人物もよく描けていると思いますし、影の部分など小技も効かせているのが見て取れます。
秋っぽい感じを出す、というご自身て課したテーマは過不足無く満たしているのでこの絵に明確な何かが足りないというわけではないように思えます。

ただ、私もこの絵を見て物足りなく感じる部分は確かにありました。
物語性が欠けていると感じたからで、どうにかするには構図を一からという話になってしまいます。
5W1Hとはよく言いますが、絵を描く際にもこれは非常に重要です。
この人物がいつどこに誰と何をしにきているのか。
それが伝わるともっとこの人物に強い思い入れを抱くことが出来ます。
同じ場所に立っていても、自分の家のすぐ近くなのか、遠くに旅行で訪れたのかでもその意味合いは変わってきます。

例えば秋をテーマに写真を撮ってきなさいという課題が出たとします。
秋といえば紅葉だから山へ紅葉を撮りに行ってきた。
というのと、
親友と一緒に山に登ったら紅葉が綺麗で思わずシャッターを切った。
というふたつは似ていますが、全く異なる物語です。この両者を如何に描き分けるかが絵描きの真骨頂ともいえるでしょう。
或いは夏に使った物を仕舞い、冬に使う物を準備する。これも間接的な秋の情景描写です。衣替えなんかそうですね。
絵は難しいもので全部の情報を盛り込んでしまうと画面が五月蠅く説教臭いものになってしまいます。
それではせっかくの物語が台無しなので表に出す情報、ヒントだけ残す情報、隠す情報とそれぞれに対するさじ加減が肝要です。

これは同じテーマで異なる絵を一から描き直せと言うに等しいことなので容易ではないと思いますが、物語が絵にこもっていればもっと人の心を掴める絵が描けるようになると思い、アドバイスさせて頂きました。
あくまで私の感じた「物足りなさ」対策の話ですので、この絵が良いとか悪いとかとは別の話です。その点はご理解下さい。