No.94808

【リリカルなのは】欠けた天秤

BLOさん

魔法少女リリカルなのはシリーズより
アリサ×すずか 【欠けた天秤】です

【アリサさんの事情】の次の話になります

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2009-09-11 07:42:51 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1573   閲覧ユーザー数:1520

欠けた天秤

 

――認められない恋なんて存在しない

 

歌のフレースだったか、本で読んだ台詞かも思い出せない。

 

私の心の片隅にある言葉――

私の恋を否定しない言葉――

 

好きなところや理由は沢山あるけれど、いつ好きになったかは覚えていない。気づいた時には好きだったし、いつだって私の心の真ん中には彼女がいた。

アリサ・バニングス。

いつでも元気で、ちょっと怒りっぽいけど、優しい女の子。何より、私の手を引いて歩いてくれる人。

その背中を見ていたい、隣を歩いていたいと願うのは、わがままなのでしょうか?

今までだって一緒にいたし、これからも離れるつもりはないけれど……果たして、この願いは叶うのでしょうか?

 

 

      ◇

 

 

重たい音を響かせながらも優雅に走り抜ける車。後ろへと流れていく風景達。

いつものようにお邪魔している私、月村すずかはちょっとだけ緊張しています。

変わらないようで、毎日ちょっとづつ変化していく世界。最近はちょっと大きな変化もあったけど、平和で穏やかに過ごして行く日々が、私は大好きです。

学校で授業を受けて、みんなでお弁当を食べて――大好きな人と通学して……。

楽しそうにお話しするアリサちゃん。その隣で笑っていられる時間が大切で、いつまでも終わって欲しくない。

「ちょっと、すずか。人の話聞いてるの?」

「あ、うん聞いているよ。えーと、それで何の話だったかな?」

「あぁ!やっぱり聞いてないじゃないの!」

うがーっと怒り出すアリサちゃん。起こった顔も可愛いけど、笑ってて欲しいな……。

「まったく、ちゃんと聞いてなさいよ。今日もあのバカップルがいちゃいちゃしてたわねって、話してたのよ」

「うふふ、そうだったね。でも、バカップルはひどいと思うよ。なのはちゃんとフェイトちゃんは、恋人になったばかりなんだから、あれぐらいが普通だよ」

「いや、アレが普通なんて思っちゃだめよ……」

「そうなの?」

「当たり前でしょ? 周りの温度が上がる程イチャついてるのはダメよ」

どうやら、今日もご立腹の様子。そんなにぷんすか怒っていて、疲れないのかちょっと心配だなぁ。

「大体、人前なんだからちょっとは考えなさいよね。はやては、はやてで、止めないどころかあおってるし……」

この前、恋人になったと教えてくれたなのはちゃんとフェイトちゃん。はやてちゃんにお話を聞いていたから、大体のところは知っていたけどね。やっぱり、素敵なカップルだなって思う。

自分の心を偽る事なく、お互いに相手を想い、色んな壁を乗り越えて告白したみたい。それになのはちゃんは分かるけど、あの恥ずかしがり屋さんのフェイトちゃんが頑張ったって聞いた時、私は勇気を分けて貰った気がした。

私だって1人の恋する女の子。恋人になりたいと願う気持ちと、今の関係を壊したくない気持ちを両方持っている。

「見せ付けられてる、こっちの身にもなりなさい……って、すずかまた聞いてないわね?」

お互いの家のこともあるし、告白をしたからといってすんなり恋人にはなれないだろう。

特にアリサちゃんの方は色々と大変だと思うし、どうしたら良いのかなぁ?

「もしもーし、すずかー。ねぇ、ちょっとすずかってば……」

でも、今のままだといけないよね。

自分の気持ちに嘘をついて、自分の気持ちを閉じ込めて何もしないのは良くないよね。うん、例え結果がどうなったとしても、私は想いを伝えるべきだと思う。

「ちょっとすず……」

「アリサちゃん!」

「は、はいっ」

思わず叫んじゃったよ……。うぅ、恥ずかしいよぉ。

こっそり前を見てみると、鮫島さんが何も聞こえなかったかのように運転してくれてる。

「あ、あのね……コレを受け取って欲しいの」

震える手で渡すのは、小さな箱。頑張って作ったから、おいしく出来ているはずの自信作。

「ん、ありがと。学校で渡されなかったから今年はないのかと思ったわ」

「そ、そんなはずないよ。私がチョコレートを渡さないなんて……」

うぅ、失敗しちゃったかなぁ――みんなの前で渡すと恥ずかしいから、2人きりになるのを待ってたんだけど。

「まぁ、良いわ。すずかの作るチョコレートは美味しいし」

「うふふ、ありがとうアリサちゃん」

「なんで渡した方がお礼言ってるのよ……」

まぁ、良いわなんて言いながらも、包みをカバンへしまってくれる。気のせいでなければ、顔が赤くなっちゃってるかな?

そのままカバンをあさっていたアリサちゃんは、1つの箱を取り出した。

「はい、コレあげるわ。アタシも学校で渡しそびれちゃったし。頂戴って言わないすずかが、悪いんだからね!」

「ありがとう、アリサちゃん」

真っ赤になりながも渡してくれる彼女。その顔を見れただけで、おつりが出ちゃうよ。

「て、手作りだから……。その、味とか期待しないでよ。アタシはすずかと違って、下手だから」

「そんな事ないよ。アリサちゃんの作ってくれるのは、いつも美味しいよ」

チョコレートを胸に抱きながら答える。アリサちゃん自身は下手だというけど、前に作ってもらった料理は美味しかった。

「で、でも形はちょっと崩れちゃったし、ラッピングだってうまく行かなかったし……」

確かにアリサちゃんにもらった袋には失敗した跡が沢山あるけど、私の為に頑張ってくれたんだって思うだけで、心が温かくなる。

「ありがとう、アリサちゃん。私嬉しいよ」

ぶつぶつと何かを言っているアリサちゃんにお礼を言い、黙らせてしまう。もう、私はアリサちゃんに貰えれば嬉しいんだから、あまり落ち込まないでよ。

バニングス家の令嬢として命令すれば、、一流のパティシエに準備させるのなんて簡単な事だろう。それなのに、アリサちゃんは手作りのチョコレートを渡してくれた。その優しさに私が喜ばないなんて、ありえないよね――

 

 

      ◇

 

 

あの後、家まで送ってもらい、ご飯やお風呂にはいって今に至る。ちょっとぼーっとしていたみたいだけど、今日は許して欲しいな。

アリサちゃんに渡したチョコレート。それに添えた手紙。その事を考えると、居ても立ってもいられないのだから……。

明日の放課後、私は胸の内を彼女に伝える。怖くて逃げ出したかったけど、折角巡ってきたチャンスを逃してしまうのはもっと嫌。

ふられるかもしれないし、もしかしたら来てくれないかもしれない。

それでも、私は大丈夫。自分の気持ちを形に出来たら私は諦められる。今からこんなのだと明日が心配だなぁ。

 

 

今夜は眠れないね―――

 


 
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