No.224233

真・恋姫†無双~江東の白虎~ 第弐章 19節~龍虎相打つ~

タンデムさん

大打撃を受けた袁紹軍は、戦線に参加できず、兵達の指揮も落ち、最悪の状態だった。
その状況と敵の策を見た一刀は、新兵器のお披露目を決めた。
そして、その新兵器に突付かれて、虎牢関から龍が飛び出す。
龍虎相打つ虎牢関……果たして勝利の女神はどちらに微笑むのか?

続きを表示

2011-06-23 01:13:59 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:13193   閲覧ユーザー数:9723

この小説は、北郷一刀、呉の主要キャラほぼ全てと華陀に

 

いろいろな設定を作っていますので、キャラ崩壊必死です。

 

更に、オリキャラが出ます。

 

その点を踏まえて、お読みください。

 

嫌悪される方は、ブラウザ左上の←または、右上の×をクリックすることをお勧めいたしますっす。

 

それでもOKという方は、ゆっくり楽しんでいってくださいっす。

「随分、手酷くやられたみたいだな」

「本当ね、地面が真っ赤だったもの」

 

一刀達は、周りの惨劇を見て、そう呟いた。

行軍時に持ってきていた食料は悉く焼かれてしまい、袁紹達の兵士達も死傷者が多数出ており、士気もガタ落ちな状態だった。

当の袁紹も、何処からか飛んで来た礫が頭に当たって、今は天幕で養生中だ。

幸い、袁紹達は本陣に大半の食料を置いていた為、戦線維持は可能だが、殆ど戦意は無い状態だろう。

 

「はい……しかも、相手は数日前から続いていた豪雨に合わせて、『埼角(きかく)の計』を仕掛けてきました」

「そのせいで、大混乱と甚大な被害を被った、言うわけね」

 

現場に居た諸葛亮の話を聞いて、其々が苦い顔をした。

 

『埼角の計』とは、鹿を捕らえるがごとき作戦を言い、角はツノを、埼は足を捕るの意味。

 

先ず篭城している城兵の半分が城から出て、

 

敵勢の後方を攻撃した後、来た道を引き返す。

 

勿論、敵勢は後方の敵を攻撃しようとして、城に背を向ける。

 

そしたら外の部隊は、敵の追撃をギリギリまで引き付けた後、城に合図を送る。

 

その合図が城に伝わったら、今度は城から討って出て、

 

後ろを向いた敵勢を後ろから攻撃したら、敵陣が立て直さない内に城に戻る。

 

その後は、松明を持った一人を敵陣に走らせ、敵が戦闘状態に入ったのを確認したら、松明の火を消して、陣に戻る。

 

それを数日の間繰り返し、敵が松明に反応しなくなったら、また攻める。

 

このように、前後から敵勢を挑発し、常に後方から攻撃して、敵の霍乱と時間の浪費を狙う作戦である。

 

しかも、一刀たちが到着する前に雨が止んだので、その日の夜に張遼隊は攻撃と供に、

 

劉備陣、袁紹陣を縦にぶった切って関に戻ってしまったため、此方から張遼隊を責める事も出来ない。

 

劉備軍は、諸葛亮と鳳統が居た為、其処まで被害は出てないが、何時攻めて来るか分からない敵、

 

執拗にに続く挑発と豪雨と、安定しない地面で、気力、体力を大幅に奪われた状態で、物凄く疲弊した状態だった。

 

「はぁ、こっちの兵は急な行軍で、大半が疲労困憊で、劉備軍と袁紹軍の兵を見て他の軍兵の士気も低下」

 

「なのに、敵は作戦の大成功に士気は向上、しかも大した損害は出て居ない」

 

馬騰――茜と曹嵩――華南の溜息交じりの言葉を聞いて、天幕の雰囲気はますます暗くなった。

その状況を見て、一刀は溜息を吐いた。

 

「はぁ、仕方ねえ。 なぁ、次の戦は俺達(孫家)を、前(先鋒)に出してくれねえか?」

 

その一刀の言葉は、全員を驚愕させた。

 

「一刀、何を言っているか分かっているの? 向こうは士気が向上した精鋭部隊と、鉄壁の虎牢関があるのよ?」

 

本当に大丈夫と言った表情で、一刀にそう質問した。

 

「なに、心配無い。 "扉の無い鉄壁"なら、"扉を作っちまえば良い"んだからよ」

 

だが、その雪蓮の質問に一刀は、そう言って、不適に笑むのだった。

自身の天幕に戻る途中、一刀は奇妙なものを目にした。

それは真っ赤な大地に向かって立つ一人の女性――――袁紹だった。

その後ろ姿には、見おぼえがあった。

一刀は声をかけずにいられなかった。

 

「……泣いているのか?」

「――っ!?」

 

一刀が声をかけると、驚きの顔でこちらを見た。

やはりと、一刀は声をかけてよかったと思った。

 

「あ、あら? 何をおっしゃいますの? 私が泣く必要などどこにもありませんわ……」

 

そう言ってこちらを振り返る袁紹は、やはり涙をこぼしていた。

表面上では無い――――心の中でだ。

 

「誤魔化すな。 君のその顔は……あの時の、仮面を被って泣いていた美羽にそっくりだ」

「――っ!」

 

美羽の名を出した瞬間、袁紹は自身の仮面にひびが入るのを感じた。

 

「『助けて』と、泣きわめいていた美羽にそっくりだ」

「……そう、ですの……」

 

そして更なるこの一言で、仮面はもう意味をなさない事を悟り、それをはぎ取った。

 

「いつ、お気づきになりましたの?」

「たった今だ。 今の今まであれが君の性格だと思っていた……君の仮面は完ぺきだったよ。

今の仮面が剥がれ掛けた君を見なかったら、まったくもって気付かなかっただろうな」

「ふふ、そうですの。 話を聞く限り、美羽さんは貴方が救ってくださったのですね」

 

彼女はそう言って柔らかい笑みを浮かべた。

この柔らかな笑みを浮かべた彼女を皆が見たらどう思うだろうかと、一刀は思案せずにはいられなかった。

おそらく他の者(特に華琳や公孫賛)が見ていたら、明日は嵐が来ると大騒ぎしただろう。

 

「……聞かないのですか? 私が何故仮面をつけるのかを」

 

ふいに袁紹がそう言って、一刀の方を見る。

 

「……それを、君は望んでいるのか?」

「……ふふ、意地悪なお方」

 

しかし、一刀は彼女の目を見て、それを望んでいないことが見て取れた。

 

「……孫江さん」

「なんだ?」

 

不意に、袁紹が一刀の方を真剣な目で見た。

 

「……美羽さんを助けていただいて、ありがとうございます。 彼女のこと、お願いいたしますわ」

「っ……ああ、分かった」

 

そう言って、彼女は一刀に向かって頭を下げた。

 

「もっとお話ししたかったのですけど……私は寝ていることになっていますの。

では……またお逢いしましたらお話しいたしましょう」

「……」

 

それだけ言うと袁紹は、去って行った。

一刀は唯、その背中を見送るしか今は出来なかった。

その翌日軍義で布陣が決まった。

先陣は孫・袁術、左翼は劉、右翼は曹、後軍は馬、中軍は公孫・袁紹と決定した。

軍義が終わると、一刀は一足先に自分の陣に戻り、皆を探していると、丁度江が全員に自己紹介している所だった。

その際、紗那が牙門旗を燃やした事に対して、江に謝っていた。

やはり、武人としては、誇りである自分の旗を燃やされてしまっては、謝らずには居られなかったようだ。

だが、当の江はと言うと――。

 

「? 燃やしたのは、一刀様ではないのか?」

 

と、言ってしまい、その場に居た全員がぽかーんとしてしまった。

その数瞬後に、その場に笑が生まれ、江は何の事か分からず、あたふたしていた。

その事が、江に好印象を与えたようで、真名の交換も自然と進んでいるようであった。

 

「盛り上がってんな」

 

そして、調度話のきりが良い所で、一刀は声をかけた。

軍議に参加しているはずの一刀が其処に居る事に、全員がすこし驚いた表情をしていた。

 

「もう終わったのですか?」

「まあな。 祭、『アレ』の準備をするから、ついて来てくれねえか?」

 

と、一刀の言った『アレ』の一言で、祭の表情が少し驚きの表情に染まる。

 

「『アレ』? もしかして、一刀様が内密に用意した物、ですか?」

「おう。 出来れば使いたくなかったが、これだけ士気が低いと、誰かが上げねえとな?」

 

そう言って、不適に笑う一刀を見て、祭達はしょうがないと苦笑を浮かべる。

 

「嗚呼、その不適な笑みも素晴らしい……」

「あぁ、イヂメテ欲し……は! わ、私は何を!?」

 

一部、恍惚とした表情を浮かべている者も居たが――。

~虎牢関~

 

関の中は、作戦の大成功により沸き立っていた。

 

殆どの者が、連戦であるはずなのに、その疲れを忘れているかの様だった。

 

ゴォォン!!!!

 

「!?」

 

「な、なんやっ!?」

 

「な、何事です!?」

 

だが、その最中、関を轟音と衝撃が襲った。

 

その正体を知るべく、呂布、陳宮、張遼は関の上に出ると、関の壁には大きな罅が入っており、其処に鉄球がめり込んでいた。

 

そして、其れが発射されたであろう場所に視線を持っていくと、

 

「……!」

 

「な、何や"アレ"っ!?」

 

「な、何なのです"アレ"はっ!?」

 

其処に有ったのは三人が、今までに見た事が無い大きさの、"弩"だった。

「わーお、凄え威力。 作った本人だけど、相変わらず驚くぜ」

「ああ、補佐した俺も毎度驚く。 もう後、一発打ち込めば、完全に穴が開くな」

「……。(ぽかーん)」

 

作った本人が驚いているのだから、周りは驚きを通り越して、呆けてしまっていた。

一刀が秘密裏に用意した物は、組み立て式の破城弩(バリスタ)だ。

かなり大きな物で、大天幕ほどの大きさがあるが、組み立て式であるため、持ち運びは思ったより容易。

弓の部分には、撓りの強い合金を使用し、弦には、一寸(3cm)の太さに束ねられた、蜘蛛の糸が使われている。

蜘蛛の糸は1cmの太さに束ねるだけで、ジェット機を釣り上げる事が出来ると言う自然界最強の糸なのだ。

それを覚えていた一刀は、多くの人脈(主に紐パン一丁の筋肉モリモリマッチョマン)にお願いして、

蜘蛛の糸を集めさせ束ねたのだが、それだけで半年も費やしてしまった。

だがその苦労を帳消しにするほど、威力はとんでもなく、出来上がった時の試射実験で、使われていない古城の城壁に撃ち込んだ時、

鉄球一発で城壁が崩壊して驚愕したのは、一刀と凱の記憶に新しい。

打てる弾の種類も豊富で、火炎瓶、槍、鉄球、岩など、何でも御座れだ。

正に、現段階で戦略兵器といっても過言では無かった。

 

「しゃあ! もう一発、撃てぇーっ!!」

 

ズゴンッ!!

 

一刀の命令の後に、大きな音を立てて、バリスタから鉄球が放たれ、

 

ズガァーンッ!!!

ガラガラッ!!

 

轟音と供に、虎牢関の一部が崩壊し大きな穴が開いた。

 

ジャーンッ! ジャーンッ!! ジャーンッ!!!

ギィー!!

 

すると、風穴が開いたのを見て、関に篭る意味無しと見たのか、関の中から呂旗の軍団が姿を現し、

 

――ッ!!!!

 

右の崖から紺碧の張旗の軍団が、曹操の軍目掛けて突っ込んできており、

左翼からは陳と書かれた旗の部隊が、崖の上から劉備軍に向かって矢を射ていた。

 

「さぁて、次は俺達の番か……腕が鳴るぜ。 俺は先に行く、残りは劉備たちを援護してやってくれ!」

 

出てきた呂旗と、張旗を見て、一刀はワクワクしている表情を浮かべた。

そして、自分の軍を率いて、虎牢関の方に行軍して行った。

一刀の行動の速さに、呆けていた他の者達は取り残されてしまい、一刀を追うような格好になったが、

是がとんでもない状態を引き起こす事になるとは、この時の一刀は思わなかった。

呂旗のはためく軍を前に、一刀は何ともいえない高揚感が満たされていた。

 

「スゥー……ガァァァォォォンッ!!!!」

 

一刀は咆哮を、何時もの様に放つ。

普段の戦なら、一刀の覇気と殺気が、敵の恐怖を駆り立てる。

 

「ウガアァァァァッ!!!!!」

 

だが、一刀の虎の如き咆哮に、呂布も咆哮で返してきた。

ここまでは、彼の予想通りだった、そう、"ここまでは"――。

 

「ウオァァァァッ!! 結構スカッちするなぁ、孫江!!」

「っ!? なんで、張遼がこんな所にっ!?(華琳の軍を攻撃に行ったんじゃなかったのか!?)」

 

居るはずの無い張遼と思われる人物までもが其処に居り、雄叫びを返してきた事に、一刀は驚愕していた。

一刀の知っている歴史では、張遼は此処で夏侯惇と戦い曹操に降り、魏の将として活躍するはずなのだ。

 

「ちくしょう……。(俺のせいでまた、歴史が狂っちまったのか?)」

 

またもや歴史に起こりえない事が起こって、一刀は混乱していた。

実は、崖から突撃していたのは、馬に人形を縛りつけ、偽装した偽者の張遼隊だったのだ。

最初の埼角の計で、張遼隊は騎兵と言う情報を強く植えつけた作戦だったのだが、一刀の知る所では無い。

 

「呂布っち! ウチも、江東の白虎と戦いたい! せやから、共闘してええか!?」

「(コク)……行く!」

 

だが、向こうは一刀の混乱など、知った事ではなく、

呂布と張遼は一刀目掛けて突っ込んできて、部下達は一刀を取り囲むように陣取ろうとしていた。

 

「ちっ! おめら! 呂布と張遼は俺が相手をするから、他のを頼む! 周々もあいつ等の所に行け!」

「ガオォ――!」

 

流石に一刀の隊でも、力量近しい部隊が二つもあっては、対処しきれない。

 

「くっ了解だ! 旦那ぁ!!」

 

一刀の命令を受け、周々と一刀の部下達は悔しそうな顔をして、一刀から離れた。

それを見送ると、一刀を部隊から切り離すように、呂布と張遼の部隊が間に入ってきた。

そして一刀は、視線を前に戻す。

其処には、赤い髪に刺青のある少女と、董卓と会った町で見た紫髪の女性だった。

 

「……俺は孫江、字は王虎。 そっちは?」

 

一刀は、覚悟を決めて二人に名を聞いた。

 

「姓は張、名は遼、字は文遠。 会いたかったでぇ、江東の白虎! (どっかで声聞いたな……)」

「……呂布、字は奉先」

 

お互い、それ以外言葉は要らないと、構えをとる。

 

「(この二人に、出し惜しみは出来ねえ。)……本気で行かせて貰うぜ」

 

そう思った一刀は、虎伏の構えとった。

始めてみる構えに呂布と張遼は少し驚くが、一刀の殺気と覇気が、先程より濃く伝わってくるのを感じて、息を呑んだ。

 

「(是が江東の白虎、本気の殺気……。) アカン、ゾクゾクするわぁ」

「……強い」

 

眼前の強者に、二人は武人の血が騒ぐのを感じた。

 

「行くぜぇ!!」

 

一刀は、一足飛びで一気に詰め寄り、呂布と張遼の二人に同時に拳撃を繰り出す。

 

ガギィン!!

 

「くっ! 重いなぁ!!」

 

「くっ!」

 

「ちっ!(張遼は吹っ飛ぶ予定だったんだが、体重運びが上手い!)」

 

容赦の無い一刀の拳撃を、二人は得物の柄で受け止める。

正直、張遼は吹き飛ぶと思っていた一刀は、思わず舌打ちをする。

呂布は問題なく、普通に受け止め、張遼は体重移動で上手く威力を逃がし、一刀は張遼に攻撃をいなされ体勢を崩した。

その隙を逃すはずも無く、呂布はがら空きな背中目掛けて戟を振り下ろす。

 

「ちぃっ!(美蓮以上の威力と速さかよ……。)」

 

ガギィンッ!!

 

切っ先が霞んでしまうような速さで、繰り出されるその攻撃を、一刀は体を捻り、張遼を攻撃した右腕で防ぐ。

 

「もろうたぁ!!」

 

その際、脇腹ががら空きになり思いもよらない速度で、一刀に攻撃が繰り出された。

 

「っ!?(速さは、呂布並だと!?) ぐぅっ!?」

 

バギィッ!!

 

思いもよらない張遼の攻撃の早さに、一刀は脇腹に一撃を受けて吹き飛んだ。

 

幸い、脇腹に氣を集めて硬化させたため、切れては無いが、右の肋骨の何本かの骨に罅が入ってしまった。

 

「(こいつ等、強え。 それに、今のでアバラの何本かに罅が入ってるな。)……つええな、おめえら」

 

「あんたもな。 (あかん、さっきので手が痺れてもうた。 もう一撃は受けれんで……。)」

 

「おまえも、強い。(手、こんなに痺れたの初めて……。)」

 

だが、対する二人も無事と言うわけではなかった。

張遼は腕が痙攣してないのが不思議なくらい痺れており、次に一刀の攻撃を喰らえば武器が吹き飛ぶのは必至だった。

呂布は、初めて両手で戟を握り込まないとならない程の一撃で、驚いており後数発受ければ、戟が吹き飛ぶかもしれないと思った。

三人は、お互いの内心を漏らす事無く、構えを取る。

 

「はっ!!」

 

今度も一刀から二人に向かって地を駆け、仕掛ける。

先ほどと同じ攻撃の軌道と思っていたが、突然目の前で左に回り、回し蹴りを呂布に放った。

 

ガギンッ!!

 

「! くぅっ!!」

「うおっ!?」

 

呂布と張遼は横並びに立っていたので、その蹴りで張遼を巻き込んで二人とも吹き飛ばした。

腕よりも、脚の方が爆発的な力を出しやすく、この結果は簡単に予測が付くものだった。

 

「それぇっ!!」

 

体勢を崩した二人を追いかけ、更に地面すれすれから、上段蹴りを放つ。

 

「!? 霞! くぅっ!」

 

「分かっとる! くぅっ!」

 

呂布は、二発の蹴りは流石の呂布でも耐え切れないと思い、張遼に一声かける。

張遼も呂布の声を聞き届け、呂布の体を抱きこむように腕を回して、偃月刀の柄で、呂布と一緒に蹴撃受けとめた。

だが其れによって、二人は上空に吹き飛ばされ、隙が出来る。

その隙を逃すまいと、一刀は虎哮戰を二人に向かって打ち込もうとする

 

「虎っ! 哮っ!……!?」

 

だが、後ろから殺気を感じ、それを中断する。

首だけ振り向くと、眼前に矢が迫っていた。

急いで氣の壁を作り出そうと右手を出そうとするが、

 

「ぐっ!!!」

 

脇腹に激痛が走り、体が一瞬硬直してしまう。

その一瞬のせいで、氣の壁を張るのが遅れてしまい、一刀の眼前に矢が迫った。

首を捻っても、目に当たってしまうが、覚悟を決めた。

 

「ハァーッ!!!!」

 

だが、その時、目の前の矢が突然消えふせ、代わりに黒い大剣が其処にあった。

「か、夏侯、惇?」

「借りは、返したぞ、孫江!」

 

其処には、黒き大剣『七星牙狼』を担ぎ、笑みを浮かべた夏侯惇が居た。

 

「助かったぜ。 にしても、此処に来たのは華琳の命令か?」

 

夏侯惇にそう話しかけながら、一刀は呂布と張遼の方を向いた。

丁度二人は、地面に着地している所だった。

 

「当たり前だ。 それと、私のあの時の、個人的な借りも返していないから来ただけだ」

 

個人的な借りとは、夏侯惇と許緒が誤って領地に入り、一刀と供に賊を倒した時、

夏侯惇が飛来する矢に気付かず、あわや片目を喪失する所を、一刀に助けてもらったのだ。

 

「そうかい。 じゃあ、貸し借り無しって事で、張遼の相手してくれねえか? 二人は、きつい」

「構わん、私は張遼が目当てだ!!」

 

会話が終わると、二人は其々の獲物に向かって走り出した。

 

 

SIDE夏侯惇・張遼

 

「はぁーっ!!」

 

夏侯惇は張遼に向かって一瞬で、間合いを詰め、大剣を振り下ろす。

 

「くっ!」

 

ガギィン!

カランカラン!

 

一刀の重たい一撃を受けた直後だった為、直ぐにその手から偃月刀が離れた。

 

「嫌にあっけないな?」

「しゃあないやんか、孫江のあの一撃くろうて、腕痺れてもうてたんやもん」

 

そういう張遼の両腕を見ると、確かに痙攣していた。

 

「張遼、下るのなら、お前の部下は助けよう。 如何する?」

 

後ろを見ると、青紫の曹操軍の兵が張遼の部隊を、一刀の部隊が呂布の部隊を其々追い詰め居ていた。

 

「……はぁ、しゃあない。 分かった、あんた等に下る。 せやけど、ウチは閨に入るつもりは無いって言う取ってな」

 

「良し! それなら尚歓迎するぞ!! 孫江に借りも返せたし、

張遼も捕まえて手柄を立てたし、これだけ有れば華琳様に可愛がってもらえる!!」

 

張遼がそう言うと、夏侯惇は満面の笑みを浮かべてそう言った。

 

「惇ちゃん、あんた乙女やんなぁ。 むふふ♪」

 

それを見て、張遼が、面白そうにからかう。

 

「ちゃ、ちゃかすなぁ!! そ、其れより、孫江を観察しろ! 何れ戦うかもしれんだろ!!」

「へいへい、むふふ♪」

 

顔を紅くして怒る夏侯惇と供に、張遼は呂布と一刀たちが対峙する方に目を向ける。

だが、そこで二人は、とんでもない物を目の当たりにするのだった。

SIDE一刀・呂布

 

 

「さて、一対一だ。 正々堂々とやろうぜ。」

「……。(コク)」

 

一刀は、呂布の戦い方を観察して、後の先を取るタイプと見た。

 

「(なら俺のやる事は一つ。) 先の先のその先を取る」

 

アバラに罅が入っているので、チャンスは一度きり。

 

「はぁっ!」

 

一刀は一瞬で間合いを詰め、右腕に大量の氣を集中させる。

 

「!? (なに、これ!?)」

 

途端、途轍もない寒気に襲われた呂布は、

その場から後ろに引こうとするが、何故か体の動くがいつもより遅く、絶対に間に合わない。

 

「っ!?」

 

次の瞬間、肺の中の空気が、無理やり押し出され、途轍もない衝撃が呂布を襲い、体が吹き飛ぶ。

 

バァンッ!!

 

そして、一瞬遅れて呂布を弾き飛ばした攻撃の音が耳に届いた。

 

ドサッ!

 

「ぐぅっ!」

 

吹き飛ばされてやっと、さっきの攻撃で地面に横たわっているのだと分かった。

途端に襲ってくる吐き気を我慢して、消えそうな意識をギリギリ保ち、戟を杖にして立ち上がる。

 

「俺の勝ちだな、呂布」

 

トン。

 

「あ……」

 

しかし、脇腹を押さえた一刀の手刀が入り、呂布の意識は闇の中に沈んでいった。

 

「ふう。 呂奉先、孫王虎が生け捕った!!」

 

そう言って、一刀は呂布を左脇に抱え、陣に戻るのであった。

あとがき

 

はい、最後まで見ていただいてありがとうございますっす

今回中間あたりにあった袁紹ですが、当初こういう描写があったんですが、書かずにうpしていたために、

自サイトの方では結構大変でした。

ここからは、前回の感想をお返しいたしますっす。

 

≫クォーツさん 執筆お疲れ様。あれ?一刀のドS度が上がっている?変態とか付いてるし・・・怖。 次作期待

うん、実は当初のセリフはこれだったんだ。

でも、もうちょっとソフトにした方がいいんじゃないのって理性が叫んで、自サイトのはまだ優しいんだ。

でもね、もう、「自重できぬぅ!」 って感じだったので、戻しましたww

 

≫根黒宅さん あれ? 一刀の方が兄さんじゃなかったの?

すいません、ごめんなさい完全に私の犯したあほな所業のせいです。

直前まで魏の龍書いていたせいか、妹と表記してしまいました^^;

 

≫ロンギヌスさん うん、華雄輝いてるな!! しかし、江東は長江ですよ。中国では黄河を河、長江を江と表すそうで

江ちゃんはこの路線でいかせていただこうかと思いますっすwwww

なぜなら、呉に居ないキャラクターで、恐らく輝くからwww

へぇ~へぇ~

まじか……っていうわけで書き直しました。

無知な私めに、知識をくださり本当にありがとうございますっす。

タンデムは、また一つ賢くなりました!

 

≫ユウさん 華雄覚醒か?www

違う意味でねw

これから、彼女の輝かしい時代が来ることでしょうwww


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
74
9

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択