No.447663

機動戦士ガンダムSEED白式 14

トモヒロさん

14話 目覚める刀

2012-07-06 23:54:01 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:4444   閲覧ユーザー数:4276

 あれから、アークエンジェルに戻って来たキラは直様、アークエンジェルのクルーに囲まれ、そのまま艦長室へと連行されていった。そして、その部屋の前の壁に寄りかかる少年少女が三人。の中で一夏が一番ふてくされていた。ミリアリアが一夏の肩をもつ。

 

 「一夏君…」

 「……どうして、キラさんだけなんですか。あの子を返そうって、最初に言ったのは、俺なのに…」

 

 そう、一夏には納得できなかった。そもそも、ことの発端は一夏とキラから始まったのに、何故か、キラだけが連れて行かれた。

 

 「それは、俺も同じ気持ちだよ…俺らは共犯者なのに」

 

 今まで腕組みで黙っていたサイが一夏の気持ちに同意する。

 

 「…!?、い、いえ!そんな!悪いのは俺なんです!それでアークエンジェルも危険にしちゃったし!」

 「でも、結局は、あたし達あの子を助けるために、やっちゃったんだから、同じことよ」

 「そう言う事」

 

 やっぱりと言うか、この人たちはどこまでも優しいのだと一夏は思う。そんな二人の気持ちに嬉しくも思い、恥ずかしさもある。

 すると、今までロックされていた艦長室のドアが開き、少しほっとした様な顔でキラが出てきた。

 

 「キラさん!」

 「大丈夫か?!」

 「なんて言われたの?」

 

 そこでまた一夏達の不安が増す。しかし、そんな彼らの思いとは逆にキラは少し微笑んだ。

 

 「大丈夫だよ」

 「そっか、でも、あたし達はマードック軍曹にすっごく怒られたんだから。お前達は危険って言葉すら知っちゃいねぇのか~!!…てね」

 「それで、俺達は、その場でトイレ掃除一週間を受け渡されたんです」

 「あ…ごめん、手伝うよ」

 「いいよ、もうすぐ第八艦隊と合流だし、たいしたことない」

 

 そこまで言うと、一夏達は無重力に身を任せ、通路を滑り出す。

 先頭にいたサイが未だに少し顔を暗くする。

 

 「…カズイがさ、お前達の話し…聞いたって」

 「え?」

 「あのイージスに乗ってるの、友達なんだってな」

 「「!?」」

 

 一夏とキラはその事に驚愕する。

 しかし、サイの顔にさっきまでの暗さはもうなくなっていた。

 

 「正直言うと、少し心配だったんだ。…でも、よかった!お前、ちゃんと帰ってきたもんな!」

 

 キラがまた少し微笑む。おそらく、つい先程まで一夏が感じていた物をキラも感じているのだろう。その後、サイとミリアリアは交代で二人と別れた。

 そして、その話しを陰からもう一人聞いていることに気が付かずに。

 

 

 ヴェサリウスの一室でラクスはハロを抱えながらボーっとして、フヨフヨとスカートをクラゲの様になびかせ無重力に身体を預けていた。ここ一週間、ラクスはこの調子だ。

 その原因は言わずもがな、アークエンジェルの、今時オーブ以外では珍しい、コーディネーターとナチュラルを隔てなく思う、友達の事、特に一夏のことだった。

 

 『かわいい』

 

 いつまで続くのか彼女の頭の中に未だリピートし続ける一夏の言葉、気付くと何時の間にかへにゃっとニヤけ、ハッとしてブンブンと首を振っていつも通りの表情に戻るが…

 

 「……」…へにゃ。

 「また、ニヤけてますよラクス」

 「ッ?!?!?!…はわわ!?ア、アスラン!?もう、びっくりしましたわ…」

 

 何時の間にいたのか、今のラクスを見て、アスランは額に手を当て呆れていた。この間、アークエンジェルとの戦闘を辞めさせるために見せたキリっとしたあのラクスの面影は微塵もなくなっていた。

 

 「すみません。一応、ノックはしたのですが…返事が無く、万一の事があっては何ですので」

 「そう…ですか…、ごめんなさい」

 「いえ、それより、今まで人質にされていたのに、随分とご機嫌のようだと、思っていたので」

 「フフ、そうですわね。とっても!あちらの艦でも、貴方のお友達が良くしてくださいましたし」

 「……そうですか」

 

 アスランはその“友達”と言う言葉で少し顔を俯く。

 

 「キラ様はとても優しい方ですのね、そしてとても強い方」

 「あいつはバカです。軍人じゃないって言ってたくせに、まだあんな物を乗り回して…あいつは利用されてるだけなんだ。友達とか何とか…あいつの両親はナチュラルだか…」

 

 ラクスはアスランの頬に手を添えようとするが、アスランは一歩引いて、背を向ける。そのままドアへ向かい、退室する。

 

 「辛そうなお顔ばかりですのね、この頃の貴方は」

 「ニコニコ笑って…戦争は出来ませんよ」

 

 そういって、アスランの姿は閉まったドアによって見えなくなった。ラクスは数分前の自分に恥じていた。

 

 (ニコニコ笑って、戦争はできない。確かに、そうですわね。でも、私はいつかニコニコ笑ってまたお友達と楽しく過ごせる日がくると、私は信じていますわ。その時はあの方も、一緒に)

 

 

 『総員、第一種戦闘配備!繰り返す、総員、第一種戦闘配備!』

 

 一夏がキラと別れ、自分の割り振られた部屋で眠っていると、それを妨害するかのように、アラートが鳴り響く。自分は、制服を羽織り、ロッカールームへ向かいながら、前を閉めて行く。

 

 

 一夏がMSデッキに着く頃には、既にムウのメビウスは発信しており、キラがちょうどストライクへ乗り込んだ所だった。一夏も直様、白式を展開し、コックピットへと跳ぶ。

 

 『一夏君、キラ、ザフトはローラシア級1、デュエル、バスター、ブリッツ』

 『ッ…‼、あの三機!』

 「コッチの合流直前を狙ってくるなんて!」

 

 ストライクはエールを装備し、シグナルがLAUNCHに変わると、カタパルトから射出された。

 

 『続いて、白式、発進準備、進路オールクリアー、発進どうぞ!』

 「織斑 一夏、白式、行きます!」

 

 再びシグナルがLAUNCHに変わりストライクの後を追うように射出された。

 

 

 ザフトの三機がトライアングルに陣形を組んだかと思うと、直様散開する。その後ろからヴェサリウスから放たれたビームがアークエンジェルをかすめた。

 

 『機体で射線を隠すとは、味な真似をしてくれるじゃないの!』

 

 ムウはガンバレルを展開し、デュエル達に向け撃つ。

 

 「へ!そんなもの!」

 

 バスターはガンバレルの弾をもろともせず、腰のビーム砲で反撃する。

 

 「ムウさん!」

 「フラガ大尉!」

 

 白式とストライクはメビウスの援護に向かおうとするが、ソレをデュエルとブリッツが許さない。

 

 「MSを引き離す!ディアッカは羽付きをやれ!足付き任せたぞニコル!」

 「了解!」

「了~解!」

 

 3機のGは散開し、それぞれの目標へとむかう。

 

 「と、言うわけだから、相手をしてもらおうか白いの!」

 「クッ、このぉおーーーーッ!!」

 

 バスターは白式から一定の距離を保ち、ビームランチャーを撃つ。白式はソレをジグザグに避けながら、ライフルで応戦するも、バスターは軽々とビームを避けていく。

 

 「当たるかよ!…ん!?」

 

 今度はムウのメビウスがガンバレルを展開し、仕掛けてくるが、バスターはギリギリのタイミングで避けた。

 

 「チッ、鬱陶しいんだよ!」

 

 バスターはランチャーの砲身をメビウスに向けて撃つ。メビウス自体には被弾はなかったものの、ガンバレルの一つが破壊された。

 

 「チィ、一夏ぁ!!お前はブリッツを追え!」

 「ムウさん!でも」

 

 バスターのランチャーが白式とメビウスの間に割り込み、2機は離れる。

 

 「心配すんなって、こいつは任せな!」

 「……はい!」

 

 白式はそのまま機体を反転させ、ブリッツを追いかける。

 

 「ッ!待ちやがれ…、ッ!?」

 「そうはさせるか!」

 

  バスターも白式の後を追いかけようとするが、メビウスのガンバレルによって阻まれた。

 

 

 「行かせるか!」

 「くぅ…!!」

 

 白式は雪片を構え、大振りにブリッツへ斬りかかる。しかしブリッツもシールドを使い受け流しながら、徐々にアークエンジェルへと近づいて行く。

 

 「このままじゃ、アークエンジェルにこいつが…」

 「しつこいですね!」

 「ニコル!何をモタモタしている!」

 

 そこに突然、ストライクと交戦していたはずのデュエルが白式とブリッツの間に割って入った。白式の雪片をシールドで受け止め、そこからライフルの銃口を覗かせてビームを放つが、白式はバックステップで避け、入れ替わりにデュエルを追ってきたストライクがビームサーベルを抜き、踏み込む。

 

 「さっさと行けぇ!」

 「分かりました!」

 

 ブリッツは背を向けバーニアを吹かす。

 

 「ブリッツが!」

 「しまった!」

 

 この時、キラの頭の中にフレイの父の乗ったモントゴメリィが撃沈する光景がフラッシュバックする。

 

 刹那、キラの中で何かが弾けた。

 

 (アークエンジェルは…沈めさせやしない!!)

 「はああああああああああああああああああ!!!!」

 

 ストライクはデュエルの斬撃を交わすと、一目散にアークエンジェルへ向かったブリッツを追いかける。

 

  「この!」

 

 デュエルはすかさずストライクにライフルを放つが。

 

 「交わした!?」

 「すごい…後ろを振り向かずに」

 

 そう、ストライクはデュエルの攻撃を見向きもせず避けたのだ。デュエルは急いでストライクを追いかけようとするが。

 

 「ここは通さない!」

 「どけぇえ!!」

 

 目の前に立ち塞がる白式に業を煮やし大振りで斬りかかるデュエル、だがそれは一夏に致命的な隙を与えた。

 

 (ッ!!、ココだ!)

 

 一夏は小学生までの剣道の経験が今になって蘇る。一瞬で相手の間合いを把握し、今の状況に最も的確な技を選択する。

 

 (だけど、フェイズシフトに実体剣は効かない、…なら!)

 

 すると、雪片二型のブレードがスライドするのと同時に、『単一仕様能力(ワンオフアビリティ)、零落白夜、発動』のインフォが画面の下に表示される。

 

ブォン!!

 「なっ!?実体剣からビームだとぉ!!?」

 

 雪片のスライドした部分から青白い光が剣の形を構成する。デュエルはとっさに今のモーションをキャンセルし、白式と距離を置こうとするも、既に白式はデュエルの懐へ入っていた。

 そして、ここでイザークは一つミスを犯した。

 それは、シールドでは無く、フェイズシフトの効果を最大にし防ごうとしたからだ。

 

 「はぁああッ!!」

 

 雪片から伸びる光の剣はビームサーベルのようなものではなく、バリア無効化効果を持った、正にすべてを断つ光の剣なのだ。

 が、イザークがそれを知る由も無い。

 

 「ドォオオオオオオオオゥ!!!!」

 

 デュエルは零落白夜を避けきれず、光の刃がそのわき腹を捉え、フェイズシフトの装甲をえぐり取った。

 

 ボォム!!

 「ガァア!!?」

 「イザーク、イザーク!大丈夫ですか?!…ディアッカ!イザークが!!」

 「どうした?!」

 「ぃ痛い…!、イタイ、痛イぃ!?」

 「イザーク…」

 「ディアッカ!撤退です、敵艦隊がくる!」

 「チッ、クソ!」

 

 ブリッツとバスターは被弾したデュエルを抱え、撤退していった。

 

 『奴ら、引きあげて行ったぜ!よくやったな坊主!』

 「すごかったですよキラさん!あの動き!」

 「…はは!」

 

 その後、アークエンジェルは無事第八艦隊との合流を果たした。しかし、その影で不気味に笑う少女の姿があった事は誰も知らない。


 
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