No.655382

〜なんとなく 壊れている自分 Vol.5〜

夢で見た事を書いている詩集…と言うより散文集です。前の詩集に10編書いたので次の巻に移動してみました。
新しい詩をトップに、以下、下に行くにつれて古い詩になるように並べ替えてます。

◇超短編集のみ、ブログにて展開しています→ http://blog.livedoor.jp/gaeni/archives/cat_1213008.html
◆Vol.8はこちら→ http://www.tinami.com/view/757600

続きを表示

2014-01-17 20:53:00 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:803   閲覧ユーザー数:803

2014.5.28

「それは常識の範疇の出来事」

分かっていた筈だった

いつか どこかで 誰かが死ぬ事くらい

 

誰だって 知っている筈だった

いつか どこかで 誰かが死んだ事くらい

 

分かっていた筈だった

知っている筈だった

 

誰だって 誰だって 誰だって 誰だって

 

別に 私の身の回りの誰かが

死んでしまった訳じゃない

別に 私の身の回りの誰かが

消えてしまった訳じゃない

 

それでも私は 寂しくて 悲しくて 仕方がないのだ

 

分かっていた筈だった

知っている筈だった

 

涙も出ない 言葉も出ない

ただ それでも私は どうしても

こうして この感情を 吐き出さずにはいられないのだ

 

 

2014.5.27

「体育館海水浴劇場」

 

ある日 体育館に行くと

体育館の中に 大量の水が張っていた

最初 プールかと思ったけれど

さざ波がある以上 これは一応海らしい

 

足を踏み入れると 体育館の雰囲気はそのままに

空も砂浜も出現し

波打ち際で数人の生徒が

制服のまま ダンスの練習をしている

『みんな 行くよ!!』

センターにいる女の子の頭の上には半透明の吹き出し

よく見ると そこにいる子は皆半透明で

立体感が無い まるでホログラフ

 

体育館の上にある映写室に目をやると

そこに一人のおじさんが見える

そこで私は理解した

これは このおじさんが投影している物語だと

 

そこに 別の女の子が現れた

私と同じように ホログラフでは無い 本物の女の子

ダンスをよく見ようと海の中に踏み込んだ彼女の手を

センターの子はいきなり握りしめた

 

『一緒に踊ろう』

『ダンスは楽しいよ』

『友情を感じられるよ』

 

そしてそのままズブズブと かなり沖合にまで行ってしまった

だが 連れて行かれた女の子の様子がおかしい

手足をバタつかせ 激しい水しぶきを上げながら

センターの子に沈められそうにしているのを抵抗しているみたい

 

そして私は気がついた

少なくてもこの部分は 劇の範疇に無い事だと

それに うちの学校の体育館は そんなに広くないと言う事実に

 

考えるより先に 私は沖に向かって泳ぎ出した

大して泳ぎは得意じゃなかったけれど

溺れている人を見過ごす訳にはいかなかった

 

現場に行き着くと

私は 相手を沈めるのに夢中の センターの子の後頭部を想いっきり殴った

駄目元だったが 手応えがあり 彼女は電子信号のようにザザザっと姿を消した

 

私たち二人は手を取り合い 無事である事を互いに喜んだ

そうして帰ろうとした その時

私たち二人の足を 猛烈な勢いで引きずり込もうとする者がいた

 

「一緒に踊ろう ダンスは楽しいよ 友情を感じられるよ」

 

言うまでもなく 犯人はあの子だった

そしてそのセンターの子は もうホログラムではなかった

 

かと言って人間でもなかった

 

強いて言うならば

人間の皮を被ったホログラフ

 

もう 人間と見分けがつかなかった

 

岸辺に思わず目をやると

そこから逃げ出すもの 捕まるもの 変な薬を飲まされるもの

混乱を気にして見に来た生徒達が巻き添えをくらい 大変な事になっていた

 

映写機を弄っていたであろうおじさんに

機械を止めろと私は言おうとした

しかし 見上げた空は普通の空

どこにも 体育館の映写室など無かったのだ

 

だが今は そんな事を疑問視している場合ではない

私たちが助かる方が先決だ

そう思った時 私の目の前に手を差し伸べる者がいた

制服を着たまま 必死に泳いできたと思しき男の子

 

私たちは思わず彼に尋ねた

 

「あなたは 本当の人間なの?」

 

 

2014.5.22

「理由は別に 特に無かった」

 

みんながみんな 泣いていた

夕陽の街の片隅で

みんながみんな 泣いていた

 

生まれたばかりの赤ん坊も

年老いた老人も

空を見上げて ただただ 泣いていた

 

理由は別に 特に無かった

不幸な事故があった訳でも

偉大な人の訃報があった訳でも

今日も平和な一日だったと

本来なら安堵するような状況だ

 

強いて理由を上げるとすれば

今日もまた

一秒一秒進んで行く

その時計の音が悲しかったのだ

 

ある夕陽の街の片隅で

父も母も泣いていた

 

理由は別に 特に無かった

ただ 進んで行く秒針だけが

妙に恐ろしかったのだ

 

 

2014.4.25

「空想科学寝台特急」

 

白くて細長い

狭い廊下と白いドア

ここは寝台列車の中

みんな見知らぬ土地への旅立ちに

きっとワクワクしている筈

 

私は手持ち無沙汰だから

その細長い通路を歩き出した

他にもきっと

色んなものがあると思って

 

広いラウンジみたいな所に

みんなが集まって

楽しく会食し

 

少し奥に進むと

少し広くなった廊下

そうして古ぼけた

薄暗い空間に行き着いた

 

壁には沢山の計器とスイッチ

ホコリを被ったケーブルの束

そして無機質な雰囲気の

白衣を来た科学者達が

何やらボードを手にして

難しい数値を図っている

 

私が立ち入れる場所ではない

そう思って私は来た道を戻り出した

 

ラウンジにまで戻って来た時

他のお客さんから

こんな話を耳にした

 

「寝台列車なんて

もう時代に合わない

古くさい物だから

次々に廃線になる事が決まっているのさ」

 

言われて私は気がついた

この列車

走行音がまるでしないと言う事実

 

それはきっと

この電車が最新式で

そんな音がしないように

防音設備が完璧なのだろうと思っていた

 

そう信じていた

そう 信じていた

 

この電車には窓が無い

客室に戻っても真っ白な部屋にベッドしか無い

 

この電車には窓が無い

 

この電車には 出入り口が無い

 

私は気がついたら この電車に乗っていたのだ

 

この電車が走っているのか

そもそも本当に存在しているのか

 

私には知る術が無い

 

 

2014.4.23

「真の鎮魂歌(レクイエム)」

 

きっともう 命が失われると言う時

僕は何を発するだろう?

沢山の感情が溢れていても

それを口にする術は無く

ただ 沢山の涙を浮かべて

終わりにしてしまうかも知れない

 

溢れ出した感情を発するのに

この口は余りに小さすぎる

口から溢れ出なかった感情は

瞳からゆっくりと流れ出すに違いない

 

遥か遠くから聞こえる 透明な歌声は

一体何を唄っているのか?

僕にはただ理解出来ず

ただ 一定のリズムを刻みながら

僕の感情に寄り添うのだろうか

 

その歌声は 天使なのか 悪魔なのか

それとも 歌声と同じように

本当に透明で 存在すらしないのか

僕には調べようがなく

また 調べる必要も 無い

 

きっともう 命が失われると言う時

きっと僕だけに その歌声が聞こえて来る

 

世界中の誰もが

誰一人として

“僕”と言う存在が

消えて

いなくなってしまった事に

気付かなかったとして

 

その歌声達だけは 僕の事に気付いてくれるだろう

 

罪だらけだった

さよなら だった

罪だらけだった

さよなら だった

罪だらけだった

さよなら だった

罪だらけだった

さよなら だった

 

僕にはそう 聞こえてくるよ

 

そうして静かに瞳を閉じた時

僕も その歌声の一部分になるのだろう

 

罪だらけだった

さよなら だった

罪だらけだった

さよなら だった

罪だらけだった

さよなら だった

罪だらけだった

さよなら だった

 

 

2014.3.28

「雨戸」

 

ガラガラガラガラ

変な音が部屋に響く

 

ガラガラガラガラ

それは雨戸を閉める音

それって変な音?

そう思われるかもしれないけれど

この部屋の雨戸は

とっくに閉めている

 

なのに音は鳴り止まない

何度も何度も

ガラガラガラガラ

ガラガラガラガラ

第一 我が家にそんなに大量に雨戸はない

それでも音は鳴り止まない

ベッドに横たわり

布団を頭から被っても

延々と延々と

雨戸を閉める音が響く

 

気持ち悪い

凄く気持ち悪い

雨戸を閉めているだけなのに

物凄く気持ちが悪い

聞きたくない

不快な音だ

 

それだけの事なのに

凄く具合が悪い

動悸がする

目が回る

 

雨戸がうるさい

ガラガラうるさい

もうやめてくれ!!

雨戸なんか閉めなくていい

もう放っといてくれ!!

 

 

2014.2.25

「映画を見に行きました」

 

薄暗い高層ビルの一角に

その映画館はあったの

赤いビロードのどん帳に

数十人でいっぱいになりそうな席

何だか懐かしい雰囲気だねと

お友達とお話ししてて

 

そうだ

映画を見るにはパンフがいるよね

そう思って映画館を出て

さらに上にある別の映画館に行ったの

もっと上の階にも映画館があるらしいケド

そこまで行く気にはならなくて

 

カウンターの前で

数人が並んでいた

顔も性別も形も分からない

かと言って異形のものじゃない

人間っぽい人が数人並んでいた

何だか長い時を止めたような

セピア色の雰囲気を抱きながら

その列は流れようとしなかった

 

そうね 私も

後ろに並んで

ほんの少し 待っているけれど

何だか とても

長い時間 待たされてる感じがする

 

そもそも私 ここに何しに来ていたんだっけ?

そうよ 私は 映画を見に来たの

 

……何の 映画だっけ?

 

列の横に並べてあるポスターを見ても

黒く煤けてよく見えなくて

 

私 何の映画を見たかったんだっけ?

そして 一緒にいた筈のお友達はどこへ?

 

 

2014.2.16

「この世で最も速い船」

 

ある晴れた快晴の日

私は船に乗った

 

いわゆる高速船と言うもので

物凄く早く進めるらしい

白い色のシャープな船体

そこを案内されるままに歩き

甲板の下にある客席に通される

 

客席は狭くて

前の席に3人

後ろの席に3人

何故か和式で

畳の上に座って

見知らぬ人達と

前方にあるモニターで

早く走る船のシュミレーション画像を見てた

そのうち空まで飛んで行って

それはそれで とても楽しかったけれど

どうして私は こんな所で

所詮作り物の

偽物の画像を見ているのだろう?

 

私は船に乗ったのよ

世界で一番早いと唄われる船に乗った

だったら こんな所で

モニターなんか見てないで

甲板に

表に出ればいいのよ

 

私は外の景色を味わうべく

客室を抜け出し 階段を駆け上がり

甲板に出た 筈だったの

 

でも そこに広がるのは

どう見ても地下道で

どう見ても船の形跡は無くて

目の前には 駅の中みたいに自動改札が並んでて

そこを通り抜けると 沢山の人が

ランプの光の下でお食事してたの

 

おかしいね

私は船に乗った筈なのに

船に乗っていた筈なのに

 

どこまで

歩いても

歩いても

歩いても

歩いても

歩いても

 

ずっと永遠に

洞窟の中のレストランから

抜け出せないの

 

 

2014.2.1

「世界が色づき始めた頃」

 

真っ青な空の下に

透明なお城が立っている

 

透明と言うか 色が無いと言うか

 

真っ青な画用紙に

お城の線画が描かれてる

 

色を塗る前の塗り絵みたい

 

赤く細い線で 透明のお城が描かれている

 

子供の絵本に出てきそうな 大げさな中世風の城

その塔のてっぺんのバルコニーに

お姫様がいるの

やっぱり無色透明で

赤い輪郭だけがある お姫様

 

あ でもこれ やっぱり絵じゃないのね

お姫様が こちらを見た

私の方を振り返った

動いているから絵じゃないのね

 

きっと私は呼ばれてるんだわ

そう思ったから

お城の正門から中に入った

 

どこだか分からない場所を

延々と階段を上ったような気もするし

延々とボートで滑り降りてたような気もするの

 

そうして延々と 何もない所を進んでいた

 

そうしたらフッと 世界が明るくなった

欧米のクリスマスシーズンのような

優しい色をした空間に出くわしたの

 

暖炉の炎のような温かい光

ふかふかの絨毯と

棚に並ぶ たくさんのお菓子入りのブーツ

そうか ここはお店屋さんね

 

色とりどりのブーツの中から

私は一つのブーツを選んで

更に先へと 進んでいくの

 

そうして進んでいくと

世界が色づき始めたの

 

歩いている廊下にはエンジ色の絨毯

城壁は灰色

所々歯抜け状態だケド

段々色づき始めたの

 

でも 同時に

世界は歪み始めていた

 

計算されて描かれた筈の線画が

子供の落書きにみたいになって

 

お城の外装も更にちゃっちくなって

お城より大きい人が 私の方を見ているの

その表情は 出来損ないのアートって感じ

 

歪み始めて気付いたの

私が会いたかったお姫様は もういないんだって事を

 

でも 私には

もう 戻る手段も 無いんだって事を

 

 

2014.1.17

「悪い風邪が流行っています」

 

悪い風邪が流行っています

 

ずっと工事中のまま シャッターが開かない商店街

その開かずのシャッターを使っての 映画の上映会

シャッターに映し出されたのは セピア色の里山の風景

 

道路に ありとあらゆる形の椅子を並べ

そこに街の人が ぽつり ぽつりと座って

スクリーンの里山に 想いを馳せて

久しぶりに会った おばあちゃんも

久しぶりに会った おともだちも

じっと その光景に見入っていて

 

みんな そのまんま 何も変わらずに

具合が悪いとか そんな様子を全く見せずに

口から何かを吐き出してるの

液体のような そうじゃないような

何とも形容し難い黄色い絵の具みたいなものを

口の奥から吐き出してるの

 

私はぎょっとして みんなを見やるけれど

みんな本当に 顔色一つ変えないの

寧ろ私の方を見て

どうしてそんなに驚いてるの?

そう言って逆に驚くの

 

通りすがりのワンちゃんも

やっぱり口から黄色い液体を吐き出して

でもやっぱり 具合悪い様子は見せないで

私の足下で尻尾を振ってるの

 

私はどうしていいのか分からなかったから

大きな大麻のシートを客席にかけて

下に消臭剤を放り込んで逃げて来たの

 

悪い風邪が 流行ってるみたいです


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
1
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択