな風に憤る樟葉を六花はそっと手で制した。

「プリーステスはこの部屋に10倍の重力を掛けた状態で6年間修行に励んだ。その結果があれ」

 六花が指差した先。そこには見たこともない謎の大型機械が置かれていた。

 

「10Gの中を6年……」

 機械を見ながら思案顔になる。

「なら、60Gに耐えながら修行すれば1年で同じ効果を達成できるんじゃないんですか?」

 樟葉の視線が六花へと向けられる。

「けど、樟葉。貴方の体重が仮に40kgなら、60倍の重力では2.4tになってしまう。そんな環境では死んでしまいかねない」

「けど、それぐらいしないと、胸に刺激がいかなくて大きくならないよ」

 樟葉は自分の胸を両手で押さえながら訴える。

「私たちに時間的余裕はないんだよ」

 真剣な瞳で六花に訴え掛ける。六花もその瞳を正面から受けて見つめ返している。

 2人の視線の交差は1分ほど続いた。

 そして──

「さすがはダークフレイムマスターの本妹。覚悟は十分のよう」

 六花は樟葉を見ながら頼もしそうに笑ってみせた。

「それじゃあ!」

「うん。プリーステスを越える修行をしてこそ私たちにも勝機が生じる」

 こうして2人は胸を大きくすべく60倍の重力の中で修行を始めることになった。

 

 

 

 

「富樫勇太っ! 凸守はお腹が空いたからさっさと起きて朝食を準備するのデ~~スっ!!」

 凸守は締まりのない顔を眠り続ける勇太の布団を強引に剥ぎ取る。半年前から富樫家の日課となった光景だった。

「うん? もう朝か?」

 寝ぼけ眼で勇太が瞳を開く。

「すぐ起きやがれなのデス。樟葉が修行に出た今の富樫家及び凸守の朝食を準備できるのは富樫勇太だけだという事実をよく認識しやがれなのデス!」

「分かった。分かったから。今着替えて準備するからちょっと待ってろ」

 無防備にパジャマを脱ぎ始める勇太。

「なっ!?」

裸の上半身を目の当たりにして凸守は息が詰まりそうになった。

「お前っ! 乙女がいる前でいきなり脱ぐななのデ~スっ!!」

「ブベラっ!?」

 凸守は枕を掴んで勇太の顔に投げ付けると部屋を飛び出していった。少女の顔は真っ赤に茹で上がっていた。

 

 

「樟葉ちゃんが修行の旅に出ちゃったのは寂しかったけど、早苗ちゃんがこうして毎日来てくれるから嬉しいわ~♪」

 富樫家での朝食のひと時。

 凸守は樟葉が座っていた席で食事を採るのが恒例になっていた。

「早苗ちゃんが勇太と結婚して本当に私の娘になってくれると嬉しいんだけどなぁ~♪」

 甘えた声で提案してくる勇太母。

「凸守とはそんな仲じゃないって毎日毎日説明しているだろうがっ!」

 ムキになって否定する勇太。

 これもまた見慣れた日常の光景の一部になっていた。

「勇太はこう言っているけど、早苗ちゃん的にはどうなの?」

 話を振られて、飲みかけの味噌汁をテーブルの上に置く。

 そして落ち着いた口調でいつもの答弁を返す。

「それは全て富樫勇太次第なのデス。凸守が結婚して欲しいと思うほどに素敵な男性になるならお嫁に行っても構いません。しかし、良い男にならなければぽぽいのぽいなのデス」

 勇太から先に告白して欲しい。そんな本心を隠しながらの説明だった。

 

「だって。頑張りなさいよ、勇太」

「何を頑張るんだよ?」

 ムスっとする勇太。

 そんな勇太の態度を見ていると凸守はちょっと腹立たしい気分になる。

「1日も欠かさずに起こしに来てくれるマメな女の子なんていないわよ。早苗ちゃんを逃しちゃ絶対にダメよ」

 心の中で勇太ママに同意して頷く。

「でも、それは六花に頼まれたから来ているんだって凸守が毎日説明しているじゃないか」

 勇太の言い訳の仕方に涙が出そうになる。

 頼まれたからという理由だけで毎日男の部屋に起こしに入ってくる少女はいない。

 それを不自然に思わないとはどれだけギャルゲ脳に毒されているのか。

「幾ら六花ちゃんに頼まれたからと言っても、それだけで毎日部屋まで起こしに来る女の子がいるわけがないでしょ。それを何とも思わないなんてアニメやゲームに毒されすぎよ」

 自分の気持ちを代弁してくれた勇太母に心の中で盛大な拍手を送る。

「いや。だけどさ……」

 尚も反論を続けようとする勇太。

 勇太母は凸守へと向き直った。

「こんな素直じゃない子だけど、早苗ちゃんどうか今後とも勇太を末永くよろしくね」

「…………任されたのデス」

 勇太母に顔を真っ赤にしながら小声で返答する。

 何はともあれ、親公認というのは凸守にとっては嬉しいことに違いなかった。

「ちっ~こむすめが~ちょうしにのるな~♪」

 夢葉も楽しそうな笑顔を向けてくれる。きっと応援してくれているに違いなかった。

 家族公認という立場は、凸守に勇気と希望を与えてくれていた。

 

 

「じゃあ、行ってきま~す」

「行ってくるのデ~ス」

 2人並んで富樫家を出る。小走りに駅を目指す。勇太と揃っての登校もまた凸守の日課となっていたことだった。

「なあ?」

 駅から学校に向かう途中、勇太が語りかけてきた。

「何デスか?」

 特に深く考えることなく尋ね返す。

「凸守ももうすぐ中学卒業だな」

「そうデス。凸守も後1週間で中学卒業。4月からは高校生なのデ~ス」

 凸守は3年生に上がると早々に勇太たちが通う高等部への推薦を決めていた。なので受験勉強とは無縁な生活を送ってきた。そのおかげで勇太を起こしに行くのに障害がなかった。

「そっか。凸守も俺と同じ高校生になるんだよな。そっかそっか」

 勇太は首を何度も縦に振って頷いている。

「何を1人で納得しているのデスか?」

 勇太の言動は凸守には謎だった。

「じゃあさ、卒業式が終わったら……高等部校舎の片隅に生えている伝説の樹の所まで来てくれないか? 話があるんだ」

「それは構わないデスが? 何の話デスか?」

「…………お前も大概鈍いよな」

 何故か勇太は呆れ顔で凸守を見ている。

 凸守には何故そんな顔をされなければならないのかわけが分からない。

「それと、卒業式の日に他の男に誘われても絶対に付いて行くなよ」

「富樫勇太の言葉の意味が分からないのデス」

 凸守はもう1度首を大きく捻った。

 

 

 そして迎えた卒業式。

 学年主席として卒業生代表の挨拶も無難に終えた凸守は卒業証書を片手に体育館を出た。

 卒業証書を手にしてちょっとだけ誇らしい気持ちになっている。

 興奮を抱いたまま約束通りに勇太が待っている伝説の樹を目指す。

「あの、凸守さん。よければ俺とこの後……」

「先約があるデ~ス」

 途中で何人かの同級生男子から声を掛けられた。けれど凸守は勇太の言いつけ通りにその誘いを全て断る。もっとも、勇太の言葉がなくても断っていたに違いなかったが。

「富樫勇太は……一体何の用デスかね?」

 勇太に呼び出される理由が分からずに首を捻る。

 今朝も一緒に登校してきた少年が何故わざわざ自分を改めて呼び出すのか。まったくもって謎だった。

「まっ。会えば分かることなのデス」

 凸守はズンズンと高等部校舎に向かって歩いていく。

 すると、道すがら同級生達が噂しているのが聞こえてきた。

「伝説の樹で卒業式の日に告白して結ばれたカップルは永遠に幸せになれるんだって」

「誰か告白する人、いるのかな?」

「そんな恥ずかしいことができる人って相当な勇気の持ち主よねえ」

 その話はどうしても凸守の耳に、脳に入ってしまう。

「とっ、富樫勇太に限って愛の告白なんてあり得ないのデ~ス」

 勇太からの告白を想像すると頭が一瞬にして茹で上がる。

 けれど、一方で冷静にそれを否定する自分も存在する。

半年間、毎日あれだけ世話を焼きながら自分の気持ちに気付いてくれないあの甲斐性なしにそんな気の利いたことができるとは思えなかった。

「でも、もしそうだったら……」

 あり得ないと思いつつも心のどこかではやはりそれを期待してしまう。恋する乙女ゆえに仕方ないことだった。

 期待と不安が交差しながら凸守は俯き加減に歩き出した。

 

 凸守が到着した時、勇太は既に樹の下に立っていた。

「きっ、来てくれたんだ」

 ぎこちない喋り方をする勇太。普段と違う態度に凸守もドキッと平常心ではいられなくなる。

「呼ばれたから来てやったのデス」

 勇太の顔が何故かまともに見られない。

「実は凸守にどうしても伝えないといけない大事な話があるんだ。聞いて欲しい」

「はっ、はい」

 俯きながら小さく返事をする。

 もしかしてこれは……。そんな胸を高鳴らせる予感が少女の胸を高鳴らせる。

「俺、俺は……」

 そしてその瞬間は少女が想像していたよりも唐突に心の準備なく訪れた。

 

「俺は、凸守のことが……早苗のことが好きだ」

 

 とてもストレートな告白だった。

 あまりにもストレートすぎて、凸守は誤解する余地をどこにも見出せなかった。

「どうして、凸守なのデスか?」

 代わりに発したのは理由を尋ねる声。

「凸守は勇太が恋人の条件に定めているDカップ以上の巨乳ではないのデスよ」

 凸守は毎朝起こしに行って勇太の寝言を何度も聞いてきた。なので、この少年が恋人にしたいと考えている条件を知っていた。

 だから、告白されて嬉しいのにそれを素直に受け入れられない。

「ああ。そのことか。アレは──」

 勇太が説明しようとしたその瞬間。

「そうよ。富樫くんの彼女には胸の大きな美女こそが相応しいのよ」

「巨乳にあらずば人にあらずって昔の偉い人もよく言ったよね~♪」

「まったく。貧乳少女に誑かされるとは情けない」

 3人の美女が樹の枝の上から飛び降りてきた。

「おっ、お前たちっ!? まさか、凸守たちを最初から監視していたのデスか?」

 目の前に現れた丹生谷森夏、五月七日くみん、富樫十花の巨乳三巨頭。

 3人は圧倒的な胸の大きさを見せつけながら凸守に退場を迫ってきた。

 

「こんなおっぱい絨毯爆撃を見せられては勇太の気持ちも……」

 圧倒的な戦力差を見せ付けられて凸守は泣きそうになる。

 勇太の好みがナイスバディーである以上、ブラ要らずの称号を保持し続ける自分に勝ち目はない。

 せっかく、好きだと言ってもらえたのに。

 やっと両想いになれたと思ったのに。

 凸守の視界が涙で滲んでいく。

「…………俺は巨乳が好きだ」

 勇太の告白。

「そ、そんなぁ……っ」

 その告白は凸守の胸を激しく抉った。

 顔が自然と俯いてしまう。

 結局、先程の告白は何かの気の迷いでしかなかった。

 それを、確信してしまう。

 しかし……。

「でも、ちっぱいも好きだ」

 勇太は正反対の性癖を口にした。

「えっ?」

 凸守の顔が自然と上がる。

「貧乳はステータスだ。希少価値なんだよ」

 目を上げると勇太が優しく微笑んでいた。

 

「まっ、まさか富樫くんがそっちに目覚めるなんて……」

「大きいおっぱいの方がロマンがあるよ~」

「えっ、エッチなバリエーションも胸が大きい方が豊かになるぞ! た、た、例えば…挟…何でもない」

 動揺する巨乳三巨頭。

「巨乳は確かに憧れます。男のロマンです。でも、今の俺は……ちっぱいも大好きなんです」

 勇太は男らしく3人の誘惑をきっぱりと拒絶した。次いで凸守へと振り返る。

「早苗。俺は君のことが好きだ。恥ずかしくて言えなかったけど、ずっとずっと好きだった」

 勇太が凸守に向かって手を差し伸べる。

「俺の彼女になって欲しい」

 勇太の手は凸守の手前10cmの所で止まっている。

 握るかどうかは凸守の判断に任されていた。

 

「まったく。告白するのに半年も掛かるなんて……凸守の彼氏はお寝坊さんもいい所なのデス」

 

 凸守は嬉し涙を浮かべながら勇太の手を取った。

 

「凸守も大好きなのデスよ……勇太」

「俺もだよ。早苗」

 

 ここに一組のカップルが誕生した。

 卒業式の日に生まれ、永遠に結ばれることが約束されたカップルが。

 

 

 

 

「1年間激しい修行に耐えぬいたのにあんまり変化がないような……」

「そう言えば、胸に強すぎる刺激を与えると良くないと魔界通信で見た気がする」

「じゃあ、60Gに耐えながら修行していたのは逆効果ってこと?」

「…………だが、問題はない。修行に耐え抜いた今の私たちならこれを付けても大丈夫」

「パッド、ですか?」

「今の私たちなら人体の限界まで負荷が掛かる胸パッド拳3倍にも耐えられるはず。そうすれば……」

「わたしたちがDカップ、ううん、Eカップにだってなれるね」

 

「そろそろ下山して、勇太たちの所に向かおう」

「そうだね。ちっぱいの凸守さんにお兄ちゃんを護らせっ放しっていうのも悪いしね」

「勇太の所に戻ったら私たちの間で真の頂上決戦を開始する」

「負けないよ、六花さん」

「私たちの戦闘力は共に53万以上。戦いは壮絶を極める」

「それでも、お互いお兄ちゃんの為に死に物狂いで修行してきたんだもん。その成果はちゃんと見せてあげないとね」

 

 最強の修羅が勇太と凸守の元に現れるまで残り僅かだった。

 

 完

 

 

 

 

中二病でも恋がしたい!Lite 温泉回(シボウカクテイフラグ)

 

「なあ、一色?」

「何だ?」

「これは明らかに死亡フラグじゃないのか?」

 獣道さえもない木々の間を掻き分けながら一色誠に尋ねる。

「男には……絶対に死ぬと分かっていても、戦いに挑まなければならない時もあるだろ?」

「もう死ぬのは決定しているんだな」

 一色の覚悟を知って、何か妙に納得してしまう。

「それに俺は何ていうか、ピンチになったら頭の中で種が弾けて、無敵の運動性能を発揮できる。そんな前世だった気がするんだ」

「そうか。俺は何ていうか、頭もいいし人を操る力も持っているけれど……運動も戦闘もからっきしな前世の自分しかイメージできない」

 俺と一色の前世は随分と違うものらしい。

「まあ。そんなわけで俺についてくれば富樫の生き残る可能性も少しは……えっ?」

 一色が自信満々に笑みを浮かべた瞬間だった。

 奴の姿が俺の視界から消えた。

 無敵のキラ様は突如出現した底の見えない谷の底へと落ちていった。

「女湯……覗きてぇ~~~~っ!!」

 それが俺が聞いた一色の最期の言葉だった。

 最期まで、六花たちが入浴している女湯のことだけを考えていた。

 無敵のキラ様ではなく、どうやら前世は違う存在だったようだ。

「一色……俺はお前の死を、絶対に無駄にはしないっ!」

 友の死が俺の心に火をつけた。

「俺は……六花たちの裸を必ず覗いてみせるからなぁっ!!」

 六花の実家の代わりに急遽訪れてしまった温泉で、俺は友へと誓いを立てる。

 この崖の先にある楽園(パラダイス)へと必ず辿り着いてみせると。

 

 

 

 

「小鳥遊さんの実家に遊びに行くはずが……何でよく知らない土地で温泉に入ることになったんだか」

 周囲に広がるのは海ではなく山、山、山。

 私達が今いる温泉の先には大きな崖が存在し、その奥には鬱蒼とした森が広がっている。

 大自然の中で解放的な気分に浸りながら温泉に浸かっている。

 それが私たちの現状だった。

 

「かの地は管理局の管轄下。うかつに近付くと、脳を汚染される可能性がある」

「要するに何か事情があって実家に行きたくなかったんでしょ。はいはい。分かったわよ」

 彼女の事情はよく知らない。

 聞いての通りに中二病だし、話されてもよく分からないだろう。

 小鳥遊さんがデタラメに降りたこの駅で私達は温泉に入っている。

 それだけが今の私に知りうることだった。

 

「ゲッフッフッフ。この地の龍脈を通じて凸守に無限のパワーが供給されるのデ~ス♪」

 デコ中が立ち上がりながら大笑いを奏でた。

 タオル1枚巻いてないスッポンポンな状態で。にしても……。

「アンタみたいなのを……幼児体型って言うんでしょうね」

 デコ中の体のラインを見ながら思う。

 凹凸のほとんどないライン。

 胸はペッタンコだし、お尻も出っ張っていない。

 腰は確かに少しくびれてはいる。けれど、胸もお尻も出ておらず全体が細いのでキュッと締まっている感じはしない。

 中学3年生にしてはちょっと寂しい身体の成長具合だった。

 

「うっ、うっさいのデス!」

 デコ中が顔を真っ赤にしながら怒った。スタイルのことを気にしていたらしい。

「ちょっとばかし胸が大きくて、腰がくびれてて、尻がボンッとなっているからって調子に乗るなデスっ!」

「ちょっ!?」

 デコ中の右腕が伸びて私の胸を鷲掴みにした。

「この胸がっ! この胸がっ! この胸がぁっ! この世全ての悪なのデ~ス!」

 デコ中は私の胸を睨み付けながら何度も揉んでくれた。

「誰にも揉まれたことがないこの胸をよくも好き勝手してくれているわね。その挑戦、受けてやるわ」

 デコ中を鋭い視線で睨んでやる。

 そして、この生意気中学生の胸を反対に鷲掴みにしてやろうと右腕を伸ばした。

 けど、私の目論みは失敗に終わった。

 

「まさか、そんな……っ!?」

「クッ!」

 私はデコ中の胸に触れることはできた。

 でも、掴むことはできなかった。

 掴めるだけの出っ張りが、容積がデコ中の胸には存在していなかった。

「こっ、これは、屈辱なのです。屈辱過ぎるのデス。うえぇえええええええぇん、デス~~っ!!」

 デコ中は大きな声を上げながら泣き出してしまった。

「ごめん。今回は本当に私が悪かった気がする……」

 目を伏せながらデコ中に謝る。

「真摯に謝るな。なのデス……」

 戦いに勝利したのは私のはずだった。

 なのに、敗北以上に辛いものが私の心の圧し掛かったのだった。

 

 

 

 

 デコ中を慰めるのにしばらくの時間が掛かった。その間に私の体力は相当に磨り減ったのだった。

「温泉に入っているのに疲れてどうするってのよ……」

 フラフラしながら崖側へと移動する。

 移動した先では柵にもたれ掛かりながら山々の景色を見ている小鳥遊さんがいた。

「そんな風にもたれていると危ないわよ。柵の向こうは崖なんだからね」

 小鳥遊さんは振り返った。デコ中よりは女の子らしい体つきが目に入る。

 デコ中は子供という表現がぴったりだけど、小鳥遊さんの場合はスレンダーとでもいうべきか。凹凸は控え目だけど、色気を感じさせる体つきだった。

「この崖の底に不可視境界線があるのなら、落ちるのも悪くない」

 小鳥遊さんはいつも以上の無表情でそう言った。

 やはり今日の小鳥遊さんはいつも以上におかしい。

 言動がどうというよりも、普段以上に心を閉ざしている。

 

「温泉にいるんだし、せめてその眼帯ぐらい外したら?」

 小鳥遊さんは中二病的設定に基づいて眼帯をしている。目が悪いわけでも何でもない。

 こんな場所にいる時ぐらい外せば良いと思う。

「この眼帯は邪王真眼を封じている大事な結界。外す訳にはいかない」

 小鳥遊さんは両手で眼帯をガードして拒絶の意を示す。

「アンタねえ。そんなカラコンの上に眼帯で1日中目を傷つける生活送っていたら、いつか本当に目が見えなくなっちゃうわよ」

「邪王真眼の力は絶大。その力を封印することは全てにおいて優先する」

 小鳥遊さんは言うことを聞いてくれない。

「そんなことばかり言っていると……富樫くんにいつか愛想尽かされるわよ」

 彼女にとっての究極の一撃を放つ。その甲斐あって小鳥遊さんは全身を振るわせた。

「ゆっ、勇太はダークフレイムスターだから私の話を信じてくれる」

「富樫くんの口癖は『中二病はもう卒業した』じゃなかったっけ?」

「うっうぅ~~~~っ」

 小鳥遊さんの表情が急に自信のない小動物モードに変わった。

 多分、彼女は中二病キャラを気取っていなければ凄く内気で臆病な子なのだと思う。

 とても可愛い子なのだ、彼女は。

「まあ、中二病趣味があろうとなかろうと、富樫くんは結局一般人で美少女な私を選んじゃうんだろうけど~」

 挑発的に笑ってみせる。

「うにゅぅ~~っ」

 小鳥遊さんは涙目でとても情けない声を上げた。

 恋する乙女というのはなかなかに御し難くて御し易いのだ。

 

 

「むむむ。モリサマちゃんが六花ちゃんをいじめている。これは加勢に行かなくちゃ~」

 背後から面倒臭い女の声がしたので慌てて振り返る。

「いじめっ子なモリサマちゃんにはお仕置きが必要だね~。おっぱいダイビング~~っ♪」

 体を180度回転させたタイミングだった。

 眠り女が私の胸に頭から飛び込んできた。

「ちょっ、ちょっとっ! アンタっ! お風呂場で危ないじゃないのよっ!」

 足場の悪い水中で倒れこまないようにするのが精一杯だった。後退しながら必死に眠り女を支える。その眠り女はこれはチャンスとばかりに私の胸に頬ずりをして止めない。

「モリサマちゃんのおっぱいは大きく柔らかくて気持ち良いよ~~♪」

「恥ずかしいことを大声で言ってるんじゃないわよっ!」

 眠り女の身体を引き離そうとする。けれども、全く離れない。この天然、意外と力が強い!?

「モリサマちゃんのおっぱい枕。最高に気持ちいいね~♪」

「おっぱい枕とか恥ずかしい単語を言うな~~」

 この女、私の胸をなんだと思って……。

「気持ち良いよぉ~~♪ モリサマちゃんはこのおっぱい枕で勇太くんを誘惑するつもりなんだね……くぅ~♪」

 眠り女は私の胸に抱きついたまま眠ってしまった。

「こんな姿勢のままで寝るな~~っ!」

 しかもこの女、すごい力でしがみついたまま寝ている。

「離せぇ~~っ!!」

「くぅ~~おっぱい枕最高~~~~すぴぃ~~♪」

 天然女は全然離してくれない。

「おっぱい枕の威力恐るべし」

「偽モリサマーはあの魔乳を操って富樫勇太を誘惑するつもりに間違いないのデ~ス」

 小動物2人は私を助けもせずに私の胸をジッと見ている。憎しみを篭めた瞳で。

 役に立たないわね、本当に。

 

「そう言えば凸守は聞いたことがあるのデス」

「何を?」

 デコ中が邪王真眼に何か語り始めた。いいから助けろっての。

「おっぱいを大きくする魔乳分は他人から吸い上げ転移することができるらしいのデ~ス」

「つまり、くみんの胸が大きいのは……」

「他の女から魔乳分を奪い取ってきたからなのデ~ス」

 中二病患者どもが何だかエロ親父っぽいことを言い出した。

 魔乳分って一体何よ?

「そして、今くみんが狙っているのは……」

「偽モリサマーで間違いないのデ~ス」

 2人のギラッとした瞳が私へと向く。

「くみんのおっぱいがこれ以上大きくなることを凸守はどう思う?」

「胸囲の格差社会、許すマジDeath!」

 2人が手をわきわきさせながらにじり寄ってきた。

「ちょっと、アンタ達……」

 危険を感じて逃げようにも眠り女のせいで動けない。

「くみんに奪われるぐらいなら、私達が森夏の魔乳分をいただく」

「大丈夫なのデ~ス。天井のシミの数をかぞえている間に終わるのデ~ス♪」

 2人は野獣の瞳をしながら私を包囲。そして──

「「そのおっぱい、よこせぇええええええええええぇっ!!」」

 野獣さながらの突進で飛び掛ってきたのだった。

「ケッ、ケダモノぉおおおおおおおおおおぉっ!!」

 3人の少女に抱きつかれ湯の中へと沈んでいく私の悲鳴が大自然に木霊した。

 

 

 

 

『私は、ナナリーは……お兄さまさえいてくだされば、他に何も望みません』

『よし分かった。ブリタニア帝国をぶっ潰して世界を変革するのはやめよう。これからは世界のことは忘れて2人きりでひっそりと暮らそう』

『はいっ。分かりましたルルーシュお兄さま♪』

 ルルーシュはナナリーと固く抱き合う。2人の長年の愛情が遂に結実した瞬間だった。

『それで、その……』

 ナナリーは頬を染めて恥ずかしがっている。

『その、これからずっと2人きりで暮らすのでしたら私はただの妹ではなく、お兄さまのもっと特別な存在になりたいです。ポッ』

『間違っているぞ、ナナリー。俺にとって妹とは最愛の女性を意味するのだ』

 ルルーシュは真顔でそう言い切った。何の躊躇も見られない澄み切った意見だった。

『えっと。でしたら……私を、ナナリーをお兄さまのお嫁さんにしてくださいっ!』

 ナナリーは大きな声で叫んだ。

『妹でお嫁さんというわけだな。よし分かった。結婚しよう、最愛の妹よ』

『あくまでも妹の方が先にくるんですね……ですが、結果よければ全てよしですよね♪』

 誓いの口付けを交わす2人。

 こうしてブリタニア帝国の世界征服とは全く無関係にルルーシュとナナリーは幸せに暮らしたのだった。

 元祖中二病でも恋がしたい! 完

 

 

「……って、イカンイカンっ! 意識なんか飛ばしたら本気で死ぬっての」

 頭を横に振って必死に意識を覚醒させながら動き始める。

 そう。動きを止めることは下手をすれば死に繋がりかねないものだった。

 なぜなら俺は高さ100m以上ある崖をロッククライミングしている最中なのだから。

「この崖を登りきれば女湯が待っているのだから」

 一色の遺志を引き継いで女湯覗きを完遂することにした俺。

 

『幾ら可愛い女の子たちと旅行に行くからって羽目を外しちゃダメだよ。特に着替えやお風呂を覗く真似なんかしたら罰が当たるんだからね』

 

 どこかの山の中で林間学校に参加中だという樟葉の言葉を守れなくて悪いとは思う。

 でも、男同士の誓いも重要なんだ。特に亡き親友との約束なのだから。

 

「よし、後10mもすれば頂上だっ!」

 この崖さえ登りきってしまえば……六花と丹生谷とくみん先輩と凸守という4人の少女が生まれたままの姿でいるという楽園(パラダイス)が俺を待っている。

 何としてでも、俺は楽園に辿り着いてみせるっ!

「ちょっと! やめなさいってば! どうして3人で私の胸を揉んでくるのよぉ~~っ!」

「なっ、何ですとぉ~~~っ!?!?」

 今、確かに丹生谷の声が聞こえた。

 しかも、話の内容から、丹生谷が美少女という名の3人の獣に襲われている所らしい。

 けしからんっ! 実にけしからんっ!

 丹生谷を助けに行かなくては!

「森夏。無駄な抵抗はやめてそのおっぱいを早く私によこしなさい」

「偽モリサマーのデカ乳は、この凸守が全て奪い取ってやるのデ~ス♪」

「モリサマちゃんのおっぱい枕。最高に気持ち良いよぉ~~♪」

 ……………………っ!

「燃え上がれ、俺の小宇宙(コスモ)ッ!!」

 俺の全身にかつて感じたことがないような強大な力が駆け巡っていく。

 その力を原動力に俺は一気に崖を這い上がっていく。

 後5m、4m、3m、2m……

「もうちょっとでゴールだぁあああああぁっ!!」

 後1mの地点まで到達し、そして──

 

 ビュンっという音と共に、超音速で飛んできた黒い物体が俺のすぐ頭上に突き刺さった。

「うおっ!?」

 驚いて思わず左手を離してしまう。引っ掛けていた両足も外れてしまった。

 ギリギリ、右手1本で俺は崖に捕まっていた。

 恐る恐る何が突き刺さったのか確かめる。

「これ……俺の黒剣じゃないか。何でここに?」

 忌まわしき俺の中二グッズの1つだった。

「とっ、とにかく、体勢を立て直して女湯を覗けるようにしないと……」

 左手が掴むのに適当な岩がなく、右手1本でミノムシみたいにぶらぶらしている。

 ここでもう1度刺激でも受けようものなら崖へ転落。俺の死亡は決定してしまう。

「だが、一色の為にも、何より俺の為にも最後まで覗きをやり遂げるっ!」

 右手に力を篭めて懸垂の要領で身体全体を起こし上げていく。

 後は適当な箇所に左手と両足を引っ掛け直せばそれで済む問題だった。

 そうすれば、念願の六花達の裸が俺を待っているのだ。

 ここで頑張らずして、男と言えようかっ!

「うぉおおおおおおおおおおおおぉっ!」

 全身に再び力を漲らせ──

 

「あ~~っ! もうっ! アンタ達っ、いい加減にしなさいってのぉ~~~~っ!!」

「「「きゃぁああああああああぁっ!!」」」

 ボチャ~ンという大きな音と共に大量の水が俺の頭上に降り注いできた。

 

「…………後、ほんの少しだったんだがなあ」

 

 俺の右手は崖から離れた。

 重力とは何なのか。久しぶりに思い出しながら地球との恋に落ちていく。

 温泉らしくサービスシーンがあると思い込んでいたのが失敗だったと認めるしかない。

 ついつい自分のことをラノベの主人公と錯覚して、ヒロイン達とのムフフイベントが当然あると油断してしまった。

 まあ、今更反省してももう遅すぎた。先に崖に落ちていった一色も大空から俺を手招いているし。

「長い夏休みに……乾杯っ」

 それが俺の人生の最期の言葉になった。

 

 だが、俺の黒剣を投げ付けたのは一体誰なのか? 

 その謎だけが最期の最期の瞬間まで気にかかりながら俺は意識を失ったのだった。

 

 

 中二病でも恋がしたい!Lite デッドエンド その2

 

 

 

 

 

中二病でも恋がしたい!Lite 束縛の……円盤(ハード・ディスク)

 

 

「富樫勇太……大事な話があるのデス。一緒に付いて来てくださいデス」

「分かった」

 六花の成績向上を同好会のみんなで祈願した神社からの帰り道。

 俺は凸守早苗に近くの公園へと連れて行かれていた。

 

「それで、大事な話っていうのは一体何だ?」

 いつもと違い真面目な表情を見せる凸守に俺の緊張感も増していた。

 2人きりのシチュエーションというのもまたドキドキさせるものだった。

 黙っていれば美少女と向かい合っている現実は女の子にモテたことがない俺を焦らせる。

 星が見え始めた暗い中というシチュエーションもそんなはずはないと思いつつ俺に何かを期待させていた。

「実はデスね。凸守は今まで1つ大きな嘘をついていたのデ~ス」

 長い溜めの末に、凸守は俺の顔を見上げながら言った。

「大きな嘘?」

 とても困る告白だった。

 凸守の場合、重度の中二病過ぎて言葉のどの部分が真実で嘘なのか分からなかったから。

 その彼女に大きな嘘と言われてもどう反応すれば良いのか。

 けれど、彼女がとても真剣にその話をしていることだけは確かだった。

 そして凸守は、正義のヒーローが隠していた自分の正体をヒロインに遂に告白するような重さと悲壮感を漂わせながら嘘の中身を告げたのだった。

 

「実は……凸守は、小鳥遊六花のサーヴァントではないのデスっ!」

 

「いや、それは知ってるから」

 首を横に振りながら凸守に告げる。

 そもそも、俺は凸守が六花のサーヴァントだと信じたことないし。

 そういう設定で彼女が行動していることは最初に会った時から知ってはいるけれども。

 けれど、凸守は俺のツッコミには動じずに更に悲壮感を込めた声で“真実”を告白してみせたのだった。

 

「実は凸守は…………デコデコ星の第一皇女だったのデ~~ス」

 

「いや、それを信じろというのは更に無理だから」

 首と手を左右に振って意思表示をしてみせる。

 宇宙はさすがに勘弁して欲しかった。

 だが、世界は広かった。

 俺の予想を遥かに超える反応を見せる奴らがいたのだった。

 

「そうだったの……凸守……っ」

 ガサゴソと音が鳴って後ろの茂みから眼帯を付けた小柄な少女、小鳥遊六花が出てきた。

 六花は大きな瞳を更に大きく見開きながら驚愕の表情を見せていた。

 話を信じているようだった。まあ、六花は現役中二病だから仕方ないか。

「確かにアンタの変さを考えれば、地球人っていうよりも、宇宙人って説明された方が分かり易いわね。納得だわ」

 六花の隣のスペースの茂みが音を鳴らして、長身のグラマー少女、丹生谷森夏が出てきた。

 丹生谷は何度も何度もウンウンと首を縦に振って頷いてみせる。

 話を信じているようだった。まあ、丹生谷は元重度の中二病患者だから仕方ないか。

「わ~。デコちゃんって~、宇宙のお姫様だったんだね~。いいな~」

 丹生谷の更に隣の茂みが音を鳴らして、癒し系短髪少女、五月七日くみん先輩が出てきた。

 手を叩きながら素直に羨ましがってみせるくみん先輩。

 話を信じているようだった。まあ、先輩は1日中寝ているドリーマーだから仕方ないか。

 凸守に負けず劣らずコイツらも変だった。

 

「いや、その反応はおかしいだろう! 宇宙ってなんだ。皇女って!」

 六花たちの反応に対して激しく拒否を示す。

「魔界や異次元世界、平行世界があるんだから宇宙だってプリンセスだって当然ありだ」

 六花はグッと親指を突き立ててみせた。

「いや、なしだろっ!」

 ダメだ。この中二病にはどこがリアルの境界線だかまるで分かっていない。

「BLだって、リアルで存在することがあるんだし、宇宙だってありでしょ。漫画じゃどっちも普通じゃないの」

「気軽に宇宙に行く技術はまだ地球にないから。無理でしょ!」

 どうしてBLと宇宙を同列に並べられるんだろうか?

「宇宙すごいよね~♪ 究極生物カーズさまでも再起不能になっちゃうんだから~♪」

「宇宙はすごいかも知れませんけど、それは凸守と関係有りませんよ」

 くみん先輩の宇宙観も相当歪んでいる。

 

「富樫勇太は凸守がデコデコ星の皇女だと信じないのですね?」

「ああ。俺まで信じたらもうこの同好会は誰も舵を取れなくなってしまう」

 全員ボケっ放しの部になってしまったら。

 そんなことになってしまえば、誰も俺達の活躍を小説に著せなくなってしまう。

 ボケっ放しは話を続かせにくいのだ。

「分かったのデス。なら、証拠をお見せするのデ~ス」

「証拠?」

 自信満々に言い切る凸守に不安を覚えたその時だった。

 俺達の真上が突然眩い光によって照らされた。

 昼間よりも、太陽よりも明るい光。

 その光の正体を確かめようと空を見上げて俺はギョッとした。

 

「うっ、嘘だろ。おいっ?」

 俺達の真上に浮かんでいたのは大きな円盤。

 もっと分かり易く言えばUFOだった。

 

「ゲッフッフッフッフ。凸守がデコデコ星から来たと信じましたか? なのデ~ス」

 余裕たっぷりの笑みを発する凸守。

 けど、俺の驚きはもう通常レベルを突き破っていた。

「これ……中二病がどうとか言うレベルを遥かに超えているだろ……」

 頭上に浮かんでいる円盤はどう見ても本物。仮に作り物なのだとしても、あまりにも精巧で大掛かり過ぎて中二で説明できる域を越していた。

「凸守が宇宙人だってのは信じる。しかない、よな」

 地球の科学力を遥かに超したこんなすごいものを見せられては否定のしようがない。

「でも、こんなの見せちゃって大丈夫なのか? その、警察とか自衛隊とか米軍とかやってきて大変なことになるんじゃ?」

 宇宙船を見たおかげで俺は凸守の話を信じた。

 けれど、宇宙船の存在が公になるのは世界の安定の為には果てしなくまずい。

 それぐらいは高校生の俺にも分かった。

「大丈夫。この空間一帯に時空遮断シールドが張られている。だから、この公園内の外にいる者にはこの円盤が見えていない」

 凸守の代わりに解説したのは六花だった。

「ゲッフッフッフ。全ては宇宙の科学力で説明できるのデ~ス」

 高笑いする凸守。

「ああっ。宇宙のせいで中二病とリアルの垣根が取っ払われていく~~っ」

 現代科学では説明できない目の前の現象に俺は凹むしかなかった。

 

 

 凸守が宇宙人のお姫様であることはこの際信じるしかない。

 けれど、謎は残った。

「…………それで、凸守が俺に正体を明かした理由は何なんだ?」

 何故今になって正体を明かすのか?

 しかも3人が覗き見していたとはいえ、俺だけに。

「それはデスね」

 凸守がジッと俺を見た。

「それは、凸守が地球にやって来たわけと密接な関係があるのデ~ス」

「地球にやって来たわけ?」

「実はデス」

 凸守の真っ直ぐな瞳が俺を射抜いた。

「凸守はToLOVEるって家出してきたのデ~ス」

 凸守は大声で叫んだ。

「トラブルって家出してきたのか?」

「違うのデス。ToLOVEって家出してきたのデス」

 俺と凸守の会話には微妙なニュアンスの差がある気がしてならない。

 いや、俺にも凸守が言いたいことは何となく分かる。

 でも、俺の理性はその理解を全力で拒否していた。

 代わりに部員達を見て反応を確かめる。

 

「そっ、それじゃあ。凸守が勇太に接近したのは……」

 六花は全身を震わせながら凸守を見ていた。

「まあ、最近の宇宙人が地球に来る理由なんてそれしかないわよね」

 丹生谷は達観したようにウンウンと首を振っている。

「わぁ~。それはとっても素敵な出会いだったんだね~♪」

 くみん先輩はのん気に拍手している。

 3人は話の趣旨を明らかにしていない。

 けれど、俺の当たって欲しくない予想に沿った感想を述べている。

 俺は人生最大級の冷や汗を掻きながら問題の核心部分を確かめることにした。

 

「それじゃあ、凸守が地球にやって来たその本当の理由は……」

「はい。凸守は、凸守と結婚して次期デコデコ星王になってくれるお婿さんを探しに地球までやってきたのデ~ス」

 凸守は頬をポッと赤らめた。

「それで……その、お婿さんというのは……?」

「もちろんお前、ダークフレイムマスター富樫勇太のことなのデ~ス」

 凸守は俺のワイシャツの裾を握って引っ張りながら顔中を真っ赤に染めた。

 闇の炎に抱かれて真っ白な灰になったような寒気がした。

「もし、お婿さんになるのを断ったら?」

「凸守の正体が知られてしまった以上、この星は宇宙の藻屑になるしかないのデ~ス」

 即答だった。

「ああ。お約束ってやつですよね」

 断ったら、デコデコ星に地球ごと滅ぼされるか、その前に怒った地球人に殺される。

 分かり易い未来しか浮かばなかった。

 

「何で俺なの?」

「凸守はマスターから話を聞かされていたダークフレイムマスターに最初からメロメロだったのデ~ス。ポッ」

 凸守は俺の袖を掴んだままイヤンイヤンと恥ずかしがった。

「とてもそうは見えなかったが?」

 不法侵入した挙句やたら横柄な態度で自己紹介していた気がする。

「メロメロだったのデ~ス。ポポッ」

「…………分かった。もういい」

 デコデコ星と地球では愛情表現の仕方に差がある。そう思えば納得できないことはない。

 

「改めて訊くが、俺が婿になるのを拒否したら?」

「地球滅亡なのデス」

 やはり即答だった。

 凸守の言っていることは昨日までとほとんど変わらない。

 けれど、一つだけ大きく異なる部分がある。

 昨日までは重度の中二病患者の戯言に過ぎなかった内容。それが、今は地球うん十億年の歴史を終焉させるかどうかの大問題に変わっていることだ。

 俺に拒否権はない。

 なら、訊くべきは──

 

「俺は、いつお前を娶って地球を離れれば良いんだ?」

 交渉してできるだけ有利な条件を得ておくこと。

 それが大事だった。

「地球時間で今日の午後7時に凸守と結婚の儀を交わしてすぐにデコデコ星に出発なのデス」

「わぉ。急だなあ……」

 時計を見ると午後6時50分。

 後10分しか残ってなかった。

 交渉の余地はなかった。

「もう1度訊くが……凸守との結婚を断ったら?」

「地球皆殺しなのDeath」

 どうやっても即答だった。

「凸守……いや、早苗。俺と結婚してくれ」

 もう、こう言うしか俺と地球を救う手段はなかった。

「はいっ。凸守は一生勇太に付いていくのデスよ。愛しているのデス」

 凸守の腕が俺の背中に回った。

 俺と凸守の婚約が成立した瞬間だった。

 俺、地球を救った正義の味方に……なったんだよな?

 ダークフレイムマスター以上の大偉勲を成し遂げた。そうだよな?

 

「勇太……凸守と、結婚するんだ」

 抱き合う俺達を見ながら六花はとても悲しそうな表情を見せた。

「私、初めて会った時から勇太のことがずっと大好きだったのに」

 切ない瞳で告白してみせる六花。

「えぇえええええぇっ!?」

その告白、今じゃなければ嬉しかったのに。プロポーズ前にして欲しかった。

「私も、同じ秘密を共有する者として……富樫くんを頼りにしていた。きっとこれって、好きっていう気持ちだったんだと思う。残念だな」

 丹生谷もこのタイミングで告白してきた。

 諦めたはずのフラグをここでチラつかせるのは止めて欲しい。

 できれば俺の家を訪ねた時に回収して欲しかった。

「私も、勇太くんのことを猫探しを手伝ってくれた時からずっと素敵な男の子だと思ってた。お嫁さんになるなら、勇太くんの所がいいな~って思ってたのに。残念だよ~」

 くみん先輩までまさかの告白。

 だから、俺と地球の未来の為に凸守との結婚を誓ったタイミングで言うのはやめて欲しい。

 却って辛くなるから。俺はこれから、デコデコ星の王となるのだから。

 うん?

 デコデコ星の王?

 宇宙の支配者?

 こっ、これは……そうかっ!

 

「早苗っ!」

「はっ、はいっ。何デスか、あなた?」

 凸守の俺の呼び方が微妙に変わっているがそれはこの際放っておく。

「ダークネスっ! ダークネスな展開はないのか!?」

 凸守の両肩を強く掴みながら熱く訴える。

「ダークネス??」

 凸守は分かっていないみたいだった。

「そう。ダークネスだよっ! 他の言葉に置き換えれば楽園(パラダイス)計画はないのかっ!?」

 そう。ToLOVEるといえば、ダークネス。

 宇宙の王として地球のルールには縛られない。

 複数の女の子を愛を注ぐ素敵世界の形成。

 六花と丹生谷とくみん先輩を側室に据えた最高のパラダイスの実現をっ!

 

「デコデコ星では、複数の奥さんを娶ることができるんだろ!?」

 地球の為にいけにえにされる俺が一転。人生の超勝者へ。

 それが今だっ!

「何を言っているのですか? デコデコ星の王族は伝統的に一夫一婦制が守られているのデス。王が変わってもこの制度は変えられないのデス」

「あっ。そうなんだ」

 ……意気消沈。

「デコデコ星の第一皇女は代々他の星から入り婿を取って王を務めてもらっているのデス。側室なんか置かれたら王族の血統が偉いことになるのデ~ス」

「そういう事情なら、仕方ないですよね……」

 ToLOVEるなのにダークネスらない。

 その事実に俺は哀愁を抱かずにはいられなかった。

 

 

 悲しみにくれる。

 でも、そんな俺を六花達は見捨てないんじゃないか。

 正式な夫婦関係になれなくても、俺を選んで付いてきてくれるのでは。

 そんな期待を抱きながら3人を見る。

「私、側室とか嫌だから。私だけを愛してくれるお婿さんを探すから。バイバイ、勇太」

「幾ら楽できそうな生活が待っていると言っても、宇宙まで行くのはないわ。じゃあね、富樫くん」

「環境が変わると昼寝が安心してできなくなるから宇宙はちょっとね~。グッバイだよ、勇太くん」

 俺を好きだと言ってくれた3人の女の子達はとてもドライな感性の持ち主でもあった。

「畜生~~~~っ!!」

 3人の決別を聞きながら叫ばずにはいられなかった。

 

「あなたは……凸守が妻では不満なのデスか?」

 俺の右腕を掴みながら凸守が泣きそうな表情で尋ねてきた。

「凸守は、ずっとあなたのことを慕っているのにデス」

「不満っていうか……まだ、超展開の結婚に納得しかねている部分があるんだが……」

 凸守の額に左手を当てて撫でる。

「けど。これから2人で恋人らしく、夫婦らしくなっていけば良いんだと思う」

 俺の今の素直な気持ちを述べる。

「俺は早苗のことが嫌いじゃない……好き……だからな」

 男として、ちゃんと気持ちを伝えておく。

 最初に会ったあの日から、凸守には迷惑を掛けられることが多かった。

 でも、俺は彼女のことを嫌いにはならなかった。

 きっとそれは、自分でも知らない内に、俺が凸守のことを気に入っていたからだと思う。

「凸守も……私も、あなたのことが大好きです♪」 

 早苗は俺に抱きついてきた。

 こうして俺は、婚約を交わしたばかりの早苗と共に地球を去ることになったのだった。

 

 まあ、こんな人生もありだろう

 

 

 中二病でも恋がしたい!Lite 凸守編 完

 

 

 


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