No.755224

【真・恋姫†無双if】~死を与えることなかれ~18話

南無さんさん

こちらは真・恋姫†無双の二次創作でございます
久しぶりの連日投稿です。とは言え、正月ストックが切れたので、
もう、このペースでは更新できないと思われます。
ご了承の程宜しくお願いします。
さて今回で合戦が終了し、次回から、いよいよ最終章に突入します。

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2015-02-01 12:56:53 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:7373   閲覧ユーザー数:5760

許貢の凶刃を弾いた男、それは、一刀が思春、明命に頼み雪蓮に派遣した烈士であった。

 

彼は北郷一刀より命令された、雪蓮護衛を忠実に守り、気付かれぬ様慎重に事をなしていた。

 

そして、時は戻り、雪蓮と華琳の一騎撃ちが始まる四刻程前、身を潜めて待機していた、彼の下に

 

北郷一刀から使わされた伝令兵が訪れ、許貢の詳細情報を丹念に聞いていた。

 

 

『北郷様が、その様な事を』

 

『はい。もう一度仰います。北郷様は許貢が我が軍に埋伏していると睨んでおります。

 その証拠に、先程、北郷様が物見櫓に向かおうとした際に、我が軍の兵卒の死体を発見し、

 鎧甲冑が盗まれておりました。これを見た北郷様は直ぐ様看破し、許貢が埋伏しているとの事、

 そして、ここからが重要なのですが、許貢は、己が手で孫策様に鉄槌を下すと、北郷様は

 読んでおります。そんな正義無き鉄槌など毛頭許すわけ無く阻止せねばなりませんが。

 彼は何かしら、一瞬の隙を突く策を巡らせている筈、そして、その一手を利用し

 孫策様に近付くでしょう』

 

『ならば、直ぐ様、許貢を止めなければ』

 

『お待ち下さい。北郷様は許貢が十中八九、孫策様の本隊に埋伏しておると仰っておりましたが、

 戦場で一々顔を確認するなんて不可能。ましてや、見つけたとしても、卑しい許貢の事、

 流言を巧みに使い、最悪の場合、逃げられてしまわれます』

 

『では、北郷様はどうしろと』

 

『暫し、泳がせる』

 

『何?』

 

『孫策様に向かった時こそが最大の好機。その瞬間に孫策様を御守りし、

 許貢を捕らえろと仰いました』

 

『…しかし、そう上手く事が運ぶであろうか。北郷様を疑う訳ではないが、

 仮に許貢が、敵味方入り乱れ、混戦状態の隙を利用し、

 そのまま暗殺を実行する可能性も否定できないのではないか』

 

『それは、ありえないでしょう。

 知っての通り、孫策様は単騎掛けを好み、敵軍を駆逐すると思われます。

 その際、付いていけるのは精鋭しか居らず、とても許貢では従軍は叶わないでしょう

 そして、北郷様は孫策様が恐らく曹操との一騎打ちを挑むと予期しております

 その機会こそ、許貢には絶好の時という事です』

 

『……そこまで読めるものなのだろうか。

 もし、北郷様の言われた通りのままに、未来が進んだのなら、

 心胆寒からしめる慧眼に、私は驚きを隠せぬ』

 

『…北郷様曰く、天の声が聴こえるとの事。その声が反骨の身に力を与え、

 招かれざる、悲劇の未来の変改を望んでいる。それ故に今の北郷様は見通せると仰っておりました』

 

『そう、か。私は武骨者ゆえ、あれこれ考えを巡らせては集中がかき乱される故これで終いにしよう。

 今までの言、了解した。命に代えても孫策様を御守り致す』

 

『…………』

 

『如何致した?』

 

『いえ、仲間の死体を発見した際の事なのですが、死体は物見櫓に向かう道の外れ、

 奥底の茂みに隠されており、誰しもがその存在に気付いて、いえ、気付く事は不可能でした

 しかし、北郷様が死者の声が聴こえると仰い、今こうして、許貢の埋伏に看破した次第なのですが』

 

『うむ』

 

『その時、仲間の死体を見詰めていた北郷様の目が印象深く、どこか哀愁漂わせ、

 何かを呟き、黙祷をと皆に促せました、私はその時の事が、どうしても頭から離れないのです』

 

『…きっと、お優しい北郷様だ。自らが戦場に立てない事に憤りを感じ、

 死者に陳謝していたのであろう』

 

『……………そう、ですね。では、私はこれで失礼致します。

 どうか、御武運を』

 

『うむ。北郷様に安心して吉報をお待ち下されと伝えといてくれ』

 

『了解致しました』

 

 

 

 

 

 

「この者を取り押さえろ!!」

 

 

凛とした声で烈士は命令する。すると、選定された十人の精鋭の内、

 

二人が許貢の身動きを取らせまいと、羽交い絞めし地べたに座らせる。

 

あとの者は雪蓮の警護を務めた。

 

 

「姉様!!」

 

「華琳様!!」

 

 

双方、将は馬を飛ばし必死になって主君の下に駆けつける。

 

 

「………」

 

 

雪蓮は何も答えない。只、無表情のまま視線を許貢へと向けたまま。

 

 

「……許貢、どう言うつもり」

 

 

華琳もまた、冷たい視線を許貢へと浴びせた。

 

だが、その瞳には冷ややかさとは逆に怒気を含み、静かに熱を帯びている様にも窺える。

 

 

「…どう、と申されましても、私は確実に孫策めを亡き者にしようとした次第でございますが」

 

 

烈士に取り押さえられ身動きが取れない中、邪を孕んだ笑い声を溢し屈託なく

 

受け答えする許貢。その態度は、捕らわれているのにも拘らず、堂々としたもの。

 

 

「………孫策の口から『暗殺』と聞いたのだけれど、これも貴方が―――」

 

「ひひ、その通りでございます。孫策さえ暗殺してしまえば呉軍など烏合の衆、

 戦にもなりません。故に謀略を駆使した次第、しかし、残念ながら失敗に終わりましたが」

 

「…そう」

 

 

華琳は一歩一歩ゆっくりと許貢に近付く。雪蓮を護衛している烈士らは華琳を警戒して、

 

剣を抜く構えを見せるが、蓮華から解くようにと命令を下される。

 

そして、華琳は許貢が直ぐ足元まで迫った。

 

 

「よくやったわね、許貢。褒美をあげるわ………」

 

「ひひ、褒美でござ―――――」

 

 

一閃、許貢の首が刎ねた。慈悲など一切無い。覇道を汚した罪、何より英雄と見定めた

 

雪蓮との戦に拭えない泥を塗ったのが許せなかった。だが、それと同時に

 

華琳は自分自身も許せないでいた。それは許貢を見誤った事、

 

孫呉の地理に明るく有益な情報を言上し、この功績から軍の一員、

 

末端の官職を授け従軍させた。

 

しかし、従軍させたと言っても華琳は許貢を信頼していなかった。

 

能力は認めていたが、その卑しい人間性は最も嫌いな人間の象徴であった。

 

けれど、内外に新参者でも、才ある将であれば官職を授けると

 

示したかったから、人間性に目を瞑っていた。

 

 

華琳は悔いた、目先の利に目が眩み。許貢と言う男を見誤った事。

 

そして自分自身、無意識に覇道から背いていた事を。

 

 

「………」

 

 

誰も言を発しない。先程の金属音が鳴り響いた場が打って変わって、静寂に包まれた。

 

その中で華琳は刎ねた許貢の首を拾い、雪蓮の前に相対する。

 

 

「………すまなかった。孫策」

 

 

華琳は頭を下げて詫びた。しかし、雪蓮の反応は―――

 

 

「…お前の謝罪なんて聞きたくない!!」

 

 

悲痛なる叫び、この場に居る皆の心に突き刺さる。

 

 

「謝った所で一刀はどうなると言うの!!一刀は………!!」

 

 

ワナワナと小刻みに震える雪蓮の身体。止める事が出来ずに次第に大きくなっていき、

 

手に持っていた南海覇王を落とし自分で自分を抱きしめる。

 

その姿に小覇王の影など無く、何かに怯える一般女性の様に顔色を悪くしていた。

 

 

「雪蓮、蓮華様!!」

 

 

冥琳が血相を変え馬を飛ばし急行してきた。

 

そして、下馬し一目散に雪蓮向い………伝える。

 

 

「―――――北郷が危篤状態だ」

 

 

雪蓮、蓮華に衝撃と痛みが走る。擦り傷や切り傷と言った外傷的な痛みとは異なる内なる痛み、

 

その痛みが心を傷つける。

 

雪蓮は――号令時に一刀の目を見て薄々本能が感付いていた、母、孫堅と同じ全てを悟ったような瞳、

 

だが、そんなことは無い、あの時城に戻る時に感じた嫌な勘も気のせいだと都合よく目を背けていた。

 

思えば、その頃から希望的観測にすがり心を曇らせていた。

 

雪蓮は堪らず愛馬に騎乗し一刀の下に向う。彼女の心は一刀の事で一杯だった。

 

 

「姉様!!」

 

「雪蓮!!」

 

 

二人の叫び、彼女らも続けざまに騎乗する。だが、駆け出す前に蓮華は、

 

華琳に一喝せずにはいられない事があった。

 

 

「曹操!!貴様は王の器にあらず!!何故、部下の暗躍を見抜けなかった!!

 部下の行動を把握するのは王なる務め、それを怠り此度は許貢による策謀を見逃した!!

 貴様の掲げた覇道は匹夫の輩に蔑ろにされる様な陳腐なものだったのか!!」

 

 

華琳は否定も肯定もせず口を真一文字にして黙る。隣に居る桂花、春蘭の二人は

 

反論をしようとするが秋蘭に阻まれる。

 

秋蘭は華琳の心境を理解していた。矜持を傷つけられても

 

戒しめとして物言わぬと。

 

 

「此度の戦で孫呉の虎の牙は、より鋭く強固になった。何度侵攻してこようが、

 その都度孫呉の牙が貴様らの喉元を噛み殺す、覚えておけ、曹操!!」

 

 

蓮華と冥琳はこの場から去っていった。

 

 

「………ぐうの音も出ないわね」

 

 

華琳の呟き、その一声が感情の全てが物語っていた。

 

 

「………全軍合流し許昌に帰還するわ。帰還したら孫呉と和睦し金品と許貢の首を

 献上しましょう。せめてもの罪滅ぼしとして」

 

「…和睦に応じるのでしょうか」

 

「…思誠天に通ず、そう願うしかないわね」

 

 

曹軍、呉軍共に撤退し戦は終わりを告げた。戦場に残されたのは夥しい死体の数と、

 

地を赤く染めている血、それと凄愴さだけが静かに取り残されていた。

 

そして、皮肉にも合戦が終焉した今、空は雨雲を祓い除け、

 

孫呉の将の心模様とは逆に青空が静かに顔を出し始めていた………

 

 

 

 

 


 
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