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そらのおとしもの~天使と仮面騎士の物語~ 第25話『怪奇現象M/竹林の食卓』

蒼き星さん

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2013-08-05 10:03:15 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1295   閲覧ユーザー数:1288

まだ昼頃だが、薄暗い竹林の中に草木を踏み分ける音が響く。動物が1匹も居ない状況では、普段は大して気にしないその音が耳につく。

 

 

「ここが、そはらの言っていた竹林か」

 

 

刹那が辺りを見渡す。霧がかっていることもあり、おどろおどろしい雰囲気が漂っていた。刹那の側には、イカロスとアストレア、ニンフに智樹が居た。

 

 

「この竹林、猿のお化けが出るって評判なんだよ。面白そうでしょ?」

 

「お化けなんてありえないわよ」

 

ニンフが踵を返そうとすると、鳥の鳴き声と共に荒々しい物音が生じる。その音に驚いたニンフは咄嗟に智樹に抱きつく。

 

 

「大丈夫か、ニンフ?」

 

「ありがとう、智樹」

 

 

智樹の優しさにニンフはほんのりと頬を赤く染める。

 

 

「おやおや。ニンフさん、顔が赤いですよ」

 

「う、うるさい。赤くなんてないんだから」

 

 

アストレアと言い合いをするニンフをイカロスは若干うらやましそうに見つめる。それに気づいた刹那がイカロスの手を握る。

 

 

「刹那……」

 

「遠慮する必要はない。俺達はそういう仲だろ」

 

 

 

★★★★★

 

 

 

入口から竹林の奥へ向かって歩いていた風都ライダーズ一行だったが、お化けのおの字も見つけることは出来なかった。

 

 

「暇だなぁ」

 

 

成果の上がらないお化け探しに退屈してきた智樹が大きな欠伸をする。

 

 

「なら、キノコ探しはどうだ?」

 

「こんなところにキノコが有るんですか?」

 

「それ、食べられる奴だよな?」

 

「調理法は別世界のライダーから聞いている。心配するな」

 

 

目を爛々と輝かせるアストレアに説明する刹那の傍らでニンフは小型のノートパソコンを開いていた。

 

 

「刹那が言ってることは本当よ。竹林には、キヌガサタケというキノコが生えてるわ」

 

 

ニンフがパソコンの画面を皆に見せる。

 

 

「ずいぶんと風変わりなキノコですね」

 

「よーし、こうなったら

「お前には負けねえぞ!!」

 

 

智樹とアストレアがそれぞれ別方向へと走り出す。

 

 

「単独行動は危険だよ、トモちゃん」

 

「待ちなさい!! アストレア!!」

 

 

2人を追いかけるためにそはらとニンフも走り出したため、イカロスと刹那は置いてかれてしまった。

 

 

「私達は私達で楽しみましょうか」

 

「そうだな」

 

 

刹那とイカロスは辺りを散策し始めた。

 

 

「イカロス、そっちはどうだ?」

 

「こちらには見当たりませんね」

 

 

周囲を見渡しながら歩いていたイカロスだったが、目の前にある竹に気づかず、頭を打った拍子に倒れてしまう。

 

 

「イカロス!!」

 

「軽く打っただけです」

 

 

慌てて駆け寄る刹那の前でイカロスはしっかりとした足取りで立ち上がる。

 

 

「慌てるな。キノコはどこにも行ったりしないさ」

 

「すみません……。刹那、あれを見てください」

 

 

イカロスの指し示す先を見ると、そこには小規模ながらキヌガサタケの群生地があった。

 

 

「さっそく取りに行きましょう」

 

「ああ、そうだな」

 

 

 

★★★★★

 

 

 

「見てください、イカロスさん。こんなにたくさんのキノコが取れましたよ」

 

 

元の場所に戻って皆と合流すると、アストレアが上機嫌で腕いっぱいに抱えたキノコをイカロス達に見せてきた。その横では、ニンフがげっそりしていた。

 

 

「他にもいろんなキノコを見つけて取ろうとしたんですけど、ニンフさんが取るなって言ったんですよ」

 

「もう反論する気もないわ……」

 

 

ニンフの疲れ切った様子に一同は何が起こったのかだいたいの内容を察した。

 

 

「ニンフさん、これでも飲んで元気を出して」

 

「恩に着るわ、そはら」

 

 

ニンフはそはらから受け取った野菜ジュースをゴクゴクと飲み干した。

 

 

「結局、俺達だけほとんど取れずじまいか」

 

「たまにはのんびりと過ごすのも良いでしょ?」

 

「そうだな。そろそろ荷物が多くなったし、家に帰るか」

 

 

そはらの言葉で智樹は気を取り直す。

 

 

「賛成! 私も早くキノコ食べたいし」

 

 

 

★★★★★

 

その空間には大型の高画質モニターが備え付けられていた。それだけを見れば、映画館にも見えるかもしれない。しかし、広さに反して席が少なく、情報機器が多数設置されていることからなんらかの軍事拠点であると推測できる。

 

 

「学生たちは依然として当基地の付近をうろついております」

 

 

オペレーターからの報告を聞いたその基地の司令はモニターに映る刹那たちの映像を見て頭を悩ませる。

 

 

「これ以上うろつかれると当基地の存在がばれる危険性が有ります。速やかに追い払うべきかと……」

 

「今は、ただの怪談ぐらいにしか思われていないが、あまり下手に騒げば感づかれるぞ。ここは、自然に奴らが帰るのを待つべきだ」

 

 

部下たちの間で交わされる議論を聞いた司令はある決断を下す。

 

 

「例の新型フォルスを出せ。どうせ、妖魔と戯れている奴らだ。殺しても構わん」

 

「了解しました」

 

 

司令の命令を聞いたオペレーターは施設内放送を使い、必要事項を通達し始めた。

 

 

★★★★★

 

 

 

「ちょっと待って!!」

 

 

帰路へ着こうとする皆をニンフが制止する。

 

 

「何か聞こえるわ」

 

「音?」

 

 

ニンフの言葉を確かめる為に刹那も耳を澄ませる。竹が大きくしなり、風を薙ぐ音が聞こえてきた。

 

 

「鳥とか猪じゃないのか?」

 

「違うわ。これはそんなものじゃない」

 

「もしかして、噂のお化けですか?」

 

「だと良いがな……」

 

 

刹那は起こりうる事態に備え、周囲を警戒する。

 

 

「音が近い……来るわ」

 

 

竹林を高速移動する謎の影は目視できるほどに近づき、刹那たちの目の前で地面に降り立った。一目見た印象は獰猛で頑強な肉体を誇る猿であるが、その脚部は鳥をイメージさせる特異な逆関節となっていた。

 

 

「これが、猿のお化け……本当に居たんだ」

 

 

感心するそはらに向けて向けて大きく踏み込み、竹槍のような得物を突き出す。

 

 

「危ない!!」

 

 

アストレアが携帯していた盾でシールドを発生させ、槍を受け流す。

 

 

「皆さん、こっちです!!」

 

 

危険を感じたイカロスが先導し、アストレアが殿を務める形で退避していった。その退路を守るように刹那と智樹が立ち塞がった。

 

 

「行くぞ、智樹」

 

「おう!」

 

 

刹那と智樹はベルトを腰に巻き、変身の構えを取る。

 

 

「「変身」」

 

《KAMEN RIDE:GATHER》

 

 

 

 


 
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