No.53669

遼来来!―前編―

前の作品で最後!とかいったけど、祭りが延長になったので新作です。


今回はガチのバカ話。
しかも書くキャラが多すぎて前後編の二段構え。

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2009-01-23 02:14:34 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:13610   閲覧ユーザー数:10197

 遼来来(リョウライライ)ーーーーーーーーーーーッ!!

 

 遼来来(リョウライライ)ーーーーーーーーーーーッ!!

 

 

 

 

 張遼が来たぞーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!

 

 張遼が来たぞーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!

 

 

 

 

 時は三国並立の時代、所は合肥。

 今ここで、凄まじき逃亡・追撃の攻防劇が行われようとしていた。

 

「いやぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」

 

 逃げる者は孫仲謀。

 孫呉の姫君であるはず彼女は、しかしその威厳もプライドも打ち枯らして、ブザマな姿で逃げ回る。息切れに舌を出し、棒となった足を引きずって、しかし背後に迫る悪鬼の如き追撃者のために速さは少しも落とすことができない。

 

「待たんかいワレェーーーーーーーーーーーッ!!」

 

 追う者は張文遠。

 曹魏に これありといわれる最強の武人。日に二十里を駆ける馬術と万日の戦場で磨き上げられた武に敵う者なし。その至強の武のすべてを注ぎ込み、孫呉の命運、孫権を目指す。

 

「待てえ蓮華、大人しく観念せぇーーー!」

 

「いや、いやぁーーーーーーーーッ!!」

 

「どこに逃げたかて無駄やで!ウチは地の果てまで追ってくさかいなぁーーーー!」

 

「いやぁーーーーッ!」

 

「だから大人しく、乳揉ませぇーーーーッ!!」

 

「だからイヤだって言ってるでしょーーーーッ!!」

 

 

 

 ………………。

 

 

 

「……なにやってんの、あの子ら?」

 

 城壁の一際小高いところから蓮華の姉である雪蓮と、霞の主君である華琳が、その騒ぎを眺めていた。

 魏・呉・蜀の三者が手を結んで和平を実現させてから数度目の三国会合。今回のホスト役である魏が指定した会場は、呉との国境近くにある合肥。

 そこで皆は、銘々 美酒や珍味を持ち寄り、和やかな会合を行っているはずだが……。

 

「雪蓮さま、雪蓮さまーッ!」

 

 と呉王・孫策の真名を呼び、城壁を駆け上がってきたのは蓮華=孫権の護衛役のひとりである明命。

 

「雪蓮さま、蓮華さまを助けてあげてくださいーッ!」

 

「落ち着きなさい明命、他国の首脳方の前よ、見苦しいマネは控えなさい」

 

 部下にピシャリと言い放つ雪蓮。小高い城壁の上には会合の中でも特別な席が設けられており、そこには呉王・雪蓮だけでなく、魏王・華琳、漢中王・桃香も揃って、杯を酌み交わしている。いわいるVIP席。

 そこからは城内でデットヒートしている蓮華と霞が良く見える。

 

「構わないわよ雪蓮、見たところ あの騒ぎは当方の粗相から起こったもののようだし、私も詳しい話を聞きたいわね」

 

「私も私もー」

 

 華琳と桃香が、呉の主従をとりなす。

 

「………仕方ないわねえ、で?明命 何がどうなったの?」

 

「霞さんが!蓮華さまの おっぱいを揉みまくろうとするんです!」

 

「………………」

 

 座に、重くてイヤーな沈黙が流れた。どういうリアクションをとればいいのかもわからず、ただ時だけが過ぎていく。

 

「それも、ただ揉むだけじゃないんです!やらしく しつこく ねちっこく揉むんです!それに耐えられずに蓮華さまが逃げ出すと、今度は全速力で追いかけてきて、すっごく怖いんです!」

 

「…………あの、華琳?」

 

 雪蓮が目線だけで華琳を追う。

 

「………………い、一応、部下の躾は充分にしているはずなんだけど」

 

「躾ってどういう意味の躾よ?まさか襲った相手を気持ちよくさせるための躾じゃないでしょうね?」

 

「まあまあ…、でも霞さんは人の嫌がることを無理矢理するような人じゃないし、明命ちゃん、何か原因に心当たりはない?」

 

 桃香が二人をとりなしつつ、明命に尋ねる。

 

「それは多分……、ご主人様本舗が…」

 

 明命がおずおずと答える。

 

「ご主人様本舗?なによそれ?」

 

「ああ それはね、ウチのご主人様が最近平和になったから、暇に任せて天界にあった色んなものを、こっちで再現してみようって取り組みをしているの」

 

「はあ……」

 

「そうして成功したいくつかの作品を、今回の会合で出展して魏や呉の人たちにも体験してもらおう!ってしたのが ご主人様本舗なんだよ」

 

 桃香は誇らしげに解説した。珍しい物好きな雪蓮や華琳は興味深そうにして、

 

「へぇ、そんなのが今回はあるんだ、後で行ってみよ」

 

「で?そのご主人様本舗とやらで何があったっていうの?」

 

 そこまでの解説が済んで、再び明命の報告。

 

「はいっ、そこで、霞さんが まてぃーに、という天界をお酒をガブ飲みして酔っ払い。それから ぶるま、という天界の装束を着てしまった蓮華さまを霞さんが目にした途端『萌へ!萌へぇーッ!』と叫ばれて、蓮華さまに襲い掛かり………」

 

「………………」

 

「………………」

 

 再び座に苦い沈黙が流れていく。

 

「………最近、色んな事件の影にちらつくわね、あの男」

 

「ご主人様は、みんなに良かれと思って やってるんだと思うんだけど………」

 

「それで、どうするの雪蓮、一応アナタの妹の危機でしょう?」

 

 華琳が雪蓮に尋ねる。

 

「知らなーい、生き死にのことならともかく、この程度のことで助けに入るほど甘やかすわけにはいかないし。自力で何とかすればいいわ」

 

「雪蓮さまぁッ!?」

 

 涙声の明命。

 

「蓮華に伝えておきなさい、小覇王の妹たるもの、この程度の困難は自力で何とかしろとね。護衛にアナタや思春を付けておいてあるんだから、どうにもならないこともないでしょ」

 

「待ちなさい雪蓮」

 

「なによ華琳?」

 

「理由はどうあれ これは我が魏の臣が起こした不始末。お詫びといってはなんだけど、私の方からも手勢を出しましょう、…………凪!真桜!」

 

「はっ!」

 

「はいなッ!」

 

 魏王の呼びかけに答えて銀色の甲冑に身を包む楽進、腰に工具をジャラジャラ鳴らす李典が推参する。

「呉の方々と協力して蓮華を助けなさい、霞が無礼を働いた分、アナタたちが魏の汚名を雪ぐのよ、わかった!」

 

「は、必ずや華琳様のご期待に応えてみせます!」

 

「でも正直 霞姐さんと正面からぶつかるのはキツイでぇ~、なんか策を講じんと……」

 

 と、魏陣営の顔ぶれがガヤガヤと話し合っているところへ、桃香が一言。

 

「ねえねえ華琳ちゃん」

 

「なに桃香?」

 

「そんなことするぐらいなら、華琳ちゃんが直接行って霞さんに『やめなさいッ!』て言った方がよくない?」

 

「アラだめよ、呉王である雪蓮が『放置』って言ってるんだから、それを無視して私が横槍を入れるのは僭越でしょう」

 

「そ、そうかなあ…?」

 

「それに、こっちの方が断然面白そうじゃない。霞の地獄の追撃に、あの蓮華って子がどこまで逃げ切れるか見物だわ」

 

「やっぱり そっちが主目的なんだ」

 

 桃香は苦笑いするしかなかった。

 

 

 

 ………………………。

 

 

 

「クソッ、下がるな亞莎!これ以上 張遼を蓮華様に近づけさせるな!」

 

「はい思春さん!せめて上に報告に行かせた明命ちゃんが戻ってくるまで……!」

 

 

「甘いわぁッ!!!」

 

 

 霞が旋回させる飛龍偃月刀の太刀風に、呉の屋台骨たる呂蒙と甘寧がなすすべなく吹き飛ばされる。

 

「きゃあああッ!」

「ぐうぅッ!」

 

 主たる蓮華を守るために霞の足止めに打って出た両雄二人、しかし霞は一秒だって止まらない、二人の抵抗は 大津波の前に立つ葦の木のように力及ばぬものだった。

 

「……な、なぜだ、張遼の武名は聞き及んでいるが、私とて呉に その人ありといわれた剛勇、ここまで力の差があるとは……」

 

「魏に張遼あれば、呉に甘寧ありってか?……甘いなあ」

 

 霞がゆらりと二人に迫る。

 

「……思春やったな、たしかに お前さんの武はそんじょそこらのもんじゃ ありひん。普通に闘えばウチかて てこずる一品や。でもな、今のウチは誰にも止められへん、ウチを無敵にする思いが この胸の中にあるんや」

 

「なんだと…!」

 

 

 

「ウチの蓮華のおっぱいを思う心は、誰にも負けへんねやぁあああッ!!」

 

 

 

 何を大声でカミングアウトしているのか。

 

「何ぃ、聞き捨てならん、蓮華様を思う気持ちで私が負けるものか!」

 

「思春さん落ち着いて!酔っ払いの言うことですから!」

 

 亞莎が必死に止めるのも虚しく、二人の熱は高騰する。

 

「ちゃうわ思春!蓮華への思いやない、蓮華のおっぱいへの思いや!あの大きすぎず、小さすぎず、そのくせ肉感的で むしゃぶりつきたくなるような蓮華の美乳に対する思いや!」

 

「そ、それがなんだというのだッ!?」

 

「アホウ!おっぱいへの愛情は天下一や、地球を救えば大魔王も倒すで!」

 

「天下一…、では、私が蓮華様を敬愛する気持ちには それが足りぬと言うのか…?」

 思春が変な道に引き込まれていく。

 それに亞莎は頭を抱えて、

 

「しっかりしてください思春さん!酔っ払いに論破されちゃダメですぅ!」

 

「ほーう、亞莎、じゃあアンさんはウチの言うことが聞けへんいうのやな?」

 

「え?」

 

 背後に気配を察して亞莎が振り返る、すると、彼女の片メガネに映ったのは魔獣のごとき霞の威容。

 

「なら体に直接教え込むまでや、たーッ!!」

 

「うきゃーッ!!やめて、やめて下さい霞さん!!直接 肌に触っちゃダメ、冷たい、手が冷たいですから!!」

 

「ドコが冷たいのか言ってみぃ!でもそのうち肌が火照って暖こうなるから大丈夫や!」

 

「お嫁にいけなくなるー!!」

 

 一方その頃、思春は思考の迷路に入り込んでいた。

 

「私も蓮華様をよりよく理解するためには、…蓮華様の乳房を…、イヤ!何を考えているのだ!私は蓮華様の忠実な手足……!」

 

「考え中に隙アリーーーッ!」

 

「なっ?張文遠 卑怯な…ッ!、?、うわーっ どこを引っ張っている!そこは、そこは……!」

 

「やーん、ふんどしキャラやったら ふんどし以外のドコ引っ張れっちゅうねん?まぁ亞莎も思春も可愛ええなぁ、ウチもう夢見たいやわ」

 

「や、霞さん、そんなところ抓まないでくださいーッ!」

 

「蓮華様、蓮華様、………汚れる我が身を、お許し…………」

 

 

 蒙子明、甘興覇、陥落。

 

 

 その散り際を その目で見ていた蓮華は戦慄に身が粟立つ。

 

「ひ……」

 

 そして脱兎の如く逃げ去る。思春と亞莎が倒れた以上、次の標的は再び自分だ。戦場でも味わったことのない恐怖に駆られ、蓮華は走る、走る、ただひたすらに走る。

 

「ああん、蓮華 待ってえなー、そんな つれのうせんでー!思春と亞莎みたいにウチと仲良うしよー!」

 

 御免こうむる!

 逃げ出す寸前、自分のために倒れていった思春・亞莎の部下二人の、霞にいいようにされた その姿はまさに、

 

 

 

 レイプ後

 

 

 

 というような感じだった。

 もし主標的である自分が霞みに捕まったら、どんなことをさせられるのだろうか?

 想像もしたくない。

 

 大体なんでこんなことになったのか?

 姉に付き従って三国の会合に出かけ、蜀が催す『ご主人様本舗』とやらで天の御遣い・北郷一刀の巧みな口車に乗って“ぶるまぁ”なる奇妙な衣服を身に着けたのがいけなかった。

 一刀の説明では運動のために特化した衣服らしく、たしかに身に着けてみれば動きやすく、平素の朝服など比較にもならなかったが、その分肌の露出が多く、日頃着るには恥ずかしい服だった。

 それを、なぜか隣でベロンベロンに酔っていた魏国の霞――すでに真名で呼ぶことを許しあっていた――が、自分の姿を見るなり、

 

 ―――なんや、なんやぁ、蓮華ごっつぅ可愛いベベ着とるなぁ!萌へぇー!萌へるわぁ!抱きしめたいわぁ!

 

 などと喚きだしたのが地獄の一丁目の入り口だ。

 日頃から人懐っこく色んなところを触ってくる霞、それが酒に酔っ払って酩酊状態にあれば、その接触はもう痴漢行為を超える。

 それで蓮華は走り回っているというわけだ。

 でないと貞操を失う。

 なのに霞ときたら面白がって全速力で追ってくるから、こっちにとっては虎にでも追われている気分だ。

 着ている“ぶるまぁ”は運動用の衣服だというので、たしかに走り回るのに不便はない。が、衣服で基礎体力が上がるわけではない、魏最強の武将である霞と追いかけっこするには無理がありすぎる。

 

「蓮華ぁー!その“ぶるまぁ”ええなぁ!その黒い下穿きから はみ出そうなふりっふりのケツが堪らへん!蓮華の尻は国宝級やーッ!」

 

 蓮華はもう脇腹が痛くなり始めているのに、追いかけてくる霞は息切れひとつない、バケモノめ。

 追いつかれるのも時間の問題か、そう不安になり始めたとき、

 

「蓮華さま!遅くなりました!」

 

 姉の下へ使いにやっていた明命が戻ってくる。彼女は前方から合流、蓮華の隣に併走する。

 

「明命、雪蓮姉様のところへ行ってくれた!?」

 

「はい!」

 

「それで、姉様はなんとッ?」

 

「それが…、『知らん、勝手にしろ』と……!」

 

「もぉ~!姉さまのバカぁ~!」

 

 若干 口調に幼児退行が見受けられるのは追い詰められているが故の精神錯乱か。

 霞は今にも蓮華の背後に迫り、その肩に手を伸ばそうとしている。

 

「お逃げください蓮華さま、ここは私が防ぎます!」

 

 そういって明命が、追走してくる霞の前に立ちはだかる。

 

「!?、ダメよ明命 早まらないで!あの霞には、思春と亞莎が二人掛かりでも敵わなかったのよ!」

 

「そやで ちびっ子、怪我しとうなかったら素直に蓮華への道あけぇ!」

 

 蓮華や霞の反応も当然というべきだろう、明命=周泰幼平の武はいまだ甘寧の域を越えるものではない。その甘寧を軽くあしらった張遼に正面から決戦を挑んでも、勝算は限りなくゼロというしかない。

 

「そんなことはありません。…知っていますか?私に、雪蓮さまへ報告へ行くように指示したのは亞莎なんですよ」

 

「あん?」

 

「亞莎が?」

 

「亞莎は頭のいい子です。彼女は、護衛役の中で霞さんに対抗できる力があるのは私だけだと判断し、私を前衛から外して、私を蓮華さまを守る最後の切り札となるよう配置したのです!」

 

 ババーン!明命の啖呵が決まる。

 しかし、それでも霞は眉をひそめて、

 

「最後の切り札ぁ……?でも ちびっ子、オマエほんまにそれほど強そうには……」

 

「お黙りなさいなのです!私には、アナタを封じ込める最大の特性があるのです!」

 

「はっ」

 

 その一言で蓮華は感づいた。そしてその視線が、一気に明命の体の一部分へ集中する。

 

「そうか貧乳ね!貧乳なのね明命!胸好きの霞にとってアナタの小さな胸は物足りないものであるとし、彼女のやる気を一気に失わせるという作戦なのね!」

 

「……蓮華様、あんまり貧乳 貧乳 言わないでください」

 

 明命はさりげなく落ち込んだ。

 そして、それに対し霞は………、

 

「んふ、んふふふふふふふふふふ…………!」

 

 不適に笑い出す。

 

「はーはっはっはっはあ!呉の知力その程度か!亞莎もまだまだ阿蒙から抜け出せんようやなあ!」

 

「何ですって!」

 

「ウチが貧乳に興味ないなんて誰のセリフやねん!ええか、おっぱいには人それぞれの個性ちゅうのがあるんや!大きくても好し!小さくても好し!問題はそれをいかに愛でるかや!無駄に大きければ いいてもんやない!だからウチが、明命の小っちゃな おっぱいで気力が下がることなんてないんや!むしろ目一杯 ご馳走になるでぇ!」

 

「霞さん、いい人ですぅ~」

 

 と、明命が一瞬表情を輝かせだしたが、

 

「…はっ、ぶるぶるぶる、……残念ですが霞さん、ひ、貧乳なんか関係ありません、アナタの敗因は、アナタ自身にあるんです!」

 

「なんやてッ?」

 

「私にはわかります、アナタのその性格。気まぐれで移り気で一人孤高を守りながら、ひとたび気が向けばまるで別人のように他人に甘え、肌をくっつけ喉をゴロゴロ、その素行は、あるものを連想させます。それは………」

 

「それは?」

 

「…それは、お猫様です!」

 

「にゃにゃ!」

 

 一瞬、霞の頭からネコミミが生えたような気がした。想像できない読者は一度ゲームを起動して立ち絵を洗ってみるといい、きっといるから。

 

「私はここに断言します!霞さん!アナタの前世は九分九厘お猫様です!」

 

「だ、だったら なんやっちゅーねん?」

 

「わかりませんか……、アナタをお猫様と見れば、私はアナタを、モ フ モ フ す る こ と が で き る の で す ぅ!!」

 

 明命の両眼が妙な感じに輝きだした。

 

「私は今まで、本気でお猫様をモフモフしたことがありませんでした。すれば嫌われるのが わかりきっていたからです!」

 

「あ、あれで本気じゃなかったんだ……」

 

 明命の日頃を思い出して、冷や汗を流す蓮華。

 

「…ですが、相手が人間で、しかも蓮華さまの安全を脅かす敵であれば遠慮などいりません。この周泰幼平の本気をもって、霞さん!アナタをモフらせていただきます!」

 

「ようわかった!つまり、ウチと めで勝負をしたいっちゅーわけやな、いい気風や、乗った!ウチも本気でお前の貧乳めでさせてもらうわ!」

 

 二人の間に、西部劇のような緊張の風が流れる。

 

「それだけではありませんよ?私には、蜀の天の御遣いである北郷一刀さまから教えていただいた、本気になったときに叫ぶとノリが良くなるセリフ、があるのです!それを使って私のやる気は三倍です!」

 

「奇遇やないか、そのセリフ、ウチも一刀から教えてもらったで。こうなったら『せーの』で叫ぼうやないか」

 

「いいでしょう、……せーの!」

 

 

 

「「トランザムッ!!!」」

 

 

 

 ドドン!

 謎のセリフを口走った途端、明命と霞の体が赤く発光しだし、衣服の袖や襟元の隙間から、キラキラ輝く粒子がとめどなく噴出している―――ような気がする。錯覚か?

 本気モードを引き出した二人は互いに睨み合い、ほぼ同時に地を蹴って、一直線に突進しあう。明命の標的は霞、霞の標的は明命。

 

「いくでッ!」

「いきますッ!」

 

 そして二人はついに中央で激突し、互いに抱き合って、転げまわった。ゴロゴロ ゴロゴロ、身悶えるように。

 

 ペタペタペタペタペタペタペタペタ……、霞は明命の貧乳を揉みまくる。

 モフモフモフモフモフモフモフモフ……、明命は霞をモフりまくる。

 

「ああん、やっぱ明命の貧乳可愛いなあ!肌スベスベやし、そのくせ指がピッタリくっつく、おっぱいの桃源郷やぁ、心和むわぁ」

「わぁ、やっぱり霞さんお猫様そのものですぅ、大きなお猫様ですぅ、もっとモフモフしますぅ…!」

 

 モフモフペタペタモフモフペタペタ、モフモフペタぺタペタペタモフモフ、モフペタモフモフペタモフペタペ、ペタペモフモフペタモフペ…………。

 

 

「と、共食い………!」

 

 その光景を一歩外から眺める蓮華の感想は、その一言しかなかった。

 霞と明命は、自分が相手から好き放題されるのを まるで眼中にないように、ただひたすら自分が相手を めでることに没頭している。

 その光景に、一見和やかそうな二人に、何故か膝が笑うほどの畏怖を感じる蓮華。

 その肩へ、呼びかける何者かがあった。

 

「………呉の姫さん、見とれてる場合やない、さっさと とんずらするでぇ…!」

 

「ここから先は私たちが護衛を務めます、明命さんが霞様を抑えているうちに、早く!」

 

 蓮華が振り向くと、そこには見たことのある魏の将の顔があった。

 

「アナタたちは…、たしか、凪と真桜?」

 

「霞様の不始末の謝罪にと華琳様から派遣されてきました、ともかく急ぎましょう!」

 

「待って、もしかしたら明命が勝つかもしれないのに……」

 

「そら甘いで姫さん、お好み焼きにソースの代わりに蜂蜜かけるぐらい甘いわ。霞姐さんのスゴさは ちっとやそっとのもんじゃ ありひん。いくら明命の本気モフモフでも、時間稼ぎが精一杯………」

 

 モフモフペタペタモフモフペタペタモフモフペタペタモフモフペタペタ……。

 モフモフペタペタモフモペタモフペタペタペタモフ……。

 ペタペタモフペタペタモフペタペタペタペタ……。

 ペタペタペタペタペタペタペタペタ………。

 

「あ…、アレ……?」

 

「なんか音が、ペタペタだけに…?」

 

 蓮華、凪、真桜が揃って振り向く。

 そこにはユラリ立ち上がる霞の姿、そしてその足元には絶息した明命が転がっていた。

 

「あぅあぅ…、モフモフお腹一杯ですぅ……」

 

 しかしその表情は安らかだった。

 

「ああ…、こんなに早く明命を逝かせてしまうなんて………」

「だからトランザムやのうて卍解にしとけ言うたんや!」

 

 いまだ おかしな気炎を燻らせる霞は、天を仰ぎ、言い放つ。

 

 

「あえて言わせてもらおう、張文遠であるとッ!!」

 

 

 霞姐さんに変なスイッチ入ったーーーーーーーーーーーー!!

 霞はかまわず叫ぶ、声高らかに。

 

「ようやく理解した、蓮華の圧倒的な おっぱいにウチは心奪われた、―――この気持ち、まさしく愛やッ!!!」

 

「愛ッ?」

 

 もうわけわからん。

 

「だから、何が何でも蓮華の おっぱい揉ませてもらう、明命の貧乳も可愛かったけど、やっぱ食い足らへん、…メイン皿といこうやないかッ!」

 

 霞はハンパに英語を覚えていた。

 ジリジリと追い詰められる蓮華と凪と真桜。この三人に霞に対抗できる術は残されていない。そこへ―――。

 

「アラ、そんなにウチの妹の胸にご執心?…ちょっぴり光栄ね」

 

 彼女らを助けに現れたものは誰か。続きは次回のお話で。(三国志演義風)


 
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