No.416971

桜ちゃんと凛ちゃんは仲良し姉妹

ケイネス先生に続いて時臣お父さんまで死んだふりをする季節になりました。
ルパン3世のように死んだふりをして実は生きていたという展開の前ぶりですね。まったく、演出上手なんだから。

これはゾンビですか?
http://www.tinami.com/view/203056  (これはゾンビですか?  いえ、パンツ伯爵です) 

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2012-05-02 00:36:42 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:2097   閲覧ユーザー数:2005

桜ちゃんと凛ちゃんは仲良し姉妹

 

 

 冬木市に住む桜ちゃんと凛ちゃんは仲良し姉妹です。

 今、訳あって桜ちゃんは間桐という家に養子に出されていますがそんなことに関係なく仲良しです。

 今日も桜ちゃんの間桐家のお兄さんである綺麗なワカメを交えて3人で仲良く公園でおしゃべりして遊んでいます。

「おじさん……なかなか桜のお色気誘惑に気付いてくれないの……」

「まったく、雁夜おじさんときたらこんな美少女のアダルティーな誘惑に気付かないなんて、本当に女を見る目がないんだから」

 桜ちゃんと凛ちゃんは揃って溜め息を吐きます。

 桜ちゃんは昨夜意を決して枕を持っておじさんの部屋へと足を運びました。泥棒猫として認知している姉に先んじる為にです。

 でも、おじさんは桜ちゃんが寝ぼけているのだと思い、あっさりと部屋へと送り返してしまったのでした。

 一緒に寝ている光景を動画生中継で姉に送ろうとしていた桜ちゃんの野望は崩れ去りました。

 凛ちゃんは今日意を決しておじさんと一緒にホテルに入ろうとしました。泥棒猫として認知している妹に先んじる為にです。

 でも、おじさんは凛ちゃんが疲れているのだと思い、公園に連れて行ってベンチに座らせ缶ジュースをご馳走してくれました。

 一緒にホテルに入っている光景を動画生中継で妹に送ろうとしていた凛ちゃんの野望は崩れ去りました。

 綺麗なワカメは桜ちゃんと凛ちゃんの溜め息を見ながら体を小刻みに震わせて怯えています。きっと寒いのだと思います。

 桜ちゃんと凛ちゃんは仲良し姉妹です。

 

 桜ちゃんと凛ちゃんは仲良し姉妹です。

 ですが仲良し姉妹には共通の悩み事がありました。

「おじさんと遠坂のおじさん……仲良くなれないかなあ」

「お父様と雁夜おじさん……仲良くなれないかしらねえ」

 2人揃って大きな溜め息を吐きます。

 そう。おじさんと桜ちゃんと凛ちゃんのお父さんである優雅な遠坂時臣お父さんはとても仲が悪かったのです。

 会う度に喧嘩してしまう程の仲の悪さです。

 2人が犬猿の仲であることは桜ちゃんたちにとって非常に困った問題でした。

「どうしよう。このままおじさんと結婚する時……遠坂のおじさんに反対されちゃうよぉ」

「どうしようかしら。このままじゃ雁夜おじさんと結婚する時にお父様に反対されるわ」

 2人はまた揃って大きな溜め息を吐きます。

 実の父親が結婚に反対するのでは安定した新婚家庭を築くことが出来ません。それは2人にとって大きな問題でした。

 綺麗なワカメは2人の意見が全く同意であることに体を震わせていました。きっと寒いに違いありません。

「何とかしておじさんと遠坂のおじさんを仲良くすることは出来ないかなあ?」

「そうねえ。2人が仲良くしてくれると結婚への障害が一つなくなるのよねえ」

 何度でも溜め息が漏れてしまいます。

 溜め息だけで地球が重くなってしまいそうです。

「おじさんと遠坂のおじさんを仲良くさせるのにこんなのはどうかなあ?」

 桜ちゃんがパンッと手を叩きました。

「こんなのって、どんなの?」

「こういうの♪」

 桜ちゃんは嬉しそうに目を閉じました。

 

 

 

 深夜の繁華街の路地裏の更にその奥。

 電灯の光が微かにしか届かない薄暗いその一角で間桐雁夜は楽しそうに微笑んでいた。

「俺の罠に嵌るとは油断したな、時臣~っ」

 両手首を縛り上げられた時臣を見ていると笑いが止まらなくなる。

 雁夜はわざと勝負に負けて逃走。追い掛けて来た時臣を蟲で偽装した落とし罠に掛けて捕らえたのだった。

「しかも優雅大好きなお前がゴミ袋のベッドに寝ているなんて最高に笑えるじゃねえか」

 捕らえられた時臣は生ゴミが詰められたゴミ袋の上に寝かせられていた。

「ご自慢のワインレッドカラーのスーツが生ゴミに塗れて臭え臭え」

 雁夜は鼻を摘んで左手を左右に振った。

 時臣の体の上には残飯となった魚の骨やりんごの皮が汚らしく乗っかっている。

「優雅さの欠片もない無様な格好だなあ。優雅な時臣さんよぉ~」

 雁夜は時臣の頭の上に腐ったみかんを乗っけながら嘲笑を発した。

「このような辱めを受けるぐらいなら……殺せっ」

 決して屈服しない強い意志を秘めた瞳で時臣は自らの死を提案した。

 だがそんな時臣の提案に対して雁夜は冷笑を浮かべた。

 そして、時臣の頬に自らの舌を這わせた。

「なっ! 何をするっ!」

 男に頬を舐められるという初めての体験に時臣は不快感と嫌悪感を露にする。

「おいおい。俺は勘違いしているお前の根性をちょっと修正してやろうと思っただけだぜえ。へっへっへ」

 雁夜は続けて舌を時臣の顔に這わせながら答えた。

「やっ! 止めろっ! 止めるんだっ! 気持ち悪いっ!」

「おっ。その優雅に生きて死ぬって決意に満ちた瞳に戸惑いが現れるようになったな。こりゃあ良いぜ」

 雁夜は犬のように激しい舌使いで時臣を撫で回す。

 そのざらざらした舌触りに時臣は嫌悪し、やがて戸惑う。

「お、お前は一体何を考えて……?」

「言っただろ? 俺は時臣の考えを正そうとしているんだって」

 雁夜の舌が時臣の首筋を嘗め回し始める。気持ち悪いと思っていても、雁夜の舌は一向に止まる気配がない。そして、その舌の動きが時臣の思考を麻痺させていく。

「わ、私が……一体……何を勘違いしていると……?」

 時臣は段々と何も考えられなくなっていた。残された理性を必死に動員して雁夜に尋ねる。

「俺はお前を殺そうなんて思っていないってことだよ~」

 雁夜はヘラヘラと笑いながら時臣の首筋を嘗め回す。

 時臣の首から上は既に雁夜の唾液によりベトベトになっていた。

「何だと?」

 微かに残る意識で時臣が尋ねる。

「だってよお~。アンタは俺のお義父さんになるんだぜ。殺しちゃまずいだろ?」

 雁夜は意地の悪い顔を浮かべながら唇を歪めた。

「私が……君の……義理の父親……だと?」

「ああっ。俺は桜ちゃんと明日結婚するつもりなんだ。だからお前は俺のお義父さまってことになるだろ?」

 雁夜は時臣の耳に向かって息を吹き掛けた。

「フッ! ふざけるなっ! 誰が貴様などに桜をやるものかっ! 大体桜はまだ小学1……うグッ!?」

 息を耳に吹きかけられて大きく震えた体で時臣は必死に怒りを露にした。だが、耳に感じる吐息のおぞましさに最後まで言葉を告げる事が出来ない。

「そう言われると思っていたぜぇ~」

 だが雁夜は怯まない。再び時臣の耳に息を吹きかける。

「だからよぉ~。これからは仲良くしようじゃねえか。……お義父さまっ!」

 雁夜は時臣の顔に覆い被さりその唇を強引に奪った。

「なっ、何を……ウプッ!?」

 時臣は必死に抗おうとするが雁夜の力強さに顔を払いのけることが出来ない。

 それどころか舌が強引に割り込んで来て時臣の口の中に侵入し始めた。

 時臣は雁夜の舌によって口の中を激しく攻め立てられた。

 妻の葵にでさえこのような激しいキスをされたことはない。初めてのディープキス、しかもそれが男の手によって成されたという事実に時臣の頭は完全に白くなる。

 時臣の抵抗は時間と共に弱くなる。

「おいおい。まだ大人しくなるのは早いぜ、お義父さんよっ」

 唇を離した雁夜の目は爛々と輝いていた。

 それはまさに飢えた野獣そのものの瞳。

「俺達が本当に仲良く、1つになるのはこれからなんだぜぇ。へっへっへ」

 時臣の顔に涎を垂らしながら雁夜は叫ぶ。

 そして、その右手を時臣の体に這わせながらゆっくりと下半身へと伸ばしていく。

「やっ、やめろ……」

 時臣は生理的な嫌悪感で全身に痙攣を起こす。

 だが、先程のディープキスによって思考が麻痺してしまっている為に積極的な抵抗に移ることが出来ない。

「さあ。そのワインレッドカラーのスーツを白濁に染めてやるよ。お義父さんよぉ」

 雁夜は歪んだ笑みを浮かべながら右手で時臣の太ももを撫で始める。

「だ、駄目だ……」

 時臣は雁夜を拒絶する。

 だが、その声はか細い。

 時臣の心の拒絶が雑多な大通りまで届くことはない。

「さあ、今日からは仲良くしような。お義理さま……っ!」

 雁夜が再び強引に時臣に覆い被さる。

 それから聞こえた時臣の悲鳴が人々の耳に届くことはなかった……。

 

 

 

「こうすればおじさんと遠坂のおじさんは仲良くなれると桜は思うよ♪」

 桜ちゃんは満面の笑みを浮かべながら自分の考えを述べたのでした。

 桜ちゃんの考えを聞いて綺麗なワカメは体を激しく震わせました。

 首をガクガク揺らしながら左右に激しく振っています。きっと寒いのだと思います。

「馬っ鹿ねえ。そんな考えだから桜はお子ちゃまだって言うのよぉ」

 一方凛ちゃんは桜ちゃんを見ながら陽気に笑っています。

「雁夜おじさんがそんな粘着質な攻めな訳がないじゃない」

 凛ちゃんは桜ちゃんに向かって指をさしました。

「雁夜おじさん×時臣お父様なんてあり得ないのよっ!」

「え~~っ。おじさんは格好良いんだよぉ。絶対攻めだもん」

 桜ちゃんはプクッと可愛らしく頬を膨らませながら凛ちゃんに抗議しました。

「分かってないわねえ。雁夜おじさんの魅力は格好良さにあるんじゃなくて、頼りなくて守ってあげたくなるような母性本能をくすぐられる所にあるのよ」

 凛ちゃんは桜ちゃんの抗議さえも笑って返します。

「好きな人を王子様に見立ててしまうのはまだ桜がお子ちゃまな証だわね」

「おじさんは……桜の王子様だもんっ!」

 頬をパンパンに膨らませる桜ちゃん。大人の態度で余裕を見せる凛ちゃん。

 2人はとっても仲良し姉妹です。

「それじゃあ桜に教えてあげるわ。どうすればお父様と雁夜おじさんが仲良しになれるのかを」

 綺麗なワカメが激しく全身を震わせる側で凛ちゃんは目を瞑りました。

 

 

 

「いい格好だな、間桐雁夜よ」

 遠坂時臣は自分の足元に縛られた状態で芋虫のように転がっているかつての友を冷ややかな瞳で見下げていた。

 所詮半人前以下の魔術師でない雁夜など遠坂家頭首である時臣の敵ではなかった。

「うるせぇっ!」

 術式を施した縄で縛られ、既に反抗の手段は残されていないのにも関わらず雁夜の闘志はいささかも失われていない。

 人間を憎む野生の犬のように鋭い瞳で時臣を睨んでいる。

「まったく君は優雅さの欠片もない男だな」

 時臣はワイングラスを手に持ったまま優雅に立ち上がる。そしてゆっくりと自身の書斎を回り始めた。

「君のような人間をケダモノのような男と言うのだろうね。いや、負け犬という方が今の君にはピッタリかも知れないがね」

 書斎を1周し終えて溜め息を吐く。

 雁夜は先程と同じ表情で時臣を睨み付けていた。

「やれやれ。君も人間に進化しようという気はないのかね? 人間になってくれないのでは優雅とは何か伝えようがない」

 時臣は大きく溜め息を吐いて嘆いた。

「うるせぇっ! 無駄口を叩いている暇があったら、さっさと殺しやがれっ!」

 雁夜は犬歯を剥き出しにして、噛み殺してやらんとばかりの眼光で時臣を睨み付ける。

「君はこれで少し頭を冷やしたまえ」

 時臣はワイングラスを逆さに傾けて雁夜の顔に浴びせ掛けた。

「時臣っ! テメェッ!」

 顔をワイン塗れにされた雁夜が更に怒りを増大させる。

「落ち着きたまえ。私は君を殺すつもりはない」

 時臣は雁夜の怒りを取り合わずに語り掛けを続ける。

「だってそうだろう? 君は仮にも凛が結婚相手に選んだ男だ。義理の父となる私が君を殺せる筈がないだろう」

「グッ」

 雁夜が噛み付こうとしていた口を閉じる。

「凛ももう2年生。将来の伴侶を自分で探し出して良い立派な大人だ。私の言うことだけを聞いていれば良い子供の季節は終わったのだ」

 時臣は昔を懐かしむように窓の外を見上げた。星空が時臣の感傷に華を添える。

「だが凛はこの遠坂家の次期頭首。凛の子は次の次の代の遠坂家頭首になる」

 時臣が雁夜へと振り返り冷徹な瞳を向ける。

「その凛の伴侶となる男を現遠坂家頭首としてただ黙って見ているという訳にもいくまい」

「じゃあ、どうするって言うんだ?」

「そんなこと……決まっているっ!」

 時臣は転がっている雁夜の股間を強い力で踏み付けた。

「ぎゃぁあああああああぁっ!?」

 雁夜が大きな悲鳴を上げる。

 だが時臣は一向に足をどけようとしない。

「躾の悪い駄犬には調教を施して、遠坂に相応しい人間に作り変えるのみ」

 時臣は今までにない鋭利な瞳で雁夜を見据えていた。

「君を私に徹底的に従順な真人間に作り変えてあげようというのだよ」

「フッ、フザケルなぁっ! ……ぎゃぁあああああああぁっ!?」

 時臣の股間を踏み付ける力が更に増して雁夜は大きな悲鳴を叫ぶ。

「おっと。凛との間に将来の子供が出来なくなっては一大事だな。幾ら駄馬以下の存在とはいえ、こんな男でも遠坂の永続の為には必要な人材だからな」

 時臣は雁夜の股間から足を離す。そして代わりに右手に魔術を行使する時に使うステッキを構えた。

「躾をするのならやはり、顔と股間以外に痛みを叩き込んでやらないとな。でないと凛が悲しむ」

 時臣は軽くステッキを2度3度振り回す。

 風を切り裂く音がする。

 そして、遠坂魔術で使われる宝石は本物であり、ステッキの先端に括り付けられている大型の宝石もまた本物であった。

 それはつまり、鉄よりも固い鉱物で叩かれることを意味している。

「やっ、止めろぉ~~っ!」

 雁夜は再び時臣に向かって吼えた。だがその声に最初のような力強さは感じられない。暴力に恐怖する色が声に含まれている。

「悲しいものだな」

 時臣は更に1度ステッキを振り回し、雁夜の心に恐怖を植えつける。

「君の様な知性と教養と品性に欠けた人間には体に叩き込むという原始的な方法を通じてしか啓蒙することが出来ないとはな」

 時臣は大きくステッキを振り上げる。

「だがこれも義理の父から子への愛の鞭だと思ってくれっ!」

 ステッキの先端が雁夜の脇腹を思い切り打ち付けた。

「ぎゃぁああああああああぁっ!??」

 雁夜の悲鳴が書斎に響き渡る。

 時臣はその悲鳴を聞いていると全身がゾクソクとえもいわれぬ快感に包まれるのを感じていた。

「さあ、間桐雁夜。もっと良い声で啼くが良いさっ!」

 時臣は快感を感じながら雁夜を次々と打ち付ける。打ち付ける度に大きな悲鳴を上げる雁夜を見ていると興奮が止まらない。

「もっとっ! もっとっ! もっといい声で啼くんだぁ~~っ!」

 鼻息荒く目を血走らせながら雁夜を激しく打ち付け続ける。

 その行為は時臣に今までに感じたことがないほどの強い快感を提供してくれた。だが、人間とは業深き存在。

 時臣は雁夜を蹂躙することで更なる快感を得たいと思い始めていた。

「そうだ。内側から雁夜を抉ってやれば、もっと良い声が聞こえるに違いないっ! 内側からだっ!」

 何とか雁夜を内側からいたぶれないものかと思案する。

「も、もう、止めてくれぇ~~っ!」

 情けない声を出しながら芋虫のように這いずって逃げようとする雁夜。時臣には尻を振りながら必死に逃げようとする雁夜の姿が鮮明に焼きついた。

「なんだ。とても簡単な方法があったではないか」

 時臣はゆっくりと背後から雁夜に近付いていく。

「さあ、間桐雁夜。私に従順な真人間になって、親子関係を大いに改善しようではないか」

 時臣は雁夜の尻を両手でガッシリと掴んだ。

「おっ、おいっ!? 時臣、お前一体何を考えているっ!?」

 時臣の行動に異常性を感じた雁夜が焦った表情で振り返る。するとそこには魔術ステッキを自身に向かって突き刺そうとしている時臣の姿があった。

「決まっている。君を遠坂の人間に相応しい男に調教しようというだけだ」

「やっ、止めろぉおおおおおおおおおぉっ!」

 要塞と比ゆされる遠坂邸。

 雁夜の悲鳴が外に届くことは遂になかった……。

 

 

 

「どう? これがお父様と雁夜おじさんが仲良くなれる唯一にして絶対のルートよ」

 話し終えた凛ちゃんは勝ち誇った表情を浮かべていました。

 凛ちゃんのプランを聞いて綺礼なワカメは首を両手で押さえながらもがいていました。酸素が上手く吸えないようです。きっと起きながら睡眠時無呼吸症候群に掛かったのだと思います。

「お姉ちゃんは遠坂のおじさんを過大評価しているよお」

 桜ちゃんは凛ちゃんのプランに対して異議アリしました。

「あの似非優雅は……ろくな人間じゃないよ」

 桜ちゃんは顔に影を落としながら言いました。

 桜ちゃんは自分を蟲おじいちゃんに売った優雅な時臣お父さんへの恨みを忘れていません。

「お姉ちゃんはあの似非優雅に夢見てるよ」

 桜ちゃんはやさぐれています。

「まっ、まあ、確かにお母様は毎週生ゴミの日にお父様を一緒に捨てられないか1時間以上真剣に悩んでいるけどね……」

 くすくす笑ってゴーゴーしそうな桜ちゃんの変化にさすがに凛ちゃんも焦ります。

「私が会う時も99.9%以上の確率でワイングラスを転がしているだけで、私は世のお父さんがみんなそうなんだと、今年の家族を題材にした作文を読むまで誤解していたし…」

 凛ちゃんの中でも優雅な時臣お父さんに対するダークサイドな感情が広がっていきます。

 けれども、それでも凛ちゃんの中で譲れないものがありました。

「確かに桜の言う通りにお父様には生ゴミの日に出される程度の価値しかないのかも知れない。授業参観で作文読んだら先生に泣かれて同情される程度の価値しかない人なのかもしれない。でもねっ!」

 凛ちゃんは大きく息を吸い込み熱く語りました。

「時臣お父様×雁夜おじさんの図式だけは譲れないわっ!」

 凛ちゃんは正義のヒーローのように勇ましく言い切りました。

「違うもんっ! おじさん×遠坂のおじさんだもんっ!」

 でも、桜ちゃんも負けていませんでした。

 さすが獅子の妹は獅子でした。

 激しく睨み合う桜ちゃんと凛ちゃん。

 普段は仲良し姉妹の2人でしたが、どうしても譲れないものがありました。

 酸欠状態に陥りながら綺麗なワカメは必死に2人の争いを宥めようとします。

 でも、どうすることも出来ませんでした。

「時臣お父様×雁夜おじさんっ!!」

「おじさん×遠坂のおじさんっ!!」

 世界を二分するイデオロギー対立でした。

 どうしても譲り合うことが出来なかったのです。

 綺麗なワカメは2人の争いを止めることが出来る救世主の到来を渇望しました。

 そして救世主は現れたのです。

 

 

「あっ! 士郎くんだぁ~っ」

「本当だわ。味皇海原雄三の息子士郎だわっ!」

 2人がいる公園の前を味皇海原雄三の息子士郎くんが通り過ぎていきます。

 どうやらお父さんの仕事の最中のようです。

 士郎くんの姿を見て2人は目を輝かせました。

 2人ともおじさんのことが大好きです。

 でも、だからといってそれは同年代の男の子に全く興味がない訳ではありません。

 2人は士郎くんのことも大好きなのでした。

 綺麗なワカメは士郎くんなら2人の喧嘩を止めてくれるかも知れないと思い、少年に向かって走り出しました。

「綺麗なワカメお兄ちゃん×士郎くん。で、決まりだよね♪」

「何を言っているの? 士郎×綺麗なワカメに決まっているでしょ」

 綺麗なワカメの足が止まりました。

 旋回の悪くなった扇風機のようにぎこちなく首を回します。

「綺麗なワカメお兄ちゃんのねちっこさは絶対に攻めだよぉっ!」

「士郎は人畜無害そうに見えて、やる時はガンガン行くタイプなのよ。ワカメみたいな軟弱者はあっという間に組み伏せて強引にものにされちゃうんだからっ!」

 綺麗なワカメは再び全身を強い悪寒に襲われたのでした。

「綺麗なワカメお兄ちゃん×士郎くんっ!!」

「士郎×綺麗なワカメっ!!」

 自分を対象にカップリング議論が激しく行われている。そんな現実に綺麗なワカメは脳の回路が焼き切れてしまいそうでした。

 ワカメは再び救世主の到来を待ち望みました。

 男だとまたカップリング論争が起きそうなので女性の救世主が現れることを望みました。

 

 

「大変よっ! 凛っ! 桜っ!」

 桜ちゃんと凛ちゃんのお母さん、葵さんが公園の中に駆け込んで来ました。

 汗だくです。でも爛々に瞳を輝かせています。

「どうしたの、お母様ぁ?」

「何があったんですか?」

 姉妹は喧嘩を止めて葵お母さんを見つめます。

 綺麗なワカメは喧嘩が収まったことにホッとしました。

「時臣と雁夜くんがまた争い始めたのよっ!」

 葵お母さんの言葉を聞いて綺麗なワカメはまた体をビクッと震わせます。

 喧嘩の元凶が争っていたのではまた姉妹喧嘩が再発しかねません。

「それでっ!?」

 桜ちゃんも目を大きく開いて驚きながら葵お母さんに続きを促します。

「往来で取っ組み合いの喧嘩を始めた2人は、陽の光が当たらない路地裏へと転がりながら消えていったわ」

 葵お母さんは悲しそうに消えていったわ。

「その後はっ!?」

 凛ちゃんも瞳を大きくして葵お母さんにたずねます。

 葵お母さんは悲しげに首を横に振りました。

「光が当たらない空間に入られてしまって……どちらが攻めで受けなのか確かめることが出来なかったわ」

 葵お母さんは心底悔しそうに呟きました。

「あの路地の先にはマニアご用達のホテルまであるっていうのに……」

 葵お母さんは魔術師の妻であることを後悔するようなそんな悲しみの瞳を見せました。

「桜……行って確かめてくるね」

 桜ちゃんが悲痛な表情を浮かべる葵お母さんの右手を取りながら言いました。そこには幼い少女とは思えないほどに覚悟に満ちた表情がありました。

「私も……お父様と雁夜おじさんのどちらが攻めなのか、直接この目で確かめたいと思います」

 凛ちゃんが葵お母さんの左手を握りながら言いました。凛ちゃんもまた戦士の表情で自身の意思を告げたのです。

「覚悟は出来ているみたいね、2人とも」

 葵お母さんの言葉に桜ちゃんと凛ちゃんは無言のまま頷きました。

「分かっていると思うけれど、男同士の絡み合いに決して介入しては駄目よ。イエス腐女子・ノータッチ。この大原則を決して忘れては駄目よ」

 2人は再び頷きました。

「それじゃあこれから、全速力で現場に向かうわよ」

「「おおっ!!」」

 3人はマッハと掛け声を掛けると全力ダッシュで公園から去っていきました。

 

 綺麗なワカメは空を見上げます。

 澄んだ青空が目に入りました。

 綺麗なワカメは大きく息を吸い込みました。

 そして息を吐きながら家に向かって歩き始めました。

 蟲蔵に入って蟲に癒されよう。

 綺麗なワカメはこれからのやることを決めてすっきりしました。

 

 

 

 了

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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