No.661064

アクセル・ワールド ~Blaze Brave~ 第5話 encounter third part:邂逅 後編

遼東半島さん

邂逅編ラストになります
それではどうぞ!

2014-02-06 22:03:49 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:839   閲覧ユーザー数:829

 

 

 

 

 

 

 

 

第5話 encounter third part:邂逅 後編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

12時02分07秒 御子島学園ローカルネット≪世紀末≫ステージ マラカイト・キャバレリー

 

 

 

 

 

俺の眼前で紅く光る大剣を構えているブレイブのHPゲージは既に5割を割ろうとしているのに、その闘志は

あいつの体から発する炎の様に未だ衰えてはいない。

 

俺自身、対ブレイブ用に練り上げた戦法が破られて悔しい思いはあるが、それ以上に自分の感情が昂り興奮しているのがわかる。

 

アイツはすげぇ、ホントにすげぇ!

 

実力では≪絶色の七王≫と肩を並べると言われているバスターさんの『子』というだけあって戦闘のスキ

ル、状況判断能力、自身の能力と相反するかのような冷静さ、そして如何な状況でも勝機を見出して掴み取

る不屈の精神、どれをとっても今の俺以上だ!

 

だけど―

 

「おもしれぇ~、そうこなくちゃな。いくぜッ、ブレイブ!」

 

そんなヤツを倒してこそ俺もつよくなるってもんだぜ!!

 

「ラルド、駆けろッ」

 

そう言うと、俺は相棒のラルド(エメラルド)に手綱で意思を伝え、ラルドもそれに合わせてブレイブめがけて駆け出す。

 

一気にブレイブとの距離を詰めてラルドの剣角の一撃をその胸部へと突き込む。

 

ブレイブはそれを剣の刃で弾いて右へと躱す。

 

すかさず俺は次の攻撃をかまそうとラルドを走らせつつ方向転換したが、既にブレイブの姿はそこには無

く、猛烈な火炎噴射の加速で崩壊した校舎へと向かっている。

 

「ちッ、エーデルちゃんを助ける気か!」

 

ラルドの方向をブレイブに向けた俺は駆ける速度を速めてその後を追った。

 

 

 

 

 

12時02分07秒 御子島学園ローカルネット≪世紀末≫ステージ カナリー・エーデル

 

 

 

 

 

突然の衝撃で崩落を始めた校舎の屋上にいた私は、どうにかバリアで自分を覆う事で落下の衝撃を和らげる

事に成功した。

 

もしそうでなかったら、防御力が皆無に等しい私のHPは一気に0になっていたであろうことは疑う余地が無い。

 

でも、それで終わりじゃ無かった。

 

校舎の崩壊で巻き上げられた粉塵の中から大きな影が躍り出たかと思ったら、長大な斧の一撃が私を襲った。

 

咄嗟に斧が迫る方向に手をかざしてバリアを張ったが、ダメージは抑えられても衝撃まで抑える事が出来ず、私の体は宙に浮いて弾き飛ばされた。

 

「女性を相手にあまり手荒な事はしたくは無いのですが、どうか御了承願います」

 

煙の奥から姿を見せたセントールさんは校舎の壁に寄り掛かる私にそう呟くと、今度は槍部分での連続突きを繰り出してきた。

 

バリアの大きさを最小限に調整して弾き続けたけど、突然の出来事で混乱していた私はいくつかの攻撃を防御する事に失敗し、HPバーは一気に9割の状態から3割近くまで低下させてしまう。

 

「ハァァー!」

 

「―きゃ!」

 

セントールさんの武器のハンマーのような形状をした部分の一撃でバリアを弾かれた私は、地面へと投げ出される。

 

HPバーが1割をきってほんの僅かに残しただけの私に、セントールさんは止めを刺そうと巨体を唸らせて接近してくる。

 

(もう…だめ…)

 

衝撃で視界が定まらない中、未だうっすらと粉塵が舞い上がるセントールさんの後ろでなにかが光ったのが見えた。

 

そして―

 

彼が来てくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

12時02分07秒 御子島学園ローカルネット≪世紀末≫ステージ サラマンデル・ブレイブ

 

 

 

 

 

「ウオォォーー!」

 

「―ガァッ!」

 

踵からの噴射で加速しながら飛んだ俺は、熱エネルギーがチャージされたブリンガーを俺に背を向けている

セントールへと大上段から叩き込む。

 

セントールの分厚い装甲を切り裂き、そのHPバーの残量を4割にまで低下させる。

 

「セリャァー!」

 

突然の不意打ちを受けながらも、俺の方を向いたセントールはブル・ハルベルトの戦鎚を横薙ぎに振るう。

 

それを肘からの噴射で剣撃の速度を上げたブリンガーで打ち返す。

 

セントールの筋力から繰り出された一撃と俺の速度を乗せた一撃が激突し、周囲の空気を震わせる。

 

「アドにぃー、今行くぞぉー!」

 

そんな中、俺の後ろから四つの蹄が地面を叩く音と共にキャバレリーの声が響いた。

 

「≪セイクリッド・ホーン≫!」

 

セントールの攻撃を弾いた隙に後ろを向いてみると、キャバレリーが発動した必殺技≪セイクリッド・ホーン≫で緑のライトエフェクトを纏い、光の槍と化したエメラルドが一直線にこちらに向かってくるのが見えた。

 

(真っ直ぐこっちに来るな…真っ直ぐ……よしッ、それだ!)

 

セントールの猛攻撃を防ぎながら思考を巡らせて対処を考えた俺は、再度右横から迫る斧の攻撃をジャンプで回避すると、その斧の腹を足場に噴射で跳躍しセントールを飛び越えてその後ろへと着地する。

 

「ッ!と、飛んだ!」

 

俺の思いがけない行動に目を大きくして驚いた様子のセントールはそれに対処しようと向きを変えようとするが―

 

(もう、遅い!)

 

俺はこちらを振り向く瞬間のセントール顔面へと、炎を付加していないブリンガーを叩き付けた。

 

「…ッ!ぐぅッ」

 

俺の炎を付加する事ではじめて切断属性の攻撃を可能とするブリンガーだが、炎が無い状態では剣の形をした強化外装に過ぎない。

 

しかし同時に、打撃属性での攻撃に応用することも可能なのだ。

 

そして、突然の顔を殴打された衝撃でセントールの動きが一瞬止まった。

 

「エーデル、セントールをキャバレリーの方向へ弾くんだ!」

 

俺の戦闘中、ダメージからか呆然としていたエーデルは突然の俺の指示で我に返ると、両手をセントールに向けて開いてかかげる。

 

「!は、はいッ!≪フォトン・ショット≫!」

 

発声と共に彼女の残りのSゲージの殆どが消費されると、その開いた両手の大きな光の膜が形成されて撃ち出された。

 

打撃・光属性の輝く衝撃波がセントールに直撃すると、彼はさらのHPバーを減らしながら後ろに後退する。

 

そして、次の瞬間―

 

「ぼ、坊ちゃ~ん!!」

 

「馬は急には止まれませぇぇ~~~~ん!」

 

キャバレリー・エメラルドとセントールが接触し、もの凄い衝撃音と同時に大爆発を起こした。

 

爆風の衝撃で再び瓦礫の細かな粒子が粉塵として空を舞う。

 

そしてその煙の中から青緑の物体が勢い良く飛び出してきて、俺の目の前に落下した。

 

「あ痛たたたっ、背中モロにぶつけちまった」

 

なんどキャバレリーだ!

 

あの重量級アバターのセントールとあの速度で接触して、よくHPバーを―1割とはいえ―残して生き残れたものだと感心してしまう。

 

「…………あっ…」

 

キャバレリーは俺エーデルの存在に気づくと少し呆然とした後、キョロキョロと周りを見回した。

 

そして俺のほうを向き直ると―

 

「降参で~す。許してね、てへぺろ(・ω<)」

 

と少々媚びた様な仕草をとった。

 

「…可愛くない」

 

俺は少し……いや、だいぶイラッとしたのでブリンガーの腹をハリセン代わりにしてその頭をどついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

12時02分07秒 御子島学園ローカルネット≪世紀末≫ステージ カナリー・エーデル

 

 

 

 

 

「いや~今回はイケると思ったんだけどな。これで通算19戦7勝9敗1引き分けか~」

 

「6勝10敗だ。六戦目も俺の勝ちで終わっただろ…」

 

「あ、あれは最後の最後にお前が姑息な手使ったからだろ!良くて引き分けだ」

 

「システム上は俺の勝ちなんだよ」

 

「言ったな~~。よしっ、決めた!今日から平日は毎日対戦吹っかけてやるからな。覚悟しとけよ!」

 

「負けを増やして全損しない様に、せいぜい気をつけるんだな…」

 

「こ、コイツぅ~~」

 

今私の目の前では、降参したキャバレリー君がブレイブ君と楽しそうに会話をしています。

 

キャバレリー君は言い負かされて悔しそうですが、それをどこか楽しんでいるみたいです。

 

セントールさんが倒された場所に残っている薄い青色の光の柱も先程からうっすらと光を放って、どこかそ

の光景を嬉しそうの見ているように見えました。

 

「あ~あ、にしても入学早々に敗北か。ま、"コイツ"はともかくエーデルちゃんと知り合えたのは嬉しいね~。いっちょよろしく!」

 

「ハイッ!こちらこそよろしくお願いします!」

 

キャバレリー君が親指でブレイブ君を指しながら、私に話しかけてくれた。

 

「やっぱりエーデルちゃんはいい娘だよなぁ~。それに引き換え……おい、ブレイブ」

 

「…なんだ」

 

「あの壁際の席で俯きながらチラチラとエーデルちゃんを見たり、本読んでたの……お前だろ」

 

「ッ!なんでそれを…しまッ」

 

「ハァ~、やっぱり……」

 

突然のキャバレリー君の発言に驚いた様子のブレイブ君。でも私もその事は少し心配していたところだっ

た。

 

私の周りにはなぜか多くのクラスメイトは話しかけに来てくれたが、ブレイブ君のところには……

そう考えると心が少し痛む感覚がした。

 

「…カマをかけたな」

 

「オ、オイオイ、そんなに睨むなよ。たまたま同じ教室で顔に火傷の痕があったから、もしかしてぇ~って

思っただけだよ。…ただまぁ~あれだよ。お前、もすこしみんなに打ち解けるように行動したほうが良い

ぞ」

 

「……………」

 

キャバレリー君の言葉に、最初はキャバレリー君「を睨み付けていたブレイブ君の瞳の光が翳ってしまいました。

 

「…ま、なんか事情があるかもしんないけど。自分から壁作ってちゃあ、みんなも話しかけ辛いって」

 

「…ふん、大きなお世話だ」

 

「おやぁ~、そういう態度とっちゃうならオレはエーデルちゃんと現実でも仲良くなるようにもっと激しく

スキンシップ計っちゃおうかなぁ~」

 

「////!!あ、あのキャバレリーさん///」

 

顔を背けて言葉を返すブレイブ君の言動にキャバレリー君はニヤッと笑みを浮かべると、不意に私の隣にきて肩に手を回してくっついてきた。

 

すると、途端にブレイブ君がブリンガーを振るい、キャバレレリー君の首に当たる寸前で静止される。

 

「…彼女が困ってるだろ、その手を離せ!」

 

ブレイブさんの過激な行動に驚く私に対して、キャバレリー君は笑みを浮かべたままブレイブ君を見つめて

いると、私に回していた手と触れていた体を離した。

 

「やりゃー出来んじゃん。そうやって自分の感情を素直に表に出すのもたまには大事だぜ。ダメだって思う

前にまず行動してみなくちゃな」

 

キャバレリー君なりの気遣いを感じたのか、ブレイブ君は「…ふん」と呟くとブリンガーを背中に収めた。

 

「おっと、なんだかんだ言ってる間にもうすぐタイムアップだな。じゃあブレイブにエーデルちゃん、オレ

はアドにぃと合流して学食で待ってるから今度は現実で会おうぜ」

 

そうキャバレリー君が言い終えた時、私の視界上部の残り時間が0000を表示した。

 

そして、それに続いて【TIME UP!!】と【YOU WIN!!】という英語での表示が、学園での私達の最初の出会いと対戦の終わりを伝えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

12時02分18秒 都立御子島学園中等部1年2組 瓜生暁隆

 

 

 

 

 

 

喧騒としたクラスメイト達の声が耳の中に響いてくる。

 

その声で自分の意識が加速世界から現実世界に帰還したことを認識し、しばし呆然としていた俺の前を、ニカッとした笑顔をした茶髪で小柄な男子生徒がサムズアップをしながら教室を出て行った。

 

(たぶん、あいつがキャバレリーなんだな…)

 

そう思っているといあいつが加速世界で俺に言った言葉が頭をよぎった。

 

「…壁を作るな…か」

 

確かに自分と仲良くしてくれる、友達になってくれる同級生など現れるわけが無いと、半ば自分で諦めていたの事実だ。

 

だからと言って、あいつみたいに誰に対しても気さくにいける性格にすぐ変われる訳でも無い。

 

そう思い、俺はまた鞄の中からお気に入りにしている一冊の小説を取り出した。

 

(俺にもう少し行動で自分を表す勇気があればな…)

 

本の中の登場人物達も何も最初から仲が良かった訳ではない。

 

様々な困難や試練に立ち向かう過程で、互いに助け合い、時にはぶつかり合って絆を深めて"友"と呼べる間柄に成長したのだ。

 

でも、俺はその"過程"に踏み出す勇気が持てないでいる。

 

(…やっぱり、俺は人が怖いんだ。どこか恐れている)

 

そんな俺の思考の中に思い出したくも無い記憶が蘇ってくる。

 

燃え盛る炎…様々なものが焼ける異臭と充満する黒煙…そして怒りと狂気じみた笑みが混濁した表情を俺に向ける――……

 

(あの時から何も変わってない…。バースト・リンカーとしていくら強くなっても…。俺の心は何も…)

 

「あ、あの!」

 

そんな時、幾分か緊張を含んだ男の声が、俺を暗い思考の底から現実へと引き戻した。

 

気が付くと、俺の机の前に俺より少し背の低いショートカットの丸縁眼鏡をかけた男子生徒が、緊張した面持ちで立っていた。

 

「…何か用?」

 

俺は―美浦さん以外で―現実で今日始めて話しかけてきたクラスメイトに対して、内心少し緊張しながらそう問いかけた。

 

「そ、その本、【獅子王戦姫記】だよね?本当の本では初めて見たよッ!き、君の持ち物なの?」

 

「そ、そうだけど…」

 

そう答えると、男子生徒の表情の天秤が緊張から興奮へと比重が変わったのが目に見えてわかった。

 

「凄いやッ!それ、製本される以前に出版会社から出されてたタイプだよね!こんなに綺麗に残ってるの始めて見たよ

 

…。あ、僕は登場人物の中では白百合騎士団の団長が好きだな!繊細な見た目に反して強かで、それでいて女性に対しては親友が落胆する程朴念仁なところとか!君は誰が好き?」

 

「え、ええっと、俺は、その」

 

急に目を輝かせながら饒舌に語りだした男子生徒の空気にのまれた俺は、咄嗟に(誰が一番好きかなぁ~)などと思考を巡らせてしまっていた。

 

「あ、ごめん。急にこんなに話し出して…気分悪くしちゃったかな?」

 

「い、いや、そんな事無いよ。えーっと、そうだな……」

 

俺は好きな登場人物の名前を呟こうとしたが、その後が続かなかった。

心が警鐘を鳴らしている。

 

―お前に現実で友達ができるのか?心の底は怖がって恐れている癖に…ー

 

そう心の中のもう一人の自分が問いかけてくる。

 

(そうだ…どうせ俺は…)

 

そう思った時だった。

 

―ダメだって思う前にまず行動してみなくちゃな―

 

不意にキャバレリーの言葉が浮かんだ。

 

あの能天気でお調子者で、とても何かトラウマを抱えているバーストリンカーである印象が一切感じられないキャバレリー。

 

なのに…

 

(あの時は他愛も無い言葉に思えたけど、なんで今はこんなにも心に響くんだろうか…)

 

そう考えていると、先程まで心の中から湧き出していた暗い感情はどこかに消え去ってしまっていた。

 

「あ、あの…」

 

男子生徒が今度は不安そうにこちらを見ている。

 

「…俺は、主人公の友達の山賊の副頭目かな。大鷲騎士団団長との毎度御馴染みの口論の場面なんか、読ん

でてなんだか微笑ましいよ」

 

そう返答する俺をポカーンした顔で見ていた男子生徒は、再び目を輝かせながら「そうだよね!あそこ良いよね!」と頷く。

 

「あ、自己紹介してなかったね。僕の名前は環 洋太(たまき ようた)

 

「瓜生、…瓜生 暁隆」

 

男子生徒、環洋太はそう自己紹介すると、自然と俺に手を差し出してきた。

 

「暁隆君でいいかな?よろしくね」

 

「あ、あぁ…。こちらこそよろしく」

 

そう言うと、俺は洋太の手に自分の手を伸ばして握手を交わしていた。

 

そして興奮冷めやらぬ感じで再び本の話を始めた洋太の話を聞きながら、俺はふと後ろを振り返って見ると、女子生徒二人と会話しながら美浦さんがこちらに明るい笑顔を向けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第5話 encounter third part:邂逅 後編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いかがでしたでしょうか?

 

キャバレリーとセントールのリアル情報は次回公開予知なのでもうしばしお待ちを

 

そして…次々回から新章突入となる予定です!

 

ついにブレイブ達が所属するレギオン≪セイリオス≫とレギオンマスターの実態が明らかに…

 

ではまた次回ノシノシ

 

 

 

PS:作中に暁隆と洋太が話している本は自分の大好きな作品なのですが、題名を出してよいか迷ったので題

名は変更しました。

 

気になる方は 獅子王 妃将軍で検索してみてね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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