No.404094

そらのおとしもの~天使と仮面騎士の物語~ 第12話『己が何であるか』

蒼き星さん

[そらのおとしもの~天使と仮面騎士の物語~]
設定集 http://www.tinami.com/view/401137
プロローグ http://www.tinami.com/view/401710
第1話『破壊の後継者/Iとの再会』 http://www.tinami.com/view/402298
第2話『驚愕の転校生/忍び寄るFの影』 http://www.tinami.com/view/402305

続きを表示

2012-04-07 11:48:22 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:749   閲覧ユーザー数:748

【風都病院】

 

 

緊急治療室と書かれた扉から照井が出てきた。その近くで刹那が壁にもたれて待っていた。

 

「刹那、なぜこんなことになった?」

「使徒再生です」

 

刹那は何について聞かれるのかあらかじめ予想がついていたので話をなめらかに始める。

 

 

「使徒再生?」

「要するに、吸血鬼が人間を襲って吸血鬼にするようなものです。人によっては、普通に死ぬだけでそうなることもあります」

「理性とかはどうなる?」

「ガイアメモリの様な毒素はないですが、道を誤る者が多いのも事実です。それだけならなんとかなりそうなのですが、問題はそれだけではありません。オルフェノクとなった以上あの警官はそんなに長く生きられない。後10〜20年で今度は完全な死を迎えるでしょうね」

「奴を……奴を助ける手立てはないのか?」

「今までに長寿を全うしたオルフェノクは確認されていません」

「そうか……」

 

刹那が悲しそうに告げると、照井は顔を俯けながらそう答えるだけであった。それ以上会話が続くことはなく、刹那は会釈してからその場を去り、帰宅した。

 

 

★★★★★

【工藤家】

 

「ただい――」

 

刹那が玄関の扉を開け、帰宅を告げようとしたところ黒い修道服に身を包んだ見知らぬ少女と目があった。

 

「私、カオスって言うの。よろしくね、刹那お兄様」

「なんで俺の名前を知っているんだ?」

「探偵のおじちゃんが教えてくれたの」

「翔兄か」

 

刹那の知り合いで探偵のおじちゃんと言えば1人しか該当する人物はいない。本人が聞いたら間違いなくコーヒーを吹くだろうが、放っておくことにする。

「カオスちゃん、お代わりが入りましたよ」

「ありがとう、リインちゃん」

「家の中は走っちゃだめ……」

 

走り込むカオスに着いていく形で刹那もリビングに入って席につくと、イカロスがココアとチョコケーキをお盆にのせて持ってきてくれた。刹那は黙ってココアを飲み始めた。

 

「どうしたの、お義兄ちゃん?」

「先ほどからほとんど喋っていませんが、何かあったんですか?」

 

普段でも無口な時は無口な刹那だが、一緒にいる時間が長いためにリインとイカロスは雰囲気で察したのだろう。刹那はまだ幼いカオスがいるため、戦闘で人が死んだという事実は話さないことにした。

 

「辛いことがいろいろと重なっただけだ」

「辛いことがあったの?」

 

カオスが刹那の顔を覗きこむ。

 

 

「少しこっちに頭を寄せてくれる?」

「? こうか?」

 

意図も分からぬまま刹那は頭を向けると、カオスは刹那の頭をよしよしと言いながら撫で始めた。

 

 

「私が、泣きたくなったりした時はよくお母さんがこうしてくれたの」

 

そこにあるのは、ただ相手を思いやる優しさだけだった。故に、訂正や突っ込みは不要だった。

 

「ありがとう、カオス」

「どういたしまして」

多少元気になった刹那にカオスは屈託のない笑顔を向ける。

 

「ようやく元気になりましたね」

「もう大丈夫だ」

 

刹那が改めて席に着き、ケーキを口に運ぶと電話が鳴った。

 

『病院にいる例の警官が狙われている!! すぐに来てくれ!!』

「やれやれ、本当に空気を読まない連中だな」

「ケーキは残しておきますので心配しないでください」

「助かる」

 

刹那は一口だけ食べると慌てて家を飛び出していった。

 

 

★★★★★

 

【風都病院・緊急治療室】

 

「こ……ここは? 俺は死んだはずだぞ」

 

アロガンスとの戦いで倒れた警官は緊急治療室にあるベッドの上で目覚め、自分の腕が一瞬怪人化するのを直視した。

 

「そういうことか……」

 

警官は絶望と共にだいたいの事情を悟った時、緊急治療室の扉が蹴り破られた。

 

「目標を発見! これより確保する」

 

警官は自分に近寄ってくるソルジャーがまるで死神のように見えた。瞬間、ソルジャー達の体は突然後ろに吹き飛び、爆散した。

 

《CLOCK OVER》

 

それとほぼ同時にゲイザーがちょうどソルジャーと自分の中央位の位置に現れた。警官は自虐的な笑みを浮かべながらゲイザーに向き合った。

 

「なんだよ……なんで助けに来たんだよ? 化け物になっちまった俺を助ける意味なんてないぜ」

「問題ないです。仮面ライダーもその起源は怪人なんですから」

「きつい冗談を言うな」

 

せせら笑う警官を意に介さずにゲイザーは喋り続けた。

 

「冗談ではありません。彼らは悪の尖兵となるべく改造され、人ではなくなった。だけど、彼らはそれでも自らの意思で正義を貫くために孤独に耐えながら戦う道を選んだ。怪人ではなく仮面ライダーとしてです」

 

真摯に語るゲイザーの言葉に警官は次第に耳を傾けていった。

 

「要は、あなたがなんであろうとするのかが大事なんです。自分がどのように生きるのか決められるのはあなただけです」

「…………。俺は市民を守る警察だ。組織の人間としてその職務は全うしなければならない」

 

警察はそう言って立ち上がり、右手に剣、左手に盾を装備したアルマジロオルフェノクに変身した。ゲイザーはそれを見て1枚のカードを取り出した。

 

「この状況だとやっぱり土見稟のカードだな」

《KAMEN RIDE:FAIZ》

ゲイザーは電子音と共に赤いラインの走る黒スーツに銀色のボディアーマー、ギリシャ文字のΦをモチーフにした仮面を身につけたGファイズに変身した。

 

「行きますよ」

「ああ」

 

2人は病院から裏口に飛び出し、ソルジャー部隊に斬りかかった。アルマジロはそのスペック差もありソルジャーを少しずつ壊滅させていった。そこに慌てた様子のアクセルがやってきた。

 

「遅いですよ、照井さん」

「すまない、敵の足止めを食らっていた」

「あの赤いライダーが照井刑事!? 自分も未熟ながらお手伝いさせていただきます」

「お前は……分かった。無理だけはするなよ」

「はい!!」

 

そんな空気をぶち壊すように疾走態のオックスオルフェノクがやってきた。

 

 

「愚かな……。オルフェノクとして覚醒しながら人外の討伐に参加しようとしないとは」

「無差別殺戮なんていうのは警察の仕事じゃない」

「そうか。ならば、死ね」

 

オックスが突撃してくるのを3人は散開して回避する。アクセルはバイク形態になった上で支援ユニット[ガンナーA]と合体してアクセルガンナーになった。Gファイズも更にカードを1枚使用した。

 

《ATTACK RIDE:AUTO BAJIN》

 

カードの効果によってオートバジンへと姿を変えた刹那のバイクは人形のバトルモードへと変形し、空中からバスターホイールでオックスを牽制し始めた。アクセルガンナーは細かく動きながら主砲でオックスを攻撃していた。

 

「ちょこまかとッ……」

 

オックスはその巨体が仇となり的となっていた。とはいえ人型に戻ろうとすればその隙を狙って集中放火が来るのは間違いない。となれば、取れる選択肢は1つしかない。

 

「くッ……退却するしかない!!」

「ところがぎっちょん!!」

《FINAL ATTACK RIDE:F・F・F・FAIZ》

 

逃走しようとしたオックスの体に回転する赤い三角錐が突き刺さり、拘束する。Gファイズは全力疾走してジャンプし、右足を突き出して三角錐の中へと飛び込み、必殺技[クリムゾンスマッシュ]を叩き込んだ。

 

「ぐわあああああああああ!!!!!」

 

オックスオルフェノクはΦの紋章を刻まれ、青い炎に焼かれながら消えていった。敵の消滅を確認したGファイズはアルマジロがいる前で変身を解いた。

 

「あんな少年が仮面ライダー!? いったいどうなっているんだ?」

 

「後はよろしくお願いします」

 

刹那は「じゃあ」と右手を上げた後ゲイズチェイサーで帰宅した。あまりにもあっさりとした様子にアルマジロは呆然としていた。

 

「…………」

「後始末は、俺達でやっておく。お前はいったん家に帰れ」

 

照井もそう言って病院の中へと戻っていった。

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
0
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択