No.674153

アクセル・ワールド ~Blaze Brave~ 第7話 Extracurricular activities second part and… :課外活動 後編 そして…

遼東半島さん

暁隆の課外活動と……ついに主人公達の所属レギオンが
どうぞお楽しみを!

2014-03-27 21:31:35 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:741   閲覧ユーザー数:724

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第7話 Extracurricular activities second part and… :課外活動 後編 そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2046年5月4日 12時33分17秒 都立御子島学園旧校舎棟 蔵書室 玉木洋太

 

「暁隆君、この本のジャンルってSFかな?それともファンタジー?」

 

「zzZ…zzzZ…」

 

「うーん、多分SFでいいと思うけど…」

 

「zzzZ…ムニャ、フニャ…zzzZ…」

 

「じゃあこっちの棚に並べとくね」

 

暁隆君にそう言うと、僕は少し離れた位置にあるSFコーナーの空いているスペースにその本を陳列させた。

 

「zzzZ…おひゃ、くれぇ~…zzzzzzZ…」

 

僕と暁隆君が今朝学校宛に届いていた本の整理をしている中、部屋の片隅では僕達が所属する『蔵書愛好会』の会長である奥村民康先輩が時折寝言を呟きながら気持ちよさそうに寝入っている。

 

傍らのテーブルにマグカップと読みかけの本を置いてかなり年季が入っているビニールレザー製のベンチソファーの上で快適そうに寝息を立てる先輩の姿は、まるでひなたで微眠む猫のような感じだ。

 

暁隆君と一緒に蔵書愛好会に入会して2週間が経つが、今ではこの光景が愛好会の日常になりつつある。

 

『蔵書愛好会』

 

御子島学園の学内ローカルネットにある図書室及び図書委員会とは異なり、"電子書籍ではない本"、所謂しっかりと紙に製本させた本を収集・管理する活動を行っているサークルだ。

 

もともとは読書好きだった何代か前の学園理事長が、在任期間の終わりに寄与した自身が収集していた膨大な数の小説を学園側が管理するために立ち上げられたのが始まりだったらしい。

 

その後、会に支給されるささやかな活動費と会員達の自費で少数ずつではあったが書籍の数は増えていき、現在では小さな図書館に劣らないほどの数の本が蔵書室の書架に陳列されている。

 

しかし現在では、わざわざかさばるペーパーメディアの本を持ち歩く生徒はよほど本が好きな人以外は皆無に等しく、愛好会で行っている本の貸し出しに蔵書室を訪れる生徒も、極少数しかいないのが現状となってしまっている。

 

僕自身、知り合った先輩から話を聞いた時も、今時そんな活動を行っているサークルが在る事に半信半疑だったが、今は入会して本当のよかったと心底思っている。

 

中学生になって月のお小遣いもアップしたが、それでも紙に製本された本を購入するには少なく、1ヶ月に1冊買えるかどうかが関の山だ。

 

一昔前には安いものなら100円程で本や漫画を買う事が出来る書籍のリサイクルショップが全国にあったと父さんの口から聞いたときには、どうして自分はその時代に生まれてなかったんだろうと大いに落胆した事もあった。

 

それが愛好会に入っていれば、本物の本を無償で、古いものから新しいものまで、触れて読む事も出来るのだから、僕にとってはまさに天国ともいえる環境だ!

 

同じく入会した暁隆君も、書架を整理している最中に時折笑みを浮かべて本を手に取って眺めている所を見る限りは、喜んでくれているようだ。

 

「みんな、お疲れ様」

 

そんな他愛ない事を考えていると、扉が開いて愛好会の副会長である志藤芙美佳先輩が入ってきた。

 

「二人ともごめんなさいね。本棚の整理任せっきりにしちゃって」

 

「いいえ、そんな///。すごく楽しいですよ!」

 

「…俺も同じく」

 

「そう…ふふっ、そう言ってくれる私も心強いわ」

 

そう僕達に言う芙美佳先輩は、顔に暖かな笑みを浮かべていた。

 

僕達より二つ学年が上の芙美佳先輩は、容姿端麗・成績優秀と絵に描いたような優等生ぶりと、普段のキリッとした風貌の中で時折見せる温和な微笑みとのギャップから学園内の男子に絶大な人気があるらしい。

 

そんな先輩目当てで蔵書室に男子生徒が殺到する事態も入学当初はあったらしいが、現在では活動の余りの地味さとつまらなさに、そういった目的で現れる人も殆どいなくなってしまった。

 

「それに比べて……」

 

そう呟くと、芙美佳先輩は未だに睡眠欲求を満たし続けている民康先輩のほうへと向かった。

 

「民康君?……タ・ミ・ヤ・ン」

 

「ふあっ?―ッ!!ハ、ハイ!起きてます、起きてますよー芙美佳さん」

 

民康先輩の耳元で先輩のあだ名を呼ぶと、先輩は即座に体を起こして手をブンブン振りながら寝ていなかった事をアピールしているが、あれは少し無理があるよね?

 

暁隆君も苦笑いしている。

 

「アキ君とヨウちゃんにだけ整理させて、あなたは何をやってたの?」

 

「いや~~ち、ちょっと辞典を一杯持ったときに腰痛めちゃって、少し横になってたですよ~。な、二人とも、そうだよな?」

 

民康先輩はそう言ってこちらを見ながら、必死に目で合図を送っている。

 

僕と暁隆君は「「そ、そうなんですよ」」と殆ど同じタイミングで民康先輩を援護する。

 

芙美佳先輩は「そう」と一言呟くと、再び民康先輩のほうを向き直し右手の指先を動かした。

 

「まぁいいわ。今週の活動報告書を送っといたから、作成しておいてね。…期限厳守で」

 

「さ、サーイエッサー!!」

 

民康先輩は芙美佳先輩に冷や汗を掻きながら引き攣った笑みを浮かべて敬礼のポーズを取っている。

 

奥村民康先輩も芙美佳先輩と同じく僕達の二つ上で、昔の推理小説に出てくる昼行灯の探偵を絵に描いたような人だ。

 

無造作に伸びた長髪をボサボサと掻くのが癖で、蔵書室では勝手に持ってきた電気ポットで淹れた緑茶を飲みながら本を読むか昼寝をしているかのどちらか。

 

それでも愛好会の会長を請け負っており、たまに今のように芙美佳先輩や学園側からローカルネット経由で送られてくる書類を作成している。

 

だらしない言動ばかり目立ってしまいがちだけど、面白い小説を紹介してくれたり、僕と暁隆君を神保町まで入庫する本を直接選びに連れて行ってくれたりと、何かと僕達の面倒を見てくれる良い先輩だと僕は思ってる。

 

暁隆君も最初は戸惑っているようだったけど、今は呆れた顔をしつつも先輩と小説について語ったりしている。

 

本の事を真剣に楽しく話せる友達と先輩、そんな僕達を取り囲むように並べられた書架とジャンル別に陳列された本、まさしく僕が夢見ていた理想の課外活動の風景だ。

 

少し理想的過ぎて怖くなっちゃうな///

 

「そう言えばアキ君、午後は用事があるんじゃなかったの?もう12時過ぎてるわよ」

 

「…えっ?あッ、そうでした!すみませんが今日はこれで失礼します」

 

「気をつけてね」

 

「暁隆、またな~」

 

「暁隆君、また明日ね」

 

少しあわてた様子で蔵書室から出ようとする暁隆君に、僕は芙美佳先輩と民康先輩に続いて声を掛けた。

 

そんな僕達に少し遠慮がちに手を振ると、暁隆君は蔵書室を出て行った。

 

「暁隆にしちゃ珍しく急いでたな。もしかしてデートかな?」

 

「はいはい、余計な詮索しないで早く報告書作ってよね」

 

「へーーい」

 

ニヤニヤしながら暁隆君を見送った民康先輩だったが、芙美佳先輩に窘められるとどっかりとソファーに座り直してタイピングを始めた。

 

確かに余計な詮索かもしれないけど、暁隆君があわてて行動するのは珍しい感じがする。

 

余程大事な事でもあるのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2046年5月4日 13時42分28秒 豊島区池袋駅前 ファーストフード店 瓜生暁隆

 

 

 

 

 

「それでその子がすごく可愛いんですよ!ふわっとした感じに一生懸命花を咲かせてて」

 

「ホントによかったね。ここ最近の美浦さん、そのパンジーが咲かなくて少ししょげてたもんね~」

 

向かい合って座っている美浦さんが嬉しそうに植物研で世話をしている花が咲いた事を熱心に話すのを、俺はクスッと笑いながら茶化した。

 

それに気付いたのか、美浦さんはふくれた表情をしながら、「そんなにしょげてはいませんでしたよ」と言い返してくる。

 

蔵書室で彼女との待ち合わせの時間に遅れそうなのに気付いた俺は、慌てて学校を出て家に戻って着替えを済ませると、待ち合わせ場所であった桜上水駅へと急いだ。

 

―≪バーン・バーニア≫を使えば1分と掛からないんだが、等と現実世界では使えない自分の分身の能力を羨みながら、俺はどうにか約束の時間ギリギリに駅入り口前で待っていた美浦さんと合流し、京王線→山手線と乗り換えて池袋駅へと移動した。

 

ゴールデンウィーク中ということもあって池袋駅前は多くの人で溢れていたが、俺達はどうにか人混みを分けで駅前のファーストフード店で席を取る事に成功した。

 

「それにしても、俊也君と司郎さん遅いですね」

 

「まぁ、時間までの豊島区の≪戦域≫にさえ入れていればいいんだけどね」

 

「でも、折角だし≪世田谷チーム≫のみんなでお茶したいじゃないですか」

 

「…まぁ、それはぞうだけど…」

 

そう言ってくれる美浦さんには悪いけど、俺はどうも個人的にあの森口俊也が苦手だ。

 

クラスではムードメーカー的ポジションで男子だけでなく―"異性"として見てくれないと本人は気にしていたが―女子生徒からも人気を得ているし、あのバカをやらかしながらも人の事を考えてくれる点に関してはクラスに馴染みきれていない俺も何度か助けられた。

 

だが、それでもあの底抜けにポジティブに振舞う姿に、俺は苦手意識を拭う事が出来なかった。

 

理由はわかってる。俺は多分あいつに嫉妬してるんだ。

 

俺が持っていない"もの"を持っているあいつに、自分を素直に表現できるあいつに…

 

そして…笑みを浮かべる"彼女"に楽しそうに接するあいつに……

 

そうした結論に至って、ここ最近何度自己嫌悪感に襲われたことか…

 

「暁隆君?暁隆君」

 

「ん?あぁ、ごめん。ちょっと考え事してて」

 

「なにか悩み事でもあるの?私でよければ「違うんだ。そんな相談するほどの事じゃないよ」…そう。じゃあ、いいんだけど」

 

そう返答したが、美浦さんは心配そうにこちらを見ている。なんとか話題を変えないと!……ええっと…

 

「…実は、美浦さんのレベル4到達の御祝いどうしようかなって、ちょっと考えてたんだ」

 

どうにか考えを巡らせた俺は、5日前に彼女のデュエルアバター≪カナリー・エーデル≫がレベル4に到達した事を思い出して、その話題を上げた。

 

すると、不安な表情をしていた美浦さんは頬を赤らめながら照れた様な表情をした。

 

「そ、そんな///。ここまで来れたのも暁隆君のおかげだし、御祝いなんて」

 

「なんでもいいよ。俺に出来る事だったらなんでも」

 

「じ、じゃあ…その……あ、暁隆君のオムハヤシが食べたいな///」

 

「えッ!そんなのでいいの?」

 

驚きの声を上げる俺に、美浦さんは俯いてますます顔を赤くしながらコクリとうなずいた。

 

確かに以前、彼女の家に行った時に有り合わせの食材でオムハヤシを作った事があり、帰宅した彼女の伯母の保子さんと一緒に美味しいと絶賛されたのは覚えているが、まさかそうくるとは…

 

「ダメ…だったかな///」

 

『儚げで上品な感じがグット!』『護ってあげたくなるタイプ』等と、クラスの男子生徒に絶大な人気のある可愛らしい女の子に―しかも上目遣いで―そう聞かれて断れる男子がいるだろうか?

 

―絶対にいないだろうな。少なくとも今はそう断言できる。

 

そんなどうでもいい事を想いつつ、「いいよ」と言おうとしたまさにその瞬間だった。

 

バシイイィィッ!と聞きなれた加速音が頭の中に響いたかと思うと、視界に【A REGISTERED DUEL IS BEGINNING】と炎で縁取られた文字が現れた。

 

そしてその文字が消えると、落下する浮遊感を感じながら俺の意識は暗闇の底へと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2046年5月4日 14時00分03秒 豊島区 ≪月光ステージ≫ サラマンデル・ブレイブ

 

 

 

 

 

自分の足が地面についている事を認識した俺が目を開けると、そこには青白い光を湛える巨大な月とその光に照らされた白い世界が広がっていた。

 

非現実的な光景を構築するブレイン・バーストの対戦フィールドの中でも一際幻想的な光景を生むのがこの≪月光≫ステージだ。

 

建造物は粉末にした骨をセメント代わりにして築かれたような白色。

 

地面は真っ白な大理石を加工したようなつやのある乳白色。

 

そして、それに反比例するように月の光が当たっていない部分は漆黒のローブを羽織っているように暗く、その奥の風景を視覚で確認するのは不可能なほどだ。

 

こうした相反する白と黒のモノクロームで表現されたこのステージは、バースト・リンカーの間でも非常に人気が高いステージの1つとなっている。

 

このステージで対戦となっただけで、対戦者達の脳内には『宿命の対決』や『運命の一戦』、もしくはそれに類したシチュエーションが連想されるようで、決まったように互いに向き合っての真っ向勝負が展開される場合が多く、観戦するものにとっても白熱した戦いが見れるという事で高い人気を誇っている。

 

しかし残念ながら、今回ここに“俺達が”来ているのは対戦する為でも対戦を観戦する為でもない。

 

「ブレイブ君…」

 

自分の傍らにパートナーであるエーデルが立った事を確認した俺は、自分よりも頭一つ分背の低い彼女の方を見る。

 

「…北の方角だ。走るよ」

 

「うん!」

 

彼女がうなずくとほぼ同時に、俺達二人は北の方角へと一気にダッシュした。

 

対戦中なら≪火炎アビリティー≫の現在のポテンシャルでも越えられない高さの建造物を超え、唯々ガイドカーソルの指し示す方角へと一直線に走り続けた。

 

すると―

 

「オッス、そこの御二人さん乗ってかない?」

 

不意に右手から聞き慣れた声が聞こえたので向いて見ると、そこにはエメラルドを駆るキャバレリーと、それと同じ速度で疾走するセントールの姿があった。

 

「…遅いぞ、キャバ。一体何してたんだ」

 

「わりぃわりぃ、電車が混み過ぎててブクロで降りられなくてよ」

 

馬上で手を擦り合わせながら「めんご、めんご」と謝ってくるキャバレリー。

 

そしてその隣では申し訳なさそうな感情を瞳に写すセントール。

 

―相変わらず軽いやつだ。もう少しセントールさんの礼儀正しさと謙虚さを見習えばな…

 

「でも、豊島区を出てなくてよかったです。出なかったら“集会”に参加出来なかったはずですから」

 

「どうにか大塚で降りる事が出来ましたので、そのまま駅前で待機したんです。御心配をお掛けしました」

 

「いえ、セントールさんさえ参加してくれていれば≪世田谷チーム≫は問題無いですから」

 

「おいッブレイブ、“さえ”ってなんだよ!“さえ”っt「…見えたぞ」うおぉい!オレを無視すんな!!」

 

隣で喚くキャバレリーを無視した俺の声で全員が移動速度を緩め始めると、キャバレリーも渋々とエメラルドの速度を落とす。

 

そして視認出来た“目標”との距離が150…100…70…40と縮み、俺達4人と1匹(?)はその距離10m程になった所で足を止めた。

 

「よぉブレイブ、やっと来たか。待ちくたびれたぞ」

 

「……遅いぞ…、7秒遅刻だ…」

 

「いいじゃないの、7秒くらい。スレイ、始まる前からそんな眉間にしわ寄せないの」

 

「………………」

 

「…ではみなさん揃ったようですので始めても良いでしょうか、バスターさん?」

 

「おお、そうだな。じゃあ今から≪セイリオス≫の定例集会を始める。、まずは各自の定期報告からな」

 

対戦者を示すカーソルの先には≪月光≫ステージの白と黒溶け合ったかのような灰色のアバターを中心に円状に立ち並ぶ十数人のバーストリンカーの集団があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第7話 Extracurricular activities second part and… :課外活動 後編 そして… END

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうも、おまんたせいたしました!リョウトウです!

 

ようやく自分の書きたかったバーストリンカー達のストーリーに本格的に入っていきます!

 

テンションMAXで頑張って行きたいと思いますのでこれからもドゾよろしくおねがいします

 

気になる展開?ではありますが、また次回ノシノシ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
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