No.535322

〜なんとなく 壊れている自分 the origin 2007-1〜

夢で見た事や思いついた文字を羅列している詩集…と言うより散文集です。以前ブログにて掲載していたものをこちらに転写しました
下に行く程古く、上に行く程新しいものです。

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2013-01-23 21:17:55 投稿 / 全31ページ    総閲覧数:605   閲覧ユーザー数:605

2007.2.21

「室内打ち上げ花火」

 

室内花火をドカンとあげよう

天井付近で炸裂させれば

嫌いなアイツの首も吹き飛ぶ

奇麗な打上げ花火も見られて 一石二鳥さ

 

けれど そんな事は 中々上手く行かなくて

室内で上げた花火は 確かに天井付近で炸裂するけど

嫌いなアイツの首を吹き飛ばすまでに至らない

 

室内に吹き上げる噴水と 天井付近で炸裂する花火

二つが合い迫って 美しい光景を作り出す

嫌いなアイツは それを見て喜んでいるだけ

周囲の人間も それを見て喜んでいるだけ

 

室内に広がる大輪の花火

ドーン ドーンと弾ける音を 僕はどこか空しく聞いていた

 

 

2007.2.19

「絶望を知るべきだ」

 

空を見上げ 手を伸ばし

闇に浮かぶ星を手に取ろうとする

空に舞う鳥に思いをはせる

 

希望を掴みたい 別のものに生まれ変わりたい

誰もが一度は 思った事があるだろう

 

しかし ある日突然目が覚めたら

 

借金が全て無くなってました とか

絶世の美人になってました とか

優秀な頭脳を持っていました とか

「ぜひアイドルとして」なんてスカウトが来ました とか

 

そんな事は有り得ない 絶対に

 

星は空に輝く星でしか無いように

鳥は空を舞う鳥でしか無いように

 

人間は 地面を這う 生き物でしか ない

 

所詮 君は 『君』でしかないのだ

 

 

2007.2.18

「祈り願い理想郷」

 

十字架に何を祈る?

 

祈ったって

天国には行けないぜ

祈ったって

世界は平和にはならないぜ

 

それでも尚 何を祈る?

 

ズタズタになった記憶を取り戻す?

ボロボロになった心を蘇らせる?

消えてしまった恋を取り戻す?

 

瞳の奥に 本当は見えているんだろう?

お前の描く 理想の世界

気高く 何事にも動じない お前の姿を

 

ならば やるべき事は ここで祈る事なんかじゃない

 

祈ったって

お前は変われないぜ

祈ったって

お前は変わらないぜ

 

立ち上がれ 拳を床に叩き付け

突き進め 十字架なんかけり飛ばし

手を血で染め上げてでも そのドアを開けて 先に進め

 

どこに進めばいい?

そんな事は 神にだって分からない 俺にだって分からない

 

瞳の奥に 答えがあるのなら それに従え

お前の理想

~理想的なお前なら どんな行動を取る?~

 

理想郷は 案外 遠くないもんだ

理想郷は 案外 小さな一歩から始まるんだ

 

涼しいか?

外には 教会の中には無い 新しい風が吹いているんだぜ

 

 

2007.2.17

「夢に落ちる」

 

隔絶された意識の中 細切れになった神経

一つ一つが不均等で 酷く醜くて

 

私は今から 消えてなくなる この世の中から

 

宙に投げ捨てられた 粉雪の如く

深い眠りに 落ちて 消えていく

 

血も涙も無い 細切れになった意識の中で

意味があるのか 意味が無いのか

走馬灯だけが 断片的に回り続ける

 

何が見える? 何も見えない?

何かがきっと そこにはあるのに

細切れになった意識は それを自在に制御する事も出来ない

あるがままを見つめ 受け入れていく

 

あなたはだれ あなたはわたし わたしはあなた

 

そこにあるのは まぎれもない“自己”なのに

 

 

2007.2.16

「事故車両」

 

そこの駐車場で事故があったよ

車はボディ中央部分から くの字に曲がり

何だか酷く走りにくそう

それでも必死で走ろうとするけれど

速度が遅くて 話にならない

 

仕方が無いから バスに乗っていこう

無事だった人を乗せて バスは宛ても無く進んで行く

そこの角を曲がった先に 目指すお店がある

創業50年のお土産屋

確かに広くて 立派だっただろう

 

…過去形だけれどもね

行った時 既に店は潰れて廃墟になってた

店に辛うじて残っていたフライを食べてみたけれど

味が変わっている 食べられない事はないんだけれど

 

車も店も 潰れてしまったらお終いだね

どんなに立派でも どんなに高価でも

潰れてしまったら お終いだね

 

 

2007.2.15

「地下51階の洋服売り場」

 

洋服を買いにショッピングビルに行こう

洋服売り場は このビルの地下にある

エスカレーターで下っていこう

どこまでも どこまでも

下れる限り 下っていこう

 

そうして行き着いた 地下51階の洋服売り場

高い吹き抜け 天井が闇に霞んで見えないわ

 

地獄の業火に焼かれ 爛れた壁 煤けた空間

見えない天井から吊り下げられた洋服は 全て真っ黒 喪服みたい

あまりの量に圧倒されるわ

服達の怨念が この部屋に篭っているみたい 押しつぶされそう

 

怖い?

ううん 何か故郷に帰ったような気分よ

山積みにされた 黒焦げの洋服達が 私を迎える

きっとここが 本当のわたしがいるべき場所なんだわ

 

もうエスカレーターなんかいらないわね

ただいま ここが私の故郷

 

 

2007.2.9

「RINGO」

 

太く大きな幹の上

緑が茂るその中に 大きなリンゴが実ってました

「これは禁断の果実だよ

 食べちゃいけないんだよ」

そんな風に 言われていました

 

けれど それも今や昔の話で

世界中の木から リンゴが採られ

缶詰にされて ジュースにされて

 

缶詰の中で窒息したリンゴは卵を壊し

体液を絞られたリンゴは雛を殺し

少しずつ少しずつ この世界を壊していく

 

木々も少しずつ減って 鳥も少しずつ減って

そうして ゆっくりと

世界は滅んでいくんだよ

 

それが 禁断の果実を採った報復なんだよ

 

 

2007.2.8

「ドラゴンを見に」

 

ドラゴンを見に行こうよ

この特急電車に乗れば 乗り換えなしで直行出来る

 

ドラゴンを見に行こうよ

険しい山道も 激しい滝も

頭に注射を一本打てば

苦にならずに歩いて行けるよ

船で行くには あまりにも高いから

だから歩いて 山を登っていこう

 

ドラゴンの吐き出す激しい炎は

家なんか簡単に焼いてしまう

黒焦げになって 骨組みだけになった家に

ハンモックに寝たままのおじいさんが

何が起こったかも理解出来ずに 佇んでいる

 

どんなに注射を打っても

あの炎はかわせない

触れたら最後 黒焦げになってしまう

ドラゴンを見た日が きっと僕の命日だ

 

でも大丈夫

地面に落ちた銀色の剣が

確かに僕が生きて ここに来た証になるだろうから

 

 

2007.2.7

「永遠に…」

 

限りない砂漠を 走り続ける

目指すは町かオアシスか

ともかく 生命を維持出来る場所

 

紫色の風が 頬を撫でる

町やオアシスはおろか 蜃気楼すら

視界の中に入って来ない

 

俺は全速力で 走り続ける

しかし 進んでいるのか 戻っているのか 分からなくなってる

 

紫色の風が 頬を撫でる

永久に続く砂漠

永久に走り続ける俺

壊れたビデオテープのように

同じシーンだけを 繰り返す

 

周囲の人が不思議そうに そんな俺を見つめている

そして 何事も無かったかのように 俺の脇を通り過ぎていく

 

永遠に吹く紫色の風

永遠に走り続ける俺

永遠に辿り着けない町

永遠に見つけられないオアシス

 

俺だけが

 

周囲の人には見つけられるのに

周囲の人間は進み続けるのに

 

俺だけが

 

永遠に 進むべき方法が 分からずにいる

 

 

2007.2.6

「それ行け ヤブ医者(ドクター)」

 

気が重くて やる気が無くて

どうしようもなくて

病院とやらに 行ってみた

 

出てきたのが とんでもないモウロクじーさんで

俺の話がよく聞こえないらしい

「はぁ?」「もう一回言って」「大きな声じゃないとワシには聞こえん」

そんな言葉のオンパレード

 

仕方がないから 俺も大声で

気持ちがスッキリしない事を説明する他無い

 

一通り説明したら モウロクじーさんは何て言ったと思う?

 

「それだけ大声で話をしたら

 少しはスッキリしただろう?」

だってさ

 

 

2007.2.2

「ひび割れた水面」

 

深い深い海の底

見上げればコバルトブルーの水面が広がり

魚達が泳いでいるのが よく見える

 

けれど ある日そんな魚達に混じって

戦闘機の大きな影が映りだした

水面はひび割れ

海水は爆撃と魚の体液で茶色に染めあがる

 

ねじれて 曲がった階段の先にあるホテルで出される料理は

焼け爛れた魚だけ

 

人々は狂ったように 泣き叫びながら踊るだけ

出される飲み物は 黒く爛れたカクテルだけ

 

ひび割れた水面に映るのは 黒く大きな 戦闘機だけ

 

 

2007.2.1

「太陽と月」

 

太陽と月が 同時に光を放つ

昼と夜とか混在した空は

灰色に染めあがる

 

起きるべきか 眠るべきか

鳥達も混乱し

バタバタと地面に向かって落ちていく

 

奪われた昼下がり

一緒に上がった太陽と月が沈む時

その時に流れる時間は

一体全体 何なのか?

 

 

2007.1.31

「一瞬で消えた街」

 

一瞬の出来事だった

何が起こったのか 神すらも理解出来なかった

 

一瞬の閃光も走る事も無く

一瞬の爆音も走る事も無く

 

街は一瞬にして 消え去った

 

全ての建物が瓦礫に変わり

全ての人が灰になった

青い空は焼け爛れた茜色に変わり

山の緑は全て黒く立ち枯れた

 

人々は痛みを感じるより早く その肉体が消えうせた

瞬き以上に短い その一瞬で 全てが…

 

その街で生き残った者は 誰もいなかった

その街に残された物は 何もなかった

そして真相は謎のまま 明かされる事はない

 

試験管の破片だけが 風に吹かれてカラカラと舞う

 

 

2007.1.30

「切断頭部」

 

ナイフを手に取り 不必要な部位を切り取る

真っ先に首をもぎ取り 顔を 頭を 切り落とす

 

余計な概念に 縛られた頭脳は 必要無い

 

頭を まるでサッカーボールのように

胸の辺りから足元に落して

天高く 蹴り上げる

 

さあ 今まで見た事の無い風景を見るがいい

さあ 今まで感じた事の無い風を感じるがいい

頭を蹴り上げる たったそれだけの事で ほら こんなにも 変わった気がする 変われた気がする

 

縛られたと思い込んでいる そんな考えは必要無い

私が生きていく上で そんな考えは必要無い

余計な概念など 宇宙の果てに捨ててくるがいい

 

私の頭は 今は 果てしなく 自由だ

その自由を 今まで感じようとしなかった自由を感じるがいい

 

蹴り上げて宙を舞い 空を堪能した頭脳は

再び 重力の法則に従い 落下していく

そして 何事も無かったかのように

元あった首の位置に すっぽりとはまる

 

じゃあ 行こうか

余計な概念など蹴り上げて

余計な概念など振り捨てて

 

 

2007.1.26

「奇怪な記事」

 

何気なく新聞を読んでいたら

あるクリエイターの記事が載ってた

 

ぼーっとしながら記事を追うと

その作品の独創性やら何やらが 奇妙な形で褒め称えられている

 

酷く他人事のように読んでいたのだけれど

「ある日から、社会人としての自覚を持ったのか

 普通の仕事をするようになり…」

って これ わたしの事なんじゃないの?

 

確かにわたしは学生の頃

クリエイターの真似事をしていたわ

でも どこにも発表していない その作品達を

何故 この記者は知っているの?

普通に社会にでたわたしが 何の仕事をしていたかまで書いてある

嫌だ どこでこんな詳細なデータが分かったの?

 

「再び、このクリエイターの新作を目にする事がある事を

 僕は静かに待っています」

 

記事の最後は こんな文章で閉められていた

嫌だわ せっかく全てを振り切って “普通の”人になったのに

 

そんな事を記事にされたら

また その気に なってしまうじゃない…

 

 

2007.1.25

「地獄と絶望より深い場所でのお話」

 

太陽も 大気も 己の身体すら無い

絶望的な状況の中

心と言う名の精神だけが

もがき 苦しみ続けている

 

光と大気を求め

戦う意識はあるのだけれど

悲しきかな 肉体が無いその心は

どんな武器も 手に取れない

 

周囲に 同じように残った 精神達は

こんな絶望的な状況にも 何も思わない

 

いや 違う

ここに違和感を感じる心すら

彼らは持っていないのだ

 

太陽も 大気も 己の身体すら無い状況を

絶望と思う気持ちすら失って

ここに こうして居る事に 何の疑問も疑念も無い

肉体を取り戻す事も 光と大気を求める事も 一切しないで

ここにいるのが さも当然のように そこに佇んで 動かない

 

肉体が無いのに 精神だけが残っているのに

向上心を失わない精神体だけが

絶望より深い場所で もがき続けている

 

 

2007.1.23

「戦争映画」

 

戦争映画を見に行った

広い映画館に 客は自分一人

何故か好きでもないポップコーンを食べながら

大画面をじっと見やる

 

スクリーンの向こうでは 弾丸が飛び交い

兵士の怒号が 爆発音が 途切れなく流れてくる

どっちが敵でどっちが味方か

理解出来ぬうちに 沢山の兵士が血を流して倒れていく

 

延々と その繰り返しだけ

延々と 戦争の様子を写すだけ

余計なナレーションも無ければ ストーリーも無い

どっちに焦点を当てたものかも 分からない

 

フと目にしたパンフレットの片隅に こんな文字が並んでいた

 

「この映画はノンフィクションです

 世界中の戦争が終わらない限り

 この映画も終焉を迎える事はありません」

 

 

2007.1.21

「平和な戦場に立つ君へ」

 

張り裂けた胸の内から

取り出したるは 1本の腐ったナイフ

それを振りかざし 戦う君よ

その戦う意義は 一体どこに残っているのか?

 

そのナイフは もう役には立たぬ

君自身も 戦う力など残ってないのに

 

自分の 存在意義を 確立させる為に 続けているのなら

もっと違う方法もあるのではないか

 

自分が 生きる事

自分が 今 在る事

 

誰も君の存在を否定していないのだ

否定的なのは 君自身なのだ

それに気付かない限り きっと前には進めない

 

腐ったナイフは 自分も 人も 傷つける

投げ捨てれば必ず道が開けるとは言わないが

きっと 恐らく “何か”が変わる

 

 

2007.1.21

「ソコナシヌマ」

 

隔絶された世界の中で

君と君と君と言う名の僕だけがいる

青紫の空の下

虚ろな感じの人間達が ちょろちょろと動き回る

 

実生活で不要とされ

切り離された人格が

在るべき肉体を失い この世界に来る

 

幽霊? ドッペルゲンガー?

いや違う 精神体だけの世界

肉体を無くし 居場所を求めて 彷徨う世界

 

そして 余りに沢山の人格を切り捨てた肉体も

いづれ この世界で迷う事になる

“本当の自分を探す為に”

 

探せば探すほど見失い

探せば探すほど分からなくなる

失ったものを閉じ込めるこの世界は

どことなく 底なし沼に似ている

 

暗闇が広がる 魔の世界と言う所も…

 

もがけばもがくほど 抜けられなくなると言う所も…

 

生気を奪い そして生気が感じられない所も…

 

 

2007.1.19

「燃え盛る街の中で」

 

今まさに その地上は

激しい炎に襲われている

雨乞いをする地上絵も全て

激しい炎に 焼き払われる

 

今まさに その地上は

激しい炎に襲われている

望みの雨は 降る気配も無く

炎を消す手立ては 何一つ 無い

 

さあ どうする?

全て 自分の身体も燃え尽きる事を承知で 炎を消すか

全て 自分の財産が尽きるのを承知で 生き延びるか

 

炎が消える確実な方法は どこにも無く

自分が確実に生きて逃げる方法も どこにも無い

生きるか 死ぬか

生き証人になるか 悲劇の英雄になるか

 

運命の神を呪う暇すら無い

生きるか 死ぬか

どちらに賭けるかは お前次第 だ

 

 

2007.1.18

「七色だったカーディガン」

 

余った毛糸でカーディガンを作りましょう

余った毛糸を寄せ集め 様々な色で編んでいく

赤や青 ピンクや白

様々な色で カーディガンが染まっていく

 

でも このままじゃ いかにも寄せ集め

出来そこないって感じが否めない

実際 余った毛糸を寄せ集めているから

当然と言えば 当然よね

 

だから この色とりどりの部分は裏地にしよう

これを中にして 外側だけでも統一しましょ

幸い 黒い毛糸だけがやたらある

これを外側に使いましょ

 

赤や青 ピンクや白の上から

黒い糸を編んでいく

内側に様々な色を秘めた 黒いカーディガンが出来上がる

 

これはあなたにプレゼントするわ

あなたの肩幅に合わせて作ったから

大切にしなくていいケド 一度くらいは袖を通してね

 

 

2007.1.17

「魂の迷宮」

 

人の心は 迷路で出来てる

 

だから

時に 自分を見失い

時に 目指す方向が分からなくなる

 

だから

自分の事を分かっているようで

意外と分かっていないのよね

 

人の心は 迷路で出来てる

人は その中を彷徨いつづける 旅人なり

 

 

2007.1.16

「変わらぬもの」

 

海風が運ぶ 海辺の街

なんてキャッチは今や昔

どす黒くなった空に 乾いた空気

この街に昔の雰囲気はどこにも無い

 

昔は澄み渡る広い空があり

こんこんと湧く水もあった

海岸線から風に乗って流れてくる潮の匂い

今は そのどれもが存在しない

 

けれども 今も昔も 変わりなく存在しているものがある

 

この街の一番の権力者 金持ちの家

その家は 街がこんなに荒んだ今でも

金ぴかの家に住み

金ぴかの庭を持ち

金ぴかの椅子に座る

街の者が食うに困っている時でも

その家では 今も昔と変わりない

豪華な海の幸が食卓に並ぶ

 

街がどんなに変化しようが

どんなに滅びようが

 

一部の金持ちが権力を握って裕福に暮らす

この構造だけは 変わらない…

 

 

2007.1.15

「からっぽの家」

 

大災害が起こる夢を見た

地震か津波か分からないけれど

家が崩壊し 何もかも失う夢を見た

 

だから僕は

家が崩壊してもいいように

全ての家財道具を処分して

土に埋めた魚も

瓶に詰めた鳥も

全て空に逃がしてあげた

 

からっぽになった家を見て

君は恐らく驚くだろう

ひょっとしたら 怒り出すかも知れない

 

けれど 決して 怒らないで

そのからっぽの家は

例え災害が起こっても

確かに僕が生きている 証拠になるのだから

 

 

2007.1.14

「不法侵入」

 

この先を真っ直ぐ飛んだ あの雲の向こうが 私たちが目指す天国なの

でも そのまま真っ直ぐ行ったら駄目よ

私たちは入れてもらえないわ

 

裏手に回って この雲の薄い層を突き抜けるの

ここなら警備も手薄だから 紛れ込んで行ける

 

ん?

それは不法侵入だろうって?

 

それは否定しないわ

でも大丈夫よ

例え見つかって 打ち抜かれたとしても…

 

私たち もう死んでいるから

何も恐れる事は無いわ

行きましょう 天国へ

例え どんな手段を用いても

 

 

2007.1.11

「新年パーティー」

 

今日は新年パーティーの日

みんなで沢山のご馳走を食べて

新年を無事に迎えられた事を喜ぶ行事なの

 

あちこちの家では 腕によりをかけ

豪華な食事を作って

新年が来た事を祝っている

 

けれども ここの家では とてもそんな雰囲気じゃなかった

家族はみんな 新年が来た事を喜んでいる

家族自体には 険悪なムードは無いわ

 

でもね 薄暗い雰囲気には理由があるの

この部屋の片隅にいる あの茶色の牛

あの子の命は今日でお終い

このパーティーに シチューとして出されるの

 

その牛は物凄く寂しそうな瞳をして 人を見遣るけれど

家族はその視線に気付いても 何も思わないの

 

人は 何かを常に犠牲にして生きている

シカタナイジャナイと言わんばかりに

 

寂しそうな視線を 無視されている その空気

それが重苦しいパーティーの正体だったのね

 

 

2007.1.10

「優しい監獄」

 

お父様も お母様も

その子をとても愛して 大切にしているわ

その子の為に 美味しい食事を常に用意して

美しい着物も 常に沢山揃えてて

 

今日も 夫婦二人で

その子に着せる服を選んでいる

あれがいい これがいいと 選ぶ服はどれも酷く高価なもので

機から見れば とても裕福に 幸せに見える事でしょう

 

けれど その子の瞳は

いつも酷く遠くを見ていて

そこには“幸せ”を感じない

 

自分の着る服すら 自分の食べるものすら

自分の意志で決められない

資産的に 裕福であっても

意識的には 裕福じゃない

 

その瞳は まるで監獄に投獄されている罪人のよう…

 

 

2007.1.9

「無罪放免」

 

気がつくと 街は崩壊していた

大地震が 大火災が 大津波が 街を襲った

建物も 人も 何もかもが全て壊されたこの中で

僕だけが 無事に 立ち上がる事が出来ている

 

左足に残る 足かせの鎖だけが 僕の過去を知っている

僕の罪は消えて無くなる事はない

けれど その罪を知る人は 全て流されてしまった

 

建物が崩壊し 焼き尽くされ 人々が押し流された

まるで絶望のような状態

 

けれど 僕にとっては

限りない希望に 満ち溢れている世界

 

僕の罪は 決して消える事はない

けれど その事を知る人は もう 誰も いない

 

 

2007.1.5

「つらい夢」

 

酷く悲しい夢を見た

好きな人と結婚式を挙げる夢

それだけなら 特に酷い夢じゃないけれど

 

相手は何だか困っているみたい

「仕事無理矢理休まなきゃならない」みたいな事を言って

あまり喜んでないみたい

確かに その日取りは急に決まった感じなんだけれど

これって あんまりだよね

 

妙な罪悪感を感じた所で 夢から覚めた

結婚式の夢は 生まれ変わりの象徴とは言うけれど

私は うまく 生まれ変われるのかな?

 

今日も後頭部がギスギス痛む

生まれ変われなくてもいいから 普通に生活したい… そう 思う

 

 

2007.1.4

「エコロジーと言う名の流動食」

 

~大変だ こんな高熱は 診た事が無い~

医者は絶句した

彼が生きてきた中でも

こんな病状を見た事が無かったから

 

医者は知恵を絞り あらゆる手を尽くした

けれど 手を打てば打つほど

病状はどんどん悪化した

高熱を吐き 震えが止まらず 自己治癒力も無く

食事も受け付けなくなった個体に与えられるのは

エコロジーと言う名の 流動食だけ

 

もはや死ぬだけの この個体を

神はおろか

悪魔さえも 見捨ててしまった

この個体は 自己治癒力もなく 死ぬことも出来ず

ただ 人だけが 奇跡を信じて看病する

 

与えられるのは エコロジーと言う名の 流動食

 

 

2007.1.1

「発見されてなかった“死”」

 

おしゃれな喫茶店で午後のコーヒーを

それはそれはまったりと楽しんでいた時

どすん と言う物凄い音が響いた

 

音の正体は 押し倒されたテーブル達

押し倒された原因は 2階にあった家が潰れたから

家が潰れた原因は そこに死んだ人がいたから

 

元々半壊しているその家は 生活の匂いなんか何もなくて

どんなに想像力を働かせてみても ゴミ屋敷にしか見えない所だった

沢山のカバン 生活必需品 鍋やら何やらの調理道具 お出かけ用の靴や服

そんなものでいっぱいで 人の入る余地なんかなかった

 

その奥で 人が一人亡くなっていたなんて 誰も気付かなかった

人が存在する事を示す物が山のようにあったのに

その奥に 人が存在する事すら 誰も気付かなかった

 

でも その人は苦しんだ様子もなく 死んでから そんなに日数も経ってないみたい

一瞬 誰もが眠っているように思ったくらいだから

それが せめてもの救い…よね

 


 
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