No.55441

魏after 一刀伝03

三国堂さん

やっと自分の書きたいものが半分ほど書けた~。
本当は、
早朝(00)→朝(01)→昼(02)→午後→夕方→夜
って書こうと思ってて、実際午後の爺ちゃんと対決編、みたいの途中まで書いてたんですが、終わらないわ気づいたら夜パートほとんど完成してるわ、だったのでスパッと飛ばしますた。
一区切り付いたら改めて書きたいなぁ。

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2009-02-01 05:40:36 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:16680   閲覧ユーザー数:11948

 

夕食後。

「「「「ごちそうさま」」」」

四人揃って合掌。

本日の夕飯は、大根と油揚げの味噌汁にポテトサラダ、そして鯖の味噌煮でございました。

うむ、満足だ。

食事の余韻に浸りながら、ぼんやりと周りに目をやれば、新聞読んだり、詰め将棋を解いてたり、隅っこで箱のようなものを取り出してたり、全員思い思いに過ごし、マッタリとした空気が流れている。

そんな中、なにやら母さんがパタパタと近づいてきた。

「一刀、あなたに荷物届いてるわよ」

そう言って差し出されたのは、蓋に【北郷一刀 様へ】と書き込まれた木の箱。

さっき出してたのはコレか。

「何? これ?」

とりあえず受け取ると、……結構重い、石でも入っているのだろうか。

「さっきチャイムが鳴って玄関に出たんだけどね、誰もいなくて、いたずらかと思ったんだけど、玄関先にこの箱が置かれてたのよ」

そのいささか無用心な発言に、父さんと爺ちゃんの顔が、心配顔とムッツリ顔に切り替わる。

どっちがどっちか、なんてのは言うまでも無いので割愛

「かあさん、インターホンは受話器で取りなさいと何時もいってるだろう。最近は物騒なんだから」

「そもそも、顔も見せずに置いていかれた物を持ってくるんじゃない。捨ててしまえ、そんなもの」

確かにそうだよな。

でもまあ、開けたらドカン! なんてことは無いだろうし、中身位は見てみようかな。

内気な女の子のプレゼント、という線も無いとは言えないし!

「あー、いや、ちょっと気になるし、一応受け取っとくよ」

「ふん」

おおう、父さんは特に反応無いが、爺ちゃんからはまた睨まれたぜ。

母さんまで困った子を見るような目で見ているのは納得がいかないが、触れても長くなりそうだ。

ここはさっさと退散しとこう。

 

 

で、部屋に引っ込み、立ったまま改めて箱を眺める。

大きさは20cm四方、といったところか。

書かれた字は古い感じの書体で、まあ、筆を使って書いたんだろう。

でもって結構重い。

中身は石か金属で間違いは無いと思うが……。

「これ以上は開けないとわかんないな」

何故か異常に逸る心を宥める様に、深呼吸をひとつ。

ゆっくりと目の前の箱に手をかけ、蓋を、開けた。

 

ドクンッ

 

「これは……」

中身は、眩く光を跳ね返す金属製の鏡。

これは、あの世界で見たことがある、そう、これは……

「銅……鏡?」

 

ドクンッ

 

なんだ?

銅鏡にそこまで動揺させられる理由がわからない。

史実では知らないが、あの世界ではそう珍しいものではないし、"彼女達"との思い出の品という訳でもない。

 

ドクンッ

 

だが、心臓の鼓動は静まらない。

「はっ、ぁ」

 

ドクンッ、ドクンッ

 

手が震え、息が詰まる。

 

 

ガランッ!

「……っ!」

気づけば、足元に銅鏡が転がっていた。

おそらく数瞬ではあるのだろうが、意識が途切れたからか、とりあえず体を動かせる程度には混乱も収まっているようだ。

「あ、銅鏡……、拾わないと」

そして、足元に引っ繰り返った銅鏡を拾おうと、手を伸ばしたその時、裏に文字が刻まれていたことに気づく。

 

【此は外史への門也】

 

ドクンッ

 

それを見た途端、思い出した。

 

  作られた外史――。

  それは新しい物語の始まり。

  終端を迎えた物語も、

  望まれれば再び突端が開かれて新生する。

  物語は己の世界の中では無限大――。

  そして閉じられた外史の行き先は、

  ひとえにあなたの心次第――。

  さあ。

  外史の突端を開きましょう――。

 

そうだ、俺は、選んでいたんだ。

無意識かもしれない、偶然かもしれない、でも、確かに俺は魏に降り立つことを選んだ。

 

何時の間にか手に力が篭る。

軋んでいるのは、銅鏡か手か……。

奇妙な確信があった。

手の中のコレを破壊することで、外史への門は開かれる。

「俺は、あの世界に戻ることが出来る」

そう呟いた瞬間、腕は即座に振り上がり、床にそのまま

「一刀~、今の音なーにー?」

固まる。

「俺は、今何を……」

そう、この銅鏡を砕けば、俺は再び華琳達に会うことが出来る。

だがあの世界の歴史は、既に改変されつくしている。

恐らくあの世界に戻ったならば、もう二度と、こちらには来る事は出来ない。

 

……俺は、確かに華琳達を愛してる。

でなければ、消滅するとすら思えた、歴史を捻じ曲げる行為なんて出来るわけが無い。

華琳に伝える事はなかったが、あの時の俺には、占い師に告げられた身の破滅が、死でない事なんて、分かるはずも無かったのだから。

彼女達の為なら、俺は命を失っても惜しくなかった。

でもそれは、こちらの世界を失って惜しくないという意味じゃない。

爺ちゃんも母さんも父さんも、及川や、剣道部やクラスの皆も、生まれてから十八年を過ごしたこの世界、大切じゃないなんてありえない。

前のように、問答無用で連れ去ってくれれば良かった。

そうすれば、何も考えず彼女達の元に駆けつける事が出来たのに。

「どうすれば、いいんだよ」

「一刀~?」

再度、母さんの声で意識が戻る。

「なんでもない。ちょっと床に物落としちゃって」

なんとなく、リビングまで降りて答えると、父さんと母さんの姿はあったが爺ちゃんの姿は見えない。

部屋か? もう寝たのかもしれないな。

「どうした、一刀。また道場か?」

言われて初めて、足が外にある道場に向いていることに気づく。

「ちゃんと休まないと、かえって体に悪いわよ?」

こちらを気遣う視線に、居心地の悪さを感じてしまうのは、やはりさっきの事があるからなのか。

「いや、ちょっと考え事があってね。座禅でも組もうと思っただけ」

「座禅って……。まあ、運動しないならいいけど。早目に部屋戻って休みなさいよ?」

「はいはい、りょーかい」

意識して軽く答えを返す。

そうだ。

どんな答えを出すにしろ、今はひたすらに悩んで悩んで悩み抜こう。

選んだ選択を、絶対に後悔しないように。

 

 

 


 
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