No.56513

魏after 一刀伝04

三国堂さん

今回は原作キャラが大活躍ですよ!
そうだね、及川だね orz

とりあえず前回に引き続き、色々と悩んだり覚悟したり行動したりする一刀君の巻。
SSとして考えると、サクッと帰って来て、そこから話を膨らませる、ってのが正しいんでしょうが、二度と自分の世界に帰れないとなったら、幾ら全身精液男でも悩むだろうと。

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2009-02-07 05:40:21 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:17270   閲覧ユーザー数:12135

「あ~お~~げば~、と~う~とし~~」

卒業式定番の歌を歌いながら、思い出すのは高校三年間の出来事ではない。

あの世界に行く前の思い出は既に遠く霞み、その後の一年と少しの記憶が、頭の中を過ぎ去っていく。

その中でも、銅鏡を手にした後の三ヶ月の思い出は、一際強い輝きを放っていた。

全てはあの日、母さんと交わした約束によるものだ。

 

銅鏡が届いて数日たった頃、俺はついに覚悟を決めた。

あの世界に行く行かない、という覚悟ではない。

もう二度と家族に会えないという事を、家族に伝え、納得して貰う、という覚悟だ。

何故なら、俺が華琳を側で支えるなんて事は、決まりきった当然の事に過ぎないのだから。

とはいえ、全てを伝えるわけにもいかない。

外国に行く。

その国の状勢からして、もう帰って来れないかも知れない。

結局は、そんな風に曖昧に言わざるをえないのが、酷くもどかしかった事を覚えている。

まあ、その結果は当然失敗。

その後数日間に渡り、行かせてくれ、認めない、の水掛け論を繰り返す事になった……。

しかし、納得はいかなくとも、俺の意思が変わらない、という事だけは理解したのだろう。

黙りこくってしまった爺ちゃんと父さんを尻目に、母さんが出した条件が、旅立つのは高校を卒業してから、というものだった。

 

-あなたがもし本当に帰れないのだとしても、決して私達のことを忘れないで欲しい。

 その為にも、卒業までの間、私達やお友達との思い出を作って頂戴-

 

そんな事を言われてしまえば、俺としては降参するしか無いわけで。

-それに現実問題、もし帰ってくる事が出来たら、高卒と中卒じゃ大違いなんだから。

 高校くらい、出ておいて損は無いものよ-

おまけに現実的な面からも言われたとくれば、北郷軍は無条件降伏するしかなかったのである。

 

それからの俺は、全力で思い出を作っていった。

爺ちゃんと剣術の腕を磨き。

父さんと将棋を指し。

母さんと買い物をして街を巡る。

及川、クラスメイト、剣道部、様々な場所で、様々な人達と、全力で遊び、学び、まさに青春を謳歌した。

あの世界を思いながらも、楽しく、かけがいの無い時間。

そんな時間も、今日で終わる。

タイムリミットは、刻一刻と近づいてきていた……。

 

 

卒業式を終え、及川はクラスの打ち上げに行き、俺は剣道部の打ち上げに。

その後合流した二次会のカラオケが終わる頃には、太陽はとっくに沈み、おまけに時計の短針が二週する程の時間が過ぎ去っていた。

「は~い、じゃあ、二次会終了~! 解散すんで~」

「「「「えーーーっ!」」」」

「はいはい、みんな制服やからこれ以上はちょいキツイで。それに寮も引き払っとるから家遠い奴もおるやろし」

そんな感じで、及川がテキパキと仕切って解散。

俺と及川は二人肩を並べ、暗い夜道を歩いていた。

「いやぁ、まさか委員長のメルアドが手に入るとはついとるなぁ。これも、清く正しい俺への神様のご褒美、って奴なんやろか」

「…………」

ゆっくりと息を吸って、覚悟を決める。

「大学行ったら、また今日みたいに人集めて、今度は酒ありで飲み会でも開こうや」

さあ、最後の仕事だ。

及川に、キチンと別れを告げるとしようか。

「及川……」

「あん?」

俺の硬い声に気づいたのか、振り向いた顔には、薄っすらとした疑問の色。

「俺、大学には行かないんだ」

「は? かずピー、何言うて……」

「大学には行けない」

俺の態度から、何かを読み取ったのだろう。

「推薦、受かっとったよな?」

「ああ」

及川の表情が

「他の大学行くって事か?」

「いや。進学自体、する気は無い」

段々と

「就職でもするんかい」

「俺は……、この国には残らない」

強張っていく。

「ボランティアだの、留学だの、って訳やない、な?」

「ああ。多分、もう、帰ってくることは無いと思う」

何時の間にか、ふたりの足は止まっていた。

「訳分からんで。何でもっと早くに。せめて相談くらい……」

「あっちに戻れるかもしれないって分かったのは、去年の暮れの事だったからな」

受験の邪魔するわけにもいかないだろう? そう言うと、グシャグシャと髪をかき回し、溜息をひとつ。

「わかった。とりあえず、話聞かせてや」

「そうだな。まあ、そう長くなる話でもないさ」

そう言って語ったのは、家族にしたのと全く同じ説明だ。

真実を伝える事が出来ないのは、非現実的だから、という前に、信じて貰えなかったら辛いという、俺の弱さなんだろうな。

説明をする為に口を開きながら、俺はふと、そんな事を思った。

 

 

「一昨年旅行に行った俺は、旅先でトラブルに巻き込まれ、内乱状態の国に放り出される事になったんだ。

途方にくれている俺は、そこである勢力のトップに拾われた。

その恩返しやら何やらで、俺は彼女に微力ながら手を貸し、最終的に彼女は国を統一。

そのドサクサに紛れて、この国に戻ってきた。

……いや、戻されたって言うべきなのかもしれないな」

 

纏めてしまえば、一分もかからずに終わってしまった。

苦笑と共に一息つけば、及川の顔は驚きを通り過ぎて呆れの色の方が濃くなっている。

「短い間に、随分盛りだくさんだったみたいやな」

「まったくだな」

もう一度、苦笑がこぼれる。

「今でも、あの時の事が夢だったんじゃないか、そう思う事が時々あるよ」

「でも実際に夢や無く、去年の暮れにその国へ行く手段も見つかった。って事でええんやな?」

「ああ。確証は無いけど、たぶん無事に着けるだろうさ」

何故だろう、及川の顔は既に呆れ100%だ。

密航か、だの、かずピーが犯罪者に……、だのブツブツ言っているのは丁重にスルーする。

銅鏡割ったら行ける気がします。とは尚更言えそうにないよなぁ。

「まあ、要約すると、や」

「いや、これ以上要約しようが無いだろ」

「いやいやにーさん、もっとスパッと纏められるに決まってるやん」

ニヤリと笑う及川は、何時の間にやら普段のアイツと変わらない顔で。

「いやいやいやいや、そもそも俺の話なのに、なんでお前が纏められるのかという……」

「要は、惚れた女の側にいたいんで、故郷を捨てますよー。っちゅー事やろ?」

「うぐっ」

「いひひひひひ。なんやかずピー、普段人の事とやかく言うてる割には、随分とお盛んやったみたいですなー」

「おまっ、何を訳の分からん事を」

いかん、及川は華琳を指して言ってるんだろうが、自分の行動を振り返ると、お盛んという言葉に何にも反論出来んじゃないか。

「あかんでぇ。そんなやらしい顔で"彼女"とか言っときながら、誤魔化せると思うとんのかいな」

「ぬぬぬぬ」

「そもそもそういう理由でもなけりゃ、ダチから家族からほっぽりだして国出ていきますー、なんて納得できるかい」

「あー、なるほど。そりゃ、確かにそうかもなぁ」

やけに納得してしまい、肩からストンと力が抜ける。

しかし、すっかりいつもの俺達の空気に戻っちゃったな。

うん、でもコレでいいのかもしれない。

「ま、そういう事ならしゃーないわ!」

そう言って吹っ切ったように頷き、止まっていた歩みを再開させる。

こちらも合わせて歩き始めた。

先程までのように、肩を並べて。

「今まで俺も、彼女優先して何度も約束すっぽかしたりしてたからなぁ。同じ理由じゃ、責められんやろ」

「及川……」

「ただし!」

「お、おう」

「これで貸し借りはチャラっちゅー事で頼むで。もう会えへんいうなら、返せん借りがいっぱい残ってるいうんは、気分良いもんや無いからな!」

気持ちの良い笑顔を浮かべる及川に、俺も自然と、笑顔が浮かんでいたように思う。

「釣りを払いたいくらいだ。ありがとうな、及川」

パンッ

高い音を立ててガッシリと握手。

顔を見合わせてニヤリ、と笑う。

「じゃあな、かずピー。女王様の"彼女"によろしゅう伝えといてや」

「じゃあな、及川。あんまりコロコロ恋人を入れ替えないようにな」

「なんやろう、かずピーにだけは言われとうない気がしたで……」

ちょうど互いの家への分かれ道。

最後まで変わらないやり取りのまま、俺達は手を上げて背を向ける。

俺は振り向かなかったし、多分及川もそうしただろう。

そしてお互いに、振り返る必要など無いと、感じていたに違いないのだ。

 

 

 


 
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