No.612629

県令一刀と猫耳軍師 第5話

黒天さん

今回は汜水関攻略です。
今回も原作ベースに作っているので黄巾の乱の時と同じく原作にかなり近い感じです。

ただ、桂花と朱里仕事ぶりのおかげでの原作よりも戦力が多くなってます。

2013-08-26 03:22:58 投稿 / 全13ページ    総閲覧数:11409   閲覧ユーザー数:8602

寝る間を惜しんで仕事を続けていたそんなある日、とうとう霊帝が死んだとの報が飛び込んでくる。

 

「来たか……」

 

俺の中でそろそろ死ぬのは予測済み。だいたい黄巾の乱が終わった頃の話しだったはず、というのは覚えていた。

 

次々に情報収集のために、忍者隊を飛ばしていく。

 

この頃の歴史の詳細は覚えていないが、情報をきく限り、クーデターじみた事件があったあとに

 

やはり董卓が暴政を振るい始めた、という情報が入るようになる。

 

ただしこれは洛陽以外からの情報、その頃からはぱったりと洛陽に向かわせた者は帰ってこなくなっていた。

 

こうなるといよいよ何かある気がする。

 

こうなる以前の情報で得た董卓の人柄が頭について離れない。ワケアリなのか、それとも堅実を演じていた狸なのか……。

 

そしてついに打倒董卓を掲げた諸侯の大連合が組まれる事となった。

 

その大連合への参加を促す袁紹からの使者が、幽州にもやってきたのだ。

 

 

「ってわけなんだけど、どうしよ?」

 

というのは建前、俺の腹は参加で決まっている。

 

「どうしよ、ではありません。黄巾の乱で疲弊した人民が董卓の暴政に苦しんでいるのです。これを放ってはおけないでしょう!」

 

「そうなのだ! 鈴々は連合に参加したいのだ!」

 

鼻息荒く参加したいという愛紗と鈴々。

 

「愛紗と鈴々は賛成、と。朱里と荀彧はどうおもう?」

 

「そうですね、後々のことを考えるとやや難しいでしょうか……」

 

「朱里と同意見よ、一応後々の事を考えても何とか出来るとはおもうわ、ただ総大将が袁紹という時点で嫌な予感しかしないけど。

 

酷い理不尽に合う覚悟は必要だわ。できることなら袁紹をおろして他をたてたいぐらいよ」

 

そういえば荀彧は前は袁紹の所にいたんだった。軍師2人は難しい顔、参加はやや難ありってところか。

 

「賛成が愛紗と鈴々、朱里と荀彧は難しい、と……。難しいっていうのは、この後、戦で疲弊した漢王朝が力を失うと、群雄割拠の時代に入る。

 

ここで体力を使って、その時に生き残れるか、っていうことだよな?」

 

「はい、その通りです」

 

「それは確かにそうですが……」

 

「でも困ってる人を捨てておけないのだ」

 

「そこなんだけどさ、この連合に参加しているのは有力諸侯がほとんどだろ?

 

だから、この連合に参加できないとなれば、国力がない、逃げ腰、等々、『ここは攻めやすい』と思われちゃう事にならないかな?

 

そうなると真っ先に狙われる事になりかねないし、そうなるのは避けたい、だから参加するほうがいいと思う。

 

それに、諸侯と実際に話し、その考えを知るのも良いことだとおもうし、有力諸侯と友好的な関係を作れればいいと思うんだ」

 

「そうですね。攻められないために仲良しさんになるっていうの、いい方法だと思います」

 

「連合を外交の場と考えるわけね」

 

朱里と荀彧が俺の意見に対して頷いてくれる。

 

「それに、俺達が動く事で少しでも多く困ってる人が救われる、人死が少なくて済むなら、動きたいと俺は思うかな」

 

俺の気持ちを話すと、愛紗と鈴々、荀彧と朱里も賛同してくれた。どうにかできるように頑張ってみる、と。

「それでは、連合に参加するのはいいとして、軍編成についてですけど……、愛紗さんと鈴々ちゃん、それに私とご主人様は参加しなくちゃダメだと思うんです」

 

「私も行くわ」

 

荀彧の言葉に意外そうな顔をする面々、

 

「来てくれるならありがたいけど、いいのか?」

 

「ええ、まだ正式な家臣ではないけど、外側向きには孔明と文若の二枚看板で通ってるもの。行かないわけにはいかないわよ」

 

「しかし……守りはどうする?」

 

「誰かに任せちゃうしかないのだ」

 

「そうですね。最近頑張ってくれている糜竺さんと糜芳さんっていう姉妹にお任せしましょうか」

 

朱里の声に、愛紗がなんとなく嫌そうな顔をする。

 

うすぼんやりと覚えている範囲では、糜芳の裏切りが関羽の死に影響していたような気がする。一応、そんなことがないように仲良くやるようには言っている。

 

「政についても軍を率いる才能についてもそれなりにありますから。それなりに大丈夫だとおもいます」

 

可も無く不可も無く、大きなことが無ければ大丈夫、という所か。愛紗からも異論はでない。

 

「朱里がそういうならば2人に任せよう。連合に参加したあとのことですが」

 

と、次の話題を振って来るので嫌そうな顔については追求しないことにした

 

「参加したら、んー、実際流れはどんなふうになるんだろ?」

 

「たたかうだけなのだ」

 

「はは、そりゃそうだ」

 

鈴々の言葉に小さく笑う。

 

「そうですね、けどその前に面通しがあって、それから軍議でしょう。その時に私達の部署も決められると思います」

 

「じゃあ、戦い方なんかはその時に相談するとして、遠征の準備はよろしくお願い」

 

「わかったわ、でもこれだけは対策を立てておくべきよ」

 

荀彧が心底嫌そうな顔をしてため息をつき、言葉を続ける。

 

「袁紹は突撃指示しか出して来ないとみたほうがいいわ。これは9割9分間違いない……。

 

軍議の場で言いくるめるなりなんなりしないとまずいわよ。後、私は軍議への出席は避けたいのだけれど……」

 

聞いた所によると、辞表を叩きつけて飛び出してきたらしいから、顔は合わせたくないんだろうなぁ。

 

「問題は、まだ力のない勢力の俺らの進言にきく耳を持ってくれるかどうか、ってところだな……。なんとか頑張ってみるよ。さて、準備を始めようか」

 

「よーし! 鈴々も張り切って準備しちゃうもんねー!」

 

「張り切りすぎて蛇矛を忘れんようにな」

 

「鈴々ならありえそうだ」

 

「うーっ! 二人共鈴々をバカにしてーっ! 酷いのだー!」

 

「あはは」

 

俺達のやりとりを見て朱里が楽しそうに笑う、うん、堅苦しいよりこれぐらいのほうが俺ららしい。

 

和やかな会話を交わしたあと、それぞれが遠征の準備をするために自分の持ち場へと向かった

 

それからしばしの日数が経過した。

 

軍を率いて反董卓連合に参加した俺達は、連合の主軸となる有力者達との軍議に出席することとなった。

 

「……うーん、緊張するな」

 

「はうぅ、緊張しますぅ~」

 

「軍議中に朱里にいろいろ聞いたり、頼んだりすると思うけど、よろしくな」

 

「は、はい! 頑張りましゅ!」

 

噛んでるし……。

 

なんとなく微笑ましい気持ちになりながら、自分の緊張が少し緩んだのを感じる。

 

 

「……」

 

指定された場所へ行けば、視線がすごい俺に集中してるのがわかる。おそらく噂の人物がどういう人物なのか値踏みしているのだろう。

 

おれは平然とした態度を装う。

 

「あなたが近頃、庶人たちに天の御遣い~なんて噂されてる方ですの」

 

金髪ですごいドリルな髪型で金ピカの鎧を来たやたら高飛車な態度の女、おそらくコレが袁紹だろう。荀彧の言っていた特徴と一致する

 

「ああ、一応そうなる」

 

「ブ男ね」

 

このいきなり失礼な物言いをしてくれたのは誰だ……。青を中心とした衣服に短い金髪ドリルのツインテール。

 

もう一人、褐色の肌にピンクの髪の子は興味なさげにそっぽをむいてるし。

 

「よお、北郷、久しぶりだな」

 

見知った顔に声をかけられた。

 

「あ、公孫賛さん」

 

「そんな呼びにくい呼び方すんなって。私のことは伯珪で良い。元気だったか?」

 

「伯珪さん、あなた、天の御遣い~なんていうこの男とお友達ですの?」

 

「まあな、ま、一緒に戦った仲って奴さ」

 

「そうですの。まぁ門地の低い者同士、仲良くなさるのは良い事ですわね。おーっほっほっほっほ♪」

 

あぁ、この高笑い、イラっとする。荀彧はよくこんなののしたで働いてたものだ……。ああ、それがイヤになったから飛び出してきたのか

 

「はいはい。それはもういいよ。それよりさっさと軍議に移ろうぜ」

 

「伯珪さんに言われるまでもありませんわ。私の台詞をとらないでくださいます?」

 

なんだかぶつくさと文句を垂れてから、ようやく袁紹が本題にはいった。

思い出すのもつかれるので割愛するが、要約すると、董卓が私的に皇帝の威光を利用して暴れているので、倒すために自分に力を貸せと。

 

「ふん、己の名を天下に売るために董卓を利用しようとしてるくせに、良く言うわね」

 

「あら。そこのおチビさん。今何か言いまして? 身長と同じように声まで小さくて、何をおっしゃったか聞こえませんでしたわ~」

 

「老けた見た目同様、耳が悪いようね、おばさん」

 

軍議ってなんだっけ、はっきり言って死ぬほど疲れる、公孫賛……。伯珪に近寄り、そっと問いかける。

 

「なぁ、あの2人って犬猿の仲なのか?」

 

「ああ、昔っから仲が悪いよ、こいつら」

 

口喧嘩がヒートアップし、とうとうお互いにエモノに手をかけるところにまで発展する。

 

あかん、大丈夫かこの連合

 

「あーもう! 袁紹も曹操も落ち着けよ! 今はそんなことでいがみ合ってる場合じゃないだろうが!」

 

にらみ合いが続くなか、伯珪が孫権に助けを求めるも、関係ない、の一言でバッサリ。

 

必死に伯珪が説得して、どうにか軍議の本筋に戻ってくる。つ、疲れる、非常に疲れる……。

 

既に緊張感なんて無い、そしてこいつをどう説得するか……。

 

「さて、みなさん。この連合に1つだけ足りない物がありますわ。

 

この軍は袁家の軍勢を筆頭に精鋭が揃い、武器糧食も北郷軍を除いて充実し、気合だって十分に備わって居ますけれど、たった一つだけ足りないものがあるのですわ

 

その足りないものとは何かお分かりになりますか? 天の御使いとやら」

 

足りないのはお前の頭だ、と思わず口走りそうになりこらえる。

 

「この軍議を見る限り足りないのは、連合としてのまとまりじゃないかな。

 

これじゃあバラバラもいいところだ。連合内で喧嘩をしてるっていうのが既にありえない。

 

誰かに軍を纏めてもらいたい所だけど。この中でそれが出来そうな人物は……」

 

集まった諸侯に視線を這わせる。一度曹操で視線を止め、それから袁紹を素通りして孫権に視線を向ける。

 

「その通りですわ、そしてそれができるのは、強くて、美しくて、高貴で、門地の高い……、そう、まるで私のような三国一の名家出身の統率者が必要なのですわ」

 

人の意見は最後まできけよ! っていうか、俺が自分の事を見なかったから強引に奪い取りに来やがったなこいつ。

 

そして一気に軍議の空気はしらけ、勝手にしろ! ってなもんである。

 

荀彧ごめん……、俺の手にはおえなかったよ……。

 

俺と朱里はぐったりと疲れた表情をしながら北郷軍の陣地に戻った。

 

 

「お帰りなさいませ」

 

「お帰りなのだ♪」

 

「その様子じゃ、ダメだったみたいね」

 

出迎えてくれる3人、荀彧はどうやら俺たちの様子から事の次第を把握したらしい。

 

「なんか、袁紹と曹操が喧嘩して、公孫賛がそれを仲裁して軍議を進めたんだけど、袁紹が好き勝手言って色々決めちゃったんでみんなが呆れて解散した感じだなぁ。

 

こんなので大丈夫か……」

 

「大体予想どおりね、まぁ連合軍の数だけは多いから、数で踏みつぶす事はできるでしょうけど……。もし前曲にうちの軍が配置されたら大変なことになるわよ。

 

洒落にならない被害が出るわ。とにかく、忍者隊を虎牢関と汜水関に追加で放つわ。砦の中に入るのは難しいだろうけど、遠くから見ることはできる」

 

「失礼する!」

 

キビキビとした声が響くと同時に、俺達の元へイカツイ軍装に身を包んだ三人組がやってきた。あれは、曹操か。

 

確か曹操は関羽にえらくご執心だったはず、ってことは関羽を勧誘にでもきたのか?

 

「我が主、曹孟徳が荀彧殿に用があって参った。荀彧殿はどこか!」

 

そ、そうきたか……! ってことは軍師不足なのか、曹操の軍は……。

 

「荀彧は私ですが」

 

外交に関わってくるためか、荀彧は言葉遣いを変え、猫をかぶって対応する。こんな態度俺見たことないぞ……。

 

「はじめまして、というべきね、荀彧。私の名前な曹孟徳。いずれは天下を手に入れる者よ」

 

曹操は荀彧を褒め、私のモノになれと、荀彧を勧誘する。

 

荀彧はもともと曹操のところに居るべき人物だ、どう返答するのか気になって、曹操の言葉は耳にはいってこない。

「申し訳ありませんが今は返答できかねます。私は北郷殿にとても大きな恩義があります。その恩を返すまでは、私はあなたの元に下るわけにはまいりません」

 

曹操を下手に刺激しないように柔らかく、はっきりと荀彧はその勧誘を断った。俺は一安心とばかりに胸を撫で下ろす。

 

「いいでしょう、ここは引くわ。物事に筋を通すのは大事なこと、私としても、恩を仇で返すような人間は欲しくない。

 

けれど覚えていなさい。私は一度ほしいと思ったものを必ず手に入れる。たとえどんな手をつかったとしても

 

早く恩を返して私の元へいらっしゃい、私が痺れを切らす前に。

 

春蘭、秋蘭。用は済んだわ、帰ります」

 

 

曹操達が、立ち去ると大きくため息をつき、ちらと荀彧のほうへと視線を向ける。

 

「なによ、私が曹操の所に行くとでもおもってたの?」

 

「正直不安だった」

 

「そこまで私は恥知らずじゃないわよ。私を何だと思ってるのかしら?」

 

じとーっとした視線を俺に投げかけてくる。ちょっとこわい……。

 

「あれが曹操かー。ちっこかったねー」

 

「でも全身に漂う覇気は尋常じゃありませんでした。さすが英雄と讃えられるだけある、といったところですね~」

 

のんびりと曹操のことを評する鈴々と朱里に愛紗が苦笑する。

 

「でもありがとう、俺にはまだ荀彧が必要だから、残ってくれたのは嬉しいよ。できることならずっと傍に居てほしいんだけどね」

 

「き、気持ち悪い事言わないでくれる!? あんまり調子に乗らないでよ!」

 

怒ったように荀彧が声をあらげる。

 

「にゃー……、お兄ちゃん、鈴々はー?」

 

「もちろん鈴々もだよ」

 

「あぅ……」

 

「もちろん朱里にも傍に居てほしいよ!」

 

そして何か物言いたげな雰囲気をもった愛紗にも。

 

「当然愛紗もね」

「あれ~? 荀彧のお顔が赤くなってるのだ」

 

「怒ってるだけよ! 赤くないわよ!」

 

確かにそんなに顔色が変わったようにはみえないけど、ほんの少し、頬が赤いような気がした。

 

「お、なんだか楽しそうにやってんなー」

 

その鈴々の後ろから、底抜けに明るい声とともに、初めて見る少女が姿を表した。

 

緑を基調にした服に茶髪のポニーテールの少女。

 

「おまえだれだー?」

 

「あたしか? あたしは馬超ってんだ。よろしく」

 

馬超といえば、ゲームだとすんごい脳筋キャラだったよなぁ。武力は相当高くなかったっけ。

 

確かこの人も劉備系の人だったような。

 

ということは、この子もそのうち仲間になってくれるだろうか。

 

「確か西涼の領主、馬騰さんの娘さんに同じ名前の人がいたような気がしますね」

 

「そりゃあたしのことだ。馬騰はあたしの父上さ」

 

父……上……? 思わず口に出してしまいそうになった。父上、ねぇ? 珍しい、有名武将はほとんど片っ端から女性なのに、馬騰は男性なのか。

 

そこまで考えて、すっかりこの世界に毒されてしまっているなと軽く苦笑する。

 

「ほお。ではあなたがあの名高き錦馬超か」

 

「あなたなんて言い方やめてくれ。なんだか体中が痒くなってくる。馬超って呼んでくれよ」

 

このあと、軽くそれぞれに名乗りあったあとに、馬超からの評は「なんだかいい感じの主従で微笑ましい」とのこと

 

まぁ、そう言われて悪い気はしないが……。

 

「ところで馬超はどうして俺たちの陣地に?」

 

「なんか袁紹から伝令がきてさ、配置換えを全軍に伝えろってさ。それを言いに来たんだ」

 

「配置換え? いよいよ攻撃開始か」

 

「そうみたいだな。多分関羽達は後曲に回されると思うぞ? 見たところ兵隊も少なそうだし」

 

「むぅ、我が軍の兵は皆、一騎当千の猛者であるものを……」

 

「猛者だけど、この人数で前曲に回されるのは勘弁してほしい」

 

用件を伝えると、馬超は去っていった。

 

「んじゃ俺たちも出陣の準備に取り掛かろうか」

 

俺たちはすぐに行動をおこす。愛紗と鈴々は各部隊に指示を出し、戦闘準備を開始した。

 

途中、朱里が機転を利かし、連合軍の武器を大量にパクってきてくれた。

 

貧乏軍隊の辛さというかなんというか、まぁ武器糧食をしっかりと準備してくれていた大諸侯たちに感謝。

 

それでもどうにか兵1万を揃えてきたのだからそこは認めてほしいとはおもうが……。

 

俺たちは陣容を整えて出陣合図を待つ。

 

勇ましい袁紹の声のあと、全軍が汜水関に向かって行軍を開始した。

 

「報告します!」

 

忍者隊の男が帰ってくる。こいつはさっき走らせた奴じゃない、数日前からあらかじめ走らせて汜水関を監視させてた奴だ。

 

「昨夜、董卓軍にずっと潜伏していた者より『もーるす』を使って連絡がありました。汜水関城壁上から松明を使って連絡してきています」

 

「!」

 

董卓をマークしてたときから、董卓軍の兵として潜伏させ続けてた奴がここにきて生きてきたか。確か2~3人は派遣してたはずだ。

 

「解読結果を伝えます。18000の伏兵あり、華雄将軍単独で副官はなし、奇襲に注意されたし」

 

「……。朱里、荀彧」

 

「聞いてるわ、後曲だから私達がどうにかしなきゃならないみたいね」

 

「華雄っていう将軍の情報はある?」

 

「手強い猛将かと。しかし、副官無しで兵18000ではおそらく陣形を整えてはこないと思います」

 

「……、荀彧、アレができるんじゃない? 黄巾の乱の時の」

 

「そうね、彼我の戦力差の比率はあの時とほぼ同じ、今であれば一糸乱れぬ動きも可能だわ。兵たちにいつでも奇襲を迎え撃てるように準備をさせるわ」

 

華雄といえば、性格はしらないがたしか、史実では関羽にあっさりと首を取られた武将だ。手強い猛将とはいうものの実力差はおそらく歴然。

 

それなら手加減をしてでも戦えるだろう。

 

「愛紗、華雄は可能なら捕縛してくれ、華雄を説得できれば鮮度の高いナマの情報を得られる。できる?」

 

「ご主人様がお望みとあれば」

 

「頼りにしてるよ、それじゃあそれぞれ持ち場に手はずを伝えにいこうか」

行軍すること数時間、峡谷の途中、行軍を邪魔するようにそびえ立つ関門が見えてきた。

 

「あれが汜水関か」

 

「奇襲があるとすればそろそろですけど、袁紹さんたちはそんなこと考えてないみたいですね……。おそらく全軍が整列次第、突撃命令が出されると思います」

 

「うーん、袁紹はバカなのだ」

 

しばらく袁紹についての酷評がそれぞれから言われるなか、ドラの音が響き渡る。

 

「後方から敵が現れました! 董卓軍の伏兵です!」

 

「来たか、迎撃用意!」

 

袁紹の部隊からは少し離れ、やりやすい位置に既に陣取っている。あとは合図とともに陣形を少しばかり入れ替えて方形陣をとるだけだ。

 

予測通り、陣形も整えず突き進んでくる、意表をつければそれでもまだよかったのだろうが、予め予測ができているので怖くない、黄巾党のやつらと同じに見えてくる。

 

対応の速さに驚きでもしたのだろうか、一瞬足並みが遅くなるも、董卓軍はそのまま突撃をしてくる。

 

ほどなくこちらの前衛が董卓軍と激突する。

 

「朱里、後退の合図は任せるよ」

 

目を細めて戦場を見据える朱里の視線が頼もしい。

 

「そろそろです、後退指示を!」

 

朱里が後退を宣言し、銅鑼を鳴らせば、中央部が後退していき、縦深陣を形成していく、華雄率いる董卓軍はそれにずるずると引きずられるように縦深陣に入り込んでくる

 

「かかったわ、もう逃がさないわよ」

 

荀彧がにやりと笑う。やはり兵士と盗賊とでは質が違うため、こちらへの損害も発生しているが、それでもかなり少ない部類といっていい。

 

「報告します! 関将軍が董卓軍の華雄将軍と接触しました!」

 

 

「その青竜刀……、ほお。お前が噂の関羽とやらか」

 

「我が名を知っているのか。ならば話しは早い。華雄将軍よ、尋常に私と立ち会え」

 

「ふん、いくら名が高まっているとはいえ、寡兵の将を討って何になる、疾く引くぞ!」

 

「できると思っているのか? 貴様は既に我が策にはまっているのだ、今更逃げられるとおもわんことだ。逃げたければ私を打ち倒していくのだな」

 

華雄はゆっくりと戦斧を構え、関羽に相対する。

 

「ならば貴様を打ち倒し、押し通るまで! 関羽! 我が戦斧の血錆となれ!」

 

「笑止! 我が名は関雲長! 我が一撃を天命と心得よ!」

 

「ほざくな関羽!」

 

「華雄──!!」

 

愛紗が放つ青龍刀の刃が華雄に迫る、それを華雄は斧で受け止め、次はこちらとばかりにすくい上げるような一撃を繰り出す。

 

「ぐっ!」

 

力任せの2撃目、3撃目を愛紗に打ち込もうとするが、それをことごとく受け流す。

 

「どうした関羽、たったそれだけの力で天命を騙ったのか!」

 

「騙りか真か、己の目で確かめてみよ! 我が剛撃をその身に受けて! いやぁぁぁ!!」

 

確かに華雄の実力は高いがこれなら勝てる、と、ここまでの攻防で愛紗は確信していた。

 

手始めに一撃うちこめば華雄は体勢を崩し、続け様にもう2撃。これも戦斧によって受け流されが、苦しい様子が見て取れる。

 

「ふっ……。その程度か、その戦斧はどうやら飾りのようだな?」

 

「調子に乗るなっ 関羽!」

 

「貴様では我が相手に不足だ、貴様では私に勝てん」

 

華雄の口元が歪み、鈍い音が聞こえる。

 

「武において私を愚弄するなど断じて許さん! 我が武の器は無比! 我が武技は無双! 貴様などに遅れはとらん!」

 

「ふっ……これしきの挑発に乗るとは愚か」

 

怒りにまかせて突っ込んでくる華雄の一撃をかわし、石突きでその体に一撃食らわせる。その一撃は的確に急所を捉え、その意識を刈り取った。

 

「敵将華雄! 北郷が一の家臣、関雲長が討ち取ったり!」

 

「……あ、崩れたな」

 

董卓軍に動揺が走ったのに気づく。

 

「ご主人様も気付きましたか? 愛紗さんが華雄さんに勝ったみたいですね」

 

「将がいなくなればあとにのこるのは逃げ惑う雑兵のみ、さぁ、踏み潰すのよ」

 

華雄が捕らえられるとあとは早かった、崩れる前から策にはまっていたのだ。あとは踏み潰すだけ、という荀彧の言葉通り、あっと言う間に勝負がついた。

 

投降者もかなり出たようだ。

 

「荀彧、袁紹はこの後どう出るとおもう?」

 

「……、嫌な感じがするわ。多分華雄をうちとった事で予測できる敵軍の行動は、討って出てくるか亀のように砦にこもるかのどちらかだとおもうわ。

 

討って出てきてくれれば私達の仕事は無い、でも、たてこもられたらおそらく、焦れた袁紹がこちらにも攻撃指示を出してくるわ」

 

「さて、どうするか……。」

 

俺は行く手を阻む汜水関に視線を向けて、大きく息をついた。

あとがき

 

どうも、黒天です。

 

さてさて、今回は汜水関攻略前編でしたがいかがだったでしょう?。

 

なかなか独自の展開を考えていくというのは難しいですね。

 

前回にお気に入りに入れてくださった方が40人を超えました!

 

こんなに見て気に入ってくれる人がいると思うと嬉しい限りです。

 

 

さて、今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!

 

次回もよろしくお願いします。


 
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