No.304475

そらのおとしものショートストーリー3rd 妄想ダイブゲーム

水曜定期更新
今回より装いも改めて3rdシーズンへ突入
とはいえ、何も変わりませぬ。
エンジェロイドたちの温泉編を書こうとしてあまりにも筆が乗らないのでまあ放置。
書きかけ放置の作品を引っ張り出して完成させましたとさ。

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2011-09-21 00:16:36 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:3579   閲覧ユーザー数:2346

そらのおとしものショートストーリー3rd 妄想ダイブゲーム

 

「会長は~みんなの妄想に~興味があるわ~」

 新大陸発見部の部室で関係者を前にして美香子は自分の思い付きを口にしてみた。

「……妄想、ですか?」

 イカロスが首を傾げながら美香子に聞き返す。

「そうよぉ~。眠らないエンジェロイドにとって~夢はタブ~。けれど、起きている間に見る~妄想なら~何も問題ないでしょ~?」

 美香子はやたらとニコニコしている。

「ニンフちゃん。この前のダイブゲームみたいに~他人の妄想を見れる機械とかないの~?」

 美香子はニンフを見た。

「人をドラえもんみたいに何でも出せるキャラにしないでよね」

 ニンフは膨れ面を見せながらも1枚のカードを取り出した。

「まあ、こんなこともあろうかと、前のダイブゲームを改造して起きている者の妄想の中に入れる機械を作ってはみたのだけど」

「おおぉっ! そりゃあすげえな」

 驚きの声を上げる智樹を前にしてニンフのトーンが少し下がる。

「でも、まだ実際に使ってみたことがないからどうなるのかわからない部分があるのよ」

 美香子は部室の隅でウサギの餌のニンジンをかじっているアストレアを見る。

「そういうことなら~まずは~実験よ~。頑張ってね、アストレアちゃ~ん」

「へっ?」

 こうしてアストレアは歴史上初めての妄想ダイブゲームの被験者に選ばれた。

 

「あのぉ~これ~、本当に安全なんですか?」

 頭に桃の形をしたヘルメットを被せられたアストレアが不安げな声を上げる。

「成功したら問題なし。失敗しても科学の発展の為の礎になれるのだから安心なさい」

「そうなんですか? わ~い」

 ニンフの言葉の意味をよく把握せずに喜んでみせるアストレア。

 新大陸発見部の面々は温かい目でアストレアを見守っていた。

「それじゃあ、デルタが面倒なことを言い出す前にスイッチオン」

 ニンフが手元の機械のスイッチを入れる。

 すると、アストレアの頭に被さっている桃が光り出した。

「うっきゃぁああああああぁっ!?」

 アストレアは奇声を発すると共に気絶してしまった。

 しかし、ダイブゲームの時と同じように、黒く丸い門が開いた。

「さて、誰が入る? 妄想の中がどんな世界になっているのかわからないので安全の保障はできないのだけど」

 ニンフの言葉に部室内が一瞬静まり返る。

「会長は行くわ~面白いから~」

 名乗りを上げたのは提案者でもある美香子だった。

「俺も行くぞ。未知の領域に踏み込んでこそ新大陸と出会えるのだからな」

 守形も続いた。

「……私も行きます。おふたりをお守りします」

 イカロスも名乗りを上げた。

「俺はパスだっ! 安全が保障されるまで絶対に行かねえからな」

「私も、ちょっと怖いかな」

 こうしてアストレアの妄想に入る人員が決まった。

 

「何が起きるのかわからないから妄想の中の人物たちに過度に干渉するのは控えてね」

「気を付けてくださいね、会長」

 ニンフたちに見送られながらアストレアの妄想の中へと入っていく美香子たち。

 ゲートを抜けると確かにそこは異世界だった。

「ここがアストレアちゃんの妄想の中なのね~」

 幼稚園児が描いた絵のような何とも大雑把な世界観。

 大空には団子やドラ焼きが飛んでおり、陸地には肉が焼けた状態で歩いている。川を見れば魚が刺身になった状態で泳いでいた。

「……アストレアの世界で間違いありません」

 食べたら死んでしまいそうなカラフルなきのこを手に取りながらイカロスは断言する。

「それで、肝心のアストレアはどこに?」

 辺りを見回す守形。

 すると、視界の隅に見えた。

 どう見ても怪しい超巨大なお菓子の家が。

 いや、規模的に考えてお菓子の城と呼ぶに相応しいものが。

「あらあら~。アストレアちゃんは分かり易くていいわね~」

 アストレアはそこにいるに違いなかった。

 

 早速一行はお菓子の城へと移動して中に入る。

 すると──

『モグッモグッモグッモグッ』

 いた。

 人の背丈よりも高く積まれたチャーハンを一心不乱に口の中へとかきこんでいるアストレアの姿が。

『あらあら~。アストレアちゃんは食欲に忠実なのね』

 美香子は食事に夢中なアストレアの姿を見ながら微笑んだ。

『おかわり~』

 アストレアは空いた皿を手に持ちながら大声で叫ぶ。

 声に導かれ、城の奥からシェフ姿の桜井智樹が現れた。

 その右手にはやはり山のように高く積み重ねられたハンバーグを乗せた皿を持って。

『次は俺特製のハンバーグだぞぉ』

 智樹に手渡されたハンバーグをまた一心不乱に食べ続けるアストレア。

『おかわり~っ!』

 アストレアはあっという間にハンバーグの皿も空にしておかわりを要求する。

『次は俺特製のカレーライスだ』

 山盛りカレーライスを目にも留まらぬ速さで食べていくアストレア。

『おかわり~っ!』

『次は俺特製エビフライだ』

『おかわり~っ!』

『次は俺特製プリンだ』

『おかわり~っ!』

 止まることなく食し続けるアストレアと料理を提供し続ける智樹。

「あらあらあら~♪ やっぱりアストレアちゃんも女の子ね~♪」

「…………やはりあの淫乱ダウナーは後でバニッシュしないと」

 嬉しそうに笑う美香子と、瞳を赤く光らせるイカロス。

「フム。あの現実を無視した無尽蔵の胃袋構造。実に興味深い」

 1人だけ違う所に興味を抱いている守形。

 三者三様の興味の抱き方をしているとタイムアップの時を迎えた。

「あらあらあら~? どうやら帰る時間が来たみたいね~」

 アストレアの妄想の世界から現実へと引き戻されていく。

 一瞬の後、3人は部室の中に戻って来ていた。

 

「どうだった?」

 機械を弄りながらニンフが尋ねる。

「実験は大成功よ~♪ アストレアちゃん、とっても可愛かったわ~♪」

 美香子の言葉にホッと胸を撫で下ろすニンフ。

「……マスターを狙うダウナー。アルテミス発射」

「うきゃぁあああああぁっ!?」

 イカロスはアストレアに向かって無慈悲にアルテミスを発射していた。

 いつものことなので別に誰も気にしなかった。

「一体、どんな妄想だったのかしら?」

 機械を操作していたニンフやこちらに留まった智樹、そはらたちにはアストレアの妄想の内容がわからない。

 

「さて、次は誰の妄想に入ろうかしら~?」

 美香子の問いに答える者はいない。

 妄想を覗かれたい者などいるはずがなかった。

「じゃあ~英くんはどうかしら~? 頭の中は新大陸よぉ~」

 美香子は意地悪な笑みを浮かべながら守形を見る。

「フム。真理を追究する者は、自らが被験者となることも必要だな」

 よくわからない理屈を捏ねながら守形がオーケーする。

 そんな守形を見て美香子は拳を力強く握り締めたが、それに気付く者はいなかった。

「それじゃあ~英くんの妄想には誰が入る~?」

 見回す美香子。

「はいはいは~い。美味しい物が食べられそうだから私が行きます」

「えっと、危険じゃなさそうだから私も入ってみます」

 手を挙げたのはアストレアとそはら。

 美香子と合わせて3人で守形の妄想の中に入ることが決まった。

 

「いざ行かん、新大陸へっ!」

 守形の掛け声と共にスイッチが入れられ、守形が気を失う。

 それと同時にゲートが開く。

「うふふふふ~。行ってくるわね~♪」

 美香子はご機嫌でゲートの中へと入っていく。

「こんなにもあっさり目的の1つが達成できるなんてね~♪」

「目的って何ですか?」

「うふふふふ~♪」

 そはらの問いに笑って返すだけの美香子。

「英くんだって男の子~。きっとその鉄面皮な表情の下には~会長にあ~んなことやこんなこと~、鬼畜18禁展開なことをしたいという欲望が渦巻いているに違いないわ~♪」

 ご機嫌な美香子が辿り着いた先。

 そこはホテルの一室でもなければ美香子の自室でも守形のテントの中でもなかった。

「ここって、一昨日に先輩がグライダーの飛行実験をやった丘ですよね?」

 そはらの言うとおり、美香子たちが出て来た場所は姿が飛行実験を行った丘陵で間違いなかった。

 そして、一昨日と同じようにグライダーで空に飛ぼうとする守形の姿があった。

『いざ行かん、新大陸へっ!』

 一昨日と同じ掛け声と共に大空に向かって飛び立つ守形。

「何か、一昨日の再現まんまですね」

 飛んでいく守形を見ながら感想を述べるそはら。

「あっ、美味しそうなキノコだぁ」

 守形の飛行に興味を失ったアストレアは足元に生えていたカラフルなキノコに目を付けて早速口に運ぶ。

「し、痺れるぅうううぅっ!? い、息ができないっ!?」

 そして瀕死状態に陥っていた。

 そうこうしている内に守形が地面に降り立つ。

『前回よりも飛距離が20m伸びたな。よし、今回の飛行データを元に更なる改良を加えよう』

 工具を取り出してグライダーを調整し始める守形。

「何か、如何にも先輩らしい堅実な夢、というかプランですね」

 そはらが一心不乱にグライダーを整備する守形を見ながら苦笑する。

 一方で美香子は何も言わずにただ肩を震わせていた。

 

「守形の妄想はどうだった?」

 戻って来たそはらにニンフが感想を尋ねる。

「う~ん。何ていうか、凄く先輩らしい石橋を叩くような内容だった」

「何それ?」

 不思議がるニンフ。

「英くん? どうして英くんの妄想に少しも私が出て来ないのかしら? 若い欲情はどこに行ってしまったの?」

「ちょっと待て、美香子? 何が言いたいのか少しも理解できないぞ!?」

 機械を外したばかりの英四郎を鞭で打ち付ける美香子。

「し、し、痺れるうぅうううぅっ!?」

 いまだ痺れ続けるアストレア。

「やっぱり妄想の世界に入るなんてろくな結果にならねえ」

 自身の判断は間違ってなかったと確信する智樹だった。

 

 

 

「それじゃあ次は誰の妄想に入る~?」

 半ばヤケになったように大声で尋ねる美香子。

「……次はニンフが良いと思います」

 挙手したのはイカロスだった。

「ちょっと待ちなさいよ。機械は私が操作してるんだから、私の妄想は……」

「大丈夫。操作方法は今見て覚えたから」

 ニンフの退路を塞ぐイカロス。

 どうやらこの展開の為に、守形の妄想に入らなかったようだった。

「うふふふふ~。じゃあ次はニンフちゃんの妄想で決まりね~♪」

 美香子は楽しそうに笑った。

「ならば、また俺が妄想を探究……」

「今回男の子が入るのはダメよぉ~」

 守形の立候補を美香子が却下する。

「何故だ?」

「ニンフちゃんの妄想は~ちぇり~な青少年には刺激が強すぎると思うから~」

「なっ!?」

 美香子の説明に憤慨したのはニンフ。

「そんな訳がないじゃない! 私は名前が示す通り、童話に出て来る妖精のような清らかな心を持っているんだから!」

 反論するニンフを見て、イカロスは少しだけ唇の端をニヤリと曲げてみせた。

「見てなさいよ。私が清らかな心の持ち主だってことを証明してみせるんだから!」

 意気揚々とヘルメットを被るニンフ。

「……それでは、スイッチオン」

 ニンフの操作を見て覚えたイカロスが機械を作動させる。

「行って来るわね~。うふふふふふ~」

「行って来ます」

 痺れで虫の息になっていたアストレアを残し、美香子とそはらがニンフの妄想の中へと旅立っていった。

 

 そしてしばらくして2人は帰って来た。

 ヘルメットを外したニンフが2人に感想を尋ねる。

「ど、どうだった? 甘いお菓子が欲しいとかピュアな夢だったでしょ?」

 勢い込むニンフに対して美香子は一言。

「ニンフちゃんの~超ムッツリスケベ~♪」

「なあっ!?」

 驚いたニンフは矛先を変える。

「そはら、一体何を見たの?」

 質問を振られたそはらの顔には一筋の赤い川が流れていた。

「ニンフさん。幾ら何でもあれはエッチ過ぎるよぉ~。毎日あんな倒錯的なプレイしてたんじゃ、智ちゃんとの間に子供が4人できても全然不思議じゃないよぉ」

 妄想の中の出来事を思い出したのか、そはらの顔にもう一筋の赤い川ができた。

「……やっぱりニンフはエロ魔神」

「何かの誤解よぉ。嫌ぁあああああああああああぁっ!」

 ニンフの絶叫が部室内に木霊した。

 

 

「それじゃあ次は~」

「はいっ、そはらで決定よ」

「ええぇっ?」

 恨みがましい瞳でそはらを指名するニンフ。

「私の妄想なんて見てもきっと面白くないよぉ」

「絶対絶対私よりも凄いこと考えてるに違いないんだから」

「見月さんの妄想も男の子は入っちゃダメよぉ~」

 そはらの思惑に関係なく、男子の立ち入りを禁止する美香子。

 結局、美香子とニンフがそはらの妄想に入ることになった。

 グッタリと動かなくなってしまったアストレアは連れて行けなかった。

「私の妄想なんか面白くないよぉ~」

「……スイッチオン」

 嫌がるそはらを無視してスイッチを入れるイカロス。

「絶対絶対、そはらの方がエッチな妄想してるんだから!」

「見月さんの妄想は~期待値が高いわね~♪」

 2人は勇んでゲートを潜っていった。

 

 しばらくして2人は帰って来た。

「ど、どうでした?」

 不安げに尋ねるそはら。

 それに対して美香子は

「期待を裏切らない素晴らしい妄想っぷりだったわ、見月さ~ん♪」

 超ご機嫌な笑顔を見せていた。

「む、む、胸をあんな使い方するなんて信じられない。不潔よぉっ!」

 対するニンフは自分の胸に手を当てながら憤っていた。

「あの妄想通りになると、子供を9人も育てないといけないから桜井くんも大変ね~」

「ええっ!? 私、そんなに子沢山を望んでいるんですかぁ!? 智ちゃんの収入じゃ無理だよぉ」

 妙な所で悩み出すそはら。

「わ、私の子供4人の方が智樹の稼ぎ能力から考えてまだ現実的なんだから!」

 妙な所で対抗心を燃やすニンフ。

 ちなみに智樹と守形はニンフとそはらの妄想に関する会話を聞かれないように耳栓をされていた。

 

 

 

「それじゃあ次はイカロスちゃんね~♪」

 美香子の提案にコクリと頷くイカロス。

「それじゃあまた今回も男はなしか?」

「いいえ~今回は英くんも可よぉ~」

 尋ねる守形に美香子は許可を出した。

「ついでだから、これまで参加していない桜井くんもイカロスちゃんの妄想の中に入って見ましょうね~」

「何で俺が!? どうせ酷い目に遭うオチってわかってんだから嫌ですよ!」

 美香子の提案を激しく拒否する智樹。

「あらあらあら~? イカロスちゃんのマスターのくせに、彼女の心の内をわかってあげようとしないなんて~酷い男もいたものね~」

「グッ」

 美香子にそう言われると智樹も入らざるを得なかった。

 こうして、美香子、智樹、守形の3人でイカロスの妄想に入ることが決まった。

 

「へぇ~。ここがイカロスの妄想の中か……って、現実世界と何も変わらないな」

 智樹の目前に広がる風景。

 それはいつも通りの桜井家だった。

「中に入ってみれば何か違うのではないか?」

 守形がメガネを光らせながら桜井家へと入っていく。

 智樹と美香子も従って中へと入っていく。

 そして中に入って智樹が見たもの。

 それは……

「あらあらあら~♪ 裸エプロンの桜井くんを英くんが抱き締めてるわね~♪」

 台所で裸エプロン姿の智樹が後ろから激しく守形に抱き締められている姿だった。

「なんじゃそりゃぁああああああああぁっ!?」

 絶叫する智樹。

 だが、その叫び声は智樹に身に悲劇を引き起こすことになった。

「Mr.桜井。こんな所に隠れているなんて酷いじゃないか」

「やっ、やめろ。放せぇええええぇっ!」

 全裸の鳳凰院・キング・義経が智樹を羽交い絞めにする。

「サクライトモキよ。俺は退屈なんだ。楽しませろ」

「お前を楽しませる義理はないぃいいいぃっ!」

 更に全裸のシナプスのマスターが智樹の足を持つ。

 動きを封じられた智樹は2階へと運ばれていき、自室の中へと運び込まれていった。

 扉が固く閉ざされた。

 玄関先に飾られている牡丹の花がボトリと落ちた。

 智樹の悲鳴が聞こえた。

「帰りましょうか、英くん」

「ああ」

 そして2人は現実世界へと戻っていった。

 智樹を残して。

 

「あれ、智樹は?」

 帰って来たのは守形と美香子だけだったのでニンフは不思議に思った。

 そんなニンフに対して2人は首を横に振るだけだった。

「……マスターは、私の妄想の中で今も生き続けています。2人のマスター……ふふふふふ」

 イカロスはちょっとだけ楽しそうな表情を浮かべた。

「何言ってんの、アルファ?」

 ニンフには訳がわからなかった。

 

 

「それじゃあ最後は会長の番ね~♪」

 そして妄想ダイブゲームの最後を司ることになった美香子。

 だが……。

「俺はパスだ。美香子の妄想などどうせ血みどろのグチョグチョの地獄絵図世界に決まっているからな」

「えっ?」

 守形は美香子の妄想に入ることを拒否した。

「私もちょっと……その、血とかスプラッタとかは得意じゃないんで」

「ええっ?」

 そはらも申し訳なさそうな表情を見せながら拒否した。

「……平和が一番だとマスターは言っていました」

 頭を揺らしながらイカロスも拒否する。

「私も気乗りしないわね」

 そしてニンフもまた断った。

「これで満場一致の拒否に決まりだな」

 守形はそう結論を下した。

「ちょっ、ちょっと待って頂戴よ。会長の妄想が血みどろスプラッタだと決まったわけじゃ……」

 美香子は引き止めに掛かる。

 しかし……

「もうこんな時間か。俺は夕食の為の食料調達に忙しいのでこれで失礼するぞ」

「私も、今日はお買い物していかないといけないんだった」

「……私も一緒にいきます」

「私は録り貯めしている昼ドラを見なくちゃ」

 4人は美香子を振り返ることなく去っていった。

 

「6畳1間で英くんと2人で仲良く暮らしている私の妄想……みんなに知ってもらいたかったんだけどなぁ」

 

 美香子は寂しそうに窓の外を見上げた。

 

 イカロスの妄想の世界の住民となった智樹と、妄想の世界の毒キノコを食べてもう動くことがなくなったアストレアが優しい瞳で美香子を見守っていた。

 

 

 了

 

 


 
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