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新・恋姫無双 ~呉戦乱記~ 第17話

4BA-ZN6 kaiさん

続きをあげます。よろしくお願いいたします。

2021-12-03 15:29:23 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:357   閲覧ユーザー数:301

私の隊は恋が正面から攻撃を加えているとき、側面に密かに回り込むという戦い方を取った。

 

損害率は恋が前に出る以上そうは出ないとは思われるが、工兵を呂布隊に同行させることで防御力をあげ損害を少なくするという方法を採った。

 

恋が前に出ると同時に工兵も音々音の支持の下タイミングを合わせ前進と後退を交互に繰り返していく。

 

「工兵前に出るのです!!防御壁を出し前線を確保、その後は損害を報告するのです」

 

「陳宮殿!!呂布隊の損害は未だなし。前に出られます!!」

 

「待つのです!まずは弓斉射を2度行い援護、そののち恋殿を出すのです。お前たちは工兵と同時歩調をとり前線を上げることを考えるのです」

 

「御意!!」

 

音々音は部下に指示を出すと、損害が出ていないことに内心笑みがこぼれる。

 

(敵の数は少ないのです。一気に前線を押し上げれば、雪蓮が何とかしてくれるはずなのです!)

 

音々音の指示通り工兵が対攻城戦装備である防御壁を展開しつつ前へ前へと少しずつ進んでいく。

 

恋は防御壁に痺れを切らし、迎撃に出た魏兵たちを凄まじい力で吹き飛ばしていく。恋が前に出るときは工兵は側面を守り、前の道を開ける。

 

そして恋が下がれば、工兵は壁として立ち塞がる。その動きはまさに洗礼された動きであり、音々音の合図で恋と工兵たちは攻守を交代しながらも制圧を続ける。

 

そうして彼女の後ろに残るのは魏兵であった人間の数々。

 

飛び散った血が彼女の端正な顔を真っ赤に染め、魏兵は恐れおののく。

 

無機質な瞳が明確な強い殺意を身にまとい、ゆらりゆらりと前にでる。

 

「呂布だ・・・・。呂布がいるぞ!!」

 

魏は思わぬ敵襲に完全に後手に回ると同時に、増援要請をしようと練兵所を飛び出る兵士たちを雪蓮たちは待ち伏せし弓で狙撃していく。

 

恋に注意が向いている最中に雪蓮は練兵所を取り囲む形で囲い込み、伝令兵が出てくるところを狙撃をしていく。

 

伝令兵をすべて始末したことを確認すると、雪蓮は馬に跨り剣を振り上げる。

 

「では我々も吶喊する。この突撃で敵基地を制圧するぞ!!」

 

雪蓮の号令とともに副官は角笛を吹くと、15部隊連隊長たちは一気に角笛を吹き始める。

 

音々音は角笛の音を聞くと直ぐ様撤退の命令を出す。

 

「撤退するのです。敵を引きつけ、根城から引きずり出すのです」

 

「音々音・・・あぶない・・・下がって?」

 

恋が殿を務め、呂布隊は一気に撤退を行う中敵は追撃に出んと兵を送り出そうとする。

 

魏兵が追撃に出たのには理由があった。

 

まずは呂布隊は5千の兵力であり決して大軍でないこと、雪蓮たちの隊が潜んでいることなど思ってもいないことでもあったこと、将兵たちも稲の狩りに出ており指揮系統に問題を生じていた事から魏兵は統率を取れない中追撃に出る。

 

「敵が出てきた。いくぞ!!!」

 

雪蓮が敵兵たちを確認すると、直ぐ様横から挟撃をかける。

 

雪蓮は敵軍のど真ん中に飛び込む。ある者は首を跳ね飛ばされ、ある者は心臓を串刺しにされ、ある者は体術で投げ飛ばされ、蹴り飛ばされる。

 

「どうした腰抜けどもよ!!この孫伯符の首取れるものはここにはいないのか!!」

 

「そ、孫策?!」

 

「バカな・・・・江東の小覇王って・・・・・?」

 

敵兵が雪蓮の張り上げる声に動揺の色を見せるが、雪蓮はそんな悠長な時間を与えてはくれない。

 

魏兵が束になってかかるが、一人の斬撃をヒラリと躱すと同時に剣を持つ腕をねじり上げ盾にする。

 

「卑怯な・・・!!」

 

「・・・だからどうだというのだ?こんなものはな‐‐‐‐‐」

 

雪蓮は蔑むような笑みを浮かべると飛んできた弓を盾にしていた兵に当てる。

 

盾になった兵は何十本もの弓が刺さり絶命をすると雪蓮はその兵を投げ捨て、凄まじい速さで敵の懐に潜り込み南海覇王を突き刺す。

 

「勝てばいいのよ」

 

雪蓮はあの時演習で感じていた体の軽さを感じる。

 

敵の動きが手に取るように予知でき、動きがスローモーションがかかったように遅くなる。

 

「遅い!!」

 

雪蓮は冷たく言い放つと包囲されていた魏兵たちを片っ端から斬捨てた。

 

 

魏軍は雪蓮達の増援により包囲されてしまい、一気に殲滅されてしまう。

 

また雪蓮たちは練兵所に侵入し保管してある食料を強奪、直ぐ確保すると武器などを貯蔵している保管庫は全て焼き尽くした。

 

直上の魏の軍師たちも雪蓮は捕らえると、尋問をするべく拉致する。

 

命乞いをする軍師たちの言葉に耳を一切貸さず、猿轡をかませ雪蓮は作戦成功を告げるとこのままこの練兵所を拠点とするべく兵を置き統治を始める。

 

「初戦は上々ね。被害状況は!」

 

「我が隊も呂布隊も大きな損害は出ていません。軽傷者が少々いる程度であり、作戦は大成功です」

 

「結構!周瑜将軍に伝令。初戦圧勝せり、とな」

 

部下に雪蓮はそう告げると、練兵所を拠点にするべく兵士を集める。

 

雪蓮に完膚無きまでに叩きのめされた15部隊の兵士たちではあったが、実戦となると話は別である。

 

基本的に呉で随一のエリートが集う最強部隊であることは変わりはなく、強靭な精神力と練度の高さは、ほかに引けをとることはない。

 

恋の部隊も主力部隊とあって弱くはなく、強烈な突進力を誇る呂布隊と破壊工作や支援など幅広く行える雪蓮率いる北郷隊の相性は絶大でもあったのだ。

 

本陣に帰ると冥琳が高揚した表情で雪蓮の手を掴み、働きを労う。

 

「よくやった!!損害も予想以上に低い。これなら北方への強襲はかけることはできるな!」

 

「まぁね、歯ごたえがなさすぎて正直拍子抜けね」

 

「全くなのです!!」

 

「ん・・・・。セキトお疲れ・・・・」

 

恋は雪蓮に同意したのかよくわからない態度ではあったが、愛犬であるセキトの前に座り込むとヨシヨシと撫でる。

 

「捕まえた軍師はどうするの?冥琳」

 

「軍師は許昌からの直属の派遣であろう。吐かせる情報を吐かせたあとは処分だ。我々は養う義理も余裕もないからな。それにもし生き残られて、こちらの情報が漏れても困る。一般兵は捕虜として保護し、尋問を行う。こちらは兵役を貸された一般人に変わりはない。丁重に扱うようにするつもりだ」

 

「当然ね。副官、まずは捕まえた軍師たちの尋問を行え。手早く頼むわよ」

 

「了解です。さぁ来い!貴様ら」

 

捕まえた軍師たちを引っ張るように引きずると、手短な部屋へと放り込んでいく。

 

 

軍師たちは厳しい尋問に耐える術などはもってはおらず、阿鼻叫喚な叫び声が聞こえてくる。

 

尋問を主導している雪蓮の副官は尋問に耐え切れず情報を漏らした軍師たちの情報を逐一聴取し、詳細な情報を集めていく。

 

彼の誘導尋問は秀逸でもあり、嘘をついていることすらも誘導し口を割らせる。

 

「お前は嘘をついたということだな?ん?」

 

「ま・・・・まって・・・・ちがうんだ。ガッ?!」

 

無論嘘を吐いたものは彼は即斬殺し、死体は部下が外に放り捨てる。それを見た軍師たちは一気に顔を青ざめる。

 

「なんてことを・・・我々は捕虜だぞ!!正当な扱いを・・・・」

 

「正当な扱いを保証しろと?・・・・・面白いことを言うな?君」

 

副官は部下に

 

「やれ」

 

と命じると隣にいた部下は抗議をした軍師の頬を殴り飛ばすと、吹っ飛ばされた男を無理やり立たせたあと、手を机の上に乗せ一気に指の一つを反対側に折り曲げる。

 

「や・・・やめて・・・・あぁぁぁあぁあぁぁぁあああああ!!!!」

 

ボキッという嫌な音をたてて指を一本潰された軍師は激痛にのたうち回ろうとするも、直ぐ様呉兵が捕らえ殴り飛ばし、黙らせる。

 

「正当な扱いをして欲しければ、ソレ相応な態度で挑むものだと主から君たちは教えてもらわなかったのか?権利を主張するなら、義務を履行し給え。さぁ・・・次は誰が我々に有益な情報を教えてくれるのだ?」

 

副官は椅子に深く腰掛け、無表情のまま尋問を促す。

 

彼の目つきはまるでつまらない虫けらを捻り潰すかのように冷たく、軍師たちは恐れのあまり完全に主導権を渡してしまう。

 

その後情報をすべて吐かせたあと、副官は天幕に戻ろうと踵を返す。

 

「ま、待ってください・・・・。我々は・・・・これで・・・・」

 

「あぁ・・・・そうだったな。やれ」

 

捕虜たちに呼び止められた副官はどうでもいいように部下に命じると、兵士たちは一斉に弓で軍師を射殺していく。

 

「情報は手に入りました。これが手記した情報になります。兵役を課されていた兵士たちはやはり有益な情報は持っておりませんでした」

 

「そうか、よくやった!私はこれから現地民の協力を得るために、交渉に出る。部隊を再編成するまでは時間がある。お前たちは少し休むといい。疲れているだろう」

 

「ありがとうございます」

 

冥琳が休むように言うと副官は頭を下げ、下がっていく。彼女はその後部下を呼び出し命令を下す。

 

「お呼びでしょうか?」

 

「うん、後方部隊に伝令だ。周辺の街・村に兵を派遣し押さえるように。ただし一般人への乱暴、略奪は厳禁だ。破った場合は軍規違反で死罪だと伝えろ」

 

「了解しました。村の代表者などは如何しましょう?」

 

「一般人同様に丁重に扱うように。私が話をつけよう」

 

それから冥琳は付近の街や村へと兵を派遣し、代表たちと話し合いを行った。

 

最初は村民たちも呉軍が来たと騒然としたが、冥琳たちに攻撃の意思はないことが分かると整然と様子を伺う。

 

代表者たちと冥琳は話し合い、彼女は今後は暫定的に呉の軍政による統治と支援を要請した。

 

「端的に申し上げますと我が軍に対し協力を願い出たい所存でここに来た」

 

「・・・・我々も急な襲来で民たちも怯えている。狼藉を働くようであるのなら容赦はせぬぞ!!」

 

当初は代表者たちは呉の圧政を危惧し、断固たる強硬な態度であったが冥琳が制限は多少はつくが自由ある暮らしを保証することを説明する。

 

「貴殿たちの考えには我々も十分理解を示してはいるつもりだ。我々としても貴殿たちの協力がなかればこの荊州を救済することは叶わぬ夢であることには変わりはないのだからな」

 

「何が言いたいのです、公瑾殿?」

 

「荊州での圧政の次第、我々の耳にも入っていると同時に憂慮もしている。貴殿たちの救済のため、我々は荊州を侵攻したのだ」

 

「バカな・・・・・」

 

「荊州の権益を我々が強奪し独占する、という考えは貴殿もあるであろう事は私も承知している。そのような考えに至る事は道理であるからな。だが我々は従来の大陸国家にはない新しい枠組みの国家樹立を目指している。これを見ていただきたい」

 

冥琳は代表者たちを前にして、呉の国家基本法の原案を見せ説明をする。

 

荊州が呉に編入されることによる連合圏での市場拡大への利点と広域な地方自治の確保、市民の自由権の保証を謳う旨の内容を説明した。

 

冥琳が説明する呉の統治というのは、曹操の圧政と弾圧に嫌気がさしていた代表者たちからしたら、自由ある暮らしや自治権の保証は魅力のある提案であったようで彼女の理解を示すと同時に、呉軍の支援をするように協定を結んだ。

 

「ほう・・・・なるほどな。これを読む限りでは貴殿たちの考える国家像がよく理解できた。・・・ほかの長老にも私が説明をしてみよう」

 

「ご理解が早く済み、我々も助かります。無論説明に関しては我々も同行する責任がある。我々もご同行よろしいですかな?」

 

「構わない。公瑾殿の平和的な姿勢には私としても、大いに評価できるものであったと思う。軍役に課されていた我が同胞たちも開放してくれたことは感謝したい」

 

こうして会談は友好的なムードを維持したまま終わり、その後は冥琳は各町村を赴き、同様の説明を行い協力へとこぎつける。

 

 

なお当面は以下の協定により、呉軍との協力を約束すると同時に平和的な自治権の保証を謳う内容となり、その内容がほかの町村へと飛び火していった。

 

1、この協定を締結した郡・村・街には呉軍に協力する限りは自由な自治権を尊重するものとする。

 

2、本戦闘は侵略をするために行った戦争ではない。あくまで荊州への弾圧・圧政を救済せんとする正義の戦争である。

 

3、この戦争での我が軍が勝利に終われば、連合での統治機構に組み込み、自由かつ平等な生活を営む権利を有するものであることをここに保障する。

 

4、1条で挙げた自治権行使は生活習慣や法習慣は各地域の習わしを我々は尊重し、条件付きではあるが行使することを保障するものとする。

 

という内容の協定を結び、各集落に下達させた。

 

この結果、基本的に呉に制圧された地域は軍政とはなるが魏の圧政から解放され自由な生活ができるため、解放された市民は歓びの声を上げ、こぞって呉軍を解放軍と名付け歓迎し、支援へと動き始めた。

 

冥琳は曹操の強烈な国家主義的思想での統治が、やはりこの大陸に受け入れられてはいないのだと痛感する。

 

中央集権化を進めれば、いずれは秦の帝国と同じ運命をたどるだけであろうことは分かっているはずであろうに・・・。冥琳は曹操の国家主義的な統治に内心苛立ちを覚える。

 

全ての会談が終わり、開戦から一ヶ月後に伝書鳩が北の方角からやって来た。

 

冥琳は到着した鳩の頭を労わるように撫で、餌を与えると足に結ばれている紙を取り外し鳥を籠に入れる。

 

「北方から連絡が来たのね」

 

「ああ、読むといい」

 

彼女は直ぐに雪蓮を呼び、北方の戦況が書かれたこの紙を見せた。

 

北方も冥琳と同様な懐柔策を取り、住民たちの理解と協力を得ることに成功したようである。

 

やはり対連合への最先方ということもあり荊州は搾取の対象と見なされていたようで、現地の民たちの不満は大きいようであることが書かれていた。

 

「へぇ・・・北方は陥落させたのね。やるじゃないの蓮華たちも」

 

「やはり兵の数が向こうはそろってはいない。これを機に予定通り本隊と合流するまではこの地域を押さえよう」

 

「そうね。食料の備蓄は十分にあるし、武器は弓以外は全て破壊、廃棄したわ。守りを固め、ここを東征への拠点とするためにも死守しましょう」

 

初戦を圧倒的な勝利で終えることができ、さらに現地人の協力も受けられそうである事からも、厳しいと予測されたこの戦いも幾分ではあるが僅かな光が見えてきていることを冥琳と雪蓮は感じていたのであった。

 

その後冥琳は呂布隊、孫策隊を駆使し桂陽郡に進軍、手中に収める。

 

休むことなく予定通り零陵郡へと続けて侵攻、素早く支配下に起き東征への足ががりを確保することに成功した。

 

(これまでの攻防戦で兵の損耗率は15部隊と第3部隊を合わせても1割をいっていない。概ね予定通りではあるが・・・・。敵はこのままやられっぱなしというわけではないだろう。敵は南陽郡を拠点に兵を集結し、奪還を目指すはずだ・・・・。それまでに我々は東征を完了させなければならない)

 

その後は冥琳は攻撃の手を緩める事はせず南下する本隊と挟撃し、長沙郡を強襲するべく零陵郡、桂葉郡の北方に陣を構える。

 

それと同時に零陵郡の長とは話し合いを事前に済ませており、武陵郡へ噂を流すように指示を出す。

 

『圧政の解放軍である呉が荊州を開放しつつある。勇気ある者は呉軍に協力求む』

 

という旨で噂を流す。零陵郡の市民たちは呉軍の軍政に不満を持つ者は余りいない事からも協力者は多く、零陵郡の切り崩し工作に協力をしてくれている。

 

今まで増援要請をするべく出向いていた伝令兵は全て始末していた我々ではあった。

だがこれで呉軍の侵攻は敵にバレるが、彼らの報せが許昌に到達するまでには3ヶ月ほどはかかる。

 

初戦を時間稼ぎにさせないためにも伝令兵を徹底して始末し、敵の動きを鈍化させていたがもう十分であろう。

 

魏軍がいまから徴兵を始め、さらに兵力を編成し、討伐軍を組織するだけでも時間がかかるはずである。

 

その間に荊州の長沙郡、武陵郡を押さえてしまえば実質的に我が軍の勝利であるからだ。

 

長沙郡は呉軍から挟撃を受け、増援を呼ぼうと兵を派遣させるも雪蓮と恋の部隊で足止めを行う。

 

そのあいだに本隊2万を長沙郡に派兵し、一気に攻撃をかける。だが荊州の東側を制圧されつつある魏の兵の展開が遅いのが気になる所ではあった。

 

普通であれば南郡や南陽から兵を派遣させ、呉軍の兵力を割くように展開してくるであろうからだ。

 

だがそのような展開もなく、我が軍の侵略をここまで許してしまっている。

 

(荊州で何かが起きているのか?)

 

冥琳はそう考えるが、連合での挟撃はまずありえないと考えていた。

 

というのもあれだけ朱里に啖呵をきって派兵を断ったのだ。そう考えるのは無理もない話ではあった。

 

『貴国の助けはいらぬ。これ以上戯言を言うと内政干渉と見なし、貴国もタダでは済まさない』

 

と冥琳は反対を唱える朱里に対し強固な態度で黙殺し、今荊州を攻めんとしている。

 

連合の範疇にない呉の単独行動である以上、連合軍として編成する責任はないはずであるからだ。

 

 

だがそのまさかのまさかである。

 

朱里はこうなる事を予想し、主君である桃香と会談を行っていた。

 

呉を支援し、荊州を攻略すべきであると。

 

朱里や桃香は荊州の攻略に関しては慎重派の立場でもあり、今魏が撤退を行っている最中を好機と捉え会談に持込み、領土の割譲を提案するべきであるという考えでもあった。

 

無論、呉も蜀と同じ考えであり荊州割譲を目指し、会談を行うべく水面下で動いていたのは事実でもあった。

 

だが蜀の思惑は北郷の死により瓦解し、修正を余儀なくされる。

 

彼の死により呉は間違いなく報復作戦を展開するであろう、と愛紗の進言もあって朱里や雛里たちは呉が荊州を進行してきた際のシナリオを一通り描いていた。

 

ゆえに蜀での宮廷内では混乱は余りなく、呉に今まで助けられた借りを返すべく、蜀は僅かではあるが少数の兵を派遣し、東側から密かに干渉を行っていたのである。

 

これにより対応を追われた南陽と南郡の増援が行えない形となり、長沙郡の孤立化が進行していたのである。

 

結果として長沙郡は陥落。本隊も死者2千人を超す損害を出すも、なんとか攻略を完了させた。

 

荊州の東側をほぼ全て支配できた呉軍ではあったが、損害はやはり今までの戦いと比べると些か大きい。

 

部隊再編成を余儀なくされた冥琳たちは零陵郡に参謀本部を移すと、暫しの休息をとる。

 

北方の攻略戦で先陣を切った祭が率いた第2歩兵部隊の損害は特に大きく。いま計上している死者の半数を占めていた。

 

あと半月すれば補充兵がやってくるため、祭の第2歩兵部隊を一度後方に下げ、主力となる騎馬隊、弓兵、救護兵等は雪蓮の部隊と思春の部隊へと振り分けることにした。

 

「すまぬな冥琳。編成に苦労をかける」

 

「気にする必要はありません。江夏・長沙と支配下に起きつつもこの損害でありますからね。我々も覚悟の上です。むしろ私はあと千人はさらに死者が出るであろうと見積もっていましたので、私としては十分すぎる戦果です」

 

「そうかの。そう言われると儂も死んだ兵も・・・救われるな。第2部隊は後方に下げると言われてが・・・・」

 

「現在補充兵をこちらに寄越すように建業には言っております。あと半月ほどで補充兵が来るでしょう。それまでは後方で支援をお願いしたいのです」

 

「なるほどの。そういえば現地民の協力の声が挙がってきておるが、お主はどうする?」

 

「もとは魏兵である人間もいることは確かですので、身体検査を慎重に行い、問題がなければも部隊に編入させる考えでいます。ですが我が軍と共にというのは練度の関係上宜しくはない。彼らには物資、糧食等の補給の運搬支援をしてもらうことにしております」

 

「懸命な判断じゃな。前線に出し、囮に使うという手もありじゃが・・・今後を考えると其れは悪手じゃろうしな」

 

「そうですね。我々の侵略の正当性を現地民に理解してもらうのには、彼らの人命を尊重する姿勢が必要です。さらに荊州は広大な領地です。我々だけで軍政を敷き、押さえ込むのにも限界がありますからね」

 

実際冥琳のこの考えは合理的でもあり、補給部隊の拡充と人員補充が実現され、さらには運送面でも現地人の協力が得られている事からも現地の人々しか知らない道なども有効に活用することができていた。

 

「武陵郡に関してはどうかの?」

 

「現在思春率いる第14機動部隊と雪蓮が持つ15部隊、恋の第2歩兵部隊をあて徹底的に攻め込んでいるところです」

 

「やはり抵抗は激しいか・・・・」

 

「ええ、ですが現時点で6割近くの前線基地を我々は制圧しつつあります。武陵郡の現地人の切り崩しも上手くいっており、蜂起も勃発しているようです。陥落は時間の問題でしょうね」

 

「ここらが潮時かの?」

 

「そうですね・・・・戦果としては十分ではあるが・・・・。だが我々としてはせめて南郡、南陽郡どちらかを取っておきたい。そうすれば蜀と呉の通商行路が完成でき、魏に対し戦略的な主導権を握ることができる。その利点は大きはずですからね」

 

「敵はそれまでに講和に持ち込んでくるかの?」

 

「ありえる話です。休戦を持ちかけ、南陽郡と南郡だけでも守ろうとするでしょうね。私が魏の宰相であればそうしますね」

 

「・・・・講和は受けるか?」

 

「そういった話が水面下で上がってきているのは確かではありますが、黙殺します。もとはアチラから仕掛けてきたのだ。喧嘩を売ってきた以上、それ相応の覚悟がないのは困ったものですね。それに我が軍の参謀、私の右腕を奴らの謀略で亡くしています。その償いは荊州の全土譲渡をもって償ってもらわなければ、釣り合いが取れませんからね」

 

「ハッハッハ!そうでなくてはのう!!さすがは大都督よ!」

 

祭は冥琳の益荒男っぷりに思わず笑う。

 

「なんですか?急に?」

 

「いや、別に。ようやくお主らしい顔つきに戻ってきたのうと思ってな」

 

冥琳がここまで感情をむき出しに戦いに没頭する姿は初めてであり、また人間味あふれる言動に祭自身安堵する。

 

北郷が死んでから雪蓮だけでなく、冥琳は間違いなく大きな損失感を抱いて今まで生きていただろう。

 

後悔、懺悔、悲しみ。

 

そういった諸々が冥琳の体を包み込み、今まで負の感情を溜め込んでいたのは事実であった。

 

だが今の冥琳は違う。目は常に前を向き、懸命に踏ん張り、もがいている。

 

その冥琳の生き様が祭からしたら美しく、また誠実な生き様であると感じる。

 

過去に囚われ、嘆いているよりは今の冥琳の方がよっぽど輝かしいと祭は思っていた。

 

「褒めても何も出ませんよ。祭殿はどうします?部隊の補充兵が到着次第とはなりますが・・・」

 

「儂も前に出るぞ!兵の補充に関してはお主に任せたほうがいいじゃろう。今は将兵が前に出て、体を張る時よ。いつまでも若造にばかりいい思いはさせまいて」

 

「そうですか。では思春が抑えている区域をお願いしましょうか。祭殿、よろしくお願いします」

 

「おうよ!・・・・冥琳よ、儂もお主と同じ考えじゃ。北郷が死に、抱える思いも儂も同じであると思っておる」

 

「祭さん・・・・」

 

「勝つぞ冥琳・・・・!」

 

「・・・・・もちろんです」

 

「・・・・うむ!それじゃ儂も武陵郡に行こうかの。馬を借りるぞ?」

 

「ええ、構いません。ではご武運を」

 

祭は立ち上がると執務室から勢いよく飛び出していった。冥琳は深い溜息をつくと眼鏡を外し、自分の指にはめられた指輪を見つめる。

 

「今のお前はどう思う?一刀・・・・。我々を軽蔑するか・・・・?それとも良くやったと笑顔で私を迎えてくれるか・・・・?」

 

冥琳は一人小さく指輪に向かい呟く。

 

だが彼は今の現状をきっとこう言うであろう事は長い付き合いで予測ができた。

 

『冥琳らしいな・・・・。俺は君の考えに信じるだけだ』

 

とわざとらしく肩をすくめて言うであろうと信じたかった。

 

(分かっているわ・・・・。悔いがないように・・・・・。そういうことよね、一刀)

 

彼女はもう一度指輪を優しくなでると、再度指示を出すべく立ち上がり部屋から出ていった。

 

その時冥琳は自分の持つ指輪が一瞬光ったように思えたが、光の反射だと気にもとめることはなかった。


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