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鬼畜王文台 蘇りし虎は曹魏を食らう 15 第十一章三節

Degradationさん

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2009-10-28 23:16:02 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:6315   閲覧ユーザー数:4903

 

第十一章

 

 

 

-3-

 

 

 

 

文台様と雪蓮たちがどこかに出かけてから三日後。

城に戻った文台様は、皆を呼びつけて、蜀からなぞの密書を受け取った経緯を

華琳と雪蓮に説明させた。

 

冥琳「十中八九、敵の罠ですな」

 

その密書を受け取った経緯を二人より聞いた冥琳は、

内容を目にするまでもなく、まず開口一番、そう言い切った。

 

祭「わしもそう思うの。 わざわざ手紙の中身を読むまでもなかろうて」

 

稟「しかし、中に何が書かれてあるのかは、確認してみないことには……」

 

桂花「だからといって中に毒の粉でも封入されていたらどうするのよ?

   話にもならないじゃない!」

 

朱里「毒の粉、ですか…その可能性も然りですね… ですがやはり、稟さんのおっしゃるとおり、

   中を開けてみないことには始まらないかと…」

 

 

 

天の世界では、非破壊検査といって、見えない光、すなわち放射線で中身を透視することが出来る。

しかし、この時代、この世界には、当然そんな技術はない。

せいぜい、晴れた日に太陽を背にして中を透かして見るくらいだ。

それに今は曇り、しかも夕方。 この陽気では光をあてがって中身を確認することは到底無理だった。

 

 

雪蓮「ん~、だったらさ、一度外に出て中を開けてみたらいいんじゃない?

   それで、鋏で切って、中身をいっせーのせでさかさまにして地面に落としてみるのよ。

   もしクロだったらみんなして逃げればいいし、

   シロだったら落ちた手紙を拾って読めば済むことでしょ?」

 

華琳「へぇ、良い事に気が付くじゃない、雪蓮。 で、誰が開封役を務めるわけ?」

 

雪蓮「え~、それはだって、かずt」

 

煌蓮「却下ああぁ!!」

 

雪蓮「うわっ、びっくりした!! んもぅ母様、まだあたし全部言ってないじゃない」

 

煌蓮「んなことしまいまで聞かなくたって分かるよ! どうせ坊主にやらせようとしたんだろ?」

 

雪蓮「うっそ、何で分かったの!?」

 

煌蓮「こんの馬鹿娘えぇぇ、まだシゴキが足んなかったみたいだね!! 覚悟おし!!!」

 

桂花「(……ちっ)」

 

煌蓮「おるぁっしゃあああぁぁーーー!!!」

 

孫呉一の肝っ玉お母さんは、雪蓮の尻をスパパパパパパパーーーンと皆の面前でぶっ叩いた後、

『よこせいっ!!』の一言とともに手紙をふんだくって、皆の面前でそれを一気に開封してしまった。

 

 

煌蓮「…なんだい、本当にただの手紙じゃないか。 あたしゃもっとこう、毛虫とかゴキブリでも

   入ってるかと思ったんだけどねぇ」

 

桂花「……ひぃっ!!」

 

春蘭「ゴキブリだと!? どこだ!! どこにいる!? この夏侯元譲が、征伐してくれるわ!!!」

 

秋蘭「姉者、落ち着け。 害虫など、どこにもおらぬよ」

 

春蘭「むぅぅ、しゅうらぁん……」

 

秋蘭「よしよし……(姉者はホント、可愛いなぁ)」

 

雪蓮「ひ~ん、いったぁ~い… たーすけてぇ、かーずとおぉ…」

 

一刀「はいはい……まったく、自分がいけないんだぞ雪蓮」

 

雪蓮「ひっどぉ~い、ぶーぶー」

 

最近このお姉さんたちが俺より年下に見えるような気がするんだが、

恐らく気のせいではないと思う。 うん。

 

 

 

煌蓮「……坊主…には字が難しくて無理か。 冥琳、読んでみな」

 

冥琳「了解です」

 

こっちはこっちで、俺たちの騒ぎなんぞお構いなし。

文台様から手紙を渡された冥琳は、その文面に目を通し始めた。

そしてやはり同様に、その顔つきは厳しいものに変わっていった。

 

煌蓮「ほかの連中にも回し読みさせな、あたしゃ最後でいいよ」

 

冥琳「御意。 ……霞」

 

霞「……劉表が人間やない可能性やてぇ…どういうことやねんこれは!?」

 

一同「ッ!!!?」

 

煌蓮「ほぉ……霞ちゃんの言い分じゃ、どうやらあたし以外にもう一匹、

   人のそれでない奴がいたみたいだね」

 

 

そうだった。確かにあの時……

 

 

煌蓮『知れ!孫呉の精兵たちよ!!

   我は一度死に、そして再び、この世に舞い戻ってきた身!

   ゆえに我は、最早年を取ることもできぬ、妖怪変化や神仙と同じ体に成り果てもうた!!』

 

 

このようなことを俺たちの前で言っていた。

忘れもしない。

雪蓮が許貢の放った矢に倒れ、孫文台が再臨し、

それをきっかけに、怒りに震える孫呉の戦士たちの手によって曹魏が堕ちた、あの毒矢事件の日。

 

華琳『今思えば、あれは私に定められた天命だったのでしょう』

 

そう、曹操こと華琳に言わしめた、あの日の出来事。

ということは、文台様以外に、もう一人、黄泉路から出戻った人物。

それが劉表…?

 

 

 

華琳「……俄かには信じられないわね。 文台様以外にもう一人、神仙がいるなんて……」

 

煌蓮「あたしゃ自分が化け物だなんてこれっぽっちも思ってないし、

   坊主やお前らや民にそう思われたくもない。

   ただ、そう思われても仕方がないって面があるのは認めるよ。

   いきなり目の前でぽっと出で現れた、死んだはずの前王、こればっかは埋めようがないさ。

   これが物の怪の所業でなくて、何というさね」

 

秋蘭「文台様……」

 

煌蓮「いいんだよ秋蘭。 だったら、バケモンはバケモン同士で、正々堂々と戦おうじゃないか。

   この戦は最早避けようがないし、避けるつもりもあたしにゃぁない。

   どっちみち、あたしらのやることは変わらんよ。 蜀をボコして、三国を統一。

   その後のことは勝った後に考えりゃいいわさ。

   で、冥琳、その手紙にはほかには何が書かれてあるんだい?」

 

冥琳「はっ、それが…彼ら蜀軍の主要将軍格の一覧が書かれているのですが、

   その中に、あの華雄や黄祖、ほかにも許貢や袁術の名も含まれているのです」

 

華琳「許貢ですって!?」

 

煌蓮「黄祖だとおおぉぉ!!!?」

 

愛紗「華雄…生きていたか!!」

 

雪蓮「袁術ッ……!!」

 

稟「なるほど…やはり許貢は蜀に落ち延びていたか…

  これで劉表は、呉と魏に対し、暗殺任務を帯びた二重間諜を放っていた可能性が

  極めて高くなりましたね」

 

凪「それであの時、許貢が先走ったのか…!!」

 

思春「許しがたいですな。 なるほど、確かにこのような卑劣な手を使う劉表には、

   人心も離れるというものでしょう」

 

蓮華「それで、それをよしとしない良心ある将が、私たちにこの手紙を託したということね……」

 

朱里「駆虎呑狼の計…呉と魏を争わせて、お互いの力をそぐ策ですか…」

 

菖蒲「しかし、その結果として自軍が離間しているのは、皮肉としか言いようがないですね…」

 

冥琳「全く以って、そのとおりだな」

 

 

 

雪蓮「黄祖……母様を殺した孫呉の宿敵……生きていたか……!

   それに袁術や許貢まで……殺す…絶対に、生きて返さない……!!!」

 

 

ぞくり、と、俺の背後ですさまじい殺気がほとばしる。

あの日以来、久しく見なかった。 しかし今日この日、再び見ることが出来た。

目の前にいる愛しき人の、隠されたもう一つの姿。

さっきまで俺に甘えてばかりの、わがままでお馬鹿な雪蓮ではなく、

 

江東の小覇王・孫伯符の姿を。 孫呉の虎の娘が、今ここに帰って来た。

 

 

一刀「雪蓮、もう怪我はいいのか?」

 

雪蓮「ありがとう一刀…華佗が懸命に鍼で治してくれたおかげよ。

   蓮華、シャオ、祭、みんな…今まで隠していてごめんなさい…でももう大丈夫。

   私も、次の戦には出るわ。 母様と一緒にね」

 

祭「策殿…!」

 

小蓮「お姉ちゃん!!」

 

蓮華「姉様…!!」

 

煌蓮「隠しておいてすまないねお前たち。

   本当なら、次の戦のときまでは明るみにしたくなかったんだけど、

   この馬鹿娘ったら、血気にはやっちゃって、まったく……」

 

そういう煌蓮さんも、本気で怒っているわけではないらしく、

時折ニヤリと口の端を吊り上げながらほくそ笑んでいた。

 

煌蓮「雪蓮は孫呉(ウチ)の取って置きの隠し玉さ。

   華琳ちゃんと馬鹿娘にゃ、川をのぼって西に回りこんで

   連中のケツに火をつけて欲しいんだ。 やってもらえるかい?」

 

華琳「承知いたしました。 この曹孟徳、謹んでお引き受けいたしましょう」

 

雪蓮「良いわ、やってみせようじゃない。 面白そうだし」

 

煌蓮「おぉし! 今日のところはこれで解散!!

   今日明日はゆっくり休んで、来るべき戦への英気を養ええぇい!!

   奴らが動き出したら、こっちもすぐに出るぞ!!

   各自、戦への備えは万端にしておけぇい!!!!」

 

 

 

 

それから半月後。

ついに、劉表率いる蜀漢が長安を発ち、函谷関における西の城塞都市、

弘農に向けて進発したとの情報が偵察部隊より寄せられた。

俺たちは、すぐに準備を整え、貂蝉・卑弥呼を司州河東に、魯粛・韓当を河内に配した。

そして曹操と孫策には、洛陽の南にある川を遡上して、

函谷関の西側に回りこんで敵の背後を襲ってもらうという作戦で孫呉は望むことになった。

 

新生孫呉と蜀漢の戦が、これより始まる。

俺たちは函谷関における洛陽側の城壁、東門に布陣し、敵軍が来るのをひたすら待ち続けた。

 

 

第十一章三節終了

 


 
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