No.620880

ソードアート・オンライン アクチュアル・ファンタジー STORY8 謎の暗殺者

やぎすけさん

物語の鍵を握る人物の登場。

2013-09-19 20:00:42 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1274   閲覧ユーザー数:1246

STORYⅧ 謎の暗殺者

 

 

キリト「アスナ・・・」

 

生きる希望をなくしたかのように膝を付いたキリトに、アスナは慌てて駆け寄る。

 

アスナ「あの・・・大丈夫ですか?」

 

心配そうな目でキリトの顔を覗き込むアスナに、デュオが声を掛けた。

 

デュオ「大丈夫だ。こいつ、すぐこんなふうに落ち込むんだよ」

 

アスナはデュオのほうを向くと、困惑した表情で問い返す。

 

アスナ「えっと、あなたは?」

 

デュオ「こいつの連れさ。事情があって人探しをしてる。見た目が似てたから声を掛けたんだが、人違いだったらしい」

 

アスナ「えっ、でも名前は・・・?」

 

デュオ「そいつも“アスナ”っていう名前なんだ。見た目もそっくりな人がいるとは知らなかったけど」

 

それっぽいことを言ってデュオは話を誤魔化すと、アスナが言った。

 

アスナ「そうですか。早く見つかると良いですね」

 

デュオ「ああ、ありがとう」

 

デュオが作り笑いをして返すと、アスナは邪気のない微笑みを浮べてから近くの席に座る。

すると、突然キリトがよろよろと立ち上がった。

 

デュオ「キリト・・・?」

 

キリト「行くぞデュオ・・・」

 

デュオ「行くって、アスナはどうする気だ?」

 

キリト「その人は俺の知ってるアスナじゃない・・・」

 

そう言うキリトの眼は、まるで死人のようになっている。

 

デュオ「キリト・・・」

 

見たことのない表情を見たデュオは、キリトを慰めようと手を伸ばす。

だがその手がキリトの肩に置かれる前に、ある出来事が起こった。

天井のステンドグラスが砕け散り、そこから人が落ちてきたのだ。

キリトやデュオとほとんど同じ長さの黒髪をした、見た目十代後半の男性。

背には、デュオのものよりやや細いぐらいの直剣が、鞘無しの状態で背負われている。

黒っぽい藍色のロングコートをマントの如くはためかせ、教皇の前の机に着地。

その顔を、ゆっくりと顔を上げて教皇を見た。

次の瞬間。

それは、一瞬の出来事だった。

男は、腰のホルスターから拳銃を取り出し、教皇の額を撃ち抜いたのだ。

1発の銃声と、カラン、カランという薬莢が落ちる音が、静寂の聖堂内に響き渡る。

あまりの早技に、誰もが反応出来ずにいる中、教皇が倒れ、それと同時に立ち上がった男が振り向く。

ゴーグルのような仮面をつけたその顔には、たった今射殺した教皇の血が殺人の証拠を主張するかのように付着していた。

それを見た瞬間、キリトたちの周りにいたNPCたちが狂ったように逃げ始める。

 

騎士団長「教皇!!」

 

騎士団長が叫び、それを合図に隣に並ぶフルフェイスのマスクをした8人の騎士たちがそれぞれ抜剣。

急いで駆け出し、二手に分かれる。

騎士団長とその他数名は、倒れた教皇に駆け寄り、その体を抱き起こすが、すでに息は無い。

 

騎士団長「なんてことだ!」

 

残りの騎士たちは、教皇を殺害した男を取り囲んで剣を構える。

男も抜剣すると、近くにいた騎士の1人に飛び蹴りを見舞った。

蹴り飛ばされた騎士は、勢いよく吹き飛び壁に激突。

それと同時に、他の騎士たちが斬りかかる。

男は、正面から斬りかかってくる騎士を弾き返し、次いで後ろから来る騎士の攻撃を、剣を担ぐように持つだけで、見ることなく捌く。

そして、体勢を崩した騎士たちを容赦無く殺害する。

 

デュオ「俺たちも避難しよう」

 

逃げ惑う民衆の間から戦闘を見ていたデュオは、噴火寸前の溶岩の如き怒りを抑え、避難するためにキリトとアスナを連れて聖堂の出入り口に向かった。

その時、最後の騎士が倒され、暗殺者はゆっくりと歩いて騎士団長の下へと向かう。

それを見たアスナは、デュオの手を振り切って走り出した。

 

アスナ「お義兄(にい)ちゃん!!」

 

デュオ「アスナ!!」

 

悲鳴にも似たアスナの声に、放心状態だったキリトが我に返る。

突然自分に向かって来たアスナに、男は剣を構える。

すると、今度はキリトが走り出した。

 

デュオ「キリト!」

 

デュオが手を伸ばすが、キリトはその手をかわして走った。

背中の鞘から剣を抜き、暗殺者に飛びかかる。

 

キリト「はあぁぁぁ!!」

 

アスナに意識を向けていた男は、その後ろから明らかな敵意を向けて来たキリトに狙いを変えた。

 

キリト「ぜらあぁぁぁ!!」

 

空中から振り下ろされるキリトの剣を、男は右下段の切り上げで迎撃する。

ぶつかり合った2本の剣は、凄まじい金属音と火花を放ち、お互いの主を後方に吹き飛ばした。

隙の出来た暗殺者に、空かさずデュオがリボルバーを引き抜いて発射、追撃を掛ける。

だが、男はそれを自分の銃で撃ち抜いて弾き返してみせた。

直後に、男は大理石製の剣士像の肩に着地し、手に持った二丁の拳銃を、一丁ずつキリトとデュオに向ける。

同じく吹き飛んできたキリトは、デュオの隣に着地すると、瞬時に剣を持ち上げ構え直した。

 

アスナ「キリトさん!!」

 

キリト「来るな、アスナ!!」

 

もう一度走り出しそうなアスナに、キリトが鋭い声で叫ぶ。

 

キリト「他の奴らと一緒に逃げろ!!」

 

デュオ「奴は俺たちが相手する!」

 

銃を向けたまま、光の無い眼のデュオがキリトに続く。

それを聞いた騎士団長は、剣を暗殺者に向けたままアスナを庇うようにして立ち上がった。

 

騎士団長「応援を寄こす。それまで凌いでくれ!!」

 

そう言って、騎士団長はアスナと教皇の死体を抱えた騎士を連れて、聖堂内から避難していく。

その姿が見えなくなると、デュオは不敵な笑みを浮べて呟いた。

 

デュオ「ごゆっくり」

 

その言葉を最後に、デュオの顔から余裕の色が消える。

 

デュオ「その前に、ぶっ殺す!!」

 

男に向かって銃を放ったデュオの瞳は、鮮血のように真っ赤に染まっていた。


 
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