No.348905

災厄再び?!変態獣討伐大作戦!! そのろく

一郎太さん

むしろ5.5話。

どうしてこうなった!
こんなドロドロの世界を書きたかったんじゃないんだよorz

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2011-12-18 09:13:54 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:5935   閲覧ユーザー数:4495

 

 

 

災厄再び?!変態獣討伐大作戦!! そのろく

 

 

とある学園のとある建物、とある階の廊下の上に、ひとつの影が崩れ落ちていた。

 

『―――――――――――――――――――――!!』

 

どこかから轟音や叫び声が聞こえてくるが、影は気にしたようすもなく、ただ項垂れている。

 

「――――――う、うぅ……シクシク………」

 

その影は体を震わせ、すすり泣きの音が聞こえてくる。小刻みに揺れる身体を包むのは、純白の学ラン。その白と対比するように、真っ黒な―――黒髪を更に染髪料で染め上げたような、漆黒の髪。

 

「メソメソ………穢されてしまった……もう、お婿にいけない………」

 

ブツブツと怨嗟の念を零しながらも、その影―――青年は立ち上がった。とりあえず服を調達しなければならない。

 

話は数時間前に遡る。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

「ちょっと、ここ何処ですか?なんで連れて来られたんですか?というか――――――」

 

青年は、学園の部室棟のとある部屋にいた。正確には、拉致されていた。そんな彼の目の前には、十数人の女子生徒。ちょっとしたハーレム状態のような雰囲気―――など微塵も感じられない。

 

「――――――なんで縛り付けられてるんですか!?」

 

彼は拘束されていた。そんな彼の言葉に視線を向けるのは、部屋の主たちである女子生徒。手に黒い切れ端を付けている者や、指先が黒く染まっている者、何故か鼻血を流している者、種々様々である。

だが、そんな彼女たちに唯一共通している点があった。学園の生徒である事?そのようなものではない。皆一様に、隈の出来た眼をギラつかせている事だ。

 

「………この子が転校生ね、ウタマル」

「そうだよ、輝里。ね、一郎太君?」

 

最初に口を開いたのは、長い黒髪は左右二つに分けた女性。そしてそれに応えたのは、猫のグッズが髪やら服やらに見え隠れする女性だった。雰囲気もどことなく猫っぽい。

 

「えと…確かに俺は転校してきたばかりですけど………あの、なんで俺は拉致されているのでしょうか?」

 

おそらくこの2人がグループのリーダー的ポジションにあるのだろう。そうあたりをつけた青年――― 一郎太は、勇気を出して問いかける。そんな彼に、2人は満面の笑み、否、悪魔のような残忍な笑みでもって答える。

 

「「勿論、君をネタにする為だよ♪」

「………………は?」

 

 

「うぅ……見られた………親にも十数年見せてないのに、見られた………」

 

数分後、一郎太は学園の制服から白い学ランに着替えさせられていた。無理矢理。着替えるだけなら下着を脱がす必要もないじゃないか。そんな文句を喚き散らしながらも、盛りのついた女子たちは黄色い声を上げながら、嬉々として彼を着替えさせた。

 

「あ、でも白ランなら生徒会長って感じだし、茶髪はダメだよね?」

「へ?俺、別に生徒会長じゃ……」

「『感じ』って言ったじゃん。という訳で、黒く染めちゃいましょー」

「ちょ、まっ!先週染め直したばっかなんだから………って、インクはやめてぇぇぇえええええっ!?」

 

穴を開けたゴミ袋を被せられた一郎太は、抵抗も出来ず黒インクを頭からかけられた。

 

 

 

 

 

 

「うぅ……せっかく綺麗に出来たと思ったのに………」

 

鏡を通して漆黒に染め上げられた髪を見ながら、一郎太は溜息を吐く。と、そこで鏡越しに、背後の視線に気づいた。

 

「「「「「………………………………」」」」」

 

振り返れば、みな一様に顔を赤らめていた。

 

「あの…どうかしましたか………?」

 

口を開いた瞬間。

 

「いいっ!凄くいいよ、一郎太君!」

「ホントに!まさかリアルで白ランが似合う子がいるなんて思ってなかったよ!」

「線が細い感じもいいよね!いやー、眼福眼福」

「えと…そうかな?」

 

どうやら褒められているらしい。まんざらでもなく、照れ笑いを浮かべる一郎太だったが、それを固まらせる声。

 

「待ちなさいっ!何を考えているの!?」

「そうよ!男たちはみんな、私達の妄想源(エサ)なんだよ!そこにいるだけの対象に発情してどうするのよっ!」

 

最初に一郎太に声をかけた2人だった。その叱咤を受けて他の女子たちも現実に引き戻され、先ほどとは打って変わって、真面目な眼で一郎太を見据える。

 

「………………いいわね。来たわよ」

「うん…すぐに制作に取り掛かれそうね」

 

言うや否や、彼女たちはそれぞれの席に戻り、ペンやら何やらを持ち、作業を開始した。しばらくの間それを茫然と眺めていた一郎太だったが、誰も自分を気にしていない事に気づき、そっと出口に向かう。

 

「――――――どこに行くのかしら?」

「っ!?」

 

背後からかかる声。ビクリと肩を振るわせ、恐る恐る振り返れば、そこには三日月型に口元を歪ませた猫女。

 

「いや、俺も用済みみたいだし、帰らせてもらおうかなぁ…って………」

「ダメ」

「え、でも―――」

「なかなかのインスピレーション元だから、君には協力してもらうから」

「………拒否権は?」

「あると思う?」

「い、いやだ……いや…いや………――――――」

 

しばらくの間、その部屋からは薄布を斬り裂くような悲鳴が途切れなかった。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

そんなこんなで、精神的に凌辱され尽くした一郎太は、廊下に転がっていたのだ。部屋を出てからどれだけの時間が経ったのかもわからない。

自分の制服は持っていないが、あの魔界に再び足を踏み入れる自信も勇気もない。保健室あたりで体操服を借りよう。そう決め、彼はうろ覚えの記憶を頼りに、保健室へと向かった。

 

「――――――たしか、この先だったよな」

 

部室棟から事務棟に移動し、角を曲がったところで、彼は気がついた。その廊下の先で喧嘩する2つの影。

 

 

(副音声でご覧ください)

 

「だからコイツは俺のだ、って言ってるだろ!?」

「いーや、俺がもらう!お前はその辺の美術教師で我慢してろいっ⊂ (#`>´)⊃」

 

1匹の犬と1羽の鳥が、それぞれの口と嘴で何やら布のようなものを引っ張り合っている。

 

「だいたいヒトヤの方が後からこの世界(TINAMI)に入ってきたくせに、楯突くんじゃねーよ!⊂ (#`>´)⊃」

「んなの関係ないねっ!学園一の美少女のブラは俺がもらうっ!」

 

その時、布を咥えたまま跳び上がった犬の体当たりが、嘴を固定している所為で上手く飛べていない鳥の身体を打った。それを受け、鳥は思わず嘴を開いてしまう。

 

「くぇっ!?」

「へへっ……こいつは俺がもらったぜ。そして、今日から俺がこの世界(TINAMI)の変態王だ」

 

唸り、布を咥えて立ち去ろうとする犬だったが、

 

「―――させるかっ!⊂ (#`>´)⊃」

「ぎゃんっ!?」

 

地に堕ちた鳥の嘴による突きをその(どことは言わないが)穴に受け、崩れ落ちる。

 

「くくく…哺乳類ごときが空を舞う鳥類に刃向うからこうなるんだ。進化の過程でも俺の方が先達なんだよ。じゃぁな」

「……………」

 

気絶し、開きっぱなしになった口から布を奪い取ると、鳥は悠々と飛び去っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

一連の流れを遠巻きながらに眺めていた一郎太は、飛び去る鳥を見送り、次いで廊下の先で動かないままの犬に視線を向ける。

 

「………犬と鳥の喧嘩とか初めて見たな」

 

ひとりごちながら、彼は廊下を進む。数mの距離を埋め、彼は地に伏せる犬の傍にしゃがみ込んだ。

 

「おい、わんこ。生きてるか?」

「きゅぅぅん……(だ、誰だ……)」

 

その犬―――ヒトヤは話しかけるが、この外史のモブである彼に、言葉は通じない。

 

「相当弱ってるな。というか穴は大丈夫か?」

「わ、わふぅ…(あぁ、どうやら処女は守り切ったみたいだぜ。だが、*の方は…)」

「仕方がないか…保健室に連れてってやるよ。軟膏くらいならあるだろうし」

「わぅ…(すまない…)」

 

動けない犬を腕に抱き上げて立ち上がると、一郎太はそのまま廊下の奥に見える保健室へと向かう。

 

「失礼しまーす……って、誰もいないのか」

 

いつもはいる筈の保健室のお姉さんは見当たらず、仕方がないかと彼は室内へ入った。

 

「ちょっと待ってろ。すぐに薬を塗ってやるからな」

 

流石に犬をベッドに寝かせては怒られるだろうと、一郎太はヒトヤを椅子に寝かせ、棚の救急箱を漁る。目的のものはすぐに見つかり、彼はヒトヤの下へと戻った。

 

「ちょっと沁みるかもしれないけど、我慢してくれな………って、震えてやがる」

「わふぅん……(初めてだから…優しくしてね………)」

「大丈夫だから。じゃ、塗るぞ………って、お前メスなのか」

「わふっ!?(ひゃんっ!?)」

 

一郎太はいつだかの家のペットを手当した事を思い出しながら、ゆっくりと人差し指につけた軟膏をヒトヤの*に塗っていく。

 

「わ、わふっ(ん、んんっ)」

「やっぱ沁みるか。これで最後だからな。あんまり自分で舐めたりするなよ」

 

丁寧に薬を塗り込み、最後はティッシュで、傷から外れた軟膏を拭き取る。

 

「わふぅぅぅうんっ!?(※自主規制※)」

「?」

 

ヒトヤは背筋をピンと反らし、次の瞬間には椅子の上に脱力したが、一郎太は理由も分からず首を傾げるばかりだった。

 

 

 

 

 

 

当初の目的を忘れたまま白ランに身を包んだ一郎太は、保健室を出て廊下を歩いていた。肩の上には、先ほど助けた犬。

 

「なんで肩に乗ってるんだよ」

「わんっ(いいじゃないか、友よ)」

「何言ってるか分かんねぇよ」

 

一郎太の言葉に毎度返事を返す様に鳴くヒトヤに、言葉が通じてるのかもな、などと彼は適当に考える。

 

「とりあえず帰るかな………お前はどうする?どっかの飼い犬か?だったら送っていくぞ」

「わふ…(俺はその日暮らしの一匹狼さ。帰る家なんて持ち合わせちゃいねぇ…)」

「よくわからんが、帰るか。ま、お前も適当にしてていいからな」

 

バカデカイ校舎を歩きながら道を思い出し、ようやく下駄箱に辿り着いた一郎太は靴に履きかえる。そして、校舎を出た所でギョッと目を見開く。

 

「なんだ…これ………」

 

目の前に広がるのは、彼の常識では考えられないものだった。グラウンドに出来たクレーターの数々、薙ぎ倒された樹木、フェンスはひしゃげ、噴水の像は上半分を吹き飛ばされて水をジャバジャバと垂れ流し………そう、それはまるで戦場のようだった。否、たったいま爆撃されたばかりの、まさに戦場に見えた。

 

「どうなってるんだよ!?警察とか来ねぇのか!?」

 

彼は知らない。いまの学園がマリアとうい名の、男の娘の結界によって外界から遮断されている事を。そして、彼は遠くの人影に気がついた。

 

「よかった、まだ人はいるみたいだな………」

 

近付くにつれてその数が把握できる。6人いるようだ。だが、のこり20mのところで、彼は足を止めた。

なぜなら、そこにいる者達は、どう見ても学園の人間ではなかったからだ。

紺のスーツに金縁眼鏡のインテリヤクザ、アロハシャツにサングラスの―――なぜか頭に猫(?)のような生き物を乗せている―――マッチョ、ダボダボのカーゴパンツにサイズが合っていないぶかぶかのTシャツを着たチャラ男、日本刀を携えた剣道着、黒い山羊の被り物をした(?)男、そして唯一の女性。

そして足を止めた理由はもうひとつ。

 

「なんで…睨まれてるのでしょうか………?」

 

7対の視線が、一郎太を射抜いていた。

 

 

 

 

 

 

「おい、ウタマル」

「にゃ?」

 

白ランの青年の姿を認めたマッチョ―――丈二は頭上の猫―――ウタマルに問いかける。

 

「学園の関係者はいないんじゃなかったのか?」

「私は『周辺に』とは言いましたけど、『敷地内に』とは言ってないにゃ」

「………潰すぞ」

「どこをかにゃっ!?」

 

漫才を始める1人と1匹の横で、武士―――戦国は何かに気づき、口を開いた。

 

「なぁ、あいつの肩に乗ってるのって………」

「………ヒトヤだな」

 

問われたチャラ男―――甘露もそれを認め、応える。

 

「うちの娘の下着を盗んだ罪は重い……」

「まぁ、待て黒山羊。犬はともかく、あの生徒はこの世界のモブキャラだ。折角作ったキャラをいきなり死なせたくはない」

「そうは言うが……あの男も犬と鳥の仲間だったらどうする?」

 

その隣では、インテリヤクザ―――狭乃狼と黒い山羊―――黒山羊が言い合いをする。

 

「とりあえず、落ち着いてください。話を聞けば判明しますよ………ちょっと、そこのお兄さん!」

 

そんな2人(1人と1頭?)をなだめ、紅一点―――マリアは白い学ランに身を包んだ青年に声をかけた。

 

 

突如声を掛けられ、一郎太はビクリと肩を振るわせる。だが、それも一瞬の事で、声を掛けたのがマリアであった事も幸いだったのだろう、彼はその声音に敵意がない事を認め、異様な集団に近づいていく。肩に乗った犬が震えている事も気づかずに。

 

「えぇと……」

 

近付けば近付くほど、その異様さが際立つ。白ランも十分おかしな恰好だが、目の前の協調性のない集団には負けるだろうとも思った。

 

「ちょっといいですか?聞きたい事があるんですけど」

 

マリアの声音は、警戒を解くには十分だった。一郎太も知らず安堵の息を吐き、それに応える。

 

「あの、俺に応えられる事だったら………なんでしょうか、お姉さん」

「あ、バカっ!」

 

叫んだのは誰だっただろうか。だが、それを確かめる間もなく一郎太の表情が固まる。

 

「アレェ?ヨク、キコエナカッタナァ……イマ、ナンテイッタノ?」

 

目の前の女性がどす黒いオーラを発し、光る眼光で睨みつける。逃げ出したい。だが、震えでそれも出来ない。一郎太は何とか喉を絞り、揺れる声を出した。

 

「あ、あの……いきなりどうしたんですか、お姉さ――――――」

「フ、フフフ………………コロス」

 

次の瞬間、肩の上の犬が跳ねた。

 

「わん!わんわんっ!(此処は任せた!お前の犠牲は忘れないぜ、友よ!)」

 

一郎太には理解できない言葉を叫び、ヒトヤは光のような速さで走っていく。

 

「え、ちょ!?なんて言ってるかわかんぎゃああぁぁぁぁああぁぁああああああああっ!!?」

 

三十秒後、ボロボロになった青年が地面に倒れていた。

 

「なぁ、狼…」

「なんだ、丈二?」

 

呆とその光景を眺めていた丈二が、ふと口を開いた。

 

「お前のキャラ死んだけど、どうする?」

「………筋肉達磨たちにでも頼んで生き返らせて、アイツも管理者に加えるかな」

 

せっかくモブにも設定を与えたんだけどな。そんな小さな呟きが聞こえ、丈二はサングラスの奥で同情の涙を禁じ得なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

では、さとッチ様、バシっと決めちゃってください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

あぁっ!痛い、痛いです!?お願いだから石を投げないで!

 

一郎太です。

 

言い訳をさせてください。

最初はどんな設定にしようかなーとか考えてたんですよ。

でもなかなか思いつかなかったから、自分が書いたキャラを思い浮かべてたんですね。

そしたら、腐女子にオカズにされているところしか(作者なのに)思い出せず、こうなってしまったんです。

 

そんなこんなで、第6回でした。

 

また今日も上から降ってくる重たい物を受け流す仕事が始まるお(つД`)

 

バイトいってきます。

 

 

 


 
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