No.193471

恋姫異聞録98 -画龍編-

絶影さん

皆様明けましておめでとうございます
今年も異聞録共々よろしくお願い致しますm(_ _)m

新年初投稿です。皆様はどの様な御正月をお過ごしですか?

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2011-01-02 17:55:40 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:10881   閲覧ユーザー数:7634

呉を抜け、魏の地に入り男と義弟は新城に入る。呉で諸葛亮の心に大きな恐怖を刻み込んだ男は

舞以外で得意とする隠密行動にて兵の眼を盗み、呉から脱出。先に行けと促した義弟に追いつくため

爪黄飛電を走らせれば義弟は男が戻るまで別れた場所に留まり続けていたようで

一馬は義兄の無事な姿を見ると、駆け寄り兄の手を握り締め大きな安堵の溜息を漏らしていた

 

その後二人は魏の地で待つ、付き添いとして来ていた兵たちと合流し無事に帰還する

男は帰還するなり新城の城門をくぐるとその場に弟と兵を置き去りに、王の待つ城へと馬を走らせた

 

城内に入り、爪黄飛電から飛び降りると玉座の間へと足早に入り玉座に座る王の前に跪く

 

「只今帰還いたしました王よ」

 

何時もとは違う雰囲気の男に側に居た桂花は怪訝な顔をするが

早馬から呉との同盟が失敗した話を聞いていた華琳は眼を伏せ、軽く顎を引く

 

「この度の失態は全て私の読みの甘さにあります。私めに処罰を」

 

男は腰の剣を四つ鞘ごと腰帯から抜き取り、静かに床に置くと手を地に着き頭を下げる

玉座の間には桂花と華琳しか居らず。桂花は華琳から呉との同盟が失敗したことを聞いては

居なかったのだろう。驚き、男を叱責する声をあげようとするが地に頭を着ける男の姿を見て

胸を其の小さな手で握りしめると顔を苦々しく逸らしてしまう

 

普段ならば叱責し、一方的に言葉をぶつけ、自分は鼻で笑い、男は父のように柔らかい顔をするだけで終わるだろうが

今は違う。自から全て積み上げ、無償で物資を送ったこともある相手に裏切られたばかりか

王華琳をぬか喜びさせてしまったのだ。戦を回避できると、ようやく平穏を手に入れられると

 

大きな期待させ、其の期待を裏切った。桂花には声をかけることも、庇い助命することも出来ない

 

隣で男の姿に眼をそらす桂花を他所に、華琳は玉座から静かに立ち上がるとゆっくりと玉座に続く階段を降りる

 

一つ一つ階段を降りる足音に桂花の顔は一層苦いモノに変わるが、男は頭を下げたまま動くことはない

 

華琳の足が男が額を着ける地と同じ地に立つと、男は華琳が首を刎ねやすいよう額を地から離し

少しだけ首を上げ、華琳は男の目の前に置かれた宝剣を一振り拾い上げる

 

「お待ちください華琳様っ!兄者には何も責はございません、私が周瑜殿にっ」

 

兄の後を追い、玉座の間に飛び込み兄の隣に膝まずき、兄の失態を弁解をしうとよすると

華琳は柔らかく笑い、拾い上げた宝剣を一馬の手に渡し、何時もの兄がやる撫で方と違い優しく頭を撫で

そのまま玉座の間から出ていってしまう

 

男は頭を伏せたまま、肩が震え、歯の根をギシリと音を立てると固めた拳で強く地面を叩く

 

響く音に一馬と桂花はビクリと肩を震わせ、兄の激痛に耐えるような歪む顔を見た一馬は声を掛けようとするが

男は急に立ち上がり、剣をその場に置いたまま華琳の後を追いかけるように玉座の間から出ていってしまった

 

 

 

 

 

「では、全てにおいて呉と蜀は対等であると言う事で問題は無いな?」

 

竹簡を広げ、玉座の間で将を集め同盟の話を進める周瑜は確認するように諸葛亮に言葉を向ける

その場には周泰、呂蒙、甘寧、孫権、黄蓋と錚々たる呉の将が集い

中には玉座の間にも、市内にも居なかった陸遜が参加をしていた

 

「これで魏に対抗する力を一時的ではありますが得た、ということになりますね~

倉庫に閉じ込められたかいが有るというものですよ~」

 

のんびりと脱力したような声で話す陸遜は、少し拗ねたように周瑜に一日中倉庫に閉じ込められていた事を

訴えるが、周瑜はサラリと受け流していた

 

「仕方あるまい、あの慧眼はどの様なものか不明であった訳だし

だがお陰でお前だけは舞王の眼を逃れた。次の戦では働いてもらうぞ」

 

確実に舞王の眼を逃れさせるために、唯一の完成された後釜、自分の一番弟子を倉庫に閉じ込めた周瑜は「ええ~」と

戦働きを嫌そうにする陸遜に少しキツイ目線を向けると、不満そうにしてしょんぼりと眼を伏せてしまった

そんな遣り取りに王孫策を始めとする将達は笑うが、一人だけ笑い声を出さず俯く物

 

諸葛亮だ

 

この数日、舞王がこの呉の地を去ってからというもの、彼女は一睡たりともしておらず

終始小さな物音に体を震わせていた

 

舞王がこの地を発った其の日に再度この地に入り、しかも諸葛亮を殺さず更なる恐怖を与え

去っていった事を聞いた孫策達は驚愕していた。兵を欺きこの地に入ったどころか

良いように城の中を歩き、護衛のつく客人の目の前に現れたのだ

 

考えようによっては、力無くとも将の部屋に入り込み、人知れず誰の首でもとれたと言う事

殺さずに行ったのは【何時でもお前らを殺せる】と言っているようなものだ

 

だが気丈にも同盟の決まりごとを作る際には顔を強いものに変え

恐怖に耐え周瑜から出し抜かれぬよう頭を回転させていた

 

本来ならば決まりごとなど戦が終わってからでも十分することは出来るのだが、周瑜自身が何時倒れる身か

しれぬと思っていることと、諸葛亮の自分の心を立て直す為に時間が欲しいという気持ちが合致した為である

 

だが頭を使っている時だけは舞王の恐怖から逃げ出すことの出来る彼女は、喰いつくように話し合いに

参加し、集合も一人誰も揃わぬうちから待っているほどであった

 

「そろそろ戦の話をしようと思うのだが」

 

諸葛亮の様子を伺いながら【戦】という言葉をだすとビクリと体を震わせ、次第に体は折れるように丸くなる

自身を抱きしめるように腕を組み、ガタガタと震え出す諸葛亮

 

今までは戦とは関係のない話。だが戦は魏との戦いを想像させ、その中央には魏王曹操が立ち、傍らには舞王

彼女の脳裏にフラッシュバックする。耳元で甘く囁かれた死の言葉、闇を見れば居るはずのない男の姿

頬を掠める男の弄ぶ小刀、そして優しく握られた首筋

 

ハァハァと短く呼吸を繰り返し、睡眠を満足に取れず目の下の隈は痣のように濃く

脂汗を垂れ流す姿は死の淵に立つ周瑜よりも死を連想させる

 

周瑜はそんな諸葛亮の姿を見て舞王を思い、唇を噛み締める。蜀が自信を持って送り込むほどの軍師が

これでは死んだも同然だと、やはり祭殿が止めようともあの場で捕らえ、いや殺しておくべきだったと

 

「朱里ちゃんっ!」

 

崩れ落ちそうになる諸葛亮の姿を玉座の扉から覗いていた少女は声を上げて駆け寄る

 

諸葛亮と同じ背の高さ、頭には魔法使いのようなとんがり帽子、長い紫の髪を両脇で縛る

可愛らしい少女の名は鳳統、呉との同盟を進める中、魏との戦、そして周瑜と同じく舞王に

自身が使い物にならなくされた時の事を考え、時間差で呉に来るように仕向けた蜀のもう一人の有能な軍師

 

膝を地に着き、顔を青くして苦痛の表情を浮かべる諸葛亮を支えるべく鳳統は彼女に触れようとするが

その手は黄蓋に止められてしまう

 

「あっ!」

 

「待て、今手を貸しては駄目じゃ」

 

腕を握られ、諸葛亮に届くこと無く止められた鳳統は黄蓋に「放してください」と訴えるが

黄蓋は首を振り、強い瞳で崩れる諸葛亮を見つめる。周りの呉の将もその行為に怪訝な顔をするが

孫策だけは同じように崩れる諸葛亮を見ていた

 

「朱里は舞王の恐怖と戦っておる。今手を貸せば、朱里は一人で立つことは出来なくなるじゃろう」

 

「それなら私がずっと側に」

 

「戦で其れが出来るか?己が絶対に死なぬと保証できるか?出来まい

何時の時でも人が何かを乗り越え立つには己一人の力よ。友ならば恐怖に打ち勝つ事を信じよ

立ち上がったとき共に歩くために手を差し伸べよ」

 

黄蓋の強い言葉に鳳統は苦しむ諸葛亮の姿を見て帽子のつばをきつく握り締め、差し伸べたい

友を苦しみから救いたいと伸ばしてしまいそうになる手を押しとどめた

 

怖い・・・怖いよ・・・暗闇にあの人の目が、あの人の姿が見える

瞼を閉じればその暗闇にすらあの人が居るように感じる

 

眼を閉じることすら恐怖になっている諸葛亮はまばたきさえもすることは苦痛になっていた

乾く眼は赤くなり、其の乾きを癒すように涙が止めどなく溢れる

 

これほどの恐怖を植え付ける舞王の所業に呉の将は恐怖する

人にこのようなことが出来るのかと、やはり天を冠する者は人ではないのかと

 

だが孫策は、黄蓋は、苦しむ諸葛亮の姿をただ強い瞳で見守るだけ

二人は知っているからだ、民の雷のような怒りをそのままぶつけられていることを

ただ周瑜だけは、男のあの姿を見ても理解は出来ない。これもまた彼女の枠の外だからだ

 

首を風が触るたびにあの人の温かい手が触れている気がする

ああ・・・このまま其の優しく温かい手で喉を握り潰されればどれだけ楽だろう

 

諸葛亮は震え、焦点の合わぬ眼で地面を見つめ無意識だろう、ゆっくり己の小さな両手を自分の首に当て

ゆっくりと締めていく。まるで目の前にある甘い死に誘われるように

 

その姿にもう限界だと、鳳統と呉の将は己の首を締め付ける諸葛亮の手を止めようと動くが

 

「う・・・うあああああああっ!」

 

瞬間、諸葛亮の叫び声が部屋に響き、其の首から引き剥がすように頭を振り自分の手を取り去る

そして手を固く握り締め、握った手を噛み締める。もう自分の首を締めさせることはさせないとばかりに

 

負けない、負けないっ!私は現実を、桃香様の代わりに泥を被ると決めたんだっ!

この身がどれほど汚されようとも、大勢の怒りに焼かれようと私は此処で朽ち果てる訳にはいかないっ

解っていたことじゃないか、自分がしていることは戦を広げることだって

 

でも、私が追う理想は、私が殉じる理想は我が王劉備玄徳の理想

可能性が有るなら、いや、可能性なんかじゃない、絶対に成功する策が好機が目の前にあるならば

私は躊躇ったりしない

 

噛み締める拳からは血が流れ、其の唇を紅く染め

 

少女は立ち上がる

 

膝は、足は、体は既に震えが止まり。隈で窪んだ瞳の奥から黄金色の強い光を放つ

 

血化粧で染まった唇を笑に、体を持ち上げ胸を張る

 

「舞王よ、御主の慧眼は今の朱里をどう見る?儂の目に映るは伏した龍が天を翔る姿よ」

 

大きく嬉しそうに笑う黄蓋、その隣で同じように眼に強い光を宿す諸葛亮の友、鳳統

 

黄蓋は思う、この者は確か噂に名高い司馬徽に鳳雛と称された者だったか

龍に触発され、雛鳥も太空を羽ばたいたようじゃと

 

手を離され、鳳統はゆっくり友、諸葛亮に近づくとしっかりとその手を握る

泥を被るの時は私も一緒だよと

 

「では、戦についてお話をいたしましょう」

 

伏龍と鳳雛、いや龍と鳳凰はしっかりと顔を上げて周瑜に向き直る

周瑜は呉にはない二人の強さに少しだけ羨むと、顔を笑に変え強く頷いた

 

 

 

 

 

 

「華琳っ!」

 

玉座の間から出て、自室に入ってしまう華琳の後を追い、部屋に入ると

部屋の中央で背を向けて静かに立つ華琳

 

男は静かに戸を閉め、華琳の後ろ姿に唇を噛み締める

握る拳で巻かれた包帯がきゅっと音を立てた

 

「俺は、俺はっ」

 

何と詫びれば良いのか、華琳の後ろ姿に男は言葉が出てこない

背を向ける華琳の顔は、悲しみに染まっているのか、それとも怒りに染まっているのか

 

もし怒りに染まっているなら、何故自分の首を刎ね無かったのか

自分には刎ねる価値さえ無くなってしまったのか

 

もし悲しみに染まっているなら、二人だけしか居ない部屋で何時もの通りに何故自分に

悲しみをぶつけて来ないのか、そんな存在ですら無くなってしまったのか

 

自分の失態に男は華琳の後ろ姿さえ見ることは出来ず、視線を下に向けると

部屋の中央で動かなかった華琳はくるりと顔を伏せ、下を見る男に近づいていく

 

下を向く男の視線に華琳の足が入り、次の瞬間、腕を後ろに回して組み男の顔を覗き込む華琳

表情は少しだけ笑って、何をそんなに悲しい顔をしているの?と首を軽く傾げて

 

「華琳・・・」

 

顔を上げる男の手を、人差し指と中指の二本を握る華琳

そして軽く眼を瞑って柔らかい笑で

 

「禍福は君に在り、天の時に在らず」

 

そう一言、そして父に甘えるように男の腰に手を回して顔を埋める

 

天の知に頼り、事を運んで巧くいかなかったのであれば其れは私の責任。いくら貴方が一人で進めたこととはいえ

其れに気がつかなかった、不備に気がつかなかった自分の責任だと華琳は言ったのだ

 

天運を引き寄せられなかった自分に責が有るのならば、何故貴方を責めることが出来ようかと

 

華琳は謝っているのだ、すまないと。いつの間にか男に甘えすぎてしまっていたと

 

その姿に、その言葉に男は歯を噛み締める。何故諸葛亮の動きに気がつかなかったのか

歴史など変えてやれるほどの知識を己は持っていたのではないかと

 

此のままでは終わらせはしないと心で叫ぶ

決して貴様らを許しはしないと

 

「華琳、聞いてくれ。これから呉蜀と戦になる」

 

「ええ、そうなるわね・・・昭?」

 

回した腕を離し、見上げる華琳は男の異変に気がつく

劉備が領土を通過する際に見せた濁りきった瞳。

その時よりも酷く、まるで汚泥の底で腐りきった死体の色のような瞳

 

「進言する。奴らは呉に有利な船戦をするため赤壁へと俺達を導くだろう。俺達はそれに乗り

赤壁近くまで兵を移動。その後、小さな競り合い、にらみ合いだけで半年兵を動かさない」

 

「半年?兵を動かさずに?」

 

男の口角は引き裂いたように別離し笑を作り、濁りきった瞳をする獣は酷く楽しそうに狂気の笑いを上げる

 

「周瑜は病にかかっている。奴らの思う通りにはしない、戦などしてやら無い。一人病に苦しみもがき

夢の残骸を見ながら朽る様を笑ってやるのさ」

 

「あの周瑜が病に、半年も持たない状況なの?」

 

頷く男は更に話を、言葉を紡ぐ

 

「友の願いを叶えるために、己は美しく戦で死のうと、全てのお膳立てをして朽ちようと思っているらしい

お笑いだ、そんな思惑に乗ってやる必要はない。その為に多くの兵が死ぬことを考えぬならば醜くクタバレば良い」

 

「・・・周瑜一人にそこまですると言うことは、呉に優秀な人材は居ないのか、育っては居ないということね」

 

華琳は何時もと様子の違う男に、男の気を鎮めるように手を伸ばし頬を撫でる

しかし前回のように男の瞳は濁りからは完全に回復することはない

 

「ここまで来てはダメね私では、秋蘭か涼風でないと」

 

「大丈夫だ、有難う」

 

「ごめんなさい何時も私の為に【龍佐の眼】を、やはり負担が大き過ぎる」

 

「謝るな、曹騰様には感謝している家族を守れるのだから」

 

少し悲しい表情をすると、小さいため息、そしてまた柔らかく笑う

 

「それで呉は良いとして、蜀はどうするの?」

 

「諸葛亮に恐怖という毒牙を食い込ませた。奴は使い物にならんだろうよ」

 

諸葛亮と言えば蜀が南蛮を制した時に耳に入った軍師の名。男は以前に諸葛亮は油断ならぬ軍師だと

言っていたため、華琳には覚えがあった

 

「何をしたかなんとなくは想像がつくけれど、その恐怖から立ち上がるということは?」

 

「彼女は伏龍だ、立ち上がるだろう・・・・・・一時的にな」

 

男は声を上げて笑う、先程よりは狂気じみては居ないが、それでも恐ろしい笑で

 

「黄蓋殿ならば彼女が立ち上がると解るだろう、しかし彼女は武官だ。己の経験則でしか物事を測らん

軍師で、しかも前線で敵と対峙することのない位置に居るものがそれほど心が強いと思うか?」

 

華琳は思う、彼は呉と同盟が組めないと解った瞬間、頭を切り替えたのだと

呉と蜀は不倶戴天の敵であると。恐らくは呉を出るその時まで彼は様々な仕込みをしてきたのだろうと

魏を勝利に導くために

 

「立ち上がり眼に強い光を放つほどの気概を見せるだろうが、其れは俺から言わせれば勢いだけだ

奴の心では戦の中心に常に俺を思い描くだろう。まるで恋焦がれる少女のように俺の姿が頭から離れはしない」

 

恐怖を恋と皮肉のように言う男、華琳の手で霧散したはずの濁りは先程よりも濃く男の瞳を濁らせる

 

「俺と言う存在を心から消すには俺を殺すか、完全に優位に立ち心の余裕をもたせるか

俺と話をした黄忠殿のようなかかわりが必要だ。其れが無いのなら恐怖を払拭することなど出来はしない」

 

濁る瞳を悲しそうに見る華琳は、また男の指を握る。自分は支えられるばかりでこの人に何もしてあげられないのかと

 

ならばこの人の為にも自分の理想を早く叶えねばと男の言葉から華琳は戦を想像する

 

導きだされるのは、男が前線で牙門旗を掲げ指揮する姿。その姿に眼を離せない諸葛亮

だが実際に指揮をするのは男では無い、遠く後方で自分の隣に立つ軍師

 

「そういう事か、ならば既に諸葛亮は昭の手の中ということね」

 

「想像がついたようだな、奴は俺の癖や性格を調べ上げるだろう、もちろん詠のもだ。そこから導きだされる答え

で兵を操る。だが実際はどうだ?全く違う軍師が俺の兵を動かしているとなれば」

 

「初撃で異変に気がつく、二撃目で趣向が変わったのかと修正、三撃目で相手が違うと理解した時にはもう遅い

稟ならば初撃で思考が遅れた時点で此方の勝ちは決まる」

 

頷く男、華琳に見えるのは戦場で男の姿を追い求め、兵を送り、無残にも殺される兵たち

その光景を見つめ、心は更に男の姿を鮮明に映し出す。毒は消えずにその身をじわじわと侵していくだろう

 

呉蜀同盟との戦の後、食いつぶされた呉を取り戻そうと、そして自分たちを守ろうとするが

翻弄され、毒のように死した兵たちが、男の姿が諸葛亮の心を蝕んでいく様が思い浮かぶ

 

男が殺さず生かして恐怖だけを植え込んだのは先を見越してのこと

同盟を組む二つの国を一時的に打ち破るだけで止まってはいないのだ

 

先に刈り取るは命の灯火が吹けば消えそうな周瑜の居る呉。その後、植えつけた恐怖を利用し

諸葛亮を使って蜀を滅ぼそうと思っているのだ

 

「わざわざ生かしてやったのだ、役に立ってもらわねば困る。蜀は決して軍師から諸葛亮を外さぬだろう

ならば理想に殉ずる気高き魂が擦り切れるまで利用してやる」

 

華琳の目に映る凍るような微笑を称える男の姿は、今までに見たことのない程酷く冷たく

秋蘭の纏う独特の殺気よりも心を凍りつかせるようなものであった

 

だが華琳は怯むこと無く、男から感じる冷たい空気を平然と受け止め、ただ男の顔を見上げていた

 

 

 

 

 

呉の玉座の間では驚き声を無くす将の面々

その中で、諸葛亮と鳳統は顔を見合わせ力強く笑う

 

「そ、そんな事が可能なのか?」

 

「ええ、曹操さんはとても慎重で、先人の知恵を其の身に収め、同じ過ちはしないよう心がけていますが

其の心のなかには完璧さ故の傲慢さが見て取れます。ならば此方は其れを利用して戦を進めることが重要」

 

驚愕する周瑜に鳳統は額に人差し指を当てて、胸を軽く握ると其の小さな額から知識を指先で導き出すように

しながら魏を打ち倒す策を語る

 

あまりにも信じることの出来ない策に、呉の将達は驚きを隠せず。この小さな軍師もあの舞王と同じで

人では無いのではないか?と勘ぐってしまう

 

「冥琳さんも火計の事は思いついていたはずです。この時期の風の動きは必ず此方に有利なように吹きます」

 

「あ、ああ。其れもそうだが、もう一つの策については一体どうやって仕込みをしてきた」

 

周瑜の疑問に諸葛亮は人差し指で口元を抑える。これ以上話しては、誰に聞かれ誰に確認されるか解らないと

言っているからだ。ましてやつい数日前、帰ったはずの男の侵入をやすやすと許したばかりなのだから

 

この必殺の策を話すのは一度だけ、呉の人間の揃うこの場所のみ

そして詳しく話すこと無く竹簡には一切記さず、頭に覚えさせ実行する

 

呉の面々は頷くが、周瑜は更に確認する。この戦が終わったときの事を

 

「戦が終われば呉と蜀は対等なのだな?」

 

「ええ、冥琳さんが考えていことは解っています。本来は魏の出方次第で天下を三つに、天下三分の計としたのですが

此処は魏を討ち、天下を呉と蜀で二分する天下二分の計としちゃいましょう

 

周瑜は言質は取ったと安堵し、頷く。だが天下二分の計と口にした友、諸葛亮に鳳統は少し驚いていた

何時もの彼女ならば、桃香様の理想の通り、全ての人々が平等にとこの状態でも天下を三つにと考えるはずだと

しかし、友諸葛亮の目の光を見て魏は蜀にとって良くない物、最後まで抵抗を続ける国なのだろうと思い込んでしまう

 

知らず知らずに舞王を拒絶しようとする心がそうさせているとは気がつかずに

 

「そうか、曹孟徳という人物が傲慢だというならば火計を成功させるために儂も一つ策を立てよう」

 

「祭殿?」

 

二人の軍師の打ち出した策に将達が驚く中、黄蓋は自分でも火計を成功させる為の策をと言う

周瑜はどの様な策でしょうかと聞くが、黄蓋は笑うだけで何も話さない

 

「祭殿、不用意な策では敵に気がつかれることもある」

 

「まぁ焦るな。三十四計、敗戦計とでも言っておこう」

 

黄蓋の言葉に周瑜はピクリと眉を動かす。だがそれだけで納得したのか、全てを察したのか口を閉じてしまい

それ以上追求することはなかった。諸葛亮と鳳統も敗戦計と聞き、そのなかのいくつかの計を考えるが

どれを使うのか、そしてどの様に実行するかは想像がつかなかったが、周瑜の表情に何かを見たのか

彼女たちも特に追求するようなことはしなかった

 

「其れよりも皆に儂の知る限りの舞王の【龍佐の眼】と【戦神】を教えよう」

 

「ほ、本当でしゅかっ!?」

 

舞王の弱点を知れると思ってか、焦り言葉を噛んでしまう諸葛亮、そんな友の姿に驚き心配をする鳳統

呉の面々は舞王の恐怖に晒され死人のようになっていた彼女が元気を取り戻した姿に皆安心をしていた

これならば魏との戦にも勝てると

 

「では【龍佐の眼】についてじゃが、舞王はあの眼を詳しくは知っておらんようじゃ。儂の心を読み取れん事を

不思議に思っておるようじゃった。恐らくは授けた曹騰殿から教えてもらってはおらんのじゃろう」

 

黄蓋が言うには心が読み取れず、首をかしげ理由が解っていなかったこと。自分と同じことは軍師である

物ならば容易く出来るだろうということ。実際、諸葛亮、鳳統、周瑜、陸遜、呂蒙などは出来ると頷いていた

それだけでも十分強みになる。戦場で考えが読まれるなど、手の内を晒しながら戦をするようなものだからだ

 

「あの眼は戦に使うモノではないと銅心さんも言ってました。詳しく知っているようでしたが

【俺は食客、知りたくば自分で調べよ】と、教えてはくれませんでした」

 

「はっはっはっ!いかにも涼州の英雄らしい。曹騰殿もそうだったのじゃろう。どの様なものかは己で調べ

己で考え、モノにしろと。だからこそ舞王は【龍佐の眼】を戦で使う等と言う選択肢を思いついたのじゃろう」

 

ただ教えてもらい、其れを使うだけではそこで止まってしまう。だからこそあえて何も教えず

授けるだけで、何に使え何に使えないのか、全てを手探りで己の知恵を絞って手に入れろと

其れこそが、自分だけの自分にしか無い【力】の手に入れ方だと

 

そうして手に入れたものだからこそ力の重みを知ることが出来るのだと

 

「舞王は力の重みを知っているようじゃ。本来大きな力とは天命を成すため理不尽に得

重荷を背負い、意味を痛感しながら使っていく。王である堅殿や策殿ようにな」

 

「つまり夏侯昭さんに驕りは無い、彼の眼を知ったからと言って油断するなと?」

 

諸葛亮の言葉に頷く黄蓋。孫権は黄蓋の言葉に姉を見て舞王を思い出す

自分の前に立ったあの男も自分の姉のように手に入れた力の意味を理解しながら

悲しみを乗り越えた者だったのだと。そんな人物の前に立ち、未熟である自分が無力であるのは当たり前だ

ならば己を更に高め、王の妹であっても力の意味を知ることは出来ると心に静かに誓う

自分が未完の大器ならば、この器を王の為に、姉のために完成させてみせると

 

心の決意を感じ取ったのか、目線のあった孫策は妹に嬉しそうに笑で返すのだった

 

「次に【戦神】じゃが、どの様なものでも良い、皆は舞を見たことはあるか?」

 

黄蓋の問に皆は何でも良いのならと顔を見合わせ手を挙げる。孫策にいたっては何時もお酒の肴に

冥琳の眼を盗んで市で見ているわと口を滑らせ睨まれていた

 

「そうか、ならば皆舞で心が高揚したことは一度くらいあるじゃろう?戦神は特殊な状況下で舞うことで

爆発的に心を高揚させる鼓舞と言った所か」

 

戦神、己の腕を傷つけ紅く染まり舞う剣は兵の心を沸き立たせる。舞い散る血飛沫は兵の心に火をつける

生の躍動、矛盾は人の生き方そのもの。何時か死にゆく運命であろうとも、一瞬に己の全てを掛け生きる

昭王の舞は生を人に強く訴えかける。理想と現実、矛盾の狭間で苦しむ姿は人間そのもの

 

兵は並び立つ剣に、宙を舞う剣に自らを重ねるだろう。守る対象である王は自分達、剣の刃が零れ折れようとも

剣が時に王を傷つけようとも王は我ら剣と共に生を勝ち取ろうとする姿を

 

最後に放つ言葉は王自身と兵、剣との約束。我らは共にあると

 

「熱を持つ舞を知っているか?皆は一定の音楽で舞い続け、仕舞いには陶酔しまるで大量の酒を浴びたように

高揚する。一言で言うならば【狂】、修羅達の王が率いるは生に狂い戦い続ける兵たちよ」

 

黄蓋が言うには変性意識状態、つまりはトランス状態を引き起こす舞だと言うことだ

 

彼女たちも見たことがあるだろう、宗教家などとの戦で香やその身を削るほどの荒行によって

普通の状態とは違う、一体感や全能感、至福感をもって戦う厄介な者たち

 

一番わかり易いのが黄巾党の者たち。熱狂的な信者たちが己の命を省みず張角達を守っていたこと

だが決定的に違うことは、男はその体を使って【死ぬな】と終始訴えていることである

 

「黄巾党・・・」

 

「うむ、わかりやすく言うならばそうじゃろう。故にあの舞を破ることは出来ん

儂らに出来ることは舞王を剣の草原に置かぬことじゃ」

 

諸葛亮と鳳統は思い出す。烏合の衆でありながら、連絡方法などを戦経験者などを使って変化させていたこと

敵本陣に近づくほど己の身を投げ捨て、道を塞ぐ信者たち。あれ以上のものが修羅兵であると

 

もしあの時、黄巾党がしっかりとした一つの意思を共有していたらどうだったのだろう

修羅兵のように一人ひとりが考え、うねるように戦い方を変化させる戦い方をしていたらと考えれば

背中に冷たい汗が伝う

 

「・・・何か考えてみます。それだけしか防ぐ手が無いなんて、危険すぎますから」

 

「そうじゃな。条件を揃えさせぬだけでも防ぐには十分かもしれんが、修羅になった兵を破る考えが有るならば

其れに越したことはない」

 

戦神の事を聞き、諸葛亮は顎に手を当て考えこむ。自分と鳳統が打ち立てた策に絶対の自信があるとはいえ

何があるか解らない。相手はあの舞王なのだからと

 

そんな姿を見る孫策は、己の勘で彼女は恐怖から逃れることは出来ていない、魏と戦おうとしているはずが

魏ではなく舞王一人と戦おうとしていると

だが孫策は其れを口にしてしまえばせっかく立ち直った彼女を崩し、必殺の策までもやる前に終わってしまう

と口をつぐみ、眼を伏せるのだった

 

 

 

 

「昭、私は待たずに戦をする」

 

「・・・何故だ?呉など周瑜が朽ちるのを待てば良い」

 

少しだけ強い、普段は向けられない男からの攻撃的な瞳に華琳は表情を変えず

男を安心させるように指だけ握っていた手を男の手に添、両手で包むように男の片手を握る

 

「貴方は本当は周瑜を助けたいと思っているはずよ」

 

見透かすように男の濁った眼を怯むこと無く優しい眼差しで覗き込む華琳

 

「自分と似た、私との・・・友との約束。理想に命を掛ける姿は決して否定できる姿じゃない」

 

「そんな事はない、華琳ならば俺が病に倒れると知ってどうする?自分の収める地が呉であったならば」

 

首を振り、華琳の言葉を否定する男の顔を華琳は眼を離さず柔らかい顔をして見つめるだけ

 

「フフッ、私なら一時的に魏と組んで医師を、華佗を探し出して貴方の病を回復させる。それから魏を飲み込むわ

知っているでしょう?手に入れたものは何一つ手放したくはないの」

 

「ああ、華琳は絶対に諦めたりしない。そして大勢の民が死ぬことが見えているならば、一時的に敵と組み

自分たちの力を蓄えるはずだ。一撃で敵を葬れるほどの力を」

 

頷く華琳に男は頷く。彼女の考えはいつもの通りだと

何者にも塗り替えられない、誰にも塗りつぶすことの出来ない、彼女の色は染まらない

彼女だけの魂の色を最後まで貫き通すだろうと

 

「もし私が周瑜と同じ考えをしたらどうする?」

 

「無論この場で斬り殺す。其れはお前も同じだろう・・・まさか周瑜を助けるとは俺のこの腕と、彼女の病を

重ねたのではあるまいな」

 

濁る瞳から男特有の錆び付き刃のボロボロになった剣を連想させる殺気が漂う

俺と周瑜を重ねて非情な手を選ばず、彼女を助けるため戦を起こして兵を死なせると言うならば

俺は華琳であろうと容赦はしないと男の眼が語る

 

しかし華琳は口から可愛らしく息を漏らして笑う。そして一瞬の内に男の懐から鏃を抜き取り

男の首に鏃の刃を当て、男とは対照的な研ぎ澄まされた濡れた刃を持つ宝剣を連想させる殺気を放つ

 

「私のことは知っているはず。そんな事を考えると思う?」

 

「・・・悪かった。お前は決して変わらない、どうやら俺は冷静では無い様だ」

 

「その通りよ」と周瑜の事を出し頭に血が上っていることを男自身に理解させ

華琳は鏃を男の首から離し、また柔らかく笑い鏃を男の手に優しく大事なモノを渡すように返し

男は鏃を軽く握り、自分の心を落ち着かせるように胸元に持ち上げ軽く深呼吸して鏃を懐へと戻す

 

「其の鏃があれば貴方は大丈夫ね、眼はまだ濁っているけれど頭は冷えたように見える」

 

「ああ、所で戦をするとは何故だ?朽ちてから戦を起こしても十分のはずだ」

 

男の問に華琳は腕を組み目を伏せる。自分で考えなさいということだろう

 

華琳は何を考えている?何故わざわざ戦を起こすのか、周瑜が朽れば戦は容易く勝ことが出来るし

兵も死なせることが回避できるはずだと。蜀ですら飲み込むのは呉を手に入れれば更に楽になる

まさか赤壁で勝利した後、目の前の呉を叩くのではなくわざわざ蜀を?いやそんな事をする意味が・・・

 

考えを巡らすが一向に答えにたどり着くことが出来ず。困った表情を浮かべた後

降参だとばかりに男は両手のひらを上げて首を振ると華琳は仕方が無いわねと笑のままため息を漏らす

 

「昭の策は素晴らしいと思うわ。けれど、周瑜が朽ちた後に呉は我が身を振り返らず魏に戦いを挑むでしょう

最後の一兵になるまで」

 

男の目が見開く。華琳の言うとおりだと、何故それに考えが及ばなかった。一度の戦で呉を取れるはずが

周瑜が朽ちるまで待てば、呉を滅ぼす際に往生際も悪いほどに戦いを挑んでくるだろう

 

呉を統治しているのは孫策だ、孫家に守られた民は、兵は、孫家を滅ぼした俺達に最後まで挑んでくるだろう

あの地で感じたモノは魏と同じ王と民の深い繋がり

 

更には周瑜を死なせれば孫策は前に出なくなる。周りは育っていない将ばかり

ならば余計に己は死ぬわけにはゆかぬと呉を守るため、彼女は他の将達が育つまで耐える道を選ぶだろう

華琳と似ているならば余計にだ。そうなれば蜀を気にしながら呉を攻める形に

また今のような拮抗した状態になってしまう。敵が二つではなく一つに纏まったというのに

 

「呉が誘う赤壁で周瑜と孫策が前に出ている今を狙わなければ戦は続く、貴方が一番嫌がる事でしょう?」

 

「・・・全くだ、ならば蜀は適当にあしらう訳だな」

 

「ええ、劉備は相変わらずでしょうし、軍師一人を意のままに出来るならば、一度の戦で孫呉の王に手が届く」

 

男は改めて跪く、自分の考えの及ばなさ、そして自分よりも民を戦を考える自分が頂く王に

更なる敬意を込めて

 

「ならば俺はもう一つ、呉との戦を有利に進めるため、甘寧に怒りを植えておいた」

 

「フフッ、流石ね。ならば戦で操れる将は諸葛亮と甘寧。二人も手の内ならば、より迅速に戦を終わらせられる」

 

男が跪いたまま顔を上げると、華琳は男の頬に残る傷を指先でなぞり覇気を強くする

その眼の先は男の傷、見えているものはこの先の戦

 

「周瑜殿の事、華琳が言うように助けたいと思う。だが、戦ならば俺にとって兵が優先だ・・・」

 

「解っている。だからこそ戦を素早く進めましょう。呉をこの手に、少ない戦いで手に入れる」

 

華琳は目線を部屋の入口に向け「一馬」と一言呼べば、扉の外に兄を追いかけ心配で隠れていた一馬は宝剣を持ち

真っ直ぐに立って華琳の元へと歩み寄る

 

華琳は一馬から剣を受け取り、跪く男の目の前に差し出す

 

「貴方と同じ志に大きな才を持つならば、その才を民に役立てさせる為、周瑜を生きたまま手に入れるわ」

 

「ああ、俺は全てを掛けよう」

 

優しさと強さを王としての器の大きさを見せる華琳に男は身震いをし、拳を握る

 

「立ちなさい、そして剣を持ち私の為に戦いなさい夏侯昭」

 

「御意」

 

男は剣を受け取り立ち上がる。そして礼を取り濁る瞳を持ったままではあるが

王へ己の全てをかけて戦を勝利に導くことを誓う

 

「華琳、最後に一つだけ。今回のことで決定的になったことがある」

 

「ええ、分かっているわ。私よりも貴方のほうが心配。これに対する用意は?」

 

「出来ている。俺はお前と民、そして妻と子のため鬼になろう。全てを破壊する業風と共に」

 

立ち上がった男の瞳はどす黒く濁り、最初に見せた色よりも酷く、光を飲み込む色を称える

その表情は憤怒とも悲しみとも取れる表情で

 

濁った眼を見てもさほど表情を変えなかった華琳は、何故か自分の身が斬られるような苦痛の表情を浮かべ

一馬には二人の間に何があったのか理解が出来なかった

 

 

 


 
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