No.404176

そらのおとしもの~天使と仮面騎士の物語~ 第13話『平和とドレスとデート』

蒼き星さん

[そらのおとしもの~天使と仮面騎士の物語~]
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第1話『破壊の後継者/Iとの再会』 http://www.tinami.com/view/402298
第2話『驚愕の転校生/忍び寄るFの影』 http://www.tinami.com/view/402305

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2012-04-07 15:26:28 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:796   閲覧ユーザー数:796

【工藤家】

 

「宅配でーす」

「私が出ます」

 

宅配便が届けにきた荷物をリビングで刹那や智樹達と一緒にババ抜きをしていたリインが受け取りにいく。

 

「住所はこちらで間違いありませんね?」

「はい、――ん?」

 

リインが宅配業者の運んできた段ボールを見ると、住所は工藤家にだったが、宛名がイカロスになっていた。

 

(なんでイカロスさん宛ての荷物がここに来たんでしょうか?)

 

リインは疑問に思いながらも見た目ほど重くない段ボールを担いで家の中へと入っていき、リビングの床に置いた。

 

「これ、イカロスさん宛てですよ」

「イカロスさんに?」

「いったい何の荷物だ?」

 

皆がざわめくなか、刹那だけが冷静だった。

 

「中を開けてみろよ」

「分かりました」

 

イカロスが箱を開けると、中には純白のドレスが入っていた。あまり華美ではないが、フリルがデザインとしてたくさんあしらわれている。

 

「これ、ドレスですね?」

「でも、誰が送ってきたんだろう?」

 

ヒロイン達が思案するなか、智樹はため息をついていた。

 

「トモちゃん、なんでため息をついているの?」

「刹那、これ、お前が注文したんだろ?」

「そうだ。士樹と一緒に1セット分の代金生け贄としてベヒーモス10頭を払った」

「今の台詞でどれだけ凄惨な状況だったか想像がつきます」

「これだけ聞くと、べひーもすがただの雑魚にしか思えないな」

 

リインと智樹はベヒーモスに同情していた。

 

「刹那が……私のために……」

「着てみたらどうだ? サイズに関しては問題ないはずだ」

「……少し待っていてください」

 

イカロスはドレスを抱えて自分の部屋へと走っていった。数分後、ドレスに着替えたイカロスの姿を見て女性陣は目を奪われた。

 

「よし、これでいつでもフリフリドレス姿のイカロスが見れる」

「お前、そのためだけにこれを注文したな」

「こういうところはお義父さんに似ていますね」

 

刹那は友人と義妹の台詞をスルーし、携帯のカメラでイカロスを撮影した。

 

「まだ時間は早いし、どこかに遊びに行ったらどうだ? この間、福引きで風都遊園地のチケットが当たってただろ」

「イカロス、予定は空いてるか?」

「大丈夫です、刹那」

「なら、30分後に出発するぞ」

 

 

★★★★★

 

【風都遊園地】

 

「まず、どこへ行きたい?」

「これに乗ってみたいです」

 

イカロスはパンフレットにあるコーヒーカップのイラストを指した。

 

「分かった。そこまで案内する」

 

刹那はイカロスと手を繋ぎ、ゆっくりあるいていく。

 

「そう言えば、刹那と2人っきりでデートをするのは初めてですね」

「そうだな。たいがい智樹やリインが一緒に居たからな。他にもアロガンスのテロを止めるのに必死だったからな」

 

刹那とイカロスが手を繋いで歩いていると、目の前から私服警官が歩いてきた。

 

「刹那君か。こんなところで彼女とデートかい?」

「そうです。アルマジロさんこそどうしたんですか?」

「アルマジロって……いや、確かに名前は言ってないし、それがモチーフの姿に変身できるけど……。後、俺がここにいるのは見回りがあるからだよ。最近、アロガンスがあちこちで暴れているからね」

「なるほど」

「お仕事頑張ってください」

 

アルマジロは挨拶をして去っていった。

 

 

★★★★★

 

【1つ目・コーヒーカップ】

 

「これは、適度にハンドルを回して楽しむんですよね?」

「そうだ。好きに回していいぞ。たまにはゆっくりしたい」

「では、そのようにします」

 

 

刹那が後ろにもたれ掛かり、縁に腕を乗せるとカップが動き始めた。イカロスもそれに合わせてハンドルを回す

 

(? やけに速いな。まあ、いいか)

 

コーヒーカップが回っている間、刹那はただじっとしていた。周りが注目しているのにも気づかずに……。

 

 

★★★★★

【2つ目・観覧車】

 

「なぜ迷うことなく隣に座る?」

「ニンフの見る番組では、カップルがよくこうしていましたので」

 

現在、狭い観覧車の中で刹那はイカロスに寄りかかられる形で座っている。

 

(こう近いといやでも意識してしまうな。ほのかに甘い香りが漂ってきているし)

 

刹那が見つめていると、イカロスは振り向く。それにより、2人の顔が距離がかなり近くなり、刹那は赤くなる。

 

「どうしましたか、刹那?」

「いや、なんでもない」

 

刹那がそう言うのも聞かずにイカロスは刹那を自分にもたれかからせた。

 

「イカロス?」

「……こういう時ぐらい甘えてください」

「じゃあ、遠慮なくそうさせてもらうか」

 

温かく心地よい感触に身を任せ、刹那は少し目をつぶった。

 

 

★★★★★

 

 

観覧車を降りた後、刹那とイカロスはパンフレットを見ながら園内を歩いていた。

 

 

「次はどれに乗りますか?」

「プラネタリウムが新しく作られたらしいからそこに行ってみよう」

 

そんな2人を、肩までかかる黒髪と黒い瞳を持つ1人の青年が人通りの少ない場所から見つめていた。

 

「天使と人間か……。神界、魔界との交流が始まってから異種族どうしの恋人が増えたね。だけど、それが身を結ぶことはない」

 

青年はポケットからPと書かれた1本のメモリを取り出した。

 

「しょせん、奴らは人間を見下し、そこら辺にいる虫かなにかとしか思っていない」

《PUNISHER》

 

青年は悲しそうな瞳で空を見上げた。

 


 
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