No.1173109

異星のヒーチー人

新人さん

9月2日は僕の大好きなSF作家、フレデリック・ポールの命日だ。2013年に93歳で亡くなったそうだ。僕がポールの著書で特に夢中になったのは『ゲイトウェイ』だった。ゲイトウェイのシリーズ日本語訳はハヤカワ文庫から 上下刊も合わせると7冊刊行されている。どのくらい面白かったかというと、例えば主人公が大富豪になるきっかけになった「オールト雲の彗星から採掘したCHON元素を原料に、自動化された生産工場から食糧を生産する」とかは、ワンピースで ベガパンクが作った「生の食材を1分以内に500種類の料理に変えることができる無人調理装置」より進んでいたのだ。だって、タンパク質も脂質も糖質もなにもかも気体から作ってしまうんだから、無から物体を作り出す科学という名の魔法でしかないじゃないか。ほかにもぶっ飛んだアイディアの詰まったストーリーに惹かれたのは勿論なのだが、僕がもっとも気に入ったのは、ストーリーではなく 他者とはちょっと違う日本語を使う訳し方だったんだ。その翻訳された方の名前は矢野徹氏という。矢野さんの訳した日本語は、独特のクセがあるせいなのか とても素直に頭に滑り込んできた。僕は矢野さんが訳してくれた文章を読んだとき 初めて日本語の使い方の奥深さを認識できた気がしたんだ。主人公の イライラする内面の葛藤をストレス無しに読み進めることができたのは、矢野さんが訳してくれたお陰だと思っている。 それから20年も経っただろうか、JR山手線の品川駅と田町駅の間に、およそ半世紀ぶりの新駅「高輪ゲートウェイ」が開業した。駅の名前にゲイトウェイがつくなんて、出来た時は ちょっとニヤッとしたものだ。来日したことのある ポールが生きていたら、どんなコメントをしただろうか? 日本にはこの世とあの世 をつなぐ門が数ヶ所にあるそうだが、高輪もそんな門になるのかなぁ? ゲイトウェイから旅立てば何処へ行くのかわからない、なんて夢をみるのは愉しい。そして、いつか異星人のヒーチーに逢えそうな気がするんだ。

2025-09-02 15:55:39 投稿 / 978×734ピクセル

2025-09-02 15:55:39 投稿
総閲覧数:121 閲覧ユーザー数:121
978×734ピクセル

 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
0
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択