No.620394

ソードアート・オンライン アクチュアル・ファンタジー STORY7 絶望 消えたアスナ

やぎすけさん

キリトにとっては絶望的な状況に・・・

2013-09-17 20:41:30 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1299   閲覧ユーザー数:1275

STORYⅦ 絶望 消えたアスナ

 

 

 

 

キリト視点

俺とデュオは聖堂の前に辿り着いた。

聖堂の中からは、歌声が聞こえる。

聞き慣れたその声は間違いなく、SAO時代から一緒に過ごし、ともに笑い、泣き、戦った彼女のものだった。

 

キリト「間違いない!アスナだ!」

 

デュオ「よし!中に入るぞ」

 

俺たちは建物正面の階段を駆け上り、入り口を見つけて中に入る。

中は、半球体状の造りで、客席が半円状に並び、建物の突き当りには、剣を床に突き立てるようにして持つ、大理石製の巨大な石像が鎮座していた。

その2つのちょうど間に、客席より1mほど高いステージがある。

その上では、新聞で見たのと同じ服を着たアスナが壇上に上り、歌を歌っていた。

 

キリト「アス・・・・!?」

 

デュオ「待て・・・」

 

叫ぼうとした俺を、真剣な表情をしたデュオが制する。

デュオは、敵を見る時と似た鋭い視線でアスナを睨みながら言った。

 

デュオ「様子が変だ。いつものアスナならお前を見ただけで反応するのに、さっきこっちを見た時は瞬き1つしなかった」

 

キリト「・・・」

 

デュオ「それに、今は聖歌を歌っている最中だ。無理に話しかけて、警備の連中に摘み出されたりしたら、後が面倒だ」

 

キリト「じゃあどうしたら・・・!」

 

デュオ「歌い終わるのを待て。アスナが退場した後に、尾行すれば接触できる」

 

キリト「だけど・・・!」

 

デュオ「落ち着け!」

 

デュオは小声で怒声を上げると、俺に頭突きしてくる。

そして、俺を睨んで言った。

 

デュオ「いいか?変に動いて事態をややこしくしたら、接触不能になる可能性だってある。辛いだろうが、今は機会を待て」

 

正面から真っ直ぐ向けられた真剣な眼差しに、俺は無言で頷き、近くのいすに座る。

しばらくして、歌が終わり俺たちは立ち上がろうとしてある事に気付いた。

立てない。

強力な接着剤で、椅子に体を固定されてしまったかのように、体はビクともしない。

その上、声を出すことも不可能だった。

慌てて背中の剣に手を掛けるが、それも鞘と接合されたかの如く抜けない。

 

キリト〈アスナ・・・!!〉

 

辛うじて動く頭をアスナに向けて心の中で叫ぶが、それも届くことはなく、彼女は奥に入っていてしまった。

続いて、入れ替わるようにして出てきた謎の老人の演説が始まる。

格好からして、教皇か何かだろう。

純白の衣装に身を包んだ白髭の老人は、この世界の成り立ち、歴史、伝説等を話す。

何かの手掛かりがあるかもしれないとも思ったが、語られているのはどれもありきたりなものばかりで、役に立つことは無さそうだ。

その時、小さく控えめな靴音が聞こえてくる。

視線を向けると、そこには血盟騎士団の制服に似た服を着た、アスナがやってきた。

 

キリト「アスナ!!」

 

ようやく声が出せるようになった声帯から、限界まで声を発する。

それでも、普通に話すより控えめな声程度しか出せない。

だがそんなことは気にも留めず、俺は続きを言おうとした。

しかし、その前にアスナから衝撃の一言を聞かされる。

 

アスナ「あなたは、誰?どうして私の名前を知ってるの?」

 

キリト「えっ・・・!?今・・・なんて・・・!?」

 

一瞬、彼女が何を言っているのか理解出来なかった。

いや、理解することを無意識に拒んだんだ。

それはデュオも同じようで、さっきから両目を見開いたままになっている。

俺は今の出来事を拒絶するように、ゆっくりと椅子から立ち上がり口を開いた。

 

キリト「アスナ、俺だよ!キリトだよ!!」

 

アスナ「キリト・・・さん・・・?」

 

可愛らしい動作で小首を傾げるアスナの姿を見て、ここまで辛く感じたことはない。

突き付けられた事実に、視界が暗転し、全身から力が抜けていく。

 

キリト「そんな・・・アスナ・・・」

 

誰よりも会いたかった彼女によってもたらされた、何よりも辛い真実に、俺は力無く膝を着いた。

 


 
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