No.405714

ACE学園 第5話『代理教師』

蒼き星さん

[そらのおとしもの~天使と仮面騎士の物語~]
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第1話『破壊の後継者/Iとの再会』 http://www.tinami.com/view/402298
第2話『驚愕の転校生/忍び寄るFの影』 http://www.tinami.com/view/402305

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2012-04-09 21:37:12 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:883   閲覧ユーザー数:878

ACE学園高等部を一時閉鎖に追い込むほどの被害をもたらした「クッキングハザード事件」、管理局風に言えば、「S&SK事件」。

事件の解決から5日後、なんとか運営が再開できるようになった日の朝からこの話は始まる。

 

「待ってたよ、楓ちゃん」

 

2-Cの教室の扉が開かれると同時に女好きで有名な緑葉樹みどりばいつきがルパンダイブする。だが、その先にいたのは、

 

 

 

「おはよう、緑葉樹君」

 

 

 

土見稟だった。稟は、親友?の樹をなんの躊躇もなく殴り飛ばし、樹は弧を描きながら窓の外へと飛んでいった。

軌道上にいたアインハルトは素早く士樹の手を引いて避ける。

 

「大丈夫でしょうか、緑葉君?」

「大丈夫だろ」

 

稟は隣にいた恋人兼幼馴染の芙蓉楓と教室に入る。

 

「5日間顔を見なかったけど、相変わらずだな、稟」

「その台詞はあいつに言ってくれ、稟」

 

自分の席に座っていた士樹は稟に苦笑しながら言葉をかけた。稟はいかにもうんざりしているといった表情で対応する。近くにいた楓も2人の会話に加わる。

 

「そういえば、事件の規模の割に授業の再開が速いですね。教師と生徒がかなり被害にあったと聞いているんですけど」

「えぇ、私達が確認しただけでもかなりのゾンビがいました」

 

士樹達ではなくアインハルトが楓に相槌を打つ。その時、ちょうど良いタイミングでチャイムが鳴り、皆は素早く席に着く。だが、入ってきたのは、彼らの担任ではなかった。

 

 

「諸君、席に着きたまえ」

 

 

士樹とアインハルト以外の教室にいた生徒全員が唖然とする中、教室に入ってきた金髪の男性は教壇で自己紹介を始める。

 

「私はグラハム・エーカー。君達の担任が倒れたらしいので急遽ミッドチルド学園より呼ばれて参上したしだいだ」

(やっぱり…)

(あの時の花見で戦った先生ですか)

 

紅女史が倒れたと聞いてクラス中がざわめく中、目の前の相手は、士樹とアインハルトが別世界で1度戦った相手だと冷静に把握する。

 

「諸君、静粛に! 本日より3日間、私ともう1人の教師が全ての授業を代行させてもらう。では、これより授業を始める!!」

 

周りの戸惑いなど気にせずにグラハムは授業を始めた。

 

 

★★★★★

【1時間目・日本史】

 

「本日は、刀の歴史について勉強する」

 

グラハムは黒板にチョークで刀の絵を描いた。

 

「日本において刀剣類は、古墳時代から作られていたが、一般に私達が日本刀と呼んでいるものは平安末期に出現している」

「へぇ、そうなのですか」

「日本刀にはそんな歴史があったんだね」

 

新聞部の麻弓=タイムと神界の王女であるリシアンサスは素直に感心する。

一方、1度グラハムと出会ったことのある士樹とアインハルトはそのまともさに戸惑っていた。

 

“花見の時に受けたイメージとは全然違うな”

“授業はまじめにやる先生ということでしょうか?”

“そう思いたいところだが、ティアナ辺りの反応を見る限り、その可能性は低そうだ”

 

2人は、マルチタスクを活用し、授業を受けながら通信念話で周りにばれないように会話する。

グラハムは生徒達が自分の授業についてきていることを確認して、話を進めた。

 

「刀についてだいたい話し終えたところでこれより本題に入る」

 

グラハムは黒板を消し、新たに別の絵を描く。

 

「次は、私の大好きな≪ハム≫について話をする!!」

 

グラハムはこれが本題だと言わんばかりに真顔で黒板を思いっきり叩く。そこに、富士見書房出版の小説に出てくる某お子様生徒会長の影が見えたのは気のせいではないだろう。

 

“やっぱり…”

“そう言えば、ハムがお好きな方でしたね”

 

士樹は「やっぱりそういう人なんだ」という視線でグラハムを見つめ、アインハルトは冷静に状況を把握していた。

 

「先生、それはむしろ世界史ではないでしょうか?」

 

挙手して質問した音無にグラハムが無言で近づき、左手を上げた。

 

「ハムチョップ!!」

「ぐはぁっ!!」

 

グラハムは叫びながら音無に手刀を振り下ろし、音無の顔を机にめり込ませた。

 

「ハムに対する侮辱はいっさい許さん!!!」

 

グラハムは手を払いながら教壇に戻っていった。

 

 

★★★★★

【2時間目・化学】

 

「初めまして。私は朝凪イルスィです。これから3日間よろしくお願いします。

 

グラハムの授業の後、入ってきた小柄な白衣の女性が礼儀正しく挨拶する。

 

「前世の頃から愛していました!!」

 

いつの間にか復活していた樹がボロボロの体を引きずりながらさっそくナンパしていた。

 

「お気持ちは嬉しいのですが、私は」

 

イルスィは台詞を途中で切り、左手の薬指に付けてあるものを樹に見せつけた。瞬間、樹は石のように固まってしまった。

 

「これから授業で使う物を渡しますね」

 

イルスィは四次元トランクから耐熱容器に入れられた加熱されて赤くなっている炭を取り出し、1列ごとに渡していく。

 

「これ、炭ですよね?」

「何に使うんだろうね?」

 

麻弓とシアを始め、生徒達は、手渡された炭を見て頭を傾げていた。

 

「何か嫌な予感がする」

 

だが、士樹は違和感を感じていた。仮面ライダーとしての勘が彼に危機を告げていたのである。次に渡された2つが、その勘は正しいと告げていた。

 

≪硝石≫と≪硫黄≫である。

 

樹も渡された物を見て何をやろうとしているのか分かったようだ。

 

「ちょっと待ってください! これ、火薬・・の材料ですよね!?」

 

教室が爆破されてはたまらないと思った士樹は声を荒げて確認を取る。

 

「てへっ☆、バレちゃいましたか」

 

かわいらしくチロリと舌を出すイルスィ。反省する気が微塵もかんじられなかった。残りの授業もこんな感じに進んでいった。

 

 

★★★★★

【放課後】

 

「今日は、いつも以上に疲れた…」

 

いつも以上に個性的な教師による授業に士樹は疲れたようだ。帰り道を歩くその姿からは脱力感が漂っている。

 

「良いじゃないですか、士樹。それに、元々この学園はこういう場所ですし」

 

一方、士樹の隣を歩いているアインハルトはいたって普通にしていた。

 

「そう言えば、今日はカレハさんからフローラで新作ケーキが出るって聞きました。よかったら、一緒に行きませんか?」

「お、良いね、それ」

 

先ほどまでの疲れはどこに行ったのか士樹は元気にアインハルトと一緒にフローラへと向かっていった。

 


 
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