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真・恋姫無双アナザーストーリー 蜀√ 桜咲く時季に 第37話

葉月さん

第37話投稿です。
それにしてもまだまだ寒い時期が続きますね。
みなさんはお風邪をひいていませんか?
私は暖かかったり寒かったりで体調を崩し気味です。
さて、これくらいにして作品のお話です。

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2012-03-10 21:30:34 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:7500   閲覧ユーザー数:5437

真・恋姫無双 ifストーリー

蜀√ 桜咲く時季に 第37話

 

 

 

 

【橋の前の戦い】

 

 

 

《一刀視点》

 

恋を仲間になり四日が経った。そして、その時がいよいよ来てしまった。

 

「とうとう追い付かれたか」

 

「はい。思ったよりも早く追い付かれてしまいました。読みが甘かったようです。すみませんご主人様」

 

「朱里のせいじゃないよ。それだけ曹操の軍が俺たちが考えていたよりもずっと優秀だったってことだよ」

 

朱里の頭を撫でて慰める。

 

「しかし、これは不味いことになったぞ。こちらは民を連れている。下手に動けん」

 

「……大丈夫」

 

「なに?どういうことだ恋?」

 

難しい顔をする愛紗に恋が一言だけ告げた。

 

「はい。恋さんの言う通りです。相手はあの軍律に厳しい曹操軍です。民と行動している私たちにはそうそう手が出せないでしょう」

 

「なるほど……だが、いつまでもこのままと言うわけにもいくまい。というか、私は我慢ならん」

 

「まったく、少しは落ち着け愛紗よ……と、言う私も流石に少々暴れたくもありますな」

 

「鈴々もなのだ!」

 

まあ、確かにずっと護衛ばかりをさせてたからな愛紗たちにも相当ストレスが溜まってるんだろう。

 

「あはは……そう思って手は考えてあります」

 

朱里はこれを予想していたのか苦笑いを浮かべて地図を取り出した。

 

「今、私たちはここに居ます。そしてその後方、ここら辺に追ってきた曹操軍が、さらに私たちの最初の目的地である益州と荊州の国境沿いにある城の一つ、諷陵がここです」

 

地図に小さな小石を次々に置いていく。

 

「そして、私たちと諷陵の間、丁度中間地点あたりに細い橋があります。ここが迎え撃つにはちょうど良い場所かと」

 

そして、最後に曹操軍を迎え撃つ場所に石を置く朱里。

 

「なるほど、確かに迎え撃つには良い場所だな」

 

「はい。そして、ここで私たちの隊を二つに分けます」

 

「何、それはどういう意味だ朱里よ」

 

頷いていた愛紗だったが隊を分けると朱里が発言すると首を傾げた。

 

「愛紗よ。民を巻き込んで戦闘をするつもりか」

 

「うっ、そ、そんな事は分かっている!」

 

顔を赤くして否定してるけど、本当に忘れてたんだろな。

 

「な、なんですかご主人様!私を見て笑うなんて、本当に知っていましたからね!」

 

「わかってるよ愛紗」

 

ムキになって否定する愛紗がちょっと可愛く見えた俺は微笑みながら愛紗のいうことに頷いた。

 

「それでどう隊を分けるんですか?」

 

雪華はそれた話を元に戻してくれた。こういうところが雪華の良いところだな。周りをちゃんと見てるっていうか、気遣いがちゃんとできてるんだよね。

 

「……(にこ)」

 

「ふぇ……えへ」

 

俺はお礼を込めて雪華に微笑むと頬を染めて笑ってくれた。

 

雪華の照れる仕草って可愛いな~。

 

「……ご主人様、ちゃんと聞いていますか?」

 

(むぎゅ)

 

「いへへっ!ほ、頬つねらにゃいでくれよ!ちゃんほきいへるから!」

 

「本当ですか」

 

「ほんほほんほ!」

 

本当はあまり聞いていなかったがそこで本当の事を言うと愛紗の小言が始まりそうだったので嘘を吐いた。

 

「……はぁ。まったく……朱里よ。もう一度最初から説明を頼む」

 

「は、はい。わかりました」

 

見透かされていたようで、愛紗に溜息を吐かれた。その後朱里にもう一度最初から説明してくれと頼んでくれた。

 

「まず、殿を務める部隊は先行して橋を渡り、曹操軍を奇襲出来るよう周辺に隠れます。その後、民を含めた先頭の部隊は橋を渡り、そのまま諷陵に向かいます」

 

「なるほど。渡って来た敵兵を討ち取るってわけか」

 

「はい。そこで、殿を務める人選ですが……」

 

「鈴々が殿をやるのだ!」

 

両手を挙げ元気な声で名乗り出る鈴々。

 

「なっ!鈴々、ここは重要な場所だぞ!」

 

「へへ~ん!早い者勝ちなのだ!」

 

「ぐぅぅぅ……ご主人様!」

 

悔しそうにしていた愛紗は同意して貰おうと俺を呼んだ。

 

「うん。まあ、鈴々で良いんじゃないか?」

 

「なっ!?」

 

「やったのだー!へへーん!これで愛紗に文句は言わせないのだ!」

 

「ぐぬぬ……」

 

愛紗は俺を睨みつけて来た。うん、まあ、そうなるよね。

 

「と、兎に角!続きをお願い朱里!」

 

「はわわ。わ、わかりました」

 

俺は話を無理やりに戻す為、朱里に話を振った。

 

あの後、殿を担当する部隊は鈴々、俺、雪華、恋、ネネとなった。

 

驚いたことに、あまり自ら喋ろうとしない恋が自分から名乗り出てきたのだ。

 

もちろん恋が行くと云えば今までついてきていたネネも行くと言うだろうと思っていたが案の定、言ってきた。

 

そのことに愛紗はものすごい勢いで反対してきた。

 

まあ、仲間になって直ぐだ。何をしでかすか分からないと思ったんだろう。

 

だけど、俺は恋がそんなことをするような子には見えなかったからなんとか愛紗を説得させた。

 

そして、雪華には殿の軍師として付いて来て貰う事になった。

 

朱里曰く、もうそれだけの力はあるそうだ、あとは実践を積ませて自信をもって貰うこと、だそうだ。

 

残ったメンバーである、愛紗、星、朱里、雛里は桃香と民を護衛しながら諷陵へと向かう。

 

これが今回の部隊分けだ。

 

そして、その作戦を実行する橋が見えてきた。

 

「それじゃ、ご主人様。気をつけてくださいね」

 

「ああ、桃香も気をつけて。必ず戻ってくるから心配しないで」

 

お互いの無事を祈り、会話を交わす。

 

「ううん。心配します、でも信じて待ってますから」

 

桃香は俺の両手を包み込むように握り、念を込めるように祈ってくれた。

 

「ありがとう桃香。これで俺たちは、絶対桃香の元に戻ってこれるよ」

 

「はい!」

 

この笑顔に応える為にも必ず戻ってこよう。

 

俺は固く誓った。

 

………………

 

…………

 

……

 

「さてと……まずはどうするか。雪華の考えは?」

 

先頭を歩きながらこの後の作戦を雪華に聞く。

 

「ふえ!あ、あの、えと、その……」

 

「大丈夫、落ち着いて。慌てなくてもいいから」

 

(ポンポン)

 

俺は雪華を落ち着かせる為、笑いながら雪華の頭を優しく叩いてあげた。

 

「は、はい……す~、は~」

 

雪華は深呼吸をして自身を落ち着かせた。

 

「大丈夫か?」

 

「は、はい。大丈夫です」

 

まだ少し、力んでるみたいだけど先ほどよりは肩の力は抜けてるみたいだった。

 

「えっとですね。作戦と言うほどではないんですが……」

 

「うん」

 

「まず、全部隊を茂みに潜伏させます」

 

「朱里が言っていたように渡って来た敵兵を討つってことだよね。でも、相手もここが攻め所だって分かってると思うけど」

 

「そ、その、時間を稼ぐ為です」

 

「時間を稼ぐ?」

 

雪華の言う時間稼ぎって、先に向かう桃香達の事だと思うけど。ここで隠れることがどう時間稼ぎになるんだ?

 

「きっと相手も、ここで攻勢に出てくると思い慎重になっていると思います。ですが誰も居なければ罠があるのではないかと少しは疑うと思うんです。、けど……ダメでしょうか?」

 

雪華は不安そうに聞き返してきた。

 

「そんなこと無いよ。俺は良い手だと思うよ。ネネはどうだ?」

 

「そうですね。初めての戦略としては申し分ないと思うのです」

 

「ふぇ~。よかったです」

 

安心してほっと息を吐く雪華。

 

「あとは、簡単な罠でも仕掛けておけば相手はさらに慎重になるかもね」

 

「ふぇ~、確かにそうですね。さすがご主人様です。私、緊張のあまりそこまで考えが行きませんでした」

 

「ははは。雪華なら大丈夫だよ、だからそんな緊張しなくてもいいんだぞ」

 

「で、ですが。兵の皆さんの命を預かっていますし、やっぱり緊張します」

 

「確かにそうだけど……緊張しすぎると視野が狭くなるぞ。軍師は戦場全体を見て状況に応じて作戦を変えないといけないんだからね」

 

「ふぇ……そうですよね。やっぱり私はまだまだダメですね……」

 

しまった。安心させるつもりが逆に落ち込ませちゃったぞ。朱里に自信を付けさせるって言われてたのにこれじゃ逆効果だ。

 

「で、でも雪華は初めてだもんな!そう言うことは徐々に覚えていけば良いんだよ!みんな最初はそう言うもんだよ!俺もそうだったし!」

 

俺は慌てて雪華のフォローをした。

 

「ご主人様もですか?」

 

「あ、ああっ。俺も初めて試合に出た時、凄く緊張したんだぞ」

 

「そうなんですか?あんなにお強いのに」

 

「はは、それは今だからだよ。俺が初めて試合したのは七歳の時で、相手は俺よりも年上だったんだ。その時も凄く緊張してさ、そのせいで試合中自分の動きが出来なくて負けちゃったんだよ」

 

その後、じいちゃんにこっぴどくしかられて地獄のもう特訓をやらされたんだけどね。あれは今でもトラウマになるほど酷かった。きっと幼児虐待で訴えられてもおかしくないレベルだと俺は思う。いや、思いたい!

 

「だからいつでも、冷静になれるようにしておかないとね。どんなことが起きてもいいように」

 

「は、はい。わかりました。がんばってみます!」

 

「うん。その意気だ」

 

雪華は力強く頷いてくれた。

 

「お兄ちゃん!そろそろなのだ!」

 

鈴々が言うように徐々に橋が近づいてきていた。

 

「よし。それじゃ、雪華の作戦通りにやろう」

 

「わかったのだ!隠れればいいんだよね!みんなに伝えてくるのだ!」

 

鈴々は元気良く頷く張飛隊に伝えに言った。

 

「ああ。恋も兵に伝えてくれるかな」

 

「……(こくん)」

 

「あ!待ってくだされ恋殿ぉ~!」

 

恋も頷くとすたすたと自分の隊に向かっていった。多分、作戦を伝えにいったんだと思う……多分。

 

《夏候淵視点》

 

「……おかしいな」

 

「ええ。そうね」

 

橋が見えてくると私と桂花はある異変に気が付いた。

 

「ん?何がおかしいんだ?」

 

若干一名、わかっていないようだが、それは今は置いておこう。

 

「しゅ、春蘭様……」

 

季衣は姉者の態度に苦笑いを浮かべていた。

 

「では、季衣よ。何がおかしいと思うんだ?」

 

「えっとですね……多分ここが一番の攻め場所だと思うんですよ」

 

「それはなぜだ?」

 

「なぜって、こんな狭い橋じゃ大勢渡れないですし、渡ってきたところを大勢でぼこぼこに出来るじゃないですか」

 

「うむ。その通りだ。それなのに劉備軍が居ない。だからおかしいと季衣は思っているんだな」

 

「はい」

 

うむ。季衣は嫌々ながらも桂花の勉強を受けた甲斐もあり、それなりに戦略というものが分かってきているみたいだな。

 

「ん?要はあれだろ?叩かれる前に叩けばいいのだろ?」

 

「姉者……」

 

私は思わず額に手を当ててしまった。

 

「な、なんだ?違うのか?」

 

「違くはないのだが……まあ、姉者には戦略とは無縁だからな」

 

「ふっふ~ん!秋蘭に褒められたぞ季衣!お前も、もっと頑張るんだぞ!」

 

「は、はぁ……」

 

別に褒めたわけではないのだが……まあ、姉者がそう思っているのならそれで良いか。

 

「なんや~。ごちゃごちゃ悩んでへんでさっさと橋渡ってまえばええやないか」

 

「霞……お前も姉者と同じで何も考えていないのか?」

 

我らが考えていると後ろからのんきな声で姉者と同じことを言いながら霞が現れた。

 

「ひっど!ウチを春蘭と一緒にせんといてぇなぁ。これでもちゃ~んと考えてるんやで?」

 

全く考えてるように見えないのだが……相変わらず何を考えてるのかわからん奴だ霞は。

 

「あれやろ?どうせ相手の時間稼ぎちゅうんやつやろ?せやったら、罠がある思うて突っ込めば何の問題もあらへんって」

 

「それも一利あるが、その最初に向かわせるのを誰がやれば良いというのだ?」

 

「せやな~、誰がええかな~ん~~」

 

霞は深刻に唸りながらもどこか面白み半分といった感じだった。

 

「ん~、先に向かわせるんはだれがええんかな~~」

 

「あ~~~っ!何をそんなぐちぐちと考えている!要は敵の罠を粉砕して進めばよいだけではないか!」

 

痺れを切らしたのか姉者が騒ぎ始めた。そして、それを見た霞はにやりと笑った。

 

「ほな、春蘭が行ってくれるんか?さすがやな~!それでこそ魏武の大剣や!」

 

「はっはっは!罠など私の七星餓狼で軽く粉砕してくれる!見ていろよ霞!」

 

「あ、姉者!待つんだ!」

 

姉者は笑いながら走り出した、が……

 

(どぼーーーーーんっ!)

 

「のわーーーっ!なんだこれは!落とし穴だと!?」

 

走ってすぐ、地面に掘られた落とし穴に姉者は落ちてしまった。

 

「姉者……だから待てと」

 

「春蘭様!?」

 

「あのバカ……」

 

「んな~はっは!春蘭は期待を裏切らんな!」

 

大笑いをする霞に呆れる私と桂花、心配をしていたのは季衣だけだった。

 

「い、良いから早くここから出すんだーーーーーっ!!」

 

穴の下から大声で助けを求める姉者。

 

「うわ~~。結構深いですよ秋蘭様」

 

「ああ……誰か縄を!」

 

「はっ!」

 

「それにしても、こんな短期間でこんなに深く穴を掘れるわけ?ありえないでしょ」

 

「確かにな……だが」

 

あの男ならやりかねん……

 

敵を一瞬で倒すほどの力を持っているのだ、これくらいできて当たり前だろう。

 

私は穴を見つめながらそう思った。

 

「うぅ~、へ~っくしょん!」

 

「大丈夫か姉者?」

 

「怪我が無くてよかったですね春蘭様~」

 

「ああ、あの高さから落ちたら命は助かっても怪我は免れなかっただろうな。あの水がなければ」

 

季衣の言うとおり姉者には傷一つ無かった、それも落とし穴の底に大量の水が満たされていたからだ。まあ、ずぶ濡れにはなってしまったが。

 

「ええい!誰だこんな桂花みたいな姑息な罠を考えるのは!」

 

「ちょっと!誰が姑息ですって!こんなのを作る奴と一緒にしないでくれる!?私のは戦略よせ・ん・りゃ・く!」

 

ムキになり否定する桂花。

 

「はぁ、それよりもどうするのだ。罠があると分かった以上出方を変えねばならんぞ」

 

「そうね……とにかくこれ以上罠が無いか慎重に進みましょう」

 

話を無理やり戻し桂花に尋ねると苦虫を噛むように答えてくれた。

 

「それしかないようだな」

 

他にも橋はある、だがそこまで行っていては劉備たちをみすみす取り逃がすことになってしまう。我らはこの道を行くしかないのだ。

 

「他にどんな罠が仕掛けられているか分からん気をつけろよ」

 

罠に気をつけ進む……が。

 

「罠なんてあの一個以外無いじゃないのよーーーーーっ!」

 

桂花が叫び文句を言うように、姉者が落ちた落とし穴以外、罠は無かった。

 

「よく考えれば時間を掛けて罠なんて作れるわけがないのよ!私達が追いかけてきてるんだから!」

 

「まんまと劉備の罠にかかってしまったということか」

 

劉備たちに必要なのは我らの兵数を減らすことではない。必要なのは時間。最初に罠を仕掛け、その後、罠が『まだあるかもしれない』と思わせることにあったのだ。

 

「なんて卑怯な奴らだ!正々堂々と戦え!」

 

姉者は今にも七星餓狼を振り回し暴れだしそうになっていた。

 

「なら、俺達の相手をしてもらおうかな」

 

「っ!誰だ!」

 

声が聞こえ、辺りを見回す。

 

「あっ!春蘭様、あそこに居ますよ!」

 

季衣の指の先、橋の前に人影が見えた。

 

「久しぶりですね。夏候惇さん、夏候淵さん。あ、でも謁見の時に会ってるから久しぶりでもないんですよね」

 

「北郷……」

 

得物を腰に携え橋を渡る北郷。その後ろには張飛、そして……

 

「なっ!呂布だと!」

 

褐色の肌に刺青、赤い髪、見間違う筈がない。あれは飛将軍、呂布!

 

「……」

 

何を見つめているのか呂布はただじっと前だけを見ていた。

 

「なぜお前が劉備軍に……」

 

「……ごはん、貰ったから」

 

「え?」

 

「はぁ?」

 

呂布の答えに私も姉者も桂花でさえ、間抜けな声を出してしまった。そんな中……

 

「んなははっ!相変わらずやな~恋は」

 

霞一人だけが笑っていた。

 

「……霞?」

 

「おお、霞さんやで~!元気にしとったか恋!」

 

「……(こくん)」

 

霞の答えに頷く呂布。

 

「そか~。それなら良かったわ」

 

霞は義理堅い。華琳様を裏切るようなことは無いとだろう。しかし相手はかつての仲間だ。ここで手を抜かれるわけにもいかん。

 

「霞」

 

そう思った私は霞を呼んだ。

 

「わ~ってるって。今は敵同士、手加減なんてせぇへんよ。恋もそうやろ?」

 

「……(こくん)」

 

手をひらひらと振り答える霞。

 

分かっているのなら大丈夫だろう。それに霞は強い者と戦うのを楽しみにしているところもあるからな。

 

「へへ~ん!チビに負ける鈴々じゃないのだ」

 

「なにおぉ~!チビにチビなんて言われたくないぞこのチビ!」

 

安心していると今度は違うところで言い争う声が聞こえてきた。

 

「春巻き頭に言われたくないのだ!」

 

「それはこっちの台詞だ!」

 

「むむむっ~~~~!」

 

「むむむむっ~~~~!」

 

睨みあう季衣、その相手は張飛だった。

 

「春蘭様!ボク、あいつと戦う!」

 

「そうか。だが、背丈は同じでもそれなりの実力を持っているぞ。油断するなよ季衣」

 

「背はボクの方が大きいよ!」

 

「鈴々の方が大きいのだ!」

 

「ボクだい!」

 

「鈴々なのだ!」

 

「むむむっ~~~~!」

 

「むむむむっ~~~~!」

 

そしてまた睨みあう二人。結構、気が合いそうではあるな、あの二人は。

 

「なんや、チビっこ同士でやるんか?ならウチは……恋、相手して貰うで」

 

「……わかった」

 

霞は戦う相手を呂布に決めたようだ。呂布も言葉少なく頷いていた。

 

「季衣たちは決まったようだな。なら私の相手はお前だ北郷!覚悟しておけ!」

 

姉者は七星餓狼を北郷に向けて挑発していた。

 

だが、冷静に見ても姉者より北郷の方が上、ここは私も加わろう。

 

「姉者一人だけ戦わせるわけにはいかんな。私も混ぜて貰うぞ」

 

「おおっ!秋蘭がいれば私は負け無しだな!ふふん。見たか北郷!」

 

「いや、まだ戦ってないんだけど」

 

姉者の勝ち誇った態度に北郷は苦笑いを浮かべて返事を返してきた。

 

「そんなもの戦わなくてもわかるさ!なーっはっはっはっ!」

 

「姉者。北郷を甘く見すぎるな。最初から全力で行くぞ」

 

「わかっている!華琳様に我ら姉妹の力を今一度、見ていただくぞ!」

 

相手はあの呂布と互角の力を持った北郷だ。必ず姉者の隙を狙ってくるはず、なら……

 

私は姉者の後ろで補助する為、弓を構えた。

 

《一刀視点》

 

恋には張遼、鈴々には許褚ちゃんか。

 

そして、俺の相手は夏候姉妹……こりゃ手ごわいぞ。

 

お互いずっと一緒に戦ってきたんだ。良い所も悪い所も分かってるはずだ。

 

それに夏候淵さんの方は弓で、姉である夏候惇さんは大剣。きっと攻撃の合間に弓で攻撃してサポートしてくるだろう。

 

こういう時の定石は後方を叩く、ことなんだけど。それも夏候惇さん相手じゃちょっと無理かな。

 

「どうした!来ないならこちらから行くぞ北郷ぉ!」

 

俺がどう攻めようか考えていると夏候惇さんは痺れを切らしかけているのか俺に怒鳴りかけてきた。

 

「もう少し待って」

 

「な、なに!?」

 

俺が手で待ったをかけると夏候惇さんはこけそうになった。

 

「うぅ~、早くしろー!貴様、私を馬鹿にしているのか!」

 

「そんなわけ無いだろ。なんてったって曹操の右腕と左腕が相手だ。こっちも手加減なんて出来ないからね」

 

「ちょっと!右腕は私よ!なんで春蘭が右腕な訳!?訂正しなさいよ!」

 

なぜかそこで、夏候姉妹の後ろに居た荀彧が噛み付いてきた。

 

「ちょっと!聞いてるの!これだから男は!役に立たないのよ!」

 

なぜか、俺一人のせいで男全てが役立たずの汚名を着せられてしまった。

 

「ご、ごめんなさい」

 

「はぁ?!謝るなら最初から言うんじゃないわよ!なに?男って自分の言った言葉にも責任が持てないわけ!」

 

「そ、それじゃどうしろっていうんだよ」

 

「そんなの自分で考えなさいよ!少し考えれば分かることでしょ!」

 

分からないから聞いているんだが……多分、そんなこと言ったらまた怒鳴られるんだろうけど。

 

「……」

 

「そんなことも分からないわけ!?いいわ、教えてあげる。華琳様の崇高で賢くて可愛い右腕はこの私よ!」

 

「……」

 

「……」

 

「??」

 

荀彧の余りにも突拍子の無い発言に俺は呆然として夏候淵さんは首を振り呆れて、夏候惇さんは意味が分かってなかったのか首を傾げていた。

 

「~~~~っ!ちょっとあんたのせいで場の空気が寒くなったじゃないの!」

 

「お、俺のせいなのか!?どうみても俺のせいじゃないだろ!」

 

「煩いわね!全部あんたが悪いのよ!さっさとやられちゃいなさいよ!」

 

荀彧の暴言になぜか涙が出てきそうになった。俺、荀彧に何かしたのかな?

 

「とりあえず桂花。ここは下がっていてくれ。戦略・計略の必要ない純粋な武人の戦いだ」

 

「仕方ないわね。きっちりあの小汚い駄男を懲らしめるのよ秋蘭」

 

「ふっ。出来うる限りがんばって見よう。だが、華琳様が欲している人材だ。殺しはしないぞ」

 

「わかってるわよ。仕方ないけど華琳様のご命令ですもの」

 

荀彧はしぶしぶと言った感じで下がっていった。

 

「……俺、そんな汚くないよな?」

 

俺は自分の体を見回す。確かに、袁紹から逃げていたのもあり、ここ最近風呂には入ってないけど。

 

「はぁ……悪かったな北郷……何をしているのだ?」

 

夏候惇さんと荀彧のやり取りを見ていた夏侯淵さんは弓を下して呆れながら謝ってきた。が、俺の行動を見て首を傾げていた。

 

「え!い、いやなんでもないなんでもない!は、ははははっ!」

 

「……自分の体臭が好きなのか?まあ、人それぞれだが」

 

「それはない!全然ないから!」

 

俺は夏候淵さんの言ったことに全力で否定した。

 

「ああああっ!もういいな!もう行くぞ!秋蘭も気合を入れろ!」

 

叫びと共に夏候惇さんの我慢が限界に来たようだった。

 

「そうだな。まあ、話を折ってきたのはそっちの軍師だけど……そろそろ、やろうか」

 

俺は明らかな敵意を夏候姉妹にぶつけた。

 

「「なっ!?」」

 

「お、お兄ちゃん。本気なのだ」

 

「……一刀、本気」

 

「なっ!なんちゅう殺気だしとんのやあいつ。連合軍の時はこんな殺気見せんかったくせにずるいわー!やっぱりウチと戦いぃ!」

 

「うぅー、肌がぴりぴりする。なんなんだよあの兄ちゃん」

 

俺の殺気を感じたのか周りに居た人たちも驚いていた。

 

別に殺すつもりは無い。だけど桃香たちを出来るだけここから遠ざける為、こうして相手を威嚇して動きを鈍らせたほうが効率が良い。

 

現に、後ろで待機していた曹操軍の兵達は動揺している。

 

「ええい!静まらんか!お前達は我ら魏の精鋭であろう!そんなことで動揺するな!」

 

「「「……」」」

 

夏候惇さんの言葉に直ぐに静かになる兵達。さすが調練が行き届いてるな、こんなに直ぐに収まるとは思わなかった。

 

「またせたな。では、相手をしてもらおうか……はぁぁぁああああっ!!」

 

夏候惇さんは大剣を構え地面を蹴り、間合いを詰めてきた。

 

早いな……でも。

 

攻めてくる夏候惇さん。でも、前に戦った恋ほどではなかった。

 

「でやぁぁあああっ!」

 

「そんな動きじゃ俺を捉えられないぞ」

 

「なにぃ!?ぐっ!……こんのぉお!」

 

大剣を振り下ろす瞬間、俺は背後にまわり刀の柄で脇を突いた。

 

顔をゆがめながらもすぐさま俺に向かい大剣を振るがすでに俺はそこにはいなかった。

 

「まさかあの状態から攻撃を仕掛けてくるとは」

 

「伊達に今まで戦場に立っていないぞ!」

 

「それでも、俺には勝てないよ……っ!おっと!」

 

攻撃を仕掛けようとした時、俺の死角から矢が飛んできて俺は軽く後ろに飛びのいた。

 

「それは我ら二人を相手にしてから言ってもらおう。姉者!」

 

「ああ、わかっている。今度は二人で行くぞ」

 

前に居る夏候惇さんに声をかける夏侯淵さん。

 

「なら、俺もこれを使わせてもらおうかな」

 

俺は袋から宝玉を取り出し刀に着けた。

 

「っ!姉者、どんな攻撃が来るわからない、慎重に……」

 

「ふん!どんな攻撃が来ようと私と七星餓狼で打ち破ってやろうではないか!」

 

大剣を構え向かってくる夏候惇さん。別に、攻撃だけが能じゃないんだけどな、組み合わせ次第で色んなことができる。

 

「……惑わせ、双龍天舞」

 

「はぁあっ!」

 

(どごーんっ!)

 

そこに俺が居ると思い込んでいるのであろう。夏候惇さんは思いっきり大剣を振り下ろしていた。

 

「姉者!そこには誰もいないぞ!」

 

「なに!?確かにここに居たぞ!」

 

「俺はここだよ」

 

「なに!いつの間にそこに移動した!」

 

「ずっとここに居たよ」

 

「なにぉー!ならこれでどうだ!はぁぁあああっ!」

 

「姉者!そこにも誰もいないぞ!」

 

「何を言っている!目の前に居るではないか!」

 

「ど、どういうことだ……」

 

俺の幻惑は遠くまで効果がでない。良くて半径五メートルくらいだ。だからその範囲内に居ない夏侯淵さんには効果がない。

 

この技は青の宝玉と空にある太陽の光を使った複合技だ。

 

ようは、光を屈折させた簡易蜃気楼みたいなものだ。だから今日みたいな天気の良い日じゃないと使えないという制限がある。

 

それ以外にも色々と弱点はあるが今は割愛しておこう。

 

「姉者!目を閉じて気配を探るんだ!」

 

「お、おお……っ!そこか!」

 

「おっと……的確な指示だな」

 

夏侯淵さんは夏候惇さんに指示を出す。するとすぐさま、それを実行して俺の気配を探し出し攻撃をしてきた。

 

「ふっふん!どうだ。打ち破ってやったぞ!」

 

「「いや。(私が指示をしたのだが)(夏侯淵さんの指示だと思うんだけど)ん?」」

 

まさか夏侯淵さんと同時に言うとは思わなかった、驚いて夏侯淵さんを見ると相手も同じように俺を見て見つめ合う形になってしまった。

 

「……気が合いますね。嬉しく思います」

 

「ああ。だが、お前が我らの仲間になってくれれば私はもっと嬉しいのだがな」

 

「それは無理ですね。俺は桃香……劉備や関羽たちを支えて行こうと決めていますから」

 

「そうか、それは残念だ。……やはり力ずくで行くしかないようだな。私としてはお前とは戦いたくは無いのだがな」

 

「そのつもりでここまで追いかけてきておいて、戦いたくないってのは無ですよ」

 

「ふっ、確かにそうだな……」

 

「ええい!また話し込みおって!さっさと私と戦え北郷!」

 

「ごめんごめん。でも、俺が本気を出すと負けるよ」

 

「そんなことあるか!勝つのは私だ!」

 

「それじゃ……この技を受けてそう言ってられるかな?」

 

俺はもう片方の刀に緑の宝玉を付けた。

 

『これ以上、その力を使わないでください』

 

「……」

 

桃香の言葉が甦る。

 

ごめん、桃香……でも、ここで曹操軍を食い止めないといけないんだ。

 

「はぁ……」

 

でもこのことを話したら愛紗にこっぴどく怒られそうだな。また無茶をしてとかなんとか言われて……

 

愛紗の怒る顔を思い浮かべてため息が出る。

 

そして、それと同時に桃香の悲しそうな顔も脳裏に浮かんできた。

 

大丈夫だよ桃香……必ず無事に戻るから、約束しただろ?

 

「……凍り尽くせ……」

 

その瞬間、俺の周りから氷のつぶて次々に出来上がっていった。

 

『氷』氷ができる原理はいたって簡単。外気が零度以下になれば水は氷る。

 

そう、風で瞬間的に空気中の温度を一気に下げているだ。そして、その風を利用して相手に氷のつぶてをぶつけ攻撃を仕掛ける。

 

つぶての形も大きさも自在に変えられる。石ころくらいのつぶてからサッカーボールくらいまで自由に変えられる。そして丸も氷柱の様に先端が尖ったものも自由に変えられる。

 

そして、今は拳くらいの大きさのつぶてにしてある。もちろんだけど先は尖らせていない。

 

「……行きますよ」

 

「こい!」

 

大剣を構える夏候惇さん。それを支援しようと夏侯淵さんも弓を構える。

 

俺は刀を天に掲げ、振り下ろした。

 

「……絶氷凍じっ……」

 

「そこまでよ!」

 

技名を言い終わるその瞬間、凛とした張りのある声が当たりに木霊した。

 

《To be continued...》

葉月「どもー。最近仕事が身に入らない葉月です。こんにちは」

 

愛紗「ちゃんと仕事をしろ。みな元気にしていたか愛紗だ」

 

葉月「だって~。朝は早いし眠たいし怠いし、寝てたいです」

 

愛紗「ぐうたらの典型的な奴だな……はぁ、この話も一周年を超えたというのに嘆かわしい」

 

葉月「え~。ならこの話も中途半端でやめちゃ……」

 

愛紗「何か言ったか?」

 

葉月「いえ。何も言っていません。そ、それより!最近思うことがあるんですよ!」

 

愛紗「急に話を変えたな。それで、それはなんだ?」

 

葉月「最近。このあまり恋姫の小説を見なくなったなぁと、私がお気に入り登録しているクリエイターさんの作品があまりアップしていないようで」

 

愛紗「そうか。まあ、人はそれぞれやるべきことがあるのだろう。それは仕方ないことではないか?」

 

葉月「ですかね。なら、私もやるべきことが別に……はい、ありません。ごめんなさい。偃月刀を下してください」

 

愛紗「うむ。みなそれぞれ事情があるのだ。葉月の様に怠いからという理由で書くのを止めたわけではあるまい」

 

葉月「愛紗が厳しい……」

 

愛紗「当り前だ。自分の出ている作品だぞ?厳しくして当然ではないか」

 

葉月「どうせ。一刀とのイチャイチャ書いてもらいたいだけのくせに」

 

愛紗「な、なに!?そ、そそそんなことあるわけがないではないか!ご、ご主人様とい、いちゃいちゃなんか考えていないぞ!これっぽっちも!」

 

葉月「本当ですか?」

 

愛紗「ああ、当り前ではないか!」

 

葉月「そっか~。それなら、今度から一刀と愛紗のイチャイチャを書かなくても良いってわけですね」

 

愛紗「な、なに!?それはダメだ!」

 

葉月「え~。なんでダメなんですか?だってさっき自分で言ったじゃないですか。イチャイチャなんてこれっぽっちも考えていないって」

 

愛紗「そ、それはそうなのだが……あ、あれだ!私ではなく読者が望んでいるだろ!だから書かないとダメなんだ!うんうん!」

 

葉月「う~ん。きっとみんなそんなこと思ってないと思うな~」

 

愛紗「な、なに!?そんなことあるはずがないだろ!?」

 

葉月「むしろ。愛紗より、一刀と雪華のイチャイチャを見たいんじゃないかなと思うんですよ」

 

愛紗「ぐっ!」

 

葉月「それに本人が望んでないのに書いたら可哀相じゃないですか」

 

愛紗「うう……」

 

葉月「あれ?どうかしましたか愛紗?」

 

愛紗「……れ」

 

葉月「はい?」

 

愛紗「書いて、くれ」

 

葉月「何をですか?」

 

愛紗「~~~~~っ!わ、私とご主人様とのイチャイチャを書けと言っているのだ!何度も言わせおって!」

 

葉月「どわっ!またそうやって攻撃してくるんですから!」

 

愛紗「うるさい!お前がからかってくるのがいけないのだろ!」

 

葉月「あ、ばれました?」

 

愛紗「当り前だ!毎回毎回やられていればそれくらいわかる!」

 

葉月「でも、それに引っ掛かる愛紗も愛紗だと思いますよ」

 

愛紗「ええい!うるさい!さっさと次回予告をしろ!」

 

葉月「はいはい。顔を赤くして可愛いんだから……さて、次回は視点を変えて桃香たちのお話を書こうと思います」

 

愛紗「可愛いは余計だ!……ご主人様と別れた後の桃香様たちの行動ということだな」

 

葉月「はい。そして、お待ちかね!かはわかりませんが等々、おもらし武将が登場します」

 

愛紗「ああ、す」

 

??「わー!わー!わー!それ以上言うな馬鹿野郎!」

 

??「もう、お姉様。たんぽぽたちの登場は次回なんだからそれまで秘密なのに出てきちゃだめだよぉ。ほらほら、二人に呆れられちゃってるよ」

 

葉月「……」

 

愛紗「……」

 

??「あ、ああ、あああああああっ!」

 

??「あ、行っちゃった……それじゃ、たんぽぽも行くね~。ばいば~い♪」

 

葉月「……」

 

愛紗「……」

 

葉月「な、なんといいますか。名乗っちゃってますよね思いっきり」

 

愛紗「あ、ああ……」

 

葉月「と、とにかく!次回はそういうことなのでよろしく!」

 

愛紗「え、あ。で、では皆の者、次回も楽しみにしていてくれ」


 
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