No.433252

俺妹 あやせたん通い妻る後編

修羅場ります。ええ。以上。

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2012-06-06 00:03:52 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:5513   閲覧ユーザー数:5221

あやせたん通い妻る後編

 

 

 わたしは独り暮らしをしている筈のお兄さんの元を訪ねました。

 インターホンを鳴らしたら出てきたのはお兄さんではなく綺麗な女の人でした。

 しかもその人は「おかえりなさい、京介」と言ったのです。女性がお兄さんと親しい関係にあるのは明らかでした。

 それでわたしはショックを受けていたのですが、その女性に手を引っ張られて部屋の中へと招き入れられたのです。

 果たしてこの黒いゴスロリファッションにエプロンを付けた女性は一体どなたなのでしょうか?

 

 

 

 

「お邪魔します」

 緊張しながらお兄さんの部屋の中へと入っていきます。

 部屋は8~9畳ほどの大きさでフローリング。バス、トイレ、キッチン付き。ごく標準的なワンルームの間取りのようですね。

 で、肝心の内装ですが……家具は申し訳程度のようです。備え付けの収納が見える以外はテーブルと参考者が詰まった小さな本棚があるぐらいです。ベッドが見えないので寝ているのは布団のようです。そしてテレビもなく如何にも受験生のお部屋って感じがします。家電製品は炊飯器と電子レンジ、小さな冷蔵庫が見えます。

 総じて言えば、化粧台もないこの部屋は男の人の独り暮らしであることがよく見えます。

 でも、綺麗に畳まれている洗濯物、整理されたゴミ、磨かれているキッチンを見ると、そこに女の人の影が見えます。

 というか目の前の女性がお兄さんの部屋を片付けているに違いありません。洗濯物の畳み方、お掃除の仕方を見るにこの人は普段から家事をやり慣れているのがわかります。

 つまり……普段からお兄さんのお世話をしているということでしょうか?

 もしかして、2人は同棲中?

「そ、そんなあ……」

 悲しみと落ち込みがわたしを包み込んでいきます。

 軽く、死んでしまいたいです。

 

「綺麗な座布団もない部屋で悪いけど、そこに座って」

 女性は青い座布団を目で指しながら座ることを勧めてきました。

「ありがとう、ございます」

 気が抜けているのを自覚しながら座布団に腰掛けます。勿論正座でです。新垣家の娘たる者粗相のある座り方など出来るはずがありません。

 わたしが座ったのを見届けてから女の人もテーブルを挟んで正座で腰掛けました。フローリングに直に。

 あれっ?

 そう言えばこの部屋、座布団が1つしかないみたいです。座布団だけじゃありません。

コップや食器も1つずつです。生活用品のどこにも女っぽさを感じさせる道具がありません。

「ということは……この女の人とお兄さんは同棲している訳じゃないんですね」

 ちょっとだけホッとしました。

 でも、この女性がお兄さん不在の部屋で身の回りのお世話をしているのが自然な関係であることは間違いありません。

 やっぱり、恋人なのでしょうか?

 でも、お兄さんに新しい恋人が出来たなんて話はお姉さんからも聞いていません。

 一体、この人は誰なのでしょうか?

 探りを入れてみたいと思います。

 

「あの、わたしは新垣あやせと申します」

 自己紹介を入れることでジャブを放ってみます・

「知ってるわ」

 素っ気なく返されてしまいました。

 でも、負けません。

「あの、お名前を教えて頂けませんか?」

 切り込みます。

 女性は少しだけ眉間にシワを寄せながら答えました。

「五更瑠璃。貴方のお友達は黒猫と呼んでいるわ」

「黒猫さん、ですか?」

 頭に何かモヤが掛かったような気分です。

 黒猫という名前に聞き覚えがあります。でも、それはどこでだったでしょうか?

 桐乃じゃなかった気がします。お兄さんでもなかった気がします。

 いったい誰の口から黒猫という名前を聞いたんでしたっけ?

 まあ、その疑問は後回しにしましょう。

 今は本題を尋ねるべき時です。

 一度大きく息を呑んでから黒猫さんに尋ねました。

「それで、その……黒猫さんは、お兄さん……京介さんとはどういう関係なのですか?」

 訊いてからしまったと思いました。あまりにもストレートに尋ね過ぎました。

 これで「恋人同士よ」とか、「男女の深い仲よ」とか、「結婚を約束した仲よ」とか言われたらわたしの人格は崩壊しかねません。

 でも、後悔先に立たず。黒猫さんは答えを提示してしまったのです。

「私は京介の恋人よ」

 その答えを聞いて私の目の前は突然真っ暗になりました。

「そ、そうですか……」

 予想していた答えとはいえ、キツ過ぎです。

 帰って塞ぎ込もう。そう思って立ち上がろうとしました。

「もっとも、頭に元が付く彼女だけどね」

 黒猫さんは少しつらそうに天井を見上げました。

 でも、わたしにとってその言葉は光がパッと差し込んだ思いがするものでした。

「元彼女ってことは……今は付き合っていないのですか?」

 黒猫さんは小さく息を吐き出しました。

「夏の終わりに別れてからまだ復縁はしてないわね」

 それを聞いた瞬間にわたしの脳は急激な活性化を始めました。

 思考が明晰になり、次々と考えが浮かんできます。

 そして、考えが浮かんでくるのに連れて、攻撃的な感情が段々強くなってきたのです。

 お兄さんはフリー。

 つまり、まだわたしは負けたわけではないのですっ!

 その事象が凄く嬉しくてわたしを興奮させていったのでした。

 

 

 

「黒猫さんのお名前をどこで聞いたのかようやく思い出しました」

 攻撃的になるほどに脳が鮮明になっていきます。

 ようやく全てが繋がりました。

 この人はお兄さんの元彼女の黒猫さん。

 お兄さんを家に招いた時に存在を知らされた“超可愛い俺の彼女”。

 わたしに大きな絶望と屈辱を与えた女の人。

 超えるべき壁。超えるべきだった存在。

 そしてその名前をわたしは田村麻奈実お姉さんから聞いたことがあったのでした。

 お兄さんも桐乃も黒猫さんのことは何も話してくれませんでしたから。

 ああ、もう。全てが繋がりました。

 この人、わたしの敵です。

 わたしにとって本当に超えなければならない敵。桐乃のようにただ憧れていれば良かった存在とは違います。

 勝たなきゃいけない相手。絶対に負けられない相手。

 そう。この人はライバルなんですっ!

 

「何で、別れた彼女さんがお兄さんの家にいるんですか?」

 驚くほど自然に攻撃的な言葉が出てきました。

 でも、それも仕方ないと思います。

 だってこの人はお兄さんを振ったんです。

 お兄さんを悲しませたんです。

 だからここにいちゃいけない人なんです。そんな資格はない人なんです。

「別れたからと言って京介に会いに来てはいけないという法律はないでしょ?」

 黒猫さんは涼しげに答えてみせます。

 その態度がまたカチンときます。

 お兄さんを捨てた癖に。お兄さんを捨てた癖に。お兄さんを捨てた癖にっ!

 そのお兄さんに簡単に捨てられたわたしの気持ちなんか少しもわからない癖にっ!

「お兄さんを捨てたんだから、嫌いになって別れたんじゃないんですか?」

「別に、嫌ってなんかないわよ。私は今でも京介を愛しているわ。この現世で一番ね」

 黒猫さんはまたサラっと述べました。

 愛しているなんて簡単に口に出したのです。

 その一言を認められなくてわたしはずっとずっと苦しんでいるというのにっ!

 この人、本当に腹立たしいっ!

「だったらっ! だったらどうして別れたんですかっ!?」

 アパートの室内であるのにも関わらず大声を出していました。

 でも、叫ばずにいられませんでした。

 苛立ちが、抑えきれませんでした。

「色々あったのよ」

「色々って何ですかっ!」

「そうね。我ながらとても稚拙なことだったわ。夏の終わりの自分に今会えたら呪い殺したくなるぐらいに稚拙なこと」

 黒猫さんは目を閉じて静かに答えました。

 その大人で余裕な態度がまたわたしの苛立ちを掻き立てます。

 まるでわたしは子供だと遠巻きに言われているみたいで。確かに高校生から見れば中学生は子供なのかもしれません。でも、でもですっ!

「2人の間に何があったのかは知りません。でも、黒猫さんはお兄さんを振ったじゃないですかっ! 何でその人がまだこの場所に居るんですか!」

「私がこの場所にいるのは、私と京介の間の問題でしょ? 貴方にとやかく言われる筋合いの問題ではないわ」

 黒猫さんは遂にムッとした表情を見せました。わたしの言葉が彼女を揺り動かしたのです。

 でもそれはわたしの心を高揚させることではありませんでした。

 黒猫さんとお兄さんが2人だけの世界を構築していることを語られるのが悔しくて。凄く、凄く嫌な感じに全身包まれています。

 この人、わたしなんて相手にしてないって様をありありと見せ付けられている感じで。

「とにかく、黒猫さんがここにいることをわたしは認めませんっ!」

 わたし、今、凄くこの人に嫉妬しています。

 わたしがどんなに望んでも手に入れられないものを手に入れて、しかもあっさりと手放してしまった黒猫さんに。

 

「さっきから大人しく聞いていてあげれば、随分好き勝手言ってくれるわね」

 黒猫さんがキツイ瞳でわたしを睨んできました。

「ウッ!」

 怒りモードから反転。思わず上半身ごと引いてしまいました。

 それぐらい険しく苛立ちを含んだ瞳でした。

 それは人を睨むことに慣れた瞳でした。人を疑うこと、憎むことに慣れた瞳。

 もしかするとわたしは大きな勘違いをしていたのかもしれません。

 あのお兄さんと付き合うような人だから、動じたり怒ったりしない菩薩のような方だと勝手に思っていました。でも、多分、この人は……。

「大体、私の行動に散々文句を付けてくれる貴方は一体何なの? 貴方こそ何でここにいるの?」

 黒猫さんはとても挑発的な瞳を向けてきました。

 やっぱりこの人、元々攻撃性に長けた人なんです。しまったと思った時にはもう遅かったのでした。

「私と京介は恋人同士だった仲なのよ。お互いの私生活にも心の内にも深く入り込んでいた間柄なの。それに比べて貴方は何? 新垣さんは京介にとって妹の友達ってだけの仲でしょ。行くのなら桐乃の所に行けば良いじゃない!」

 言葉のマシンガンが放たれてきました。

 お兄さんの恋人になるぐらいだし、お姉さんもとても可愛い子と言っていたので油断していました。この人、口喧嘩に慣れている。しかも、口撃することを楽しんでいる。

「しかもその買い物袋は何? 最近の中学生は友達の兄に食事を振舞うことが流行っているとでもいうの? もし私が来ていなかったら貴方は独り暮らししている友達の兄の部屋に1人で上がる気だったの?」

 止まらない言葉の連続。

 その1つ1つが的確でわたしの胸を打ちます。

 確かにわたしの行動は第三者に説明するのは難しいものです。というかわたし自身も自分の行動の意味をよく把握していません。

 でも把握できない原因なら知っています。

 わたしはわたしの心の内を認めることがとても難しい人間だからです。

わたしは幼い頃から県議会議員の父、PTA会長の母の下、理性や合理性といった言葉を追い求めて来ました。もっと簡単に言えば立派な人間になることを追及して来ました。

 でも、桐乃との葛藤、お兄さんとの葛藤はわたしをそれとは違う世界へと引っ張っていったのです。そしてわたしはその世界を否定しながらも同時に居心地の良さを感じてしまっているのです。

 この半年ほどのわたしは特に不安定な心の均衡の中で生きている。それを強く感じます。

「では改めて聞くわ。私の非道徳性を非難する貴方は一体何者なの? 新垣あやせさん」

 黒猫さんがとても鋭くわたしを抉ってきます。

「そ、それは……その……」

 唾を飲み込みます。

 どうやら、わたしも自分についてもっと深く考えないといけない時が来たようです。

 自分の願望を認めないといけない時期が。

 隣に置いてあるスーパーの袋を見ながら強くそれを感じました。

 もう、逃げられない所まで来てしまったのかもしれません。

 それはお兄さんではなく、お兄さんの元彼女によってもたらされたのでした。

 

 

「そうですね。わたしがお兄さんとどういう関係なのか、まだ話していませんでしたよね」

 大きく息を吸い込みます。

 覚悟を決めろ。もう自分にだけ都合の良い言い訳を並べて逃げていれば良い時じゃない。

 そう自分に言い聞かせます。

 そしてわたしはお兄さん本人の前では言えない回答を黒猫さんに放り投げました。

「わたしはお兄さんの恋人ですよ」

「何ですってっ!?」

 黒猫さんの余裕の表情が崩れました。

 目を大きく見開き、顔から一気に血の気が引いていくのが見て取れました。

 ざまあみろ。

 そう強く思いました。

「もっとも、頭に未来のが付く彼女ですけどね」

 鼻を鳴らして黒猫さんを見ます。

 言ってやりました。わたしの未来日記を。

「中学生の小娘の分際でなかなか生意気言ってくれるじゃないの」

 黒猫さんが更にキツイ瞳で睨んできます。こめかみがピクピクと動いています。頭に血が再び巡り始めたようで急激に赤く染まっていきます。怒っているのは明白でした。

 だけど今度はその視線のキツさが心地よく感じます。

 わたしは認めちゃいましたから、もう黒猫さんの口撃が怖くありません。

 お兄さんの彼女になるのはこのわたし、新垣あやせなんです。

 誰にも、その地位を譲ってなるものですかっ!

 わたしはお兄さんの彼女になる。

 その願望を認めただけでわたしの心は今までとは比べ物にならないぐらいに軽やかになったのでした。

 

「そうは言われましても、お兄さんはその中学生の小娘の顔が大好きで会う度に狂喜乱舞しますからねえ。お兄さんにはよくラブリー・マイ・エンジェルって言われてますし」

 黒猫さんに向けて含み笑いを発します。

「外見だけで京介が落とせると思わないことね」

 黒猫さんの人を呪い殺せそうな視線。でもそれさえも今は心地よく感じます。

「そうでしょうか? 男性が女性を選ぶ基準って何だかんだ言っても顔だと思いますよ。わたしがモデルをやっているのも、結局外見が可愛いと思われているからですもん」

 可愛くウインクして黒猫さんにわたしの自信を叩き付けてあげます。

「なっ!?」

 今までは意識して考えなかったこと、否定してきたことを認める。

 ただそれだけのことでわたしは強くなれます。

 わたしはこれまで立派な人間になる為に格好付けてばかりいました。だからそうでない自分を認めることがとても苦痛でした。

 でも、そんなことを言っていたらこの人には勝てません。

 わたしは黒猫さんに勝つ為に自分の持てる全力をぶつけたいと思います。

「お兄さんの世界で一番好みの顔をしているのはこのわたしです。わたしなら側にいるだけでお兄さんを幸せにできますよ」

 挑発的な流し目を鼻息と共に黒猫さんに送ります。

 お兄さんにとってどんな女も結局はわたしを満点にした引き算にしかならないのです。わたしが頂点です。それが、わたしの持つ最大の強みなんです。

 外見が利用できるならどこまでだってそれを利用してやるっ!

 

「わたしはお兄さんに出会い頭に何度もプロポーズされています。次されたら受けちゃおうかなとも思います。黒猫さんはプロポーズされたことはあるんですか?」

 絶対にこの人には負けたくない。その想いがわたしの心に炎を吹き上がらせます。

「なるほど、この女。あの高坂兄妹を追い詰めただけのことはあるわね。清純そうな顔をしてこんなに素直に敵意と憎悪をぶつけてくるなんて。とんだ曲者だわ」

 黒猫さんは激しく牙を剥くわたしに対して1歩も引きません。やっぱりこの人、打たれ慣れている。

 桐乃と喧嘩していた時とはまるで異なる感覚がわたしを包んでいます。

 本当に手ごわいライバルだ、この人は。

 分かりきったその事実を改めて再確認します。

「可愛い顔して毒舌極まりない黒猫さんには負けますよ」

 そしてわたしと黒猫さんは視線の火花を激しく散らしたのでした。

 

「じゃあもう1度わたしから聞くわ。貴方が何度もプロポーズされているのだとしても京介は私を選んでくれた。それって結局、貴方とは本気じゃないってことでしょ。ねっ、ラブリー・エンジェルさん」

 やっぱりこの人、桐乃とは全然違う。圧倒的に打たれ強い。攻撃されること、悪意をぶつけられることに相当慣れています。

 もしかすると普段から周囲の人と衝突ばかり繰り返している類の人なのかもしれません。

 でも、負けませんっ!

 大きく息を吸い込んで、それからよく澄み切った声で更なる爆弾発言を飛ばしました。

「黒猫さんはエッチの最中にお兄さんにわたしの名前を呼ばれたりしませんでしたか? お兄さん、いつもわたしに会うとテンションおかしくなって狂っちゃうぐらいですから」

「…………さあ、どうだったかしらね?」

 黒猫さんは僅かに目を逸らしながら答えました。

 もしかしてお兄さん、本当にそんなことをしたのでしょうか?

 桐乃が原因で別れた云々とお姉さんから聞きました。けれど、もしかすると本当の原因はやっぱりわたしなんでしょうか?

 まったく、お兄さんは本当に困った人ですね♪

「何を想像しているのかは知らないけれど、私と京介が親密に過ごしている時に貴方の名前が口から出たことはただの1度もないわよ。残念だったわね」

 黒猫さんは嗤ってみせました。

「まあ、そうだとしても関係ありません。これからお兄さんはわたしのことだけを見て、考えて、動いてくれればそれで良いです」

「恋人どころか告白したこともない分際で大きく出るわね」

「だって、お兄さんはわたしに弱いですから。わたしが好きですと言えば即カップル誕生に決まっているじゃないですか」

「貴方のその妄想は私と京介の仲には何の影響も及ぼさなかったわよね」

 再び睨み合う黒猫さんとわたし。

 一つだけはっきりしていることは、わたしも彼女も譲る気は全くないということです。

 夏のあの日からずっと気になっていた“お兄さんの超可愛い彼女”。

 黒猫さんはわたしが想像していたのとは異なる性格の女性でした。

 でも、わたしの予想より遥かにタフで強い女性なのは間違いありませんでした。

 この方なら今度こそはお兄さんを幸せにしてくれるかもしれません。でも、だからこそ絶対に負けるわけにはいきません。

 何故なら、お兄さんと一緒に幸せに至るのはこのわたし、新垣あやせだからです。

 認められる女性だからこそ、絶対に譲るわけにはいかないのですっ!

 

 

 

 わたしと黒猫さんの口論は留まることを知らずにヒートアップしていきます。

 でも、互いに譲れないものの為に争っているのですから仕方ありません。

「そう言えば貴方、スーパーの袋を持って来たけれど、一体何を作るつもりなの? 材料からではよくわからないのだけど」

 黒猫さんの目がわたしの買い物袋に向いています。

 凄く痛い所を突かれました。

「カレー……ですけど」

 先ほどまでと違い自信なく答えます。

「貴方は薄力粉とカラシとコーヒー牛乳でカレーを作るの? 色合いはともかく斬新な味になりそうね」

「うっ」

 やっぱり、揃えた材料に間違いがあったでしょうか?

 コーヒー牛乳とカラシを混ぜて薄力粉で少し固めればカレーのルーっぽい色と食感になると思ったのですが。

「どうやら貴方は桐乃並の料理の腕前の持ち主のようね」

「クぅッ」

 悔しいですが言い返せません。

 わたしと桐乃は調理実習で洗い物と試食以外任されない同士です。調理台に近付くと怒られるか気を使われて遠ざけられるかのどっちかです。

「ちなみに私は毎日家族の食事を用意しているわ。学校のお弁当も当然自分で作っているわよ」

 黒猫さんがドヤ顔を向けてきます。

「男って昔から単純だから結婚するなら家庭的な女性。中でも料理の上手な女の子が結局は一番好まれるわよね。ねっ、顔が綺麗な美人モデルさん?」

 この人、本当に性格悪いです。わたしを攻撃するほどに艶々していきます。

「どうでしょうね? わたしならモデルの収入で全食を外食や宅配で美味しいものを振舞うことが可能です。家庭の味に限定されて話をされてもわからないですね」

 黒猫さんが料理スキルで攻めて来るならわたしは収入能力で応戦するまでです。

「なら貴方はその財力を活かして最高級のカレーでもデリバリーしたら? その間に私は他のおかずを作ることにするわ。京介は一体どちらを喜ぶでしょうね?」

「黒猫さんはここでゆっくりと休んでいて下さい。今日はお兄さんの引越し祝いを兼ねてフルコースを注文しますから」

 黒の色彩が渋いクレジットカードを指に挟んで黒猫さんに見せます。

 プロモデルの本気、見せてあげますよ。

「京介は私の料理をいつも美味しい美味しいって言いながら食べてくれるのよ」

「家庭の味も良いかもしれませんが、プロの味はもっと良いものですよ」

 どうやらわたし、この人とはとことん相性が悪いようです。

 桐乃やお兄さんが今まで黒猫さんの存在をひた隠しにしてきた理由がよくわかりました。

 わたしたち、火種です。

「わたしは料理の腕で黒猫さんの足元にも及ばないことを認めた上で言います。今日はわたしがデリバリーでご馳走しますから黒猫さんは休んでいて下さい」

「私の財力は貴方の足元にも及ばないことを認めた上で言うわ。今日は私が作る。貴方が持って来た材料も有効活用してあげる。だから安心して休んでいなさい」

 同じ人を好きになって、まだどちらも恋人の座を射止めていない以上(黒猫さんは1度射止めていますが)、この人と仲良くなるのは難しいかもしれません。

 共通の敵でも現れない限り。

 

 

「ただいま~」

 声と共に扉がいきなり開かれました。

 『ただいま』という声から考えるとお兄さんが帰ってきたようです。

 でも、何か変です。

 『ただいま』と発した声は確かに女の子のものでした。そして、実際に入って来たのも小柄な女の子でした。

「加奈子っ!?」

「三次元メルルっ!?」

 わたしたちは大きな声を上げながら驚きました。

 だって、入って来たのは来栖加奈子だったのですから。

 

「アパートの中で大声出すなよな。隣室に迷惑だろうが」

 スーパーのビニール袋を台所に置きながら加奈子が注意して来ます。

「「ごめんなさい」」

 2人で肩を縮こまらせながら謝ります。

 一方で加奈子はわたしたちの謝罪を気にすることなくとても自然な仕草で冷蔵庫を開けて材料を中に詰めています。

「う~ん。今日の主役はカレーにするとして、サイドメニューはどうすっかなあ? 京介のヤツ、ちゃんと準備しておかないと野菜食わねえしなあ」

 加奈子は冷蔵庫を開けて睨めっこしながら夕食のメニューについて考えています。

「これ、一体どういうことなんですか? 何で加奈子がさも当然のようにこの家の食事のメニューを考えているんですか?」

 小声で黒猫さんに尋ねます。

「知らないわよ。私は松戸在住で毎日ここに来られるわけじゃないのだもの」

 黒猫さんはブスッとした表情で返答しました。

「よっし。とりあえずカレーの下ごしらえから始めるかぁ」

 制服の袖を巻くって野菜を洗い始める加奈子。

 淀みなく動くその様は彼女がここで料理を作ることに慣れていることを意味しています。

 黒猫さんと顔を見合わせました。頷きあうわたしたち。

 代表してわたしが聞いてみます。

「あの、加奈子はいつもここで料理を作っているの?」

「まあ、そうだな」

 加奈子は簡単に頷きました。

「だって京介ってばよ。あたしが毎日料理作ってやらねえとまともに飯も食わねえんだぜ。せめてコンビニ弁当ぐらい買って食えってのによ」

 加奈子はちょっと照れた表情を見せながら毎日この家に通い妻をしていることを認めました。

 ……お兄さんの独り暮らし情報を聞き出す際に殺しておけば良かった。心の底からそう思いました。

 

「貴方と京介はつっ、付き合っているの?」

 黒猫さんがわたしには見せなかった切羽詰った表情で加奈子に尋ねます。

 ……ライバルとしての地位はわたしよりも加奈子の方が高いのでしょうか?

「別に京介とはそういう仲じゃねえよ。まっ、アイツがそうなって欲しいと望むんなら、あたしは別になっても良いんだけどな」

 真顔でサラッと凄いこと言いやがりましたよ。何ですか、その余裕は?

加奈子の癖に。加奈子の癖に。加奈子の癖にっ!

「貴方は京介のことをどう思っているの?」

「好きじゃなきゃ毎日男の所に飯作りに来たりするかっての。あたしは京介のこと好きだぜ。生まれて初めて本気で好きになった男だ」

 加奈子は白い歯を見せてニカッと笑いました。

 何で加奈子の癖にこんなに格好良いんですか?

「それで、お兄さんは加奈子が食事作ってくれることに対して何て言っているの?」

「料理中は“別に俺が頼んでるわけじゃない”ってツンツンしてるぞ」

 礼儀知らずなお兄さんですね。

「でも食事中はさ、“加奈子の料理はすっげぇ美味い”って何度も誉めてくれるんだ。あんな風に誉められるとさ、明日もはりきって作ろうって気分になるんだ」

 加奈子は頬をポッと染めました。恋する乙女な表情をする加奈子を初めて見ました。

 そしてお兄さん……あなたは乙女ゲーのツンデレキャラですか。相変わらず無自覚にフラグ立てまくっているみたいですね。

 あの無自覚ジゴロはやっぱり一度お仕置きが必要ですね。まったく、何人女引っ掛ければ気が済むのでしょうね。

「ヤンデレ美人モデルだけでも頭が痛いっていうのに、三次元メルルまで私の敵として現れるなんてね。頭が痛いわよ」

 黒猫さんは大きな溜め息を吐き出しました。

 この分だと、お兄さんはまだ他にも女を囲っているんじゃないか。

 そんな予感がぷんぷんします。

 現にわたしもこうしてこの部屋に引き寄せられてしまったわけですし。

 そして嫌な予感は間もなく当たってしまうのでした。

 

 

 

「ただ待っているのも暇だから私も作るわ。サラダとスープ、それからちょっとした炒め物を担当するわ」

「おうっ。あたしはカレー作っているから好きに調理してくれ」

 黒猫さんは加奈子と共にお料理を始めました。

 2人とも凄く手際が良いです。料理慣れているのが傍目にもわかります。

「加奈子。料理上手だったんですねえ」

 加奈子の家の複雑な事情はちょっとだけ聞いています。

 お姉さんの所で鍛えたのかもしれません。

 そして今日その成果をわたしの前で存分に見せています。

「やっぱりお料理覚えないとダメですよね……」

 1人だけやることがなくて寂しいです。

 残念ながらクレジットカードはお料理をしてくれません。

「じゃあ、お掃除でも……って、お掃除もお洗濯ももう黒猫さんがやっちゃっているんですよね」

 することがありません。

 体育座りして待っているとかなりブルーです。

 お兄さん早く帰って来ないかなあと思います。

 2人が食事の支度をしている所で1人だけ座っていたら好感度が下がる気もしますが。

 

「ただいま~」

 そして待ち望んでいた瞬間が訪れました。

 ようやく、お兄さんが帰ってきたのです。……って、ちょっと待って下さい。

 また若い女性の声でしたよ、今のは。

 というか、この声は?

「よいしょっと」

 少しおばさん臭い声を出しながら部屋に入ってきた人物。それは──

「お姉さんっ!」

「べっ、ベルフェゴール!?」

「よっ、麻奈実姉」

「こんにちは~黒猫さん、加奈子ちゃん、あやせちゃん」

 田村麻奈実お姉さんでした。

 

「あっ、あっ、あの、お姉さんがどうしてここに?」

「今日もおうちからきょうちゃんたちと一緒に食べるお夕飯のおかずを持って来たんだよ~」

 そう言ってお姉さんはタッパを見せてくれました。

 お醤油の香りがします。

 お姉さんによく似合う和風な一品のようです。

「あ、あのっ、田村先輩はこの部屋でよく食事を採っているのですか?」

 黒猫さんがまさに顔面蒼白といった感じの血の気の引いた表情でお姉さんに尋ねます。

 気のせいか  お姉さん > 加奈子 > わたし のライバルランクが振られている気がします。

さっきまで互角の争いを演じていた筈なのに……。わたし、いつの間にかヤムチャですか?

「そうだね~。この家の夕飯で一番多いのはきょうちゃんと加奈子ちゃんとわたしの3人で食事するパターンかな~? 加奈子ちゃんともこの部屋で仲良しになったんだよ~」

「昨日も一昨日も3人だったよな。そしてほんと良い姉貴分だよ、麻奈実姉は」

 説明するお姉さんと同意する加奈子。

「わたしはきょうちゃんが実家を出てから一緒に食事する機会が増えて嬉しいかな~」

「あたしたちが付いていないとろくに飯も食わないからな。京介のヤツは」

 ぽわっぽわっとした空気が室内を満たしていきます。この癒しオーラこそはお姉さんの必殺技とでもいうべき力です。

 結局の所、男は女に顔でも才能でもなく癒しを求めている。そんな俗説を信じるならば最強の能力を有しているのは間違いなくお姉さんです。

 わたしまでのんびりまったりモードに染まってしまいそうです。でも、その癒しオーラに屈する訳にはいきません。

「たとえ相手がお姉さんでも、わたしは負けませんっ!」

 お姉さんの顔を見ると気力が削がれるので壁に向かって誓います。

「あの優柔不断男。独り暮らしを始めたとか言ってこの部屋をハーレムの巣窟にするつもりなのかしら?」

 黒猫さんがとても不機嫌な表情を浮かべています。

 そうです。お兄さんは受験勉強に専念する為にこの部屋に入った筈です。なのに女ばっかり囲ってどうしようというんですか!

 絶対、お仕置きです。

 

 一方で部屋全体はお姉さんの癒やし系オーラに包まれていきます。

「そう言えば3日前の夕食は賑やかで楽しかったね~」

「沙織も日向もいて5人で盛り上がったもんな」

 会話にまた知らない女の人の名前が出てきました。

「ひ、日向もこの部屋に来ているの!?」

 黒猫さんがとても驚いた表情を浮かべています。一体、どうしたのでしょうか?

「日向ちゃんは週に1度来るぐらいだけどね~。黒猫さんは聞いていないの?」

「あの子最近、学校のイベントに参加とか何とか言いながら夕飯を採らない日があるのよね。まさかここまでやって来たなんて想像もしなかったわ」

 黒猫さんはとても怒っています。

「はっはっは。妹にしてやられてんのな」

「笑い事じゃないわよ……」

 黒猫さんが大きな溜め息を吐きました。

 

 

「京介殿~茶菓子など持って受験勉強の応援に来たでござるよ~」

「高坂く~ん。あたしが美少女分を届けに来てあげたよ~」

 と、そこでまたまた扉が開きました。

 そしてグルグルメガネを掛けたお兄さんよりも背の高そうな大きな女性とランドセルを背負った女の子が入って来ました。

「おお~既にいらしていたのですな。麻奈実氏、加奈子氏、そして黒猫氏も。そして、そちらの方は初見ですな。拙者、きりりん氏と京介殿の友人で沙織・バジーナと申しまする。以降、お見知りおきを」

「はあ。これはご丁寧にありがとうございます。わたしは桐乃と京介お兄さんの友達の新垣あやせと申します」

 女性が6人と化した女の園に呆然としながら沙織さんに自己紹介します。

「なっ、何でルリ姉がここにいるのっ!?」

「それは私の方が言いたい台詞ね。日向は今、学校の行事に参加しているんじゃなかったかしら?」

「ひぃいいいいいいいいいぃっ!!」

 凄む黒猫さんに驚く日向ちゃん。どうやらこの2人、姉妹のようです。

 下は小学生の女の子から、180cmぐらいありそうな文字通り大きな女の人まで。

 本当にあの男、何人女囲えば気が済むのでしょうか?

 とんでもない人を好きになってしまった。

 それを改めて意識せざるを得ないのでした。

 

 

 

「はっはっは。1つの部屋の中にうら若き乙女が6人もいると華がありますなあ」

 床に座りながら沙織さんが楽しそうに笑います。

「そうだね~。華があるよね~」

 お茶を炒れたお姉さんが湯飲みをテーブルの上に置きながら沙織さんに同意します。

「いや、華があるっていうか、人口密度が高すぎると思うよ。この部屋……」

 お茶を受け取り、お菓子を食べながら日向ちゃんが冷や汗を垂らします。

「確かに8畳ほどの部屋に6人いるのは部屋が狭く感じますよね」

 わたしも日向ちゃんの意見に賛成です。

 やたら狭く感じるようになりました、この部屋。

 というか、ここにいる全員がお兄さんに惹かれてやって来た女性であることが大きな問題です。

「ここにいる子はみんなきょうちゃんのことが大好きな女の子たちだもんね~。お互いが気になっちゃうのは仕方ないよね~」

 何でそんなことを明るく言えるんでしょうか、お姉さんは?

「いやいやいや。我らは京介殿を好きな者同士。同じ志を持った通い妻戦隊の仲間ではござらんか。仲良くするのが吉でござるよ」

 お姉さんと沙織さんはわたしとはまるで違う価値観で生きている人なのかもしれません。

 絶対に相容れないと思っていた黒猫さんとの方が感覚的な親近感を抱けます。

「みんなでワイワイやるのも良いけれど、あたしは高坂くんと2人きりでイチャイチャするのも悪くないなあって思うよ。せっかくの密室なんだし」

 日向ちゃんが押入れを意味ありげに見ました。

「小学生の子供が何を生意気言っているのよ」

 黒猫さんが華麗にフライパンの中身を空中で引っ繰り返しながら日向ちゃんに釘を刺します。

「そんなこと言って、ルリ姉だって2人きりになったら野獣の本性を表すんじゃないの~」

 楽しそうに笑う日向ちゃん。

「日向は明日のお夕飯、おかずはふりかけだけね」

「酷いっ!」

 日向ちゃんはガックリとうな垂れました。

「きょうちゃんと2人きりで部屋の中~、きょうちゃんがうちに泊まった時のことを思い出すなあ~」

「それはさぞ楽しくてロマンティックな晩だったのでござろうな~」

 しみじみ語るお姉さんと沙織さん。

 でも、それを聞いているわたしと黒猫さんは平然となんてしていられませんでした。

「あのスケコマシ、一度みっちりと体罰してあげないとダメなようね」

「異議なしです」

 黒猫さんとわたしから黒いオーラが発せられます。

「よっしゃ。これでカレーも完成っと」

 今まで話に乗って来ないで熱心にカレー作りに専念して来た加奈子がお玉を置きました。

 黒猫さんも火を止めてお皿に盛り付けを始めています。

 これで食事の準備は全て整いました。

 後はお兄さんの帰りを待つだけです。 

 ええ。帰りをですね…………フフフ。

 

 

「ただいま~今日はいつにもまして良い匂いがするな」

 そして遂にお兄さんが帰って来ました。

「図書館で勉強するのも結構大変なんだよな。席は立てないし、音立てないように神経使わなきゃいけないし」

 誰に向かって喋っているのかわからない言葉を発しながらお兄さんは下を向いて靴を脱いでいます。

「けど、この部屋にばっかり篭っていると神経滅入りそうだからたまには外で勉強を……って、何でみんなが俺の部屋に来ているんだぁっ!?」

 お兄さんはようやくこの部屋に美少女が6人もいることに気付いたようです。

「しかも何であやせまでここにいるぅっ? 知らせてない筈なのに……」

 お兄さんはわたしを見ながら特に驚いた表情を見せています。

「それについてはわたしの方が聞きたいですね。どうして他の方々はみんなお兄さんの独り暮らしを知っているのに、わたしだけ知らされていないのでしょうかね?」

 立ち上がってお兄さんの元へと近付きます。

「えっと、それは……」

 口篭るお兄さん。わたしは更に近付いていきます。

「でも、その件よりも前に言っておきたいことがあります」

「えっと、何でしょうか?」

 しゃがんだままの姿勢のお兄さんを上から睨みつけます。

「受験勉強の為に独り暮らしを始めた筈なのに、何でかつてないほどの女の園を作り上げてるんですかっ! 破廉恥ですよ、お兄さんっ!」

 2人きりでラブラブの夢が崩れたこともあって、わたしはストレス解消も兼ねてお兄さんにお仕置きを開始しました。

「そうね。私も今日は京介に凄く腹が立ったから参戦するわ」

「そうだね~。きょうちゃんはちょっと女の子に節操なさ過ぎなんじゃないかな~」

「高坂くんがあたし以外の女とみんな縁を切ってくれないのが悪いのは明らかだもんね。お仕置きは必要だね」

「タクッ。京介がいい加減あたし1人に絞らないからこんなことになるんだ。あたしもお仕置きに参加するぜ」

「みんなが参加するのなら、拙者だけ何もせずに見ているという訳にもいくますまい。大丈夫、後で槇島グループが抱える最高のお医者様を紹介しますから」

 わたしにお兄さんにお仕置きを開始する黒猫さんたち。

「何で図書館行って勉強して帰っただけでみんなにフルボッコにされなくちゃならないんだ~~っ!」

 お兄さんの悲鳴は乙女たちのお仕置きの前に掻き消されていきます。

 

 そしてわたしは悟ったのです。

 本気で通い妻になるしかないと。

 そうしないとこんなにも数多く存在する恋のライバルを前にわたしはフェードアウトしてしまいます。

 明日もまたここに来よう。

 それを心に固く誓いながらわたしはお仕置きの右足を振り上げたのでした。

 

 

 

 了

 

 

 

 


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