No.197002

バカとテストと召喚獣 僕と木下姉弟とベストフレンド決定戦 その1

nao様、tanaka様らの名作に触発されまして木下姉弟寄りの作品となっています。

完結しましたので他の話とあわせてご覧ください

http://www.tinami.com/view/197002  (僕と木下姉弟とベストフレンド決定戦 その1)

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2011-01-21 06:38:41 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:14346   閲覧ユーザー数:13257

総文字数9,900文字 原稿用紙表記32枚 

 

 

バカテスト 国語 

 

【第一問】

 

問 以下の意味を持つことわざ又は四文字熟語を答えなさい。

『(1)だれに対しても如才なく振る舞うこと。また、その人』

『(2)悪いことがあった上に更に悪いことが起きる喩え』

 

木下優子の答え

『(1)八方美人』

『(2)泣きっ面に蜂』

 

教師のコメント

 正解です。他にも(2)なら『踏んだり蹴ったり』や『弱り目に祟り目』などがあります。(1)はことわざに固執してしまうと答えが出てこないひっかけ問題だったのですが、流石はA組の生徒ですね。

 

 

木下秀吉の答え

『(1)家の外の姉上』

 

教師のコメント

家の中では違うのですか。

 

 

吉井明久の答え

『(2)秀吉のお姉さんがいつも下着を身に着けずに可愛い女子か幼い男の子を物色していることがみんなにばれるようなこと』

 

教師のコメント

人のプライバシーをむやみに晒してはいけません。

 

 

 

バカとテストと召喚獣 二次創作

僕と木下姉弟とベストフレンド決定戦 その1

 

 

「葉月はバカなお兄ちゃんのことが心配なのですっ!」

 放課後のFクラスの教室でまん丸い瞳を泣き出しそうに潤ませて葉月ちゃんが僕を心配している。小学生の女の子に本気で心配されている高校生の僕はちょっと格好が悪い。

 だけど葉月ちゃんの心配はもっともだ。だって、葉月ちゃんが急に抱きついてきて、僕の鳩尾に綺麗な頭突きを叩き込んでくれたんだもの。

 丁度急所に当たったみたいでまともに呼吸もできない。確かにちょっと、やばいかもしれない……。

「確かに明久の頭はもう完全に手遅れな状態だからな。チビッ子の心配も無理はない」

 なのに親友である筈の雄二は僕の傷口に塩を塗り込むような一言をくれる。やはりこいつは僕の敵。倒して屍を踏み越えなきゃいけない僕の敵だ!

「手遅れって言うなら、雄二ももういい加減に霧島さんとの結婚を認めれば良いのに。それとも、あっ、そう言えばこの間雄二はC組代表の小山さんと仲良さそうに喋っていたよね。霧島さんとの仲を認めない理由ってもしかしてそれなのかな?」

「明久っ、テメェッ!」

 雄二を倒すのは簡単。だって最強の守護神がいつも雄二の側にいてくれるのだから。

「…………雄二、小山と仲良さそうに喋っていたってどういうこと?」

「あれは試召戦争に関する話をしているんであってな、翔子の考えるような……ちょっ、やめろっ! うぎゃぁああああああぁっ!」

 守護神はスタンガンという正義の剣で悪を討ち、動かなくなった雄二を教室の外に連れ出してくれた。これで世界には再び平和が訪れた。訪れたわけなんだけど──

「そうじゃなくて、葉月は将来のお婿さんのバカなお兄ちゃんのことが心配なのですっ!」

 葉月ちゃんの心配は終わっていなかった。ツインテールの髪を振り回しながら事の重要性を訴えている。

 考えてみれば雄二が死のうが、霧島さんに惨殺されようが、浮気者として虐殺されようが葉月ちゃんには全く関係がない。

 雄二の死はそんな当たり前のことを僕に教えてくれた。

 ありがとう、雄二。君の死は何の価値もない無駄死にだったよ。

 しかし、葉月ちゃんの心配って一体何だろう?

「葉月……あんたっ、アキがお婿さんって!」

 葉月ちゃんの隣では、お姉さんである美波が驚いたように大きな声を上げた。トレードマークであるポニーテールの髪が振り回されている。その仕草、葉月ちゃんとそっくり。流石姉妹といった所。

 葉月ちゃんは今日元々、美波と一緒に買い物に行くべく僕たちの教室まで訪れてきた。一緒に買い物に行くだけあって2人の姉妹仲はとても良い。

 当然、美波も葉月ちゃんのことは大事にしている。姉としてまだ小学生である葉月ちゃんに僕が変なちょっかいを出したりしないか心配するのも当然のことだと思う。

 だからここは僕が美波を安心させてあげるべきだろう。

「美波、僕ほど揺るがない平常心を持って葉月ちゃんに接している人間なんて他にいないからね。だから何も心配いらないよ」

 紳士らしく真摯な瞳で優雅にかつ優しく葉月ちゃんの頭を撫でる。

「ぶ~ぶ~。バカなお兄ちゃんは葉月のお婿さんなんですから、平常心じゃなくてドキドキしてくれないとダメなのですっ」

 葉月ちゃんは不満そうに頬を膨らませた。でも、撫でられているのが気持ち良いのか、すぐに頬と瞳をトロンと緩ませた。子犬の頭を撫でているみたいだ。

「えっ? あっ、そうじゃなくて、葉月がアキのことを好きなのがウチにとっての大問題……じゃなくて、そうなのよ! その通りなのよ!」

 美波は一瞬口篭って何かを呟いたかと思うと今度は急に大きな声で怒り出した。

「アキが葉月に手を出したら、ウチは絶対に許さないんだからねっ!」

 そして言うが早いか、美波は僕の右腕を極めてきたぁっ!?

「だからっ、僕は葉月ちゃんに変なことをしたりしないってばっ! やめてぇっ、腕に関節がもう1つ増えちゃうからぁあああああぁっ!」

「今だって葉月の頭をやらしそうな目で撫でているじゃないの! 信用できるかぁっ!」

 美波はより一層の力を込めて僕の腕を折りに掛かってくる。

 やばいっ。好きな人がチンパンジーと言うだけあって、美波に紳士な態度を理解してもらえない。文化・文明の意味すらわかっているのか怪しい。ここは助けを求めるしかないっ!

「姫路さんっ、美波を止めさせてよ!」

 いくら未開の蛮族であっても、姫路さんが発する癒し系の母性なら美波にも通じる筈。あの見た目だけでも凄くよくわかる母性の塊体型に癒されるが良いさっ!

「明久くんは葉月ちゃんのことをいやらしい瞳で見ちゃう人、だったんですねぇ。うふふふふふふ~。明久くんが女の子に興味を持つのは良いことだと思いますけど、その相手が葉月ちゃんだと言うのは問題があると思います。うふふふふふふ~」

 ところが姫路さんの目は形容しがたい迫力に満ちており、笑っているばかりで助けてくれない。

「ちょっと、2人とも、どうしちゃったの? 僕が一体、何をしたって言うのさぁああぁっ!」

「問答無用ッ!」

「明久くんには反省が必要だと思いますッ!」

 次の瞬間、パキッと何かが折れる音がした。

 その音とともに意識が急速に霞んでいく。

 人を呪えば穴二つ。

 僕は色とりどりに咲き誇っているお花畑の中で雄二と再会し、握手して和解した。

 やっぱり、憎しみからは何も生まれないよね……。

 

 

 

 

「島田の妹よ。それで、一体何が心配だと言うのじゃ?」

 僕がお花畑の世界からようやく戻ってくると、みんなはごく普通に葉月ちゃんと会話を続けていた。

 みんなの薄情ぶりにちょっと悲しくなってくる。

 でも、今葉月ちゃんに話し掛けている秀吉は許す。だって可愛いから。

 秀吉の綺麗な顔を見ていると辛いことなんか全部吹き飛んじゃう。

 姫路さんも美波も可愛いけれど、Fクラスで一番の美人はやっぱり秀吉だと思う。

 秀吉の顔は最高だよ。ひゃっほ~。

「だから葉月は、将来のお婿さんであるバカなお兄ちゃんの交友関係が心配なんですっ!」

 葉月ちゃんの心配の内容がようやく具体的になってきた。

 けど、こーゆー関係って一体どーゆー関係のことなんだろう?

 お友達関係がまずいってことなのかな?

 でも、葉月ちゃんと恋人関係になるのはやっぱりまずいと思う。だって、僕には秀吉がいるから。秀吉の綺麗な顔が僕を魅了してやまないからっ!

 いや、そうじゃないだろ。今の問題は。落ち着くんだ、僕。

 だけどこーゆー関係って、だから一体何?

 う~ん……難しい。

「まあ確かに吉井くんは色んな女の子と仲良くしているから、将来のお嫁さんである葉月ちゃんとしては大変だよね~」

 いつの間にかF組に入って来ていたA組の工藤さんがウンウンと首を大きく振って葉月ちゃんに同意していた。悩みに同調している割に楽しそうに見えるのは目の錯覚だろうか?

「まったくなのです。将来行き遅れ決定のお姉ちゃんがバカなお兄ちゃんを襲ったりしないか葉月は気が気でないのです」

「何でウチが行き遅れ決定なのよ?」

 美波が葉月ちゃんの額をちょこんと突っつく。

 だけど、葉月ちゃんの言葉は正しいと思う。

 だって、どんなに愛し合っていても現在の法律では人間とチンパンジーは結婚できないのだから。まあ、それはそれとして、だ。

「葉月ちゃんは僕が他の女の子と仲良くなることを気にしているようだけど、そんな心配はいらないよ」

「えっ? どうしてですか?」

 葉月ちゃんの頭に手を乗せながら辺りをグルッと見回す。

 美波、姫路さん、霧島さん、工藤さん、秀吉という才色兼備な女性陣の顔が目に映る。

「だって僕には友達になってくれた女の子はここに何人もいるけれど、恋人になってくれそうな子は1人もいないもの」

 学校を代表する美人たちが友達というだけで僕は幸せだと思わなくちゃいけない。この中の1人が僕の彼女になってくれたら気分は最高だと思う。けれども、それは高望みし過ぎだろう。

 僕にだって夢と現実を判断する力くらいはある。最低学力のFクラスの生徒とはいえ、それぐらいの分別はある。

「アキ……何でそんなに諦めだけ潔いのよ……」

「私……明久くんへのアプローチの方法を間違ってしまったのでしょうか?」

 あれっ? 姫路さんと美波が落ち込んでいる。一体、どうしたのだろう?

「……吉井相手にこれぐらいでめげていてはダメ。ネバーギブアップ」

「まあまあ、今の言葉で吉井くんにはまだ彼女がいないことが判明したんだから2人とも落ち込まないで」

「どうして明久はわしの顔を見たのじゃ? わしは男じゃと言うのに……」

 う~ん。女の子の考えることはやっぱり僕にはよく理解できない。

 特にこの中で一番女の子らしい秀吉の考えることは一番わからない。文月学園に入学してもう1年半以上が経つというのに、何でまだ男だと言い張っているのだろう?

 実は女の子だってことはもうみんなにバレバレなのに。

 

「つまり、話を要約すると、島田さんの妹さんは不順な異性交遊ではなく、男同士の友情をもっと深めさせたい。そう言いたいのだね?」

「久保くん、いつの間に?」

 気が付くと隣に学年次席の久保利光くんがメガネを光らせながら立っていた。

 久保くんは何故かとっても嬉しそうに見えた。

「さあ、吉井くん。島田さんの妹さんの望み通り僕と男同士の友情を深めようじゃないかぁ~っ!」

 興奮した久保くんが僕の両手を握ってくる。

「ちょっと、久保くん? そんな風に強く握って来なくたって僕たちは友達だってば!」

「僕を友達だと言ってくれるのかい? 嬉しいよ。ありがとう、吉井く~ん」

 久保くんの鼻息がますます荒くなって、四角いメガネのレンズが曇っている。

 久保くんは、基本的には真面目な性格の学生だ。

 だけど時々こうして今みたいに僕にふざけた感じで絡んでくることがある。そのギャップが面白い人だと思う。

「明久、お前、墓穴を掘ったな」

「久保に悪気はないんじゃがな……」

 そして僕が久保くんにじゃれられていると、決まって雄二や秀吉が辛そうな表情をしながら顔を逸らす。何でだろう?

「…………久保×明久は、雄二×明久に及ばないものの需要はある。シャッターチャンス」

 そしていつの間にか全身黒尽くめの服装になって僕たちにカメラを向けてくるムッツリーニこと土屋康太。

「ねえ、ムッツリーニ。今、君はものすごくおかしなことを言わなかった?」

 久保×明久とか雄二×明久とか。         ………………僕は、受けなんかじゃないっ!

「…………話し掛けるな。今、忙しい」

 プロの仕事人であるムッツリーニは黙々と写真を撮り続ける。

 だけど、僕と久保くんのツーショットなんて誰が一体欲しがると言うのだろう?

「ああぁあぁ~。明久くんは受けでいる瞬間が一番映えるのは確かなんです。でも、でも、でもぉ~、明久くんの相手にはやっぱり私が……」

「ウチ、今月のお小遣い足りるかしら? って、そうじゃなくて、アキはウチとのツーショットを撮られるべきなのよ……」

 何を言っているのかよくは聞こえないけれど、姫路さんと美波が頭を抱えながらしゃがみ込んでいた。

 きっとムッツリーニが変なことを言ったせいで、僕たちのことを誤解して嫌悪感を抱いたに違いない。

 まったく、僕と久保くんは普通の友達だというのにムッツリーニってば余計なことを言ってくれて。本当に困ったものだ。

 

 

 

 久保くんのおふざけに対して周囲の友人たちが変な反応を示す中で、1人眉に皺を寄せて真面目に考えごとをしているのが葉月ちゃんだった。

「う~ん。確かにバカなお兄ちゃんのお友達は男の人の方が好ましいのは確かなのです。でも、バカなお兄ちゃんに恋をしないのなら女の人が友達でも別に葉月は構わないのです」

「へぇ~、葉月ちゃんは理解のある度量の広い女なんだね~」

 工藤さんが葉月ちゃんに拍手を送る。

「葉月は、他の女と一緒にいるのを見ただけで嫉妬するような心が狭量すぎる女は、男の人を却ってダメにしてしまうと思うのです」

「おぉ~本当に凄いねぇ、葉月ちゃん」

 工藤さんの拍手が更に大きなものになった。

 確かに工藤さんの言う通り、葉月ちゃんは凄い。何か葉月ちゃんが僕たちの中で一番立派な考え方をしているんじゃないかって思う。

「だって、だって仕方ないじゃないですか。明久くんの気持ち、私はまだ聞かされていないんですから。綺麗な女の人と一緒にいるのを見ると不安になっちゃうんですよ……」

「ウチだって、ウチだって、アキがはっきりしてくれれば、こんな怒りっぽくならなくて済むのに……」

 頭を抱えていた姫路さんと美波が今度は畳に手をついてガックリとうな垂れた。一体2人とも、さっきから何をそんなに落ち込んでいるのだろう?

「いいぞチビッ子。この狭量すぎて俺の人生をダメにしようとする翔子にもっと言ってやってくれ」

 そして再び死亡フラグを率先して立てるバカな男が1人。

「…………私のは嫉妬じゃなくて、お痛をした飼い犬に対する罰だから。雄二、ちょっとこっちに来て」

「何故だぁあああぁっ!? 俺はおかしなことは言っていない筈だぁあああぁっ!」

 首根っこを掴まれて引きずられながら教室を出て行く雄二を冷たい瞳で見る。

 あんなに霧島さんに愛されているのに、それがわからない雄二には罰が当たった方が良い。女の子の気持ちに鈍感というのはそれだけで大きな罪だと僕は思う。

 教室の外から断末魔の叫び声が聞こえてきたけれど、雄二の自業自得としか言いようがない。

 まあ、そんな無価値なバカの死よりも今は葉月ちゃんの悩みだ。

「だけど葉月は、恋愛と友情は区分しないとダメだと思うのです。昨日見たドラマによれば、浮気が発覚した場合、葉月はバカなお兄ちゃんと浮気相手を洗っていない折れた割り箸で鋭く抉り込むように刺さないといけないのです。それが女の正しい愛と言っていたのですっ」

「人を刺すのは正しい愛じゃないよね!?」

 TV局は小学生になんてドラマを見せるんだ!

「折れた割り箸にマスタードを塗ると、明久への攻撃力が増すぞ」

「地味に痛さが増す方法を教えるのやめてよ、雄二っ!」

 チッ。まだ生きていたとは。

 霧島さんも一思いに葬ってくれれば良いのに。

「しかし、島田の妹の話通りとなれば、姫路も島田もこの先大変じゃの~」

 秀吉が同情するような視線で姫路さんと美波を見る。でも何でここで2人の名前が出てくるのだろう?

 今ここで、一番危機を迎えている人物と言えば──

「何をのん気なことを言っているんだい? 今後葉月ちゃんに一番刺される可能性が高いのは君じゃないか、秀吉っ!」

 秀吉の手を硬く握る。

「だって、僕は秀吉一筋だもの。心配するに決まっているじゃないか!」

「なっ、何を言っているのじゃ、明久はっ!?」

 秀吉は僕の言葉を聞いて驚いている。

 でも、これで良い。

 気になる女の子にはこれぐらいあからさまにポイントを稼ぎにいった方が良い。

僕が今プレイしているギャルゲーだと、意中のヒロインに対してはこれぐらい積極的に行かないとイベントが発生しない。

「やっぱり明久くんは……」

「ウチらより、木下の方が良いって訳ね……」

 姫路さんと美波が今度は体を激しく揺らし出した。本当、どうなっているんだろう?

「大体、わしは、男、なのじゃぞっ!」

「はっはっは。何をバカなことを。秀吉が男なわけがないじゃないか」

 秀吉の場合、ご両親(つまり将来の僕のお義父さん、お義母さん)が性別を間違って役所に登録してしまったに違いない。

 もしくは、秀吉のご両親が男の子を欲しがってわざと男として登録したのかもしれない。

 そう仮定してみると秀吉が時代掛かった変な口調で喋っているのも説明が付く。

 うん、我ながら完璧な論理展開だと思う。

「それに仮に、百歩、いや1万歩譲って秀吉が男だったと仮定してみてもだ」

「いや、1万歩譲らなくてもわしは男じゃ」

 こんな風に強情を張る秀吉も可愛いと思う。

「仮に、秀吉が男だったとしても……それが何だって言うんだいっ? 愛に性別や年の差なんて関係ないさっ!」

 僕の秀吉への愛は、性別や年の差なんかで揺るぎはしない。

「なっ、何を言っておるのじゃ、明久はっ!」

 秀吉の頬に赤みが差した。

 この反応、もしかすると秀吉ルートのフラグが立ったんじゃ?

 よっしゃぁあああああぁっ!

「素晴らしい考えだよ、吉井くんっ!」

 感極まった声を出しながら久保くんが背中から抱きついてきた。

「素晴らしい考えなのです、バカなお兄ちゃんっ!」

 同じように感極まった声を出しながら葉月ちゃんが正面から鳩尾に向かって飛び込んできた。

 さっきと同じぐらい痛かった。けど、僕は倒れなかった。

「ありがとう、2人とも。僕の考え方に賛同してくれて嬉しいよっ!」

 嬉しくて葉月ちゃんを正面からギュッと抱きしめる。

 いつもバカだ、バカだとみんなにバカにされ続けていた僕。そんな僕の言葉に2人の賛同者が得られたのだから嬉しくない訳がない。

「これで葉月とバカなお兄ちゃんの間の愛の障害は何もなくなったのです」

「これで僕と吉井くんの間の愛の障害は何もなくなったよ」

 2人とも同時に何かを叫んだのだけど、声が混ざってしまって何と言ったのかよく聞こえなかった。

「ようやくアキを思いっきり殴れる良い口実ができたわね、瑞希」

 代わりにはっきり聞こえたのは美波の声だった。

「そうですね~。小学生の女の子に自分から抱きついちゃうような犯罪者さんにはキツいお仕置きが必要ですよね、美波ちゃん?」

 そして美波の言葉に呼応する姫路さんの声がはっきり聞こえた。

「あの、2人とも、ちょっと落ち着いて、冷静に話し合おうね……」

 僕はようやく自分の体勢のまずさに気付いた。そして怒った2人にはもう何を言っても通じないだろうということも同時に気付いた。

 こうなってしまったら僕にできることは1つ。

「雄二~っ。この間借りた女教師物のエロ本10冊、明日返すことにするよ」

「明久っ、テメエッ、何故今その話をするっ!?」

 あっちの世界への道連れを増やすことだけだった。

「……やっぱり、雄二は年上趣味が……許さない!」

 折れた割り箸にマスタードとわさびを塗りたくって雄二に近づいていく霧島さんを見て一安心する。

 それから僕と雄二は色とりどりに咲き誇っているお花畑の中で美人の女教師はメガネを掛けているべきかどうかを真剣に語り合った。

 

 

「島田の妹よ。それで、結局明久をどうしたいと言うのじゃ?」

 お花畑から戻ってくると、やっぱりみんなはごく自然に葉月ちゃんと会話を続けていた。

 ……別に悲しくなんてないさ。だって、秀吉の綺麗な顔が見られるんだもん。

「そこが難しい所なのです。葉月はバカなお兄ちゃんの交友関係を狭めるような真似はしたくないのです。でも、浮気はとても心配なのですっ。それに葉月は学校が違うのでバカなお兄ちゃんの情報も集まらないのです……」

「複雑な悩みなのじゃな」

 ウンウンと頷いてみせる秀吉。

 いつの間にか話は僕の浮気防止対策になっていた。

 別に僕は葉月ちゃんとお付き合いしているわけじゃないのにのだ。それに、もしそんな展開になれば僕は即座に美波に殺されてしまうから対策を講じる必要性は結局少しもないのにだ。

 でも、この流れでそんなことを言えば葉月ちゃんは悲しみ、僕は空気が読めない男のレッテルを張られ、やっぱり怒った美波に惨殺されるだろう。

 僕にはそんな雄二みたいなバカな真似はできない。

「つまり、明久の人間関係を管理するマネージャーが必要というわけだな」

 その雄二は自信満々な声で空気の読めないことを言い出した。雄二も意外と早くお花畑の世界から戻って来ていたらしい。

 しかしあの目、あの声、あの態度。間違いなく悪いことを企んでいる時のものだ。

 一刻も早く止めないと厄介なことになる。主に僕がっ!

「そうなのですっ! 葉月は友情は推奨するけど恋愛は遮断してくれるマネージャーさんのような人が、バカなお兄ちゃんには必要だと思っていたに違いないのですっ」

 いけないっ! 葉月ちゃんが悪い大人の口車に乗せ始められた。一刻も早く、このいたいけな少女を保護しなくては。

「しかし雄二よ、マネージャーという言葉にはちと違和感を覚えるのじゃが?」

「そうだね。マネージメントと言ってしまうと管理の色彩が強すぎると思うよ」

 秀吉と久保くんまで雄二の話に乗り始めてしまった。これはまずい。早く、手を打たないと。

「だったらベストフレンドにすれば良いさ。それなら明久の友人であり、恋人にはならず、人間関係に干渉しても不思議ではなくなる。チビッ子の望みは全て叶う」

「ベストフレンドのぉ。それなら確かに問題なしじゃな」

「実に良いアイディアだと思うよ、坂本くん」

「葉月は大満足なのですっ」

 手をこまねいている内に秀吉と久保くんと葉月ちゃんが賛同してしまった。

 だけど、B組の根本くん以上に悪巧みが好きで好きで堪らない雄二が善意やちょっとした思い付きの提案なんかするわけがない。絶対に何か裏がある筈だ。

「チビッ子たちの賛同も得られた所で、それでは誰が明久のベストフレンドになるか、だが」

 雄二はニヤリと意地悪く笑いながら僕たちの顔を一人一人見回していく。この顔、100%悪いことを企んでいる時の顔だ。

「あの、坂本くん?」

「なんだ、姫路?」

 おおっ、もしかして姫路さんが雄二の陰謀を止めてくれるのかなっ?

「ベストフレンドって、恋人……ではないんですよね?」

「ああ。あくまでも最高のお友達だから恋人ではないな。友達と恋人の境をどこに置くかは人によって異なるだろうが」

「そう、ですか……」

 あれっ? 姫路さんは特に何か文句をつけるでもなくすごすごと引き下がってしまった。

「つまり、ベストフレンドになってしまうと明久くんの恋人の座は諦めたことになってしまいかねないんですね……」

 姫路さんは下を向いてぶつぶつと何かを呟いている。

「アキのベストフレンドになると、何か良いことでもあるって言うの?」

 そして美波が代わって雄二に質問する。

「確かに島田の言うことはもっともだ。観察処分者というこの学園始まって以来のバカの一番の友人をわざわざ引き受けるのなら、何か相応の見返りがないとやってられないな」

「その言い草、僕に凄く失礼だよね?」

 僕の友達になるってそんな不憫なことなの?

「だったら、こういうのはどうだ? 明久のベストフレンドになった者は1日だけ明久を自由にこき使うことができる。どんな無理難題も命令し放題ってのは?」

 雄二の狙いはそれかぁ~っ!

「それっ、友達じゃないよね? 下僕とか奴隷とかそういう類の関係だよねっ?」

「「「「「「「おぉ~っ!」」」」」」」

 だが、僕の訴えも虚しくみんなは雄二の話に賛同してしまった。各自が自分の願望を大きな声で喋りだす。

「ふむ。ベストフレンドということなら男であるわしがなっても何の問題もあるまい」

「吉井くんに1日命令し放題なんて、まるで夢のようだよっ!」

「…………アキちゃんになってもらって写真撮り放題。ムッツリ商会は安泰」

「明久くんの恋人の座は諦めたくないけれど、1日命令し放題権は魅力的すぎます……」

「目先の甘美な幸せか、長期的プランの希望か。悩むわよねえ……」

「いやぁ、みんな自分の欲望に忠実だねぇ」

「……私は、雄二のお嫁さんだから別に関心ない」

「葉月はバカなお兄ちゃんのお嫁さんですから、お友達には寛大なのですっ」

 とてもうるさくて誰が何を言っているのか全然わからない。工藤さんと霧島さんは割りと落ち着いているようだけど。

 

「いくら放課後だからって、ちょっと静かになさいよ、Fクラスッ!」

 そして喧騒が頭にきたのか、教室の扉が開いて他クラスの生徒が乗り込んできた。

 乗り込んできたその女子生徒の顔に僕はよく見覚えがあった。

「秀吉の……お姉さん?」

 ちょっとキツい目付きだけど秀吉と瓜二つの美人顔。女子の制服を着たその人は秀吉の双子のお姉さん、木下優子さんで間違いなかった。

 

 

続く

 

 


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