No.430923

なんとなく 壊れている自分 ~Vol.2~

夢で見た事を書いている詩集…と言うより散文集です。前の詩集に10編書いたので次の巻に移動してみました。
新しい詩をトップに、以下、下に行くにつれて古い詩になるように並べ替えてます。

◇超短編集のみ、ブログにて展開しています→ http://blog.livedoor.jp/gaeni/archives/cat_1213008.html
◆Vol.8はこちら→ http://www.tinami.com/view/757600

続きを表示

2012-06-01 12:51:25 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:865   閲覧ユーザー数:861

2012.11.8

「新説 眠り姫」

 

眠り姫は眠る事を拒絶した

 

生きて動いている姫なんて必要無いと

世界は眠り姫の存在を否定した

 

眠り姫はそれでも生きて動く事を止めなかった

眠る事に意義を見いだせなかった眠り姫は

世界の否定を否定する為に

眠り姫の肩書きを捨て

天に舞い

そして神になった

 

世界にだって 私の存在を否定する権利なんて 無いんだから

 

 

2012.11.1

「荷物代行係」

 

男はただの清掃員だった

片田舎の銭湯を掃除する清掃員だった

白い石造りのこの田舎で ずっと清掃員でいるつもりだった

 

ある日 開店前の掃除をしている所に一人の男が現れた

私の荷物の身代わりになってくれないか?

そう唐突に頼んで来たのだ

 

そして気がつくと 周囲にベルトコンベアーが広がっていた

黒いベルトの一筋の川

あっと言う間に銭湯は空港の荷物監視センターへと姿を変えた

 

男は言う

大事が荷物がある この便で届けなきゃならない大切な荷物がある

だが その荷物の行方が分からないと言う

だがら 貴方が その荷物の代わりにコンベアーに乗り

荷物監視センターの検査を受けて欲しいと

大丈夫 荷物が無事に見つかったら差し替えておきますから…と

 

そんな事は可能なのか?

よく分からない上に承諾した覚えも無いのだが

清掃員の男はいつの間にか 体育座りをしてベルトコンベアーに乗っていた

沢山の監視員の目を抜け 異様に長い通路を抜け

清掃員の男はいよいよ飛行機に乗せられようとしていた

 

そんな時 後方から荷物をかき分け 清掃員に近づこうとする者がいた

荷物の代わりを頼んだ男だ

黒いキャリーケースを抱え 一心不乱に走ってくる

必死の形相で シャツには血が滲み 必死に追いつこうとしているのだが

ベルトコンベアーの流れは異様に早く

必死に走っても とても追いつけそうにない

 

ああ 追いかけてくれたのか

清掃員の男はそう思った そう思うだけだった

手足は硬直し 振り返る事も出来ず 声も上げる事も出来ず

ただベルトコンベアーの流れに身を任せるしかなかった

 

何故なら彼は荷物の代わりになっているのだから

 

そうして清掃員の男はそのまま飛行機に乗せられ

異国へと旅立つ事になる

清掃員としてではなく ただの荷物として

 

意識が消えてなくなるのも そう遠くはないだろう

 

 

2012.10.13

「ケータイ系ソーシャルゲーム」

 

焼けるように赤い夕焼け空の下

二人の屈強な男達が

住宅街の空き地で殴り合いの喧嘩をしていた

 

一体何があったのだろう?

私は空き地に立ち入り二人の様子を伺った

 

足下に落ちていたのは2台のケータイ

お互いに同じソーシャルゲームの画面を開き

片方は仲間を申請しようとしていて

もう片方は その申請を拒否しようとしていた

 

そうね だからこうなったのね

お互いゲームの中だけなら 殴り合いにはならなかった

所が 本当に偶然 この町で鉢合わせてしまったのだろう

 

強要される関係 強制される連帯感

その男は それに異議を唱えたかった

でも相手にとって それは許し難い事だった

 

そうね どっちが正しいのでしょう?

まぁいづれにせよ

リアルで殴り合ってる時点で どっちも駄目だと私は思うのだけれど

 

 

 

そんな私の声は 誰にも届きそうにない

 

 

2012.10.12

「…忘れて しまった」

 

頭の中に それは確かにあった筈なのだ

あった事は明白なのだが

そこに何があったのか 私には思い出せない

 

…忘れて しまった

 

何かを言おうとしていた

何かを伝えようとしていた

事柄なのか想いなのか

ともかく私は 何かを伝えたかった筈なのだ

 

…忘れた事は 覚えている

…何かがそこにあった それだけは 覚えている

 

本来忘却と言うのは無色透明で

跡形も無く消え去ってしまう筈なのだ

記憶の片鱗も残さずに消え去り 後に何も残さない

 

本来 忘却は消去 忘れた事すら 忘れてしまう

 

だが私の場合は

確かに頭の中に それがあった筈なのだ

喉まで出かかったその言葉

私は何を伝えようとしていた?

 

頭全体が白いもやがかかったようになり

手探りしても 決して見つけられない

けれども確かに そこに何かがあった筈なのだ

 

そこに何があったのだろう?

 

 

…忘れて しまった

 

 

2012.9.11

「…リアリティ…?」

 

暗い暗いコンクリだけを打ち付けた部屋の片隅に

ポツンと立てかけられた紺色のキーボード

モニターも何もないその部屋で

キーボードの表面が所々不気味に光る

 

象形文字だろうか?

小さなミミズのようなそれは

キーの上をゆっくりと這いまわり

アトランダムに赤い光を放つ

 

暫く眺めていると

エンターキーの部分だけが真っ赤に光り出した

まるでサイレンのように瞬き

何か警告を発しているようだ

 

私はコンクリートを打ち付けた階段を駆けあがり

建物の外に出た

その玄関先では沢山のクルー達が

巨大なロボットの周りを忙しそうに走り回る

これから戦争が始まる

これから戦いが始まる

そんな雰囲気の中 彼らはロボットを整備していた

 

けれども私は その様子を どこかぼんやりと見つめていた

見上げた空は酷く青い

クルー達の騒音を無視すれば きっと物凄く静かに違いない

 

本当に戦争なんか起こるのだろうか?

 

手の中のケータイは

相変わらず怪しげなスパムメールばかりが届き

どうしたことか

私の日常はちっとも変っていない

 

本当に 戦争なんか起こるのだろうか?

 

 

2012.8.11

「大量殺戮」

 

裕福な人達が住んでいるとされる街に

武装した集団が突如襲撃してきた

理由は分からない

理由なんか無い

行き詰まった彼らは次の一波乱を起こす為に

その手段を問わなかっただけの話だ

 

僕たちの住む場所にも彼らは迫って来た

武装集団はドアを蹴破ると

リビングにいた僕たちに機関銃を向けた

僕はとっさにテーブルをひっくり返し

床に設置された地下シェルターへの入り口を開け

その中に滑り込んで行った

 

だが 一緒にいた弟が

突如その入り口から顔を出してこう言ったのだ

「僕は悪魔の血が流れているんだ!!

お前らなんかに負けるもんか!!!」

 

…確かに そう言われた事があった

病気の為に顔色が悪く 周囲の者にそう言われ

村八分にされた事もあった

けれど かと言って弟に特殊な能力が備わっている訳が無く

ただ普通の人間が 機関銃に立ち向かっていける訳が無い

 

無音のまま 異様なまま

弟は頭の部分だけを蜂の巣にされた筈だ

…この目で見た訳ではない

振り返った訳ではない

助ける術は無い…

僕はその場から走り去り シェルターの奥へと駆け抜けた

何も思わず 何も振り返らず 涙すら湧かず 感情を揺り動かされる事も無く

ただひたすら 暗い通路を 僕は 駆け抜けて行った

 

その地下シェルターはマンホールのように

各家庭から入り口が伸びている

他の人にすれ違ったのかも知れない 誰とも会わなかったのかも知れない

とにかく全ての 音と言う音が 僕の中から消えていた

 

どこをどう走ったのか…

あの武装連中は追いかけて来たのか…

他の子達はどうなったのだろう…?

その一切の疑問に答える事無く

僕はその行く手を 司令室めいた場所に遮られていた

 

壁一面の大量のモニター

その全ては水泡を延々と映し出している

その一角にある キーボードと思しき物体と その上にある小さなボタン

5つのボタンは一つ一つに違う幾何学模様が描かれ

ちょうど手のひらを広げると 全てのボタンを一度に押せそうな形だった

 

『貴方が押しても無駄よ』

 

背後から少女の声がした

武装集団なのか この街の者なのか僕には分からなかった

 

『それは指紋と静脈を読み取る装置

 元首クラスの人間だけが起動出来る装置

 この街を炎に包み込み滅ぼしてしまう装置

 貴方には起動させる事は出来ないわ』

 

僕はそんな彼女の声を無視し 手を触れようとする

 

『     』

 

そんな僕の背後で 再び彼女は何かを口にした

恐らく制止しているような声色で

でも僕には 何を言っているのか分からなかった

第一 僕に起動出来ないと言うのなら 僕がやめる理由も無いだろう?

 

僕はその装置に指を触れる

親指から順番に ゆっくりと そのセンサーに指を触れる

全ての指が触れたその時

地面の奥底

遠い所から

地響きのような音が響いてくる

恐らく---そう 火山が噴火する前の音

 

僕はセンサーから手を放し ゆっくりと背後を振り返る

黒尽くめなのか黒い服を着てるのか分からない彼女が

僕に何かを一生懸命喋っているが 声はまるで聞こえない

 

…僕は元首なんかじゃないよ? 普通の街の男の子だよ?

ねぇ?そうでしょ?

僕は普通の男の子だよ? 弟だって普通の人間だよ?

この街は堅守じゃなかったの? 普通の街だったの?

攻めて来た人達は何だったの? ねぇ 本当に彼らが悪い人なの?

他の人達はどこに行ったの? みんなシェルターに逃げたんじゃないの?

ねぇ?

何で?

どうして?

普通って何?

特別って何?

ねぇ教えてよ…

何が真実なの?

何があったの?

本当は何が悪かったの?

…僕なの?

本当に悪いのは僕なの?

弟を助けられなかったのも

この街を滅ぼしたのも

全部 全部

僕が悪かったの!?

 

僕は揺れが強くなる司令室の中で

狂ったように泣きながら笑い飛ばすより仕方が無かった

 

僕が悪いの!?

ねぇ教えてよ…

僕が悪いの??

僕が悪いの?????

 

 

2012.7.6

「とあるビルの死」

 

駅前にある高層ビルが ねじれるように倒壊した

確かに前兆はあった

前から徐々に横倒しになっていて

沢山の赤い支柱で支えられてた

倒れる直前にも 大男がビルを支えるように立っていたけれど 倒壊を防ぐ事は出来なかった

 

大量のガラスの破片 そして がれき

ねじれるように倒壊したビルは

周囲にそれらを撒き散らしながら消えていった

飛び散ったがれきは思ったほどでもなく

周囲の建物を押しつぶす事も無く

ただ そう ひっそりと

音も無く消え去った

 

町の人はビルの死を悲しみ

辛うじて残ったビルの三階部分に集まっていた

皆 手には青い破片を持ち

三階部分にお参りして帰っていく

 

私もがれきの中から青い破片を取りだし

倒壊したビルの中に入っていく

 

行列をなし

所々崩れかけた階段を上り

目的の三階に到着すると

そのフロアには一本の倒壊した柱があった

まっ白い大理石のようなそれは一本の柱にしか見えなかったが

供えられた大量の青い破片のせいなのか それは女神像のようにも見えた

 

私は破片をお供えし祈りを捧げた後

駆け抜けるように階段を下って行った

そしてがれきが散乱する表に出た時

振り返ると 辛うじて残っていたビルの残骸が消えて無くなっていた

 

壊れた町のセットのように

そこから先は 何も無い 空白の世界が支配していた

 

 

2012.6.26

「冬のプラネタリウム」

 

プラネタリウムの脇にある

木製のベンチとテーブル

公園にありそうなそのベンチの隅

一人座れそうな部分だけ

色が禿げて えぐれている部分がある

 

そこには昔 誰かがずっと座っていた

行く所が無いのか 家が無いのか

それは分からなかったが

一人の男が

何も言わず 死んだように黙ったまま

星空にも目もくれず 座り続けていたらしい

 

でも いつのまにかいなくなっていた

本当にいつの日か いなくなってしまった

何故 どうして いつ どうやって

いなくなってしまったのか分からない

何故なら 誰もその男に気をかけなかったから

 

ほら 今夜の鑑賞は寒いからと

プラネタリウムのおじさんが防寒具を出してくれた

肌寒い星空の下

借りた防寒具に身を包みながら

空を見上げど 偽物の星空には目もくれず

 

その男がどうしていなくなったのか

 

私はそんな ある意味 どうでも良い事が

 

酷く気になって仕方が無かった

 

 

2012.6.19

「簡単な事?」

 

私は気がつくと

よく知らないアイドルか何かの

マネージャーになっていた

 

薄暗い怪しげな部屋で

ファンとの交流会をやるとの事で

お菓子を配って回る役目を与えられた

 

でも 私には出来なかった

部屋を抜け出し

一目散に逃げ出した

 

「どうして そんな簡単な事も出来ないの?」

そう言われたって

出来ないものは出来ないの

みんなにとって簡単な事でも 私にはとても難しかった

 

来る人来る人来る人来る人

みんな人間に見えなかった

 

部屋の薄暗さに溶けるような 影のような存在で

顔もみんな黒ヤギの頭にしか見えなかった

でもみんな さも人間ですって雰囲気で

椅子に座って私を見るの

 

不気味以外に形容しようが無く

私は逃げるより他になかった

 

「どうして そんな簡単な事も出来ないの?」

 

だったら貴方がやってよ

私には出来ない 嫌よ嫌! 無理無理無理無理!!

そんなに簡単だと言い張るなら

 

貴方がやればいいじゃない!!!

 

 

2012.6.1

「嘘っぱちの仏像様」

 

冷たい石碑の色と

暖かい灯篭の色

それらが混在する不思議な空間

沢山の仏像の前に置かれた灯篭のゆらめきが

厳かな空間を作り出している

 

けれども

ここにある仏像は 皆 偽物

レプリカなんだって

どうしても人前に出すと 盗んでいく輩がいるから

本当に大切なものは ここには出しておかないんだって

 

見た目 こんなに厳かで美しいのに

貴方達は偽物なんだって

価値は無いんだって

でも 私達は毎日 ここに来てお祈りをしている

 

なら 私の祈りはどこに行くの?

どこに向かっていくのだろう?

 

私の祈りは偽物じゃないのよ

偽物じゃないんだったら

でもやっぱり大切なものは

大事にしまっておかなければならないのなら

 

私の祈りは…


 
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