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アクセル・ワールド ~Blaze Brave~ 第6話 Extracurricular activities first part:課外活動 前編

遼東半島さん

主人公達の学園生活回となります。
それではどうぞ

2014-03-03 23:28:16 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:633   閲覧ユーザー数:619

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第6話 Extracurricular activities first part:課外活動 前編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2046年4月21日 15時40分21秒 御子島学園食堂ラウンジ 瓜生暁隆

 

 

 

 

 

長く感じた6コマ目の数学の授業がようやく終わり、俺は今食堂のラウンジで購買部から買ってきた飲み物と菓子で時間を潰している。

 

ホームルーム終了と同時に「20分ぐらいで戻るからラウンジで待ってて!」と言い残して駆け足で教室を後にした洋太を待つためである。

 

俺自身も今日は特に用事があるわけでも無いので、本でも読みながらゆっくり待とう。

 

…そう思っていたのだが……

 

「これ、ひさびさに食ったけど、食べ始めるとなんか止まんないし止められないんだよな~不思議と。お、暁隆ク~ン、そっちの煎餅タイプも開けてくれない?」

 

眼前に居座り、勝手に人の買ったお菓子を食いながらしゃべり続ける男子生徒によって、そんな静かな一時を送ろうとしていた俺のささやかな計画は完全に粉砕されてしまっていた。

 

「…おい俊也、それを買ったのは誰か、少しは考えているんだろうな?」

 

「いいじゃんか、少しくらい。そんなにケチケチしなくてもさ~」

 

「……司郎さんの所に行かなくていいのか?」

 

「司郎にぃは今日はアフタヌーン同好会で忙しいモンでね。今日は馬術部も休みで、オレは特にする事なくて暇なのよねぇ~」

 

「だ・か・ら・っ・て何でここにいるんだ、ここに!」

 

「俺は植物研の活動で瀬菜ちゃんと一緒にいられない寂しそ~なお前を慰めようと思って、ダベってるんじゃないか。感謝しろよ、オレに」

 

「くッ////…………“あっち”ではおぼえてろよ…」

 

そう脅し文句を言っては見たが、俊也の奴はニヤッと不適な笑みを浮かべてから、なに気にすることなく煎餅タイプのお菓子をかじり始めた。

 

森口俊也、俺と同じ1年2組のクラスメイトで……今でも認めたくはなかったが、デュエル・アバター≪マラカイト・キャバレリー≫のリアルでの正体だ。

 

今日からちょうど2週間前、洋太と知り合った後に美浦さんと一緒に学生食堂のラウンジへと足を向けた俺を待ち構えていたのが、この俊也と俺達より1つ学年が上で≪アドニス・セントール≫を操るバースト・リンカー、森口司郎さんだった。

 

180cmに届くほどの高身長のいかつい体と顔をした司郎さんを見たときの驚きは、美浦さんが一瞬悲鳴を押し殺したほどであった(程無く、その見た目に反して温厚で下級生の俺達にも敬語で接する礼儀正しい人だと知れて、直ぐに打ち解けたが)。

 

しかしそれ以上に印象的だったのが、俊也はすごく“小さい”という事だった。

 

―教室で見た時は物思いに耽っていた事もあって気付かなかったが―身長は150に届くかどうかで性格に反して童顔なので、小学生に見えてしまう容姿であった。美浦さんも俺もまじまじと見入ってしまう程に…

 

当の本人にとってはそんな反応が面白くなかったらしく、「言っとくけど、オレが小さいんじゃなくて、司郎にぃが隣にいるから小さく見えるだけだからなッ!」と言い逃れ(?)をしてはいたが…

 

(フフッ、あの時の隣でショックを受けてた司郎さんの顔ときたら。美浦さんと笑うの必死に堪えてたっけ)

 

そんな事を思い出している時たった。

 

「暁隆君ーー!」

 

学生食堂と活動棟を結ぶ通路を、洋太が駆け足でこちらに向かってきた。

 

「ごめんね、遅くなっちゃって。あ、俊也君も一緒だったんだ」

 

「おーす、洋太っち。これ食べる?」

 

「ありがとう。じゃあ、ひとつ」

 

「………………。洋太君、ところで今までどこ行ってたの?」

 

俊也の言動にツッコミを入れる気力も失せた俺は、そう洋太に話しかけた。

 

「ん?あぁ、ごめん!そうだった!今から一緒に来てくれない?凄く良い課外活動見つけたんだッ。きっと暁隆君も気に入るよ!」

 

「…課外活動か」

 

俺が通っているこの都立御子島学園は、『青少年に様々な可能性を』を教育方針として定めており、そのため在校生は必ず部活やサークル等といった課外活動や委員会への参加を学則で義務付けている。

 

入学式から2週間経過し、殆どの1年生は体験参加や見学で所属する活動を決めてしまっている。

 

美浦さんは観葉植物の育成活動を行う植物研究会(植物研)へ、司郎さんは英国式喫茶習慣を探求するアフタヌーン愛好会へと参加しており、俊也に到っては入学初日で馬術部への即入部手続きを済ませてしまっている。

 

みんながそれぞれの活動に楽しく勤しんでいる中、俺だけは人と接する事への苦手意識から、未だにどの活動に参加するか決めあぐねていた。

 

美浦さんからも心配されて植物研への参加を勧められたが、彼女以外の会員と上手くやれずに気まずくなってしまう気がしたため、言葉を濁して避けてしまっている始末だ。

 

とはいえ、このままズルズルと後回しにしていてもあと1週間後には強制的にどこかの活動へ参加させられてしまうのだから、早急に何とかしなくてはいけないという結論に俺自身も至っている。

 

そう分かっていながらも後ずさりしてしまっている、自分の臆病な面を再確認してしまっていた俺は、それもあって最近少し気持ちが沈みかけていた。

 

「……まぁ、見るだけだったら」

 

「それでも良いよ!絶対気に入るから。じゃあ早く行こう!」

 

本当に見るだけと思い素っ気無く言ったつもりだったのだが、洋太はそんな事気にもしないといった様子で喜んでいる。

 

そうとう気に入ったトコなんだな、そう考えて席を立つ俺の前で

 

「ちょ、ちょっほまへ!おへも」

 

俊也が物凄い勢いで袋の中に残っていた菓子を口の中に詰め込んでいた。

 

「あ、俊也君も「アイツはいいの。じゃあな、俊也。あんまり食い過ぎんなよ」…じゃあ、またね」

 

「おひッ!?ちょ、ちよっほ!」

 

総額200円ほどでいなくなってくれたと思えば安いもの、そう考えて少しスカッとした俺は洋太と一緒にラウンジを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今から50年ほど前の20世紀後半に開校した御子島学園は、当時学習指導要領の改正によって始まった所謂“ゆとり教育”の模範的指導を行う学校として東京都が設立したのが始まりだったそうだ。

 

その後、21世紀前半にはゆとり教育は終わりを迎える事となったそうだが、御子島学園自体は廃校にはならず、その教育方針を少なからず学風に残したまま現在に至っている。

 

中等部と高等部を合わせても全校生徒は500人に満たないが、学校の施設と敷地面積はかなり充実している。

 

校門のある南側にはサッカー部に野球部、陸上競技部がまとめて活動を行える広いグラウンド。

 

中等部の教室があるの第一校舎棟、音楽室や部室が設けられている活動棟、高等部の教室のある第二校舎棟が南から通路も合わせて王の字型に建ち並んでいる。

 

さらにその西には、『美味しい学食が食べられる学校ランキング』と言うサイトのベスト5に10年連続ランクインしている要因となっている学生食堂が建っており、北側には―小さいながらも―植物研の菜園や馬術部の馬屋と牧があるほどだ。

 

だが、今俺が洋太の案内で到着した建物は、そのどれらの場所にも属していない。

 

生徒はもちろん、先生や事務員でも殆ど足を向けないであろう本校舎東側にある建物、旧校舎練だった。

 

 

 

 

 

2046年4月21日 15時57分43秒 御子島学園旧校舎棟 瓜生暁隆

 

 

 

 

 

「…本当にここで間違いないの?」

 

「うん、そうだよ。あともう少しで着くから」

 

旧校舎棟の2階へと通じる塗装のはがれた階段を上りながら、俺の質問にそう答える洋太。

 

色褪せた旧時代的な鉄筋コンクリート製であろう壁で覆われた、如何にもナニカ出そうな雰囲気を漂わせる外観。

 

開校当時は校舎棟の1つとして使用されていたが、現在ではソーシャル・ネット・カメラこそ配備されているが掃除用具等の備品の保管ぐらいにした使われていないと、司郎さんからは聞いている。

 

そんな場所に、洋太が「絶対に気に入る」と自信満々で進める課外活動が部室を構えるだろうか?

 

場所を間違えたんじゃないかな、等と考えていると、前を歩く洋太の足が止まった。

 

「よーし、着いた。暁隆君、ここだよここ」

 

そう言う洋太の前には、これまた古めかしい中が見えない様に凸凹に加工された硝子窓がついた木製の引き戸があった。

 

引き戸の上には教室名が書かれていたであろう板が釘で打たれているが、古惚けていて“蔵”と“室”という文字しか俺には認識する事が出来なかった。

 

「さぁ、入って入って。きっと驚くよ!」

 

旧校舎棟に案内された時点で既に驚いてはいるのだが、それを口には出さずに、俺は引き戸をスライドさせて教室の扉を開けた。

 

ギギギィーっと鈍い音をたてる戸を開けた先の光景を見て、俺は洋太の言葉からの想像をはるかに超える驚きで呆然と立ち尽くしてしまった。

 

本だ。4列で直線状に40m程並んでいる本棚の全てに、電子書籍ではない本物の紙に印刷されているであろう本がぎっしりと収納されている。

 

学内ローカルネットに存在する学園の図書室にダイブした錯覚に襲われたが、勿論自分の姿が羽織袴を着た龍に代わっているわけも無く、間違いなく現実だ。

 

そうなると目の前の光景は実際に“在る”ものということになる。

 

その考えに至ると尚更驚愕するする事となる、凄い量の書籍の山だ。

 

偶に香苗も一緒に連れて行く上北沢図書館の書籍コーナーに比べれば小さいし量も少ないが、それでも学校の書籍コーナーとして考えれば規格外の規模だ。

 

「どう?まぁ、驚くよね。僕も話を聞いてさっき見に来たときには、同じ反応だったよ」

 

「……あぁ。これはすごいよ……下手するとローカルネットの図書室より広いかもね…。いや…ホントにすごいよ」

 

そう呟きながら俺は近くの本棚に寄ると、適当に一冊を手に取りながらぎっしりと並んだ本に目をやった。

 

「池波正太郎『真田太平記』……『鬼平犯科帳』、こっちは司馬遼太郎『燃えよ剣』?」

 

名前だけは聞いた事のある小説家の作品が並んでいる。たしかジャンルは……

 

「ふあぁ~あ。そこは時代小説コーナーだ。ちなみにラノベコーナーは右から一列目の手前、エッセイコーナーは左から二列目の中頃だ」

 

不意に後ろから、俺のひとり言に対する返答が欠伸と共に響いた。

 

驚いて振り返ってみると、木製のカウンターの後ろに置かれているベンチソファーから、欠伸をしながら気怠そうに人が起き上がっている最中だった。

 

洋太も人がいた事に気付かなかったらしく、驚いた表情をしている。

 

―制服と声色から学園の男子生徒だという事だけは認識できた―その人物は、ボサボサに肩まで伸びた髪を無造作に掻きながら近づいてきた。

 

「んーっと、Ⅰの学年章……あぁ、入会希望者かな?」

 

そういってまじまじとこちらを見ながらそう話しかけてきたので、洋太と顔を合わせながらどう答えようか悩んでいると―。

 

「た・み・や・すぅぅーーーッ!!」

 

人の名前を叫ぶ声が響くや否や、ガラガラガラーッと勢いよく戸が開いたかと思うと、そこには黒髪をポニーテールにした端正な顔立ちの女子生徒が仁王立ちで立っていた……顔に似合わず恐ろしい、怒気を帯びた表情で。

 

その険しい顔に、俺の隣にいた洋太は「ヒッ!」と、恐らく『たみやす』と言う名前であろう男子生徒は「げッ!」と短い悲鳴を上げた。

 

しかし、女性はそんな事に……いや、それ以上に俺達の存在に気付いていないようで、顔を引き攣らせている「たみやす」なる男子生徒めがけてズシズシと歩み寄っていく。

 

「あなた、3月末が提出期限だった後期の活動報告書まだ出してないでしょッ!あれほど期限を守ってって言ったのにッ!!」

 

「わ、ワリィ…。すっかり、その…忘れてて。や、でもな、思い出したんで直ぐー」

 

「言い訳は結構!おかげで今年度の会費を予定通り出してもらえるように先生に頼み込む、く・ろ・う・は、しましたけどねッ!」

 

「すみません…。いや、このとおり…反省してます……」

 

苛烈なまでに怒りをあらわにする女子生徒に、男子生徒は拝むように謝る仕草から土下座へと体勢を変えながら許しを請うていた。

 

その、無制限中立フィールドで初めてエネミーと単独で対峙したときのような恐ろしさに、俺が現実世界では久しぶりにとなる冷や汗を掻いていると女子生徒がこちらの存在に気付いた様子で顔を向けてきた。

 

「……あら、ごめんなさい。見苦しいとこ見せちゃって。…1年生ってことは入会希望者?」

 

女子生徒がそう言ってこちらを振り向く瞬間、俺は幾多の≪対戦≫で培った反射神経で確かに目撃した…いや、してしまった。

 

先程まで顔に帯びていた阿修羅像のような凄まじい顔色を、敬謙な信者に微笑みかける女神のような笑みへと即座に切り替えるその一瞬を。

 

そのあまりの切り替えの早さに俺は洋太と共に顔を引き攣らせながらうなずく事しかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第6話 Extracurricular activities first part:課外活動 前編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

毎度更新が遅く申し訳ござらん!

 

え~今回は暁隆達の学園生活を書いて見ました。

 

前回発表した予定では次回こそ加速世界での話を進める予定でした、もうしばらくお待ちいただきたいですorz

 

こんな予定管理も出来ない筆者ですが次回もどうかお楽しみに!!

 

ではノシノシ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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