No.1066344

新・恋姫無双 ~呉戦乱記~ 第9話

4BA-ZN6 kaiさん

続きを上げます。
断金の絆を上手いこと壊さないように、纏めるのは苦労しました。
僕の完全な力不足間は否めないです。

一部表現は自分への表現の挑戦です。すごく濃厚に描くことができ満足しています。

2021-07-11 19:57:09 投稿 / 全12ページ    総閲覧数:484   閲覧ユーザー数:399

その後祭は城にいる北郷の側近であった15部隊の副官に事情を聞くことにした。

 

「北郷隊長のよく行くところ?でありますか?」

 

「そうじゃ。お主は一番北郷の近くで釜の飯を食った仲であろう?何か知ってはいないかとな」

 

副官はう~んとうなって申し訳ないと頭を下げる。

 

「黄蓋将軍・・・申し訳ありません。彼は私たちに素性を明かすということを殆どしませんでした。ですので彼がどのような生活をしているのかだとかは一切知らないのです」

 

「そうか・・・・。では何か北郷が考えていた傾向であったり癖などは?そこから行動の傾向をつかみたいのじゃ」

 

「癖、ですか?う~ん・・・・そうですねぇ・・・・」

 

「何でも良い。口癖や策を考える傾向などじゃ」

 

「彼は我々に作戦を説明する際は常識を疑え、身近な常識に打開策がある。といつもそう言っていましたね・・・・」

 

「常識を疑え・・・・、身近な常識に打開策がある・・・・とな。ふむ、感謝する」

 

「いえ・・・・我々もお力になれず申し訳ないありません」

 

「気にするでない。もとはあやつの不義理が原因ゆえに」

 

「彼は・・・・・処罰されるのですか?」

 

「それは現段階では何とも言えんな」

 

「隊長は常に我々の生存を常に考え、果敢に戦ってくれました」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「部下が死んだ時も我々の前では彼は毅然としているのですが・・・裏で部下のいない場所で泣いているのは私も部下も密かにではありますが知っています。部下たちも彼が私たちに敬意を払い、生存を第一に考えるあの姿勢を見て尊敬の念を抱いています。北郷隊長の除隊を不安視する者はいれど、蔑む人間は一人もおりません」

 

「北郷が去った、15部隊が未だに北郷隊と貴様らが呼ぶのはそういうことか」

 

「はい、わが隊のだれひとりとして隊長を裏切ったとは思ってはおりません。必ず帰ってきてくれる。そして彼が帰ってきても十分に指揮ができるよう我々は精進を重ねるだけであります」

 

「・・・・・うむ、その心意気や良しじゃ。儂もお主と話せて感謝しておる。今度酒でも飲みながらゆっくり話を聞きたいものだな」

 

「その時は隊長も一緒で、でありますね」

 

「そうじゃ・・・・。なぁに安心せい、直ぐにあの馬鹿餓鬼を見つけ出すゆえ」

 

 

そう言うと祭は城を出て街を聞き込む。北郷を知っている町民は多く、交流も多かったようだ。

 

だが有力な情報は見つけられずにいたが、とある商店の主人が北郷を見たと教えてくれた。

 

「はい・・・・、北郷の兄ちゃんに間違いないです」

 

祭は彼の似顔絵を見せると主人は頷いた。

 

「間違いないのじゃな?」

 

「はい、なんか暗い顔して去っていきましたねぇ。いつもは呼びかけたら応じてくれるのにこの時は無視されちまってねぇ・・・・」

 

「なるほど・・・・彼はその後どちらに?」

 

「南の城門へと向かっていくのを見て・・・・」

 

「そうか・・・・感謝するぞ。主人よ」

 

その後南の方角に足を運び徹底的に聞き込みを黄蓋は続けた。

 

地道な聞き込みにより、彼女がわかったことはこのまま北郷は南へと向かい城を去った。

 

そしてその後はこの南への方角に最寄りの村から聞き込みを開始するのだが、彼の情報は一切聞くことがなかった。

 

「う~む村にいないとなると・・・・・何処にいるのじゃ・・・」

 

ひとり執務室で唸る祭。彼が失踪してもうすぐ2ヶ月となる。

 

時間が経てば経つほど、発見の可能性は少なくなっていく。

 

いっそのこと明命の隠密部隊を展開しようかとも考えたが、その考えは直ぐ様封印する。

 

なぜなら北郷は軍の人間である。

 

彼女らを指揮する立場にあった北郷であれば、明命や思春の動きを察知し、予測をして行動してくるだろう。

 

「これはなかなか骨が折れるのぉ・・・・。蜀の連中に声をかけるか・・・・・、いや多分同じじゃろうなぁ・・・」

 

考え込んでいると北郷の副官の台詞がふと頭にふとよぎる。

 

「目の前の常識を疑え・・・・か。もしや・・・・・」

 

その後、役人を呼ぶ。

 

「なんでしょうか将軍」

 

「執務中すまぬ。実はこのあたりに集落があった場所はないか調べて欲しいのじゃ。できれば廃村がいいのじゃが・・・」

 

「分かりました」

 

そう言って暫く地図を持って再び帰ってきた。

 

「将軍の仰るように、この付近に廃村は確かに存在するようです」

 

「それはまことか!」

 

彼はそのまま頷くと地図を広げ祭に説明をする。

 

「はい、南陽郡のはずれにかつては村があったのですが黄巾党の襲撃で村は襲われ・・・・」

 

「なるほどのぉ・・・・距離は?」

 

「大体10里ほど離れた場所であったと思われます。方向は・・・・」

 

「南・・・・・じゃな?」

 

「その通りです」

 

「うむ、ご苦労であった。下がって良い」

 

役人は頭を下げると執務室を去っていく。祭はニタリと笑う。

 

「逃がさんぞ・・・北郷よ」

 

そう呟くと立ち上がり、執務室を飛ぶ出していくのであった。

 

 

・・・・・夢を見ていた・・・・・・。いつものあの夢だ・・・・・。

 

泣いている。俺を見て、彼女の姿は・・・・・・。

 

(ああぁ・・・・やっぱり君は・・・・)

 

姿は見えないが聞き覚えのある声。この声はやっぱり・・・・。

 

確信にも似た思いを抱いたところで夢から覚める。

 

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

俺は孫呉から離れた、始めた雪蓮と冥琳に出会ったあの廃村で一人暮らしていた。

 

村は時間の経過を実感させるかの如く、自然が村を覆い朽ち果てていたが俺は一人誰の家かわかならない家を綺麗に掃除し終わったあと、ここで暮らしている。

 

争いのない、静かな、現世から隔離されたかのようなこの廃村は俺をただありのまま受け入れてくれた。

 

目が覚めると井戸から水をくみ、顔を洗う。水面が自分の顔を反射する。

 

疲れきった生気のない、濁った目をした男。ひどい顔だ。

 

「はぁ・・・・・」

 

少しため息をつくと食事を作る。買い出しは建業から離れた小さな村で行ってはいる。

 

作り終わるとそのまま一人、静かに食べる。軍にいた時よりも幾分質素なその食事をムシャムシャと食べていく。

 

食事はもうお手の物だ。軍で部下たちの食事なども作ったりしていたからだ。

 

「ん・・・・おいしい」

 

一人つぶやきながら麦飯を口にかき込むと食器を洗う。

 

そのあとは手持ち無沙汰となり、畑を耕したり、魚を釣りに川へ行ったりと一人生活をする。

 

夜暗くなれば昼にとった山菜と魚を調理し食べ、眠る。

 

単調なリズムの生活ではあったが今まで、殺し殺されという極限の場所を生き抜いていた俺からしたらそれは疲れていた心を整理する、休息を取るのに十分すぎる環境でもあった。

 

だがそのような環境でも俺は雪蓮と冥琳のことが頭から離れることはなかった。

 

一番忘れたいことを忘れることができない。この廃村だって結局は雪蓮と冥琳とで初めて会った村だ。

 

未練がましく、女々しい自分に嫌気がさす。いっそのこと魏にでも行ってしまおうかとも思えたが、それはそれで気が引ける。

 

人との関わりを無くせば答えは出るかと結局中途半端で逃げて、答えが出せていない。

 

そうした人との関わりを無くした生活を続け、はや2ヶ月。

 

何時ものように畑を耕し終わったあと、釣りに向かおうと思っていた時であった。

 

「久しぶりじゃな、北郷よ」

 

黄蓋が片手を挙げてよぉと挨拶をしてきた。

 

「・・・・・ご無沙汰しております・・・・」

 

「うむ、急にお主が姿を消したというのでな・・・・。お主を探しておったのだ」

 

俺は祭に相談することもなく、黙って軍を去ったことを糾弾されるのかと覚悟をしていた。

 

しかし彼女はそれに触れることなく、ここの生活について聞いてくる。

 

「今から釣りか・・・。儂も一緒にいいかの?酒もある、ゆっくり過ごそう」

 

 

タプンと酒の入った瓶を見せるとニヤリと笑い、俺の予備の竿を勝手に拝借する。

 

「うん・・・・。じゃあ・・・・・」

 

その後何時もの川で二人ならんで魚をじっと待つ。

 

黄蓋は竿を器用に固定させると、そのまま酒を静かに飲む。

 

彼女はただ気持ちよさそうに川のせせらぎに耳を傾けている。

 

「風が気持ち良いな。世俗とも隔離された場所で川のせせらぎを聞きながら酒を飲む。これがなんと至高のことよ」

 

嬉しそうにそう語る姿に相変わらずだなと苦笑すると祭もそれを見てニカッと笑う。

 

「ほれ、お主も付き合え!!」

 

黄蓋はそう言うともう一つお猪口を出すと酒を注ぎ、俺に渡してくる。

 

「うん」

 

俺は頷くとそのまま川を眺めながら、酒を飲む。二人はただ何も言わず釣りを楽しむ。

 

祭は釣りをしている最中、決してこちらから話しかけてくることもせず、黙って釣りと酒を興じる。

 

夕方になり魚も二人分釣れたことから村に戻り、魚を調理しようとする。

 

「ああ、お主は何もせんでも良い。儂の極上の馳走を楽しませてやるからの」

 

そう言うと勝手に調理場に入り、釣った魚を三枚におろしていく。

 

彼女のそのさばき方は一切の無駄がなく、凄まじい経験があるのだと察するのに十分すぎるさばき方であった。

 

「じゃあ・・・祭さん任せたよ」

 

調理台から出ていき、俺は火をおこすべく外に出ていった。

 

それからはいつもの質素な食事が一転、ただの魚と山菜と麦飯がここまで変わるのかというくらい独創的かつ美味な匂いを放つ料理になっていた。

 

そのあと焚き火を前に食事を二人でする。

 

見た目のとおり口に旨みが広がり、顔を絆す。

 

「うまい・・・・」

 

「・・・・そう言ってくれると助かるのう。ここは質素すぎるゆえ調味料がなくてな、なかなか苦戦したぞ」

 

アッハッハッハと笑うと笑顔で食事を取る祭。

 

そして食事を終えると就寝をする。二人で一緒にというのはさすがにはばかられるので自分が使っている寝具に祭を寝てほしいと提案する。

 

「なんじゃ・・・お主と閨を共にできると楽しみにしておったのだがのう」

 

嘘か本気かわからない態度で残念そうにそう言うと祭はあっという間に眠りにつく。

 

良く食べ、良く寝て、そしてよく働く。

 

祭はまさにそんな人間であり、彼女のその豪快さと自分を一切責めないその気遣いに深い感謝をする。

 

「ありがとう・・・・祭さん」

 

礼を言うと俺はその場で雑魚寝でまぶたを閉じ、意識を手放したのであった。

 

 

翌日になると祭は建業に帰るといって去っていった。

 

何も言うことなく友人に別れを言うようにサラッと言うとそのまま彼女は村を去っていった。

 

それからというものの祭は毎週末に俺のところに来ては酒を飲んで釣りを楽しみ、そして食事を作っては翌朝去っていくということを繰り返した。

 

呉に戻って来いということもなく、雪蓮や冥琳のことを聞いてくることもなく、ただ俺と一緒に酒を飲んで釣りを楽しんでいた。

 

そしていつもの酒を飲みながら祭は釣りに興じる。そんな彼女を見ながらもついに確信に迫ることにした。

 

「祭さん・・・・」

 

「ん?なんじゃ?」

 

「俺を連れ戻しに来たんじゃないのかい?」

 

「・・・・どうしてそう思う?」

 

「冥琳に言われたのかなって・・・・。彼女怒ってるんだろうなぁ・・・・」

 

「そうじゃ。だがここでお前を強制的に連れ戻してものぅ。冥琳と策殿とお前は果たして以前のように戻れる自信はあるのか?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「だろうな」

 

そう言うとまた酒を飲み釣竿を動かす。魚が餌に食いつくように上下左右にゆっくりと動かしながらそう呟く。

 

「祭さんは戻れとは言わないの?俺がこんな脱走に近いやり方で途中で投げ出して・・・・」

 

「言って欲しいのか?」

 

「・・・・・・・・・」

 

「フン、儂を見くびるでないぞ北郷よ。それはただのお前の行いを正当化させる逃げでしかないのはお見通しよ。自分が裏切り行為をしたことで、皆が自分に恨みを持っていると思われたいのだろうて。違うか?」

 

 

何も反論ができずに頭を下に下げる。図星であった。

 

自分がいっそのことに憎まれてしまえば、どれだけ楽であるか。そう思わない日はなかった。

 

雪蓮や冥琳を・・・憎むことなどできないそれなら・・・・そう考えてたからだ。

 

雪蓮は俺を確かに心配し、そして信じていた。

 

それなのにそんな彼女の思いをフザけた疑念を持ち、踏みにじってしまったのだ。

 

穴があったら入りたい。これから彼女の前で業務をこなせる自信がなくなっていたのだ。

 

「ゆえに儂はお主を罵ることはせん。こうして酒を飲み、釣りをし、飯を食い、そして寝る。それだけよ」

 

「聞かないんだね?」

 

「聞いて欲しいのか?」

 

「それは・・・・そうだね。祭さんに聞いて欲しい・・・・」

 

「ほぅ、ようやく素直になりおったな小僧よ。よかろう、話してみぃ」

 

「雪蓮と冥琳のことだけど・・・・。彼女たちってどういう関係なのかなって・・・・」

 

「そうじゃな・・・・。しいて言えばあやつらは強い結び付きで結ばれた関係だということかの。幼い頃から常に手を取り合い、厳しい修羅場を駆け抜けていったのだ。そういった関係になるのは理解はできるの?」

 

「・・・・・うん」

 

「だがな冥琳と策殿はそう言った強い絆を持つが・・・・策殿はお前に惚れていたのは確かじゃ」

 

「どうしてそれがわかる?」

 

「簡単じゃ。冥琳といるときと違う雰囲気を、策殿はお主といるときは放つからよ。お主といるときの策殿は・・・年相応の女に戻る。これは冥琳といるときにはなかった変化だったのじゃ。それにお主が呂布にやられたときのあの慌てよう・・・・。策殿は母である堅殿が死しても決して弱さを見せなかった。それがお主を見たときのあの姿は・・・・儂も心底驚いたよ」

 

そう言うと祭が持つ竿がピンと動いた。彼女はシュッとなれた動きで竿をしならせ、魚を釣り上げる。

 

そしてまた餌をつけて川に釣竿を落とす。

 

「お主は策殿に儂に聞いたような、疑念を話したのか?」

 

「いや・・・・、言えるわけ無いだろ?」

 

「どうしてじゃ?」

 

「だってそれで拒絶でもされたら・・・・」

 

「それで逃げてどうする?伝えるべきことを伝えず・・・それでお主の答えは出たのか?お主が策殿と添い遂げたいと思うのなら冥琳との関係は避けて通れんはず。それが分からんほど阿呆ではなかろうて」

 

「・・・・・・・・・・・・・」

 

「それとな・・・・北郷、お前をその程度で拒絶するような女との関係を、後生大事にとっておく必要がどこにあるというのじゃ?」

 

「そうは言っても・・・・」

 

「北郷、お主は策殿を今でも想っておるのじゃろ?」

 

「ああ」

 

「ならきちんと話し合え。冥琳かてお主と策殿のことを理解してくれとるはずじゃ。・・・冥琳がお主に怒ったのはな、お主のそういった弱さゆえよ。・・・・あやつはお主を支えたい。そう言っておったのに・・・・」

 

「冥琳が?!」

 

「そうじゃ。冥琳は策殿を冷酷な孫呉の王から、優しい女に戻せるお主に希望を見出していた。冥琳には自分ではそれができないということを知っていたのであろうよ」

 

「そんな・・・・彼女が・・・・」

 

「冥琳はお主をずっと待ち続けるだろうよ。それにお主の部下たちもな。あやつらは今も北郷隊の名のもとで訓練を続けておる。お主におんぶにだっこではいけないとな。良き部下たちを持ったものよ、まったく幸せ者だよ。お主は」

 

「あいつらが・・・・・、それに冥琳・・・・雪蓮・・・・・・」

 

「辞表を出すのはお主が策殿から本心を聞き出してからで遅くはない。・・・・まぁこの激動の時代、後悔はないようにの」

 

ほれ、魚だ。と祭は俺に渡すと立ち上がる。

 

「さて儂は伝える事は伝えた。後はお主次第よ」

 

そう言って踵を返し森を立ち去ってしまった。

 

「後悔のないようにか・・・・。その通りだな、祭さん。俺はもう一度向き合ってみようと思う・・・」

 

このまま逃げていても、結局は気持ちの整理もできず一生後悔をしたまま終わってしまう。

 

それは俺は嫌だった。彼女に飽きられ、捨てられるかもしれない、打ち首になるかもしれない。

 

しかし自分のやったことは自分で落とし前を付ける。それがたとえどんな結果になってもだ。

 

自分の心がもう一度火が灯る。

 

俺はもう逃げない。逃げたくないと強い決意をするのであった。

 

 

「儂ができることはここまで。北郷よ、後はお主の心意気次第よ」

 

去っていく最中にそう呟く。

 

すると人の気配がすることから少し警戒を祭はするが、そこに見知った人間がいた。

 

「冥琳、お主・・・・・」

 

「さすがは宿将と言われるだけはありますね。祭殿」

 

「・・・いつからいた?」

 

「北郷と祭殿が話しているときに・・・・話は聞かせていただきました」

 

冥琳は祭に任せてはいたものの、やはり自分で捜索をしていたようで彼の居場所を突き止めたということなのだろう。

 

「・・・・・北郷はな、お主と策殿の関係に気づいておる。どうするよ」

 

「・・・・・・そうですね・・・・。ここが引き際だ・・・・という事なのでしょう。明日の夜に雪蓮と話し合うつもりです」

 

祭に問われると冥琳は腕を組み、遠い目でそう言う。

 

その表情は悲壮感はなく、どこか憑き物が取れたかのような晴れ晴れとした表情であった。

 

「お主、策殿と・・・・・終わらせるつもりか?」

 

祭が彼女にそれでいいのかと再度問うと、彼女もゆっくりと頷く。

 

「雪蓮と私の関係はもうずっと前から終わっていたのですよ、祭殿。今、私が未練がましく依存して彼女を縛り付けているにすぎない・・・・それだけのことです」

 

「ほんとうにそれでよいのか?」

 

「はい・・・・・。雪蓮には幸せになってもらいたい。それが私の願いでもあり、悲願でもありますから・・・・。それに北郷がいる。彼に私は全幅の信頼をしておりますゆえ・・・・。今日、彼の悩みを間接的にだが聞けてよかった。そう思っています」

 

「強くなったな、お前は。儂は・・・・お主を誇りに思っておるよ」

 

「・・・・・ありがとう・・・・。祭さん」

 

冥琳はそう言うと頭を下げる。

 

「策殿とのことケリが付いたら儂と付き合え。門出祝いといこうぞ」

 

「はい・・・・・・」

 

二人でニッコリと微笑むと二人で城へと戻っていった。

 

「・・・・・以上で政務報告は終わります」

 

「ん。順次予定通り・・・・ね」

 

軍師・文官たちの報告を雪蓮は聞いてはいるが、いつものようなキレはなく何処かうわの空に見える。

 

それに全く覇気がない。

 

まるで牙を抜かれた虎だとここにいる人間は思っているに違いない。

 

冥琳はそんな雪蓮にあえて何も言わず報告会の進行を進める。

 

「結構だ。ではこれから国家基本法の枠組みについて・・・・」

 

その後政務報告会が終わると、冥琳は会議を進行させるべく声を張り上げた。

 

・・・・その後は法律諮問会へと冥琳と雪蓮は足を運ぶ。

 

「よって呉の司法改革案としましては・・・・・」

 

文官が説明をするが雪蓮は聞いているのか聞いてないのか良く分からない表情でボケーっとしている。

 

結局雪蓮は終始意見をいうこともなく、集中力も散漫であった。

 

それが終わると庶民たちの意見交換会が始まる。

 

「町民の意見としては商売の権利はまず大事にして欲しいねぇ・・・」

 

と町人たちと文官たちは意見を交わす。

 

街で起こっている諸問題を挙げてもらい、それに対し法でどうやって解決策を探るのかという意見公聴であった。

 

だが雪蓮は相変わらず覇気がない。

 

「・・・・・・・・はぁ」

 

意見公聴の場でも雪蓮は溜息をつくと椅子に終始グテーっとしており、何も発言しようとすることもなく無気力と化している。

 

その後公聴会が終わると執務室へ。

 

下から上がってくる各政令所からの報告書とその決済書の確認だが・・・雪蓮はあいかわらず仕事の進捗具合があまりよろしくはなかった。

 

「はぁ・・・・・」

 

決済書にサインをしようとする手を止め、深い溜息をつく雪蓮。

 

「もう!いつまでそうやってるのよ!!」

 

「詠ちゃんそういう言い方は良くないよ・・・・・。雪蓮さんもきっと疲れてるんだよ。私たちもお手伝い頑張ろ?」

 

「ボクや月を奴隷にするつもりなのかしら・・・・まったく・・・」

 

董卓こと月と賈駆こと詠の二人は雪蓮の秘書として仕事を手伝っている。

 

だがやはり肝心の雪蓮がやはり芳しくないことに詠は苛立ちを募らせるが月は詠を励ます。

 

詠はブスーっとしながらもテキパキと仕事を進めていく。

 

その事務処理能力の高さはさすがは一国の宰相でもあった人物である。

 

そして夕方になれば、月と詠は下がり雪蓮が一人だけが執務室に篭る。

 

酒も飲まず、食事もすることもなくただ夜空を眺め、何やら考えている。

 

「まだいたのか・・・・。部屋に戻らないのか?雪蓮」

 

子供をあやすような優しい口調で冥琳が執務室で雪蓮に呼びかける。

 

「うん・・・・・」

 

「北郷が去ってもう2ヶ月か・・・・」

 

「そうね・・・・。もう・・・・帰ってこないつもりかしら。あのバカ・・・・・」

 

「分からん。しかしこのまま行けばそうなる可能性も否定はできないかもな」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「雪蓮、お前は北郷の天幕に行ったとき一体何があったのだ?」

 

雪蓮は夜空を見上げながらポツポツと事の経緯を話し始めた。

 

「・・・・・・・一刀をはたいたの」

 

「ほぉ、それはどうしてなかなか・・・・喧嘩をしたということか」

 

「それでその後一刀が怒って・・・・」

 

「うん、それで?」

 

「押し倒されて・・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「接吻をされた」

 

冥琳は厳しい顔を崩さずそのまま話の続きがあるのだろうと思い、続きを促す。

 

「・・・・・まるで展開が読めんな。結局はただの痴話喧嘩にしか見えんが、彼は何か言っていたのか?」

 

「・・・・俺がどんな思いでいるか知らずに・・・・って」

 

「なるほど・・・そうか。それでお前はどうして北郷をはたいたのだ?」

 

「私と冥琳の関係を疑っていたようだった。多分曹操に喋った時のあの台詞が発端だと思うわ。・・・でもね・・・私が彼が倒れたときどんな思いであの時いたのか考えずに、一刀は私と冥琳をいやらしい疑った目で見続けた。私はそれで腹をたてて・・・」

 

「そうか・・・・」

 

「私たちの雰囲気がまるで・・・ってね。多分・・・バレてるみたい・・・・」

 

「雪蓮、いい加減こっちを向きなさい」

 

冥琳は深い溜息をつくと母親のような口調で雪蓮に声をかける。

 

そっぽを向いて空を眺めていた雪蓮はゆっくりと振り返る。

 

雪蓮は泣いていた。

 

静かに・・・・涙をポロポロ地面に落とし、水滴がシミを作り広げていく。

 

「まったく・・・泣くぐらい後悔しているなら、なぜ分かってやらなかったのだ」

 

「・・・・・だって・・・・・」

 

「いいか雪蓮、北郷は・・・・・北郷はな、お前に惚れているんだよ。だから不安にもなるし、独占欲もわくんだ。なぜそれを分かってやらない?」

 

「私も一刀のことが・・・・・でも冥琳との関係も大事にしたいと思ってるのよ!だから‐‐‐‐」

 

「雪蓮、一つ言っておくがな・・・・・」

 

冥琳は雪蓮の言葉を遮る。

 

少し怒気を含んだ冥琳の声に俯いていた雪蓮は顔を上げる。

 

その顔は怒ってもいるようで、それでいて今にも泣きそうな顔をしている。

 

「私は他人を、ましては親友と呼ばれる人間を深く傷つけてまで、お前を抱こうとはしないよ。友を絶望の淵に落とすことを前提としたこの悪行が、そしてそれがお前が考える愛というのなら、私はお前を見限るよ。雪蓮」

 

「?!」

 

「考えてみろ、北郷は別の世界からきた人間だ。我々とは考えている価値観や倫理観に違いはあるのは当然だ」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「お前は彼を分かろうとしたのか?そして彼の思いを・・・理解しようとしたのか?お前は北郷が私との関係を疑っているのなら、北郷に本当のことを話そうとしたのか?」

 

「それは私にも非はある。・・・でも私があの時どんな思いで一刀を見守っていたのか、彼は知ろうともしなかった。そんな彼に怒りを抱く私は間違っているというの冥琳・・・!!」

 

「ああ・・・、間違っていない。ではなぜそれを北郷に言わなかった?怒りを北郷に投げつけて、ぶつけ、それで北郷はお前の考えを理解できると思っているのか?」

 

雪蓮は下を向いたまま冥琳の問いに答えることができずにいた。

 

そうだ。雪蓮はあの時怒りを北郷にただぶつけただけだった。

 

それに対し北郷が投げやりな気持ちになるのも無理のない話なのではないだろうか?

 

と雪蓮は頭で静かにそう問い詰めた。

 

「お前は分かっているかもしれないが・・・・、私は貴女を一人の女性として見ている。でも私が貴女に抱く好意と同じくらい、私は北郷が好きなのよ。だから北郷の気持ちも私は痛いほど良く分かる・・・。彼はどんな思いで・・・・いったいどんな思いで君を見守ってきたのかが・・・」

 

雪蓮は冥琳の怒気のはらんだ語調に気圧されてしまうが、北郷の気持ちを察したのか顔に僅かに影を落とした。

 

「それが分かるから、だから・・・・だから私はこの仮初の舞台から降りようと、・・・そう決心した。北郷と雪蓮が・・・・私が愛した貴女たちが二人が笑顔で、幸せに、そして共に暮らせるように・・・・」

 

冥琳は泣きそうな顔を一瞬し声を僅かに震わせるが直ぐに元に戻り、優しく微笑みかけ雪蓮に話し続ける。

 

「北郷に言ったことがあるわ。貴女を解放すると。その意味はもちろん孫呉の呪縛もある。だが私という呪縛を雪蓮はもう抱えるべきではない。そういう意味でもあったのよ・・・」

 

「冥琳・・・・貴女・・・・・」

 

「貴女が好きだった・・・・雪蓮。でも・・・・・私では貴女を幸せにはできない。今の私と貴女はただ依存しているだけ・・・。寂しい身を二人で快楽で繋ぎ留め、そして慰め合っている。それだけに過ぎないわ」

 

そう言うと冥琳は踵を返し執務室を出ていこうとする。

 

「冥琳!!」

 

「すこし自分のことを喋りすぎたな・・・・・」

 

雪蓮は冥琳を呼び止める。

 

だが冥琳は決して振り向くことなく、そう言うと暗い闇へとカツカツと歩きやがて姿を消していった。

 

「ぐ・・冥琳・・・・私は・・・・私は・・・・・あぁぁぁぁ・・・・」

 

雪蓮はあとをおうことができず、足が一ミリも動かすことができずにいた。

 

冥琳の想いを、そして悲しい吐露を聞いた彼女はただ涙を流し続けるしかなかった。

 

その後冥琳は祭の部屋に訪れた。祭は何も言わず、酒を持ってきてお猪口を差し出す。

 

「終わったのだな?」

 

「はい・・・・・」

 

「そうか、飲め」

 

そう言うと酒を注ぐ。注ぎ終わると冥琳はゆっくりとその酒を口に入れた。

 

「・・・・・後悔はしておりません。ですが・・・・自分の大切な何かが・・・失われたみたいで・・・」

 

「お主の想いを全て無にし、忘れろとは儂はいわんよ。ただ気持ちの整理はつきそうかの?」

 

「大丈夫です。明日にはいつも通りに戻れる、この酒を飲んだら・・・・」

 

そう言って新たに注がれた酒を飲むが彼女の涙が頬を伝い、水滴がお猪口に落ちる。

 

「涙割りの酒とはな・・・今日の酒は格別だろうよ。冥琳ここには儂しかおらん。今は泣きたいだけ泣くといい」

 

「・・・・・はい・・・・私はこの酒の味・・・一生忘れることはないでしょう、祭さん・・・・」

 

冥琳は涙割りの酒を飲むと・・・震えて、崩れるように泣いた。

 

そんな彼女を見て祭も黙ってそばに抱き寄せ、頭を撫でる。

 

「・・・・今は辛いかもしれん。だが時間がいずれお主を癒してくれるだろうて・・・」

 

「はい・・・・は・・・い・・・」

 

抑えきることができず涙をながし続ける冥琳をただ優しく祭は頭を撫で続けるのであった。

 

 

俺はその後建業へと向かうと拘束されると直ぐ様独房へと入れられた。

 

それから暫く、冥琳が俺の前に姿を現す。彼女の顔は暗がりでよく見ることができない。

 

「久しぶりね・・・・」

 

「ああ」

 

「逃げるようにここを去り、少しは頭が晴れたかしら?」

 

「うん」

 

「即答とは・・・、随分と物分りがいいな北郷」

 

「もう逃げたくないからね・・・。逃げて、逃げて、その先にあるものは結局は何もなかった。俺は・・・向き合わないといけないんだって痛感したよ」

 

「それは雪蓮のことか?」

 

「それもある。だけど俺を取り巻く諸々全てにだよ。生きている人間にはやらなければならない責務があるからだ。しかし除隊された身だ。あらゆる処分を受ける覚悟は出来てる」

 

「・・・・・責務か。・・・北郷、処分を言い渡す。お前は1週間独房入りと半年の減給だ。その後は職務に復帰、親衛隊の運営に全力を挙げよ」

 

「な?!俺の除隊届は君も知っているだろう?俺はもう孫呉の兵士では・・・・」

 

「いいや違うな、お前は除隊していない。だがお前に渡されたものはこれだろう?」

 

とそう言うと俺が書いた除隊届を目の前で真っ二つに引き裂く。

 

「私が判を押し除隊を認めなければ、正式な除隊とは言えない。それが法で決められた除隊するうえでの正式な決まりだ。私もお前も法を何ら犯していない、何の問題がある?」

 

「・・・・・冥琳、君は・・・・・」

 

「故に貴様は外出届不提出による無断行動という軍規に基づき処罰を行う。文句はあるか?」

 

「いいえ・・・ありません・・・」

 

「雪蓮はお前がいないと・・・・貴方がいないとダメなのよ。それを・・・・理解してちょうだい」

 

「・・・・・ごめん」

 

「謝るのなら、孫呉の、そして彼女のために戦え。私から言えるのはそれだけだ」

 

そう言うと独房から去ってしまった。

 

それから1週間職務に復帰し、北郷隊を見に行くと訓練をしていた部下たちがこちらに一斉に駆け出してくる。

 

「隊長!!」

 

「どこに行っていたのですか?!」

 

部下たちの叱責に俺は頭を下げる。

 

「すまなかった。俺自身・・・・・自分を見つめ直す時間が欲しかった・・・・。無断で失踪したことは申し訳ないと思っている」

 

「しかし貴方はここに戻ってきた。という事はまた我々と戦う、ということでしょうか?」

 

副官が静かにそう言う。俺は頷くと強い眼差しで部下たちを見つめる。

 

「俺に故郷はない・・・。ここが・・・・この隊が俺の故郷なんだ。心機一転心を入れ替えて俺も精進する。今まで申し訳なかった」

 

再度頭を下げる。

 

「さぁ隊長もこう言っておられるのだ!訓練を続けるぞ!!」

 

そう言ってパンパンと手を鳴らし部下たちを副官は訓練に戻らせると、俺を見て疲れた笑みを浮かべた。

 

「貴殿からそのような言葉を聞けて本官も嬉しい所存であります。・・・・また共に戦えること嬉しく思います」

 

そう言って手を差し出してきた。

 

「よろしく頼む」

 

俺はそんな彼に微笑むと握手をがっしりと交わした。

 

 

それから暫く、雪蓮から呼び出しを受けることになる。

 

いよいよだな。と自分を奮い立たせ、彼女の執務室に向かうが・・・見知らぬ侍女たちが・・・。

 

「ん?ちょっとアンタ、誰?!勝手にここに入って・・・・」

 

眼鏡をかけた女性が注意をしようと声を上げるが俺はそれを遮るように事情を説明する。

 

「孫策親衛隊の隊長の北郷です。孫策様から呼ばれましたのでこちらにお伺いをしたのですが?」

 

俺の有無を言わさぬその言葉遣いと気迫に眼鏡の女はグッと気圧されてしまうが隣の優しい雰囲気をまとった侍女が笑顔でニッコリと向かい入れてくれる。

 

「話は聞いております、北郷様。こちらへ・・・・」

 

「ちょっと月、貴女が・・・」

 

「詠ちゃん?」

 

眼鏡の女は彼女に詰め寄られると降参のポーズをした。

 

「分かったわよ・・・・。いきなり大声を出して申し訳なかったわ。謝罪する」

 

そう言って眼鏡の女は頭を下げると二人で雪蓮のところまで案内をしてくれた。

 

「孫策様、本郷様がお見えになりました」

 

『ゆえ』とさっき言われた少女が孫策の執務室前で声を出すと、扉の前で暫く・・・。

 

「入りなさい」

 

と抑揚のない声が聞こえた。その後部屋に入ると雪蓮は書簡の山の前で難しい顔をしていた。

 

「直ぐ様お茶を用意します。そこにおかけになってくださいね」

 

そう言って『ゆえ』と『えい』二人で部屋を出ていく。その間、雪蓮はずっと書簡を見たまま何も言わない。

 

書簡を睨みつける姿は王の尊厳が伴う、威圧感のある佇まいであった。

 

(・・・・ん?)

 

ただその読んでいる書簡に違和感を感じた。よく見ると文字が逆さまである。

 

気が動転しているのをなんとか収めようとしているのか、こんなチグハグな彼女を見るのは初めてであるため俺も少し動揺する。

 

「お茶をお持ちしました」

 

とゆえという少女が言い二人でお茶を配ると雪蓮はご苦労様、下がっていいわというと二人はそそくさと出て行ってしまった。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「雪蓮・・・・・・」

 

何も言わないまま彼女はずっと書簡を睨んでいたがため息をついて書簡を放り投げ、俺の座っている対面に椅子を置くとドスンと腰を落とした。

 

「おかえり・・・・・一刀」

 

「・・・・・・ごめん」

 

「私の方こそ・・・・ごめんなさい」

 

「そんな・・・・雪蓮が謝ることは・・・・」

 

「・・・・冥琳にね、あのあと叱られちゃった。一刀の気持ちを分かってやれって・・・・」

 

「冥琳がそんなことを・・・・」

 

「それとね・・・隠すつもりはなかったんだけど・・・一刀、本当のことを言うとね、私は冥琳と・・・・関係を持っていたわ。あなたが予想していたとおりだけど・・・」

 

「うん、なんとなくだけどね・・・・。わかっていたよ」

 

「でも・・・・でも・・・・昨日冥琳にもう終わりにしようって言われちゃった」

 

「え?!」

 

「もう限界だってね・・・。自分では私を幸せにできないってそう言ってね」

 

「どっちつかずな態度で・・・私は冥琳に甘えていただけなのかもしれない・・・。もちろん貴方にもね。二兎追うものは一兎も得ずとはよく言ったのもね」

 

「・・・一兎も得ずではないよ、雪蓮。冥琳と雪蓮との関係はこれから始まるんだから」

 

「え?」

 

「冥琳も君との関係を断ち切り、ただの赤の他人になるためにこんな辛い決断をしたわけじゃないと俺は思う。君が大事だから・・・君が好きだからこそ・・・彼女はもう一度、友人に戻りたいと考えたんだと俺は思う」

 

「一刀・・・・随分な言い方ね。まるで冥琳の気持ちが分かってるかのように」

 

「分かるさ。冥琳は雪蓮を見るとき、凄く愛おしそうに見ているのを知っているからね。冥琳は・・・君のことが本当に好きだったんだと俺は思うよ・・・。だから分かる、だって俺は冥琳と同じ思いを抱いてきたのだから・・・・」

 

「同じ想いか・・・・・・・・・・・・冥琳と同じことを言うのね・・・・」

 

ぼそっと雪蓮が呟くがその声は北郷の耳には決して届くことはなかった。

 

「雪蓮、好きだよ。今まで言えなくて、そして逃げて、情けなく思っているかもしれない。だけど・・・・君にこれだけは伝えておきたかった・・・・」

 

「・・・・・・・・・・!!」

 

「答えは今すぐ出さなくてもいい。それに嫌ならそれでも構わない。ただもう逃げることはしたくなかった。もう一度君と向き合いたかった。だから戻ってきたんだ」

 

そう言うと席を立ち直ぐ様執務室を出ようとする。雪蓮はその後立ち上がり、彼の腕をグッと掴む。

 

「待ちなさい!私も気持ちも聞かずに・・・言うだけ言って・・・また逃げる気?」

 

「・・・・正直うとね、大見栄きったクサイ台詞をはいたけども本当は君に拒絶されるのが怖いんだ・・・。だからあの時も逃げた。君にぶたれたとき、最低だと言われたとき、俺はどうしようもない恐ろしさに駆られたんだ。怖いんだよ・・・。俺は・・・君に拒絶されるのがなによりも怖いんだ」

 

北郷は振り返りもせず、執務室の扉を見ながらそう呟く。

 

彼を掴んでいるその腕は微かにだが震えていた。

 

「・・・・バカ!」

 

「え?!」

 

「そうやって結局は一人で思い込んで・・・・バカよ!」

 

そう言って彼女はグイっと引っ張ると北郷を正面に向かせ頬をペチっとはたく。

 

 

だがそのはたきは以前のような強烈なものではなく、ポンっと頬優しく叩いたものであった

 

「嫌いだったら・・・、嫌だったら貴方に接吻なんて許すわけ無いでしょ・・・・!嫌いだったらこの私が泣いて・・・貴方を心配なんてするはずないでしょ・・・!私がそんなに尻軽女に見られているなんてそれこそ私を甘く見ているわ、一刀」

 

「雪蓮・・・・」

 

「好き!私も貴方が・・・・好き・・・・!!もう逃がさない・・・・!」

 

そう言うとグイっと引っ張り、頬をガシッと両手で掴んで口づけを交わす。

 

北郷は彼女を強く抱き寄せると彼女は熱い吐息を吐き出す。

 

「・・・・・ごめんな・・・・。ごめんよ、雪蓮」

 

「うん・・・・、私も・・・・ごめんなさい」

 

謝りながらも再度口を重ねた。彼女の吐息が段々と熱くそして荒々しくなっているのが分かる。

 

そのあと北郷は強く抱きしめたまま、濃厚な接吻を交わすべく口を開けると直ぐ様彼女の舌が北郷の舌へ蛇のように絡めてくる。

 

「ふぅ・・・ん雪蓮・・・・!」

 

「一刀・・・・・あぁ・・・・ふぅ・・・・」

 

湿っけのある音が二人を包み、その音が二人をより深く淫靡な世界へと堕としていく。

 

「ムグ・・・・ぷはぁ!しぇ・・・・雪蓮・・・・ダメだ・・・・これ以上・・・・」

 

彼は理性を働かせ彼女の接吻から逃れようとするのだが雪蓮はそれを決して逃さない。

 

「ん・・・・ダメぇ・・・・また逃げる気・・・・?この意気地なし・・・・!」

 

そう言うとグイっと雪蓮は襟元を掴んで抱き寄せ、決して北郷を逃さない。

 

そのまま彼女から接吻を始め、北郷もそのまま彼女の濃厚な口づけに自我と理性が蕩けていく。

 

「はぁ・・・・あ?!雪蓮?・・・そこは・・・ぐっ!ダメ・・・だよ・・・・」

 

抱きついていた雪蓮の片腕が彼の胸を優しくなで、そのまま北郷の股間へとスーっと伸びていく。

 

「うっ・・・・ちょ?!・・・まっ・・・・はぁ・・・・」

 

「一刀・・・・あたしにも触れて?あたしももう・・・・」

 

彼女はそのまま触れるか触れないかの絶妙なタッチを北郷の下腹部にツーとなぞり、北郷は絞り出すかのような吐息を吐き出す。

 

雪蓮は北郷の快楽に歪む顔を見て、ゾクゾクと背筋を震わせると空いている彼の手を持ち、自分の豊満な胸へと導く。

 

 

北郷はもう理性を捨て去ると、導かれた腕を駆使してそのまま彼女の豊満な胸を優しくなでる。

 

服をずらし、形のいい大きな楕円をした乳房がプルンと揺れ出ると雪蓮は熱い溜息を吐息をこれから起こるであろう期待から漏らす。

 

「はぁ・・・・・かず・・と・・・ん・・ちゅ・・・はぁ・・・・」

 

「雪蓮・・・・ん・・・好きだ・・・・。ずっと・・・・ずっと・・・ちゅ・・・んぐぅ・・・」

 

柔らかな双璧を成す、神秘の山を北郷は優しくなでると雪蓮は歓喜の声を上げる。

 

そのまま北郷は彼女が快楽で開いた口に直ぐ様自分の口を重ね、舌を二人で絡めていく。

 

「ん・・・ちゅ・・・一刀・・・・私も・・・・貴方が・・・・好き・・・」

 

雪蓮は北郷の下腹部をフワリと触ったかと思うと、そのまま直にそして荒々しく情熱をぶつけるかの如く強く擦る。

 

「・・・・あぁ・・・雪蓮・・・・」

 

「気持ちいい・・・?」

 

「うん・・・・・俺も雪蓮を・・・」

 

彼がそう言うと触れていた乳房がいつの間にかゆっくりと彼女の秘所へと伸ばされ、優しく撫でる。

 

すでにソコは熱く、湿り気を帯びていた。

 

「あぁ・・・・はぁ・・・・・・ん。もっと・・・・一刀・・・・もっとしてぇ・・・」

 

ピチャピチャと音と共に女体の神秘を優しく撫でると雪蓮はさらなる快楽を得るために引き締まった脚を北郷のそれに絡める。

 

引き締まったなめまかしさを纏ったふとももが彼の股間に入り込むと、グイグイと擦りつける。

 

「はぁ・・・・・ここで・・・もう・・・いいのかい?」

 

「うん、もう・・・・もう・・・・我慢できないわ」

 

北郷は口づけをし、そのまま絡み合ったまま、押し問答のようにジリジリと雪蓮を執務室の机に追いやると、机に押し倒す。

 

溜まっていた書簡が彼女が押し倒されたことでバタバタと落ちていく。

 

だがそんなことは全く気にもせず二人は燃え上がる体を、想いをぶつけようと互いに愛撫を始め出す。

 

北郷は雪蓮の愛撫を受けながら、彼女の想いがその愛撫を通して伝わってくる錯覚に近い感覚を感じていた。

 

雪蓮も北郷と同じなのか潤んだ目から涙を流しながら、彼の覚束無いたどたどしい愛撫に熱い嬌声を上げる。

 

「ふふ・・・・一刀の気持ちが・・・伝わってくるみたい・・・不思議ね・・・・ん・・・ちゅ」

 

そう言って彼女は俺に口づけをする。

 

「ん・・・ちゅ・・・はぁ・・・・雪蓮・・・・」

 

「ん、来て・・・・・」

 

彼女は脚を開くとそのままガシッと北郷の腰に絡みつき彼の欲望を欲するかのようにグリグリとこすりつける。

 

「あぁ・・・雪蓮・・・・そんなにしたら・・・・」

 

「フフフ・・・はやくぅ・・・・・もう私も・・・・ね?」

 

俺は激情に身をただひたすら任せ、彼女の、そして自分の肉欲に溺れていくのであった。

 

それからのことは北郷はあまりに濃厚な行為であり理性が崩落したゆえに覚えていなかった。

 

断片的な記録が北郷の頭に残るが二人はただお互いの「雪蓮」と「一刀」と名前を言い合うのみであった。

 

彼の記憶にあるのは涙を流しながら北郷の名前を呼び、歓喜の嬌声を上げる雪蓮の姿だけであった

 

気がつくと行為が一段落し、彼女が一糸まとわぬ姿で呆けた顔で机の上で突っ伏していた。

 

「はぁ・・・・はぁ・・・・・んぅ・・・・はぁ・・・・」

 

息を乱し苦しそうではあった雪蓮の表情はとても幸せそうであり、また嬉しさを含んだ顔であった。

 

その後雪蓮は落ち着くと、北郷の前に立つ。

 

「・・・・ごめんね、ちょっと・・・・我慢できなくて」

 

そう言って謝る彼女に俺はクスリと笑うと微笑むと頭を優しく撫でる。

 

「いいんだ。・・・・あんな姿を見れて俺も役得だったしね」

 

「もう!それは言わないでちょうだい・・・・恥ずかしい・・・・」

 

自分が乱れた姿を思い出したのか、顔を赤くしてアワアワと慌てる彼女。

 

「ごめん、ごめん・・・。じゃあ・・・伯符・・・・これからも宜しく」

 

「う、うん・・・・。ハハハ、なんか照れくさいわねぇ~」

 

雪蓮は照れながら頭をポリポリとかきながら手を差し出し二人は強く握手を交わした。

 

もう離さない、離れない。二人がそう強く願う。

 

握手のあと二人でギュッと抱き合うと軽く口づけを交わした。

 

雪蓮は少し嬉しそうな顔をし惚けていたが、ハッと我に返りグイっと俺を離す。

 

「はぁ・・・・このままだったらまた抑えられなくなりそう・・・」

 

「いいなじゃない?たまには」

 

北郷がそう呟くと彼女を強く引き寄せて、また押し倒す。

 

その快楽に雪蓮は委ねるかのように再度目を閉じ、彼を受け入れるのであった。

 

結局その後彼とは三回ほど致してしまった。

 

席を外して長い時間、暇を持て余した侍女たちに怒られることになった。

 

その後北郷はイソイソと帰ったあとではあったが、二人が戻ってきた早々に詠は遅い!!待たせすぎよ!!と怒鳴ったあと顔を顰める。

 

「うげぇ・・・・なにこの臭い・・・・イカ臭い・・・・」

 

「こ、これは・・・・へぅ~」

 

詠は怪訝な顔をするが月は孫策の顔を見ると真っ赤に染め、イヤンイヤンというふうに顔を覆う。

 

「いや~ごめんねぇ~?ほら仕事、仕事!!」

 

そう言うと雪蓮は執務室に転がった書簡をパパッと集めて手早く纏めると仕事に戻る。

 

彼女の表情は以前のように活き活きと生気を取り戻し、信じられないスピードで処理していく。

 

「すご・・・・・、孫策ってこんな仕事が出来たなんて・・・・」

 

詠が驚きの表情でそう呟く。

 

「さぁ・・・・孫呉の躍進はこれから!!張り切るわよ!!」

 

パンパンと頬を自分で叩いたあと雪蓮はそう言い、溜まった書簡の山をあっという間に崩していくのであった。

 

「ありがとう・・・・冥琳」

 

そう呟く。

 

雪蓮の幸せを願い、自分の想いを殺したかつての恋人であった人間に雪蓮は思いを馳せる。

 

(私は・・・・必ず、必ず・・・孫呉の独立を果たして見せる・・・!そして一刀と・・・・。それが貴女が私に託した願いでもあるのだから・・・・)

 

強い決意を心で刻むと、次持ってきて!!と侍女たちに声を張り上げるのであった。

 

 

 


0
このエントリーをはてなブックマークに追加
0
0
4
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択