No.407279

劇場版仮面ライダーアクエリアス エピソード・オブ・ベルカ EPISODE1

蒼き星さん

[そらのおとしもの~天使と仮面騎士の物語~]
設定集 http://www.tinami.com/view/401137
プロローグ http://www.tinami.com/view/401710
第1話『破壊の後継者/Iとの再会』 http://www.tinami.com/view/402298
第2話『驚愕の転校生/忍び寄るFの影』 http://www.tinami.com/view/402305

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2012-04-12 21:27:01 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:905   閲覧ユーザー数:904

 

 

【ACE学園高等部図書室】

 

 

「やあ、士樹」

 

 

司書であるユーノ・スクライアが本の整理をしていると、読書中の士樹と出会った。

 

 

「あ、ユーノさん」

 

「何を読んでるの?」

 

「古代ベルカの覇王の伝記ですよ。ふと読みたくなったんですよ」

 

「なるほどね」

 

 

士樹は本を左手で持ちながらユーノと話す。

 

 

「ところで、今はどの辺りを読んでるんだい?」

 

 

ユーノが士樹の肩越しに本を覗きながら言う。

 

 

「まだオリヴィエがゆりかごに乗り込む前ですね」

 

 

士樹がユーノに答えながらページをめくっていくと、

 

 

 

“助けて…”

 

 

 

何処からか声が聞こえてきた。士樹は周りを見渡すが、自分の近くにはユーノしかいない事を確認する。士樹の様子に気づいたユーノが声をかけてくる。

 

 

「どうしたの?」

 

「…今何か聞こえませんでしたか?」

 

「? いや、何も聞こえなかったよ」

 

(空耳にしては妙にはっきりしているな。いったい誰が?)

 

 

士樹が視線を本に向けたまま右手を顔に当てて思案する。すると、突然本が光り出した。

 

 

「本が!?」

 

“助けて……誰か助けて”

 

(まただ!この本が僕を呼んでいるのか?)

 

 

ユーノが叫び、士樹がそう考えたとたんに本の輝きが強くなり、士樹を包み込んだ。

 

 

「士樹!!」

 

 

光が収まり、ユーノが呼び掛けた時そこにいるはずの少年は存在せず、ただ分厚い本が床に落ちる音だけが響いた。

 

 

 

★★★★★

 

 

 

それからいくばくの時間が経過した後、士樹は目覚めた。起きた士樹は現在の状況を理解することを始めた。それで、自分が今ベッドに寝ていて、その部屋―恐らく建物全体―が石造りであることが分かった。

 

 

「ここはいったい…?」

 

「気がついたようだな」

 

 

士樹が声の方に振り向いた時その表情は驚愕に包まれた。何故なら彼の恋人と同じ碧銀の髪を持つその人物はとうの昔に死んでいるはずだからである。

 

 

「私はクラウス・G・S・イングヴァルトだ。ここはベルカの覇王領で、君は私の白の前で倒れていたところを警備の者が保護したんだ」

 

「(なるほど、そういう事だったのか…)僕は前杉士樹です。助けてくれてありがとうございました」

 

 

士樹は、自分が置かれた状況を把握し、頭を下げて礼を言う。ちなみに、慌てていないのは、単に場慣れしているだけである。

 

 

「それで、君はどうしてあんなところで倒れていたんだ?」

 

「実は…」

 

 

士樹はここに来るまでの経緯、自分が遠い未来の別世界から来たのであろうことをクラウスに告げた。

 

 

「未来か…。信じがたいが、君の銃に使われている技術から考えるとあながち嘘ではないだろう」

 

 

クラウスは士樹にアクエリアスドライバーとカード入れを渡しながら言った。

 

 

「未来の生活がどうなっているのか興味がある。話してくれないか?」

 

「僕が現在住所を置いている世界ではいろんな出自の人や種族による平和的な共存を模索し、そのための学園が作られました」

 

「ほう」

 

「ちなみに、聖王と覇王の子孫、冥王本人も生徒として普通に暮らしています」

 

「現在の戦乱の世界からは考えられないな…」

 

「証拠写真を見せますよ」

 

 

クラウスはあまり表には出していないが、内心では驚いていた。そんなクラウスに士樹はどこに持っていたのか普段接することの多いリリカルメンバーと撮った写真を見せた。

 

 

「随分と女性が多いが、君はハーレムでも築いているのか」

 

「違いますよ。僕が付き合っているのはアインハルトだけです」

 

 

士樹は写真の中で自分と腕を組んでいるアインハルトを指差す。

 

 

「これは私の子孫だな」

 

「そうですよ」

 

「この活発そうな女の子はオリヴィエの子孫で、この内気な女の子は冥王か」

 

「性格にはヴィヴィオはクローンですけどね。ヴィヴィオとは時々アインハルトを巡って争奪戦を繰り広げることもあります」

 

「平和な世界じゃなかったのか?」

 

「たまにゾンビが発生する等の事件が起こって命の危険を感じることはありますが、基本的に平和です」

 

「それは本当に平和というのか」

 

 

しれっと言う士樹にクラウスは呆れ気味になる。2人が話していると、1人の女性が部屋の扉をノックした。

 

 

「クラウス、入っていいですか?」

 

「良いですよ」

 

 

入ってきた女性の顔を見たが、現在地が古代ベルカの覇王領だという時点である程度予測していたために士樹は驚かずにすんだ。

 

 

「オリヴィエ・ゼーゲブレヒトです。以後、よろしくお願いします。クラウスの呆れ声が聞こえてきたのですが、何を話していたんですか?」

 

 

士樹とクラウスはかくかくしかじかとこれまでに話していたことを説明した。

 

 

「ずいぶんと楽しそうな学園ですね、私達もそんな風に出来たら良いんですが…」

 

 

オリヴィエは笑顔でそう言った。

 

 

「もっと詳しい話を――」

 

 

突然オリヴィエの話を遮るようにして乱暴に扉が開かれ、1人の兵士が入ってきた。

 

 

「どうしたんだ?」

 

 

クラウスが表情を引き締めて話を聞く態勢になる。

 

 

「大変です、覇王様!町に怪人が現れました!!」

 

「なんだと!?」

 

「怪人……」

 

 

兵士が報告した内容にクラウスは大声を上げた。士樹も己とは決して切り離すことが出来ないその単語に反応した。

 

 

「今怪人って言いましたよね?」

 

「えぇ、最近町にちょくちょく現れるんです。しかし、単体での戦闘能力が高くてベルカの騎士でも並の者じゃ歯が立たないんです」

 

「状況はどうなっている?」

 

 

オリヴィエが士樹に説明する傍らでクラウスは現状の把握に務めていた。

 

 

「城下町の南西部にて騎士団が交戦していますが、なかなか決定打を与えられません」

 

「南西部か」

 

 

士樹はカード入れとアクエリアスドライバーを持って窓に近寄る。

 

 

「士樹、何をしに行くんだ?」

 

「怪人と戦いに行きます」

 

 

士樹は窓枠に乗りながらさも当然のように言い放った。

 

 

「そっちは窓だぞ」

 

「時間が無いようなのでショートカットさせていただきます」

 

 

そう言いながら士樹は窓から飛び降りた。そして、重力軽減魔法を使って無事に着地した。

 

 

「ドライバーはどこも故障していないみたいだね。これなら十分戦える」

 

 

着地した士樹の側に蒼がベースで黒のラインが走っている専用バイクであるアクエリアスチェイサ―がやってきた。

 

 

「あいかわらず、まるでゼクターの様についてくるね」

 

 

バイクのエンジンは既に暖まっているようで主の搭乗を心待ちにしているように感じられた。士樹はアクエリアスチェイサ―に跨り、戦場に向けて発進した。

 

 


 
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