ヤーコフくんと会うのは久しぶりだった。彼もまだ魔導書の解読に必要な仕事を手伝ってるようだけど、上手くいってるんだろうか。旧教会の雑貨屋に住むお爺さんは、すごく偏屈で容易には付き合えないと聞く。
「雑貨屋のお爺さんとはどう?」
「おじいさん……はい」
ヤーコフくんは、温和で悠然とした子だなと思う。体が大きくて寡黙だから最初はちょっと怖かったけど、実際一緒に過ごしてみると、とても優しくて教会に献身的なんだと分かった。彼になら、噂のお爺さんも心を開くのかもしれない。
「倉庫の片付け、お手伝いします」
「そっかあ。何冊かこっちへ持ってきてたね」
「はい」
「ここで見つかったものもそうだけど、まさか教会に魔導書があるなんてなあ」
俺が知ってる限りでは、教会の祈祷と魔術は根本的に共存できないはずだった。例の本が見つかったとき司祭さまたちが明らかに困惑していたことからも、その通説は正しいんだろう。
「あ、でも、解読に協力してくれてる魔術師の方がね、昔は魔術も祈祷も呪術も区別がなかったって」
「魔術師、ですか」
「それぞれの術が分かれていく過程で、他の術派の理論には立ち入らないって暗黙の了解があったみたい」
ふと、ヤーコフくんが机に広げていた祈禱書に目を遣る。ページの大部分を占めるのは、線と点で記された祈りの歌だ。確かに、文字と特殊な記号で術式を示した魔導書とは随分と違う。呪術と他の術の違いなんて、見当もつかない。歴史の本で読みかじったのは、呪術は主に口承で術の全てを語り継ぐものだということくらいだ。
「でも、だとしたらどうしてうちの町の教会に魔導書があったんだろう? どういう経緯で……それとも、どの町の教会にも一冊や二冊はあるものなのかな?」
目を上げると、ヤーコフくんがこっちを見ながら眉間にシワを寄せて首を傾げていた。
「あ! ご、ごめん、一人で話しちゃった……興味なかったよね」
「いえ」
ヤーコフくんはどんな話でもじっと、真剣に聞いてくれる。自分から意見を言うのは苦手なようだけど、こちらの話を理解してくれようとしてる誠意を感じる。いつか見習いの修行を終えたら、きっと良い司祭さまになるだろうなと思った。
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交わりそで交わらない。今回はルーティン二回分で一エピソードになりました。
以下、前回同様のがんばるぞ抱負(コピペ)です:
作品完成しない病を克服したいので、創作15分ルーティンをがんばってます。その日に思いついたテーマでランダムに書いて投稿します。
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