No.123877

鬼畜王文台 蘇りし虎は桃園を荒らす 10 第十三章十節

Degradationさん

注意・免責事項については、[01 第六章IF]の注意書きをお読みください。

上記内容にすべて同意された方のみ、
本作品をご覧になられることをお勧めいたします。

2010-02-12 04:14:34 投稿 / 全30ページ    総閲覧数:5502   閲覧ユーザー数:4032

 

 

寄せられたご意見に対する回答:

 

 

Q:孫堅はストIIシリーズに登場する豪鬼をモデルにしているのか?

 

A:Yes。

 孫堅のモデルとして豪鬼を参考にする構想は、2chの避難所に初投稿する以前から

 決めていたことです。

 まとめサイトにある二枚の公式画像から察するあたり、私的に孫堅は峻厳苛烈な印象が強く

 Wikipediaにも、「もし孫堅が生きていれば、今とは違う歴史をたどっていたかもしれない」

 と言ったような記述を見つけ、その結果、この外史が生まれました。

 

 

Q:前サイト(恋姫†無双 SS妄想伝)掲載の続きらしきものが探しても、まったく見つからない。

 理由と、できればTINAMI版本編と平行して、出してくれないか 

 

 

A:あー……あれねぇ…(´・ω・`)

 正直言って、自分はあそこの偏屈した空気に嫌気が差してしまったので

 あそこの避難所に自分が戻ることはもうないでしょう。

 ほかの皆様と違い、禍根を引きずった形でTinamiにお世話になった自分が言うのもなんですが、

 見たいですか、 “アレ”の続編……?

 正直、あれは憚り以外の何者でもない完成度糞以下の駄文です。

 皆さんお気づきのとおり、現在続いているこの新編で、利用できる部分は再利用していますので、

 ネタが重複しちゃうんだよなぁ……。

 それに、あれを投稿してまた罵倒を受けるかもしれないと思うと、それが怖い。

 現にボ●彦氏とかジョ●●郎氏とかから何度となく嫌がらせメッセージの砲撃食らってるしOTL

 ホント、大概にしてほしいです(;´Д`)

 

 それでも、闇の底に封じられたあの黒い外史の蓋を開けたい

 物好きな孫呉の戦士は、アンケート宜しゅう。 ちなみに作者票は、2です。

 そこまで余裕ねぇし(;´Д`)

 まぁこの作品が完結したら…… イツオワルカワカラネーケドナ アッヒャッヒャ!ヽ(゚∀゚)ノアッヒャッヒャ!

 

 1・暗黒に通じる闇の蓋を開ける

 2・開ける必要はない。 この新編の製作に専念すべし

 

 

 では、アンケートにご協力お願いいたします。

 とりあえず30票くらい様子を見ます。

 

 

Q:今の物語の進行状況はどのくらい?

 

A:しばらくは十三章で茶濁しが続きます。 やけにハーフタイムが長い気もしますが、

 これは進行上必要なことなのでご容赦を。 

 この章でやりたいこと全部やって十四章に突入する準備を完了したら

 ようやくバイソンのステージに入るかくらいです。

 

 

*いつも米くれる人、応援メッセージくれる人トンクス

 個別の返信は出来ませんが、励みになります。

 まぁ中には前述のような鼻つまみ者もおりますが……(´・ω・`)

 

 

*肩肘張らなくなってイタズラ小僧と化した華琳ちゃんは、皆さんお好きですか?

 

 

メイド華琳の服装のモデル: ブログ妖精ココロ むーちゃん

 

 

第十三章

 

 

 

-10-

 

 

 

【それぞれの思惑】

 

 

 

~落ち込む桃香~

 

 

 

文台様はすごい人だ。

 

いつも自分の調練のときは、愛紗ちゃんや恋ちゃん以外の人と手合わせしているのを見たことがない。

 

たまに負けることはあるけど、大抵は勝っている。

 

巷では、「鬼神」とか呼ばれているくらいだし。

 

 

華琳ちゃんもすごい人だ。

 

何でも出来ちゃう完璧な人。

 

武も、知も、全てが雲の上の人だ。

 

 

ご主人様もすごい人だ。

 

あの文台様と対等に話してるし、何より天の知識は思いがけない。

 

夜のほうも……。

 

 

春蘭さんもすごい。

 

愛紗ちゃんや文台様から一本とるのが夢らしく、日々鈴々ちゃんや翠ちゃんといつも組み手をしている。

 

奇声を上げながら素振りなんて出来るのか、私にはわからないよ。

 

 

それじゃぁ、私の取り柄っていったいなんだろう?

 

自慢じゃないけど仕合でご主人様に勝ったことは一度もない。

 

実力が同じ位だっていう蓮華さんにも勝ったことがない。

 

頭のほうもお世辞にも良いとは言えない……うぅ。

 

料理で勝負しようと思ったけれど、雑炊を作ろうとしたら鍋を爆発させちゃって

 

流琉ちゃんに怒られて厨房に入れさせてもらえなくなった。

 

それじゃぁ裁縫をしようと思ったら、

 

良くわからない正体不明の布切れが出来上がって紫苑さんを困らせちゃった。

 

人あたりの良さと強かさだって星ちゃんは言ったけれど、

 

「それは貴殿の人となりの問題であって、長所とは少し違うのではないか?」

 

って冥琳さんに言われちゃった。

 

麗羽さんみたいな気品の良さもない。

 

天和ちゃんたちや美羽ちゃんみたいに歌がうまいわけでもない。

 

 

結局私ってば、何一つとして得意なものがないよ……。

 

どうしよう?

 

このままじゃ、ご主人様と結婚なんてできないよぉ……。

 

 

 

~凍りつく冥琳~

 

 

 

冥琳「文台様と雪蓮はどうしたのだ? 今日の朝礼には見なかったが?」

 

秋蘭「そろいもそろって、二日酔いで撃沈しておりますな。

   今日は北郷殿が、公務を代行しておる」

 

冥琳「またか……おとといもそうだったではないか。

   ということは、あの者たちも同じか?」

 

秋蘭「……うむ」

 

冥琳「はぁ……とりあえず、私は出かけるから、役人の応対のことは頼むぞ。

   竹筒が残り少なくなってきたのでな。 閉門までには戻る」

 

秋蘭「良かろう、承った」

 

 

まったく……綱紀がたるんでいると言わざるを得ない。

文台様、雪蓮、祭殿、霞殿、星殿、紫苑殿、桔梗殿……この七名は、朝礼欠席の常習者だ。

孟徳殿の醸した酒が余りにも旨いからと、少々羽目を外し過ぎだ。

そういえば、昨日玄徳殿が私に妙なことを聞いてこられたな……

ふむ、自身の取り柄、か……今思い返してみれば、あの者にはこれといって目立った技量がない。

なるほど、そのことで悩んでいたのか。

確かに文台様は、武も知も無ければ自らの一芸で勝負せよと申された。

ならば、武も知も芸もない彼女はどうする。

一体、如何にして勝利を勝ち取るか……?

 

ふと、孟徳殿の言が頭をよぎった。

あやつは、北郷に担がれているとき、果たして何と言ったか?

 

 

華琳『……第三の、文武以外での勝負の取り決めについてですが、

    それは、祭りが行われるまでのにか二ヶ月の間、

    一刀をどれだけ伽で満足させたかの結果についても

    審決を行う資料として加味されるのでしょうか?』

 

 

!!!!

 

 

そうか、その手があったか!

あれは玄徳殿に対する救済措置であったのだな

いや、玄徳殿のみにあらず。 小蓮様もその対象だ。

そういえば、孟徳殿が文台様に言う前に、一瞬、ちらとだけ、玄徳殿の顔を窺ったような……。

曹孟徳、つくづく、底知れぬ。

もしあの時、文台様が曹魏を潰していなければ、今頃は……。

今更になって、ぞくりとうそ寒さを禁じ得ぬ。

この件は、北郷と文台様に伝えねばならぬな。

玄徳殿と小蓮様の選考は、別枠でお考えになられよと。

あのおふた方は、それでしか参加手段が無いのだから。

 

私はそのまま考えながらしばらく歩く。

やがてしばらくして、目的地のひとつである本屋にたどり着く。

いろいろ本や雑誌が並んでいる。

 

 

「阿蘇阿蘇」

「阿蘇阿蘇 南海版」

「阿蘇阿蘇 新孫呉版」

「月間武器二月号」

「密造酒の作り方」

「四時定食」

「孟徳新書」

 

 

その中に「週間孫呉」という雑誌を見つけ。それが気になったので、金を出して読んでみた。

 

 

「與孟德寫如果稱呼霸王、我們寫雲長稱呼魔王、奉先稱呼魔神、及文台寫就稱呼為鬼神。

魔王戰勝霸王、魔神戰勝魔王、鬼神戰勝魔神。

他們不是人、是妖怪類、我們帝特別對了。

是暴君、對進行苛政沒做。 只那個分兒還被救命。」

 

(曹操と書いて覇王と呼びせしむならば、

我らは関羽と書いて魔王、呂布と書いて魔神、および孫堅と書いて鬼神と呼びせしむるが如し。

魔王は覇王に打ち勝ち、魔神は魔王に打ち勝ち、鬼神は魔神に打ち勝つ。

彼らは人間にあらず、一種の化け物の類なり。 特に我らが帝がそうだ。

彼らは暴君なれども、決して悪政を行っているわけではない。

その分だけまだ救いようがあるというものだ)

 

 

冥琳「ふむ……」

 

 

やはり民生向けに出版された雑誌には、憚りがない分、民の声が如実に反映されている。

愛紗殿が魔王と言うのは言い得て妙だ。 笑いを噛み殺さずにはおれぬ。

とりあえず、この記事の投稿者である人物は、今の孫呉の治世を悪しく思ってはいないようだ。

しかし、忌憚のない辛辣な切り口であることには間違いなさそうだった。

執筆者は田代神……誰だこやつは? まあ良い。

 

色々とめくってみると、次はこのような記事が現れた。

 

 

武烈帝 今週のご予定

 

 

月曜  張遼・公孫賛・馬超・馬岱隊観閲

 

火曜  禁軍調練  城内五十周 並びに 素振り一万回

 

水曜  一般民衆・地方役人謁見

 

木曜  新兵・新文官謁見

 

金曜  将軍登用試験日

 

土曜・日曜  休庁

 

 

臣民へのお知らせ

 

堅陛下におかれましては、孫呉大祭後、泰山への行幸にお出になられます。

行幸期間は、約四ヶ月の予定です。

謁見を希望する者、並びに行幸への同伴を希望する者は、

来月末までに謁見申込書もしくは行幸同伴申込書を宮中宛に提出のこと。

一人二通同時提出可。

なお、申込書の入手については、城門に常駐する警備兵にお尋ねください。

 

皇宮人事院委員長 鳳士元

 

 

ゴミの不法投棄は厳禁です!!

 

ゴミは必ず「木片・紙・竹筒」 「生ゴミ」 「金属類」 に分別のこと。

違反者は、金壱萬の罰金刑に処せられます。

 

洛陽都督 北郷一刀

 

 

洛陽中心地に、“病院”設立!

 

病院とは、複数人の医者が常時常駐し、

頭から足のつま先に至るまで、全ての病を多数の医者で診断する

孫呉国営の画期的な診療所です。

もう名のある医者を探して三国中を渡り歩いたり、

法外な治療代をぼったくられて泣きを見る必要はありません。

 

病床 百床

 

診療科目  内科 胃腸科 外科 耳鼻咽喉科 小児科

        眼科 脳神経科 歯科 精神科 戦傷病科 麻酔科 薬剤科

 

医員数 三十名

 

院長 華元化

 

診療時間 巳之刻 ~ 申之刻 (朝九時~夕五時)

 

 

さらに何枚かめくってみる。

次はこのような記事が掲載されていた。

 

 

 

決定!!

 

 

数え役満姉妹  対  孫呉将軍  による歌唱対決!!!

 

 

数え役満姉妹 張角  張宝  張梁

 

孫一家     孫文台  孫伯符  孫仲謀  孫尚香  北郷一刀

 

曹一家     曹孟徳  夏侯元譲  夏侯妙才

 

 

ほかにも続々登場!!

 

さぁお前ら、我らが将軍たちに何を歌ってほしい!?

申込書を提出すれば、うまくいけばその歌を将軍の方々が披露してくれるぞ!!!

 

(Tinamiの皆様へ: これはアンケートの対象ではありませんのでご注意ください。

 単なる一発ネタです。 鬼畜王本編にもこのシーンは出ません)

 

 

冥琳「!!?」

 

 

なっ!?

何を考えているのだあのお方は!? 私に断りも無く、北郷を巻き添えにして!!

大祭の期間中は武道会に出る以外は裏方に徹しきりなのだぞ、あ奴は!

こうしてはおれぬ! すぐに城に戻らねば!!

 

 

後で俺が秋蘭から聞いた話だが、

このとき冥琳は、この広告を出した首謀者が文台様と雪蓮であることを即見抜いたらしい。

その後、邪神と化した周公謹によって雪蓮たちが石化したのは推して知るべしである。

南無。

 

そういえば冥琳から、シャオと桃香を選考からはずして“別枠”で考えるように言われた。

まぁ理由はわからなくも無いが、その別枠って、華琳が俺の頭の上で言ってた、“アレ”だよなぁ……。

なんとなく、鬱が入りそうだ。

 

 

 

~ほくそえむ秋蘭~

 

 

 

ある日、突然だった。

何の前触れも無く、四日前の朝、気づいたら。

あの華琳様が、まるで人が変わられたかのごとく、北郷殿に甘え始められたのだ。

桂花など、余りの変貌振りに卒倒していた。

姉者も、剣を振りながら北郷殿を必死に追い掛け回していた。

 

おそらく今の華琳様は、以前のように肩肘張らず、

ご自身のお思いになられるまま行動されているのであろう。

北郷殿に飛びついて擦り寄ったり、あの鈴々殿や馬超殿と

恥も外聞も関係なく喧嘩されているところなど、まっことお可愛らしい。

かと思えば、小蓮殿や馬岱殿とつるんで北郷殿の寝込みに襲い掛かったり、

精力剤や媚薬入りの酒を飲ませては皆を暴走させたりと、

まさにやりたい放題暴れたい放題、本当に楽しそうにお過ごしになられておる。

 

そういえば夜警をしていた霞より、「孟ちゃんが泣いとる」との言伝があったらしい。

私は思春・明命・張合殿らとともに夜間隠密調練に出ていたので、

その晩の詳細は良くわからない。

ただ、結構な騒動にはなったらしい。

もしかすると、その間に華琳様の身に何かあったのだろうか?

仮にそうであっても、そのときには文台様や北郷殿、それに華佗殿が常駐している。

いざとなれば“病院”に搬送することも出来るよう、万全の体制を整えてある。

抜かりは、ない。 少なくとも、私が思う中では。

 

我ら孫呉の兵たちは、不測の事態が起きたときにも即対応できるよう、

調練の時間帯を六つに区切っている。 北郷殿曰く、「紺微似」と言うらしい。

訓練の時間帯を六つに分ける利点は、

この洛陽に五胡などの外敵が侵入する隙を与えないというところが大きい。

 

 

第一が、朝番。 辰の二刻(午前八時)から正午まで。 真桜と北郷殿の特殊部隊や水軍がここにあたる。

 

第二が、昼番。 正午から申の二刻(午後四時)まで。 文台様の禁軍や一般の歩兵・騎馬・弓隊がここだ。 

 

第三が、夕番。 申の二刻から戌の二刻(午後八時)まで。 歩兵・騎馬・弓隊が続けて訓練を行う時間帯だ。

 

第四が、夜番。 戌の二刻から宵の中天(午前零時)まで。 民の安眠を妨げぬよう隠密部隊が多い。

 

第五が、宵番。 宵の中天から寅の二刻(午前四時)まで。 こちらも夜番に続けて隠密部隊の訓練時間だ。

 

第六が、暁番。 寅の二刻から辰の二刻まで。 早朝からの訓練を必要とする山賊上がりの兵や水軍が主だ。

 

 

*秋蘭の脳内解説は仏説阿弥陀経並みに長いので、以下三千行は文台様にかっ飛ばしてもらいます

 

 

 

~襲撃 そして邂逅~

 

 

 

敵がこちらの心理を突く作戦を使ってきたら、俺たちはどうするか?

 

敵がこちらの十手先、二十手先を読む心理戦を挑んできたら、どうするか?

 

敵の本隊が洗練された最精鋭集団であった場合は?

 

その上で、こちらが絶望的な劣勢になり、敵が攻城戦で火計を放ってきたら?

 

答えは簡単だ。

 

 

 

敵兵を、敵将を、一発の弾道弾にて、丸ごと撃滅してしまえば良い。

 

 

愛する雪蓮を再び失ってしまう悲しみに比べれば、

卑怯と罵られようが、殺戮王と謗りを受けようが、俺は守るべきものを守るだけだ。

軍師というものは、常に最悪の可能性を考えて行動するものだ。

俺はあの時、蓮華と共に文台様の面前で誓ったんだ。

何があろうとも、呉を、守り抜くと。

 

 

孫呉最終鬼畜兵器・特零式剛弩砲。

 

 

これは、大量破壊兵器。 火計ではなく、砲計。

どうしょうもないほど呉が追い詰められた場合に使用する、文台様も真っ青の最凶最悪鬼畜兵器だ。

モデルは、パトリオットミサイル、中身は、高威力の爆弾。

一発あたりの破壊力は、兵士十万を炭クズに帰するほどの威力を有する。

函谷関の戦いにおいて、その威力をまざまざと見せ付けられた。

あの時は、中身は唐辛子や胡椒を詰め込んだ単なる催涙弾だった。

いわば、有効爆破範囲の実証実験だった。

 

結果は、蜀側のほぼ三分の一の兵が、くしゃみ鼻水に悩まされる結果となった。

それだけ、爆破範囲が広かったということにつながる。

 

そのためには、まず使いどころの徹底した検証が求められる。

 

朱里考案、雛里開発、地雷火砲。

俺考案、真桜開発、特零式剛弩砲。

 

地雷火砲はその名のとおり地中埋設型の地雷式爆弾。

対する特零式剛弩砲は、ミサイルのように目標物を直接爆破するタイプだ。

 

まだ剛弩砲の射程距離は半里(2km)に過ぎないが、

将来的にはこれを三里ほどに性能を向上させるのが今後の課題だ。

そうすれば、五胡の軍勢を、戦わずして排除出来る。

 

憂慮すべきは、その技術の他国および不穏分子への流出。

これだけは、何があっても避けねばならない。

そのためには、たとえ身内であっても腹に一物持っていそうな袁家連中には

開示を避けるべきである。

 

あの連中のおかげで、函谷関の戦いのような、やらなくてもいい戦をさせられたようなものだ。

雪蓮や華琳辺りは、まさに獅子身中の虫と言ったところだろうか。

 

で、その獅子身中の虫のはずの一匹が、なぜ俺の机の下に入ってるんだ。

 

 

一刀「……おい」

 

???「何? ご主人様」

 

一刀「なぜお前が俺の机の下にもぐりこんでいる? それもメイド姿で。

   後それからそのご主人様ってのは何なんだ?」

 

???「いいじゃない、これは私が自分の身の振り方を考えた上でのことなんだから」

 

一刀「菖蒲の立場はどうなる? 俺の侍女はあいつ一人しかいないんだぞ。

   あいつ以外に侍女を付けるつもりも無い」

 

???「あら? 侍女が一人増えたところで特段あなたが困ることでも無いでしょう?  ご  主  人  様」

 

一刀「……だからそれはヤメロと何度言ったらわかる?

   仮にも、元覇王なんだろ?」

 

 

 

~朝の朝礼にて~

 

 

やられた。

完全に裏をかかれた。

混乱を避けるため、俺自身から“その仕事”の存在を伝えることは無かったのに、

よりにもよって奴らの存在を、完全に見落としていた。

 

あの筋肉達磨の連中が、メイドの存在を、呉の将たちに吹聴して回ったのだ。

クソッ、これでは孫呉の軍師の名が廃る。

 

 

華琳「ご主人様、この華琳を存分にお使いくださいませ♪」

 

 

二日酔いで潰れている文台様の代わりに玉座に座ると、

勢い良く正面扉を開け放った「明度」姿の華琳がいた。

そしてぺこりとお辞儀した後、開口一番言い放った一言がそれである。

こやつめハハハ!!

まさか四日前の悪夢が現実になろうとはな!

しかし、奴のあの姿をメイドというには少々語弊があるか。

いや、んなことは大同小異、たいした問題ではない。

今は目前に大きな問題が待ち構えている。

 

 

ひと騒ぎかました後にもかかわらずその衝撃はすさまじく、

 

グースカ寝てた風の鼻ちょうちんが割れ、

冥琳の眼鏡にひびが入り、

稟が鼻血を噴出し、

穏の胸がポロリとはみ出し、

桂花が口から泡を吹いて卒倒し、

あの秋蘭(春蘭ではない)が絶叫し、

春蘭が空中遊泳を始め、

流琉の蝶の髪飾りが吹っ飛び、

麗羽のくるくるカールが一変してスーパーサ●ヤ人のごとくツンツンボーボーに逆立ち、

翠が天井を突き破って函谷関あたりまで天高く飛行し、

霞の袴の紐が切れて大事な場所がもろだしになり、

朱里と雛里の帽子がずり落ち、

 

蓮華が突然何かに向かって祈りをささげ始め、

祭さんが「のう公謹よ、わしゃぁお迎えが見えてしまったのかのぅ?」などと言い出し、

桃香がわわわわわと慌てだし、

明命と悠が天井裏から転落し、

菖蒲が何か悪いものでも見たかのごとく全身をワナワナ震え上がらせて恐怖に慄(おのの)きだし、

愛紗が念仏のようなものを唱えだし、

文台様が騒ぎを聞きつけて怒鳴り込み、

そばに控えていた役人たちが書類をバサバサと落とし、

衛兵たちの槍がボッキリ折れ曲がり、

そして俺は、玉座からずっこけた。

 

それはそれはすさまじい有様だった。

正直ここ数日、まともに朝議が成り立っていない。

こんなんで呉王朝は大丈夫なのか?

 

 

一刀「……あの後一体だれがあいつらの騒ぎを収めたと思っている」

 

華琳「さぁ?」

 

一刀「バックレかい。 大方その姿で桂花あたりにでも追っかけられてたんだろ。

   あと俺は今仕事中だ。 あの“花火”の新しい詰め物を来週の試射までに考えないといかん。

   こちとら暇なんぞねーんだ」

 

 

ご丁寧に蝙蝠(こうもり)の翼と矢印の尻尾まで取り付けおってからに。

南海覇王でブッタ斬ってくれようか、あるいは尻尾を握って逆さ吊りにしてくれようか。

あるいは尻尾の先を奴の尻に突っ込んでくれようか。

とにもかくにも、目の猛毒以外の何者でもない。

えぇえぇぇえい、忌々忌々忌々忌々忌々しい!!

 

一刀「……ひとつ聞くが」

 

華琳「何かしら?」

 

一刀「その服、どこから入手した?」

 

華琳「あぁ、それなら南十番街の「もういい……わかった」」

 

 

まぁあれだ。

南十番街っていったら、洛陽の思ックソ南端だな。

あんな端っこの民家が立ち並ぶ辺りにゃ、俺の知る限り服飾店舗は一箇所しかない。

あそこは、いろいろアヤしい、天の世界で言うアングラ系の品が数多く取り揃えられている。

どっから手に入れてきたかワカラナイ軍服なるものや、

この世界に存在するはずの無い蓄音機まがいの代物や、

どこからどう見てもレインボーマンの全身タイツなどなど。

要は、あの筋肉軍団が経営している店だということだ。

阿蘇阿蘇だったか? こないだ沙和に見せてもらった雑誌にそのような記事が載ってた覚えが……。

 

 

一刀「って、どこ触ってるんだお前は!!!」

 

華琳「あら?」

 

一刀「“あら”じゃねぇ! 人様の大事な人参を握るな! 顔をすり寄せるな!!

   俺は、  仕  事  中  なの!!!」

 

 

Hey,You.

一体この元覇王の身に、何があった?

五日前までとは、まるっきり別人と言って良い。

いや、別人と言うより、何と言うかこう、今までの気高いさびしがり屋が、

何かのきっかけで隠された部分が露になって、一皮剥けて甘えん坊になった、と言う感じか?

 

つまり、今ここにいる華琳は、もはや覇王曹孟徳に非ずってことでFA?

 

ったく、どーするんだ、コレ。

 

蝙蝠の耳かざりと悪魔の翼をパタパタさせている華琳を目の前に、

俺は心底ゲンナリせざるを得なかった。

おい秋蘭、窓の外から覗き見てないでとっとと助けてくれ。

思春に寝首をかかれたくなど無いわい!

 

 

ったく、仕事、どうするんじゃい。 目の前の悪魔より愛紗のジト目のほうが百倍怖い。

文台様の怒号のほうが千倍怖い。

今度悪魔よけの結界でも管輅さんに頼んでおくか。

 

 

 

第十三章十節終了

 


 
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