No.403624

劇場版仮面ライダーゲイザー〜受け継がれし天使と悪魔の力〜EPISODE FINAL

蒼き星さん

[そらのおとしもの~天使と仮面騎士の物語~]
設定集 http://www.tinami.com/view/401137
プロローグ http://www.tinami.com/view/401710
第1話『破壊の後継者/Iとの再会』 http://www.tinami.com/view/402298
第2話『驚愕の転校生/忍び寄るFの影』 http://www.tinami.com/view/402305

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2012-04-06 18:01:41 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:861   閲覧ユーザー数:861

【体育館】

 

「ライブ行くぞ!!」

『イエーイ』

 

体育館には、戦線メンバーを含む大勢の生徒がいた。あちこちにテーブルが並べられ、その上には料理がところ狭しと置かれ、ガルデモのライブと共に楽しまれていた。刹那は音無や日向と一緒に寿司を手にライブを観賞していた。

 

 

「なるほど、皆が熱くなるのも分かる」

「だろ」

「で、これは何ていう曲なの、父さん?」

「Shine Daysっていう曲だ」

 

刹那は料理をあまり食べずに歌を聞きながらガルデモのメンバーを見ていた。

 

 

「で、誰が好みなんだ? ここならお前の恋人もいないし――分かったからライドブッカーⅡの銃口をこっちに向けるな」

「分かればいい」

 

刹那はライドブッカーⅡを収納し、再びライブ観賞に戻った。

 

 

「そう言えば奏はどこにいるんだ?」

 

音無が辺りを見渡すと、左前あたりでライブそっちのけでマグマの様に赤い麻婆豆腐を一心不乱に食べている奏の姿があった。

 

 

「せっかくのライブなのにもったいねえなぁ」

「ハハハ、あいかわらずだな」

「母さん、この頃から麻婆豆腐が好きだったんだ」

 

刹那は奏に近づき、側にあった鍋から麻婆豆腐を皿にすくって食べた。

 

「うん、お袋の味だ」

「そうなの……」

「おい、待て!!」

 

麻婆豆腐を平然と食べた刹那を見て日向が突っ込む。

 

 

「お前、激辛で誰も食べたがらないこの麻婆豆腐をお袋の味と言ったな?」

「うん」

 

「私、来世でも麻婆豆腐が好きなんだ……」

「んなこと言ってる場合か。お前、子供になに食わせてんだ!? 仮にも母親だろ!! 音無も止めろよ!!」

「いや、今言われても困るんだが……」

 

日向の突っ込みに音無は頭をかきながら応える。

 

 

「ちなみに、今でも時々作って食べている。義妹は苦手みたいだが……」

「お前、いっぺん病院に行って診察してもらえ!! 絶対に味覚障害だぞ!!」

「問題ない、マメに受けている定期検診では異常が確認されていない」

 

刹那は日向と受け答えしながら麻婆豆腐を食べ続けた。

 

 

(こういうお祭り騒ぎにはあまり参加したことなかったが、良いものだな)

 

刹那はしみじみと感じていると、急に違和感を感じた。

 

 

(役割を終えた者は早々に立ち去れということか……)

 

刹那が表情を変えたことに気づいた音無は声をかけた。

 

 

「どうしたんだ、刹那?」

「母さんと一緒に少し外へ来てほしい。もう時間がないみたいだ」

「分かった」

 

音無は真剣な顔で答え、奏も首を縦に振り、刹那と一緒に外へ出た。外へ出た3人はしばらく歩き、グラウンドで足を止めた。

 

「もう少し2人と一緒にいたかった」

「なあ、本当にもう帰らなければいけないのか?」

「本来ならダークネスが消滅した時に戻るはずだったんだ。それに、俺は本来ここに存在するべき人間じゃない」

 

音無は悲しそうな顔で聞くが、刹那は静かに否定する。

 

 

「ここにいろ……とは言えないな。向こうには義妹や恋人がいるんだからな」

「刹那……」

 

奏が口を開いた。

 

「この先、とてもつらいことが起こるかもしれない。だけど、決して無理はせず絶望しないで。耐えきれなくなったら周りを頼って……。あなたには信頼できる人がいるんでしょ?」

「うん」

「あなたはあなたの道を進んで。私達のことが大切なのは分かるけどそれにとらわれすぎちゃ駄目よ」

「うん……」

 

刹那は涙目になりながらも答えた。

 

「大丈夫さ。お前ならきっと出来る。なんたって俺と奏の息子なんだからな」

「ああ」

 

音無と刹那は右手の拳を付き合わせる。その瞬間、刹那は死後の世界から消えた。

 

 

★★★★★

 

【この世・風都】

 

数日ぶりに死後の世界から帰ってきた刹那はダークネスと初めて出会った場所に出てきた。

 

「ここに出てきたか。それにしても……」

 

あの後、翔太郎が呼んだのだろう。辺りには、パトカーが複数展開し、事件現場でよく使われる[KEEP OUT]の黄色いテープが張られていた。

 

 

「警察に見つかったら面倒だな」

 

刹那は周囲を確認しながら警察に見つからないようにその場を離れ、ある程度距離を取ったらバイクで自宅へ向かった。

 

 

「ただいま」

 

刹那が自宅の扉を開くと、涙目のイカロスが抱きついてきた。

 

「無事で良かった……本当に心配したんですよ……」

「心配かけてすまなかったな、イカロス」

 

刹那はイカロスを優しく抱き止め、イカロスも刹那をより強く抱きしめる。その後ろからは、リインが出てきた。

 

「どこて何をしていたんですか、お兄ちゃん?」

「死後の世界で両親と一緒にアロガンスと戦っていた」

「そうですか」

 

リインは普段あまり見せない優しい笑みを刹那に向ける。

 

 

「我が家秘伝の味はあの世界で発祥したらしい」

「そこ、地獄じゃないですよね?」

「違う」

 

刹那がリインと喋っていると、イカロスが若干膨れっ面―普段の表情とあまり見分けはつかないが―になって刹那を見つめた。

 

 

「ずるいです……リインとばかり喋って。今日は、私と寝てもらいますよ」

「別に構わないが、少し無防備すぎないか?」

「あなたが相手なら本望です」

(あの狸、アインハルトだけではなく今度はイカロスまで毒牙にかける気か?)

「あーーー!! ずるいですよ、イカロスさん!! 私もお兄ちゃんと一緒に寝たいです!!」

「ねぇ、あんた達。これのこと忘れてない?」

 

刹那が異世界で何かを企んでいるであろう狸(いちおう人間)の顔を思い出していると、ニンフが家から小包を持って出てきた。

 

「ニンフ、お前も来てたのか」

「まあね。これ、あんた宛に届いた荷物よ」

刹那はイカロスといったん離れ、小包を受け取った。

 

「なんだ、これは?」

刹那がその小包を開けると、中には1枚の紙が入っていた。

 

 

「ちゃんと俺の分も用意してくれていたんだ……」

 

それは、死後の世界の住人が生き抜き、成仏した証でもある卒業証書だった。

 


 
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