No.863493

東方放浪録2~アリパチェ

初音軍さん

久しぶりの二人を書いてみました。なんか人間の里にも普通に花火してそうだなぁと後で思いながら、現代風にアレンジして二人きりで見たかったとかそういう理由でこじつけ。たまには字書かないとやばめなので、少しでも楽しんでもらえたら幸いです。

2016-08-14 09:38:33 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:546   閲覧ユーザー数:546

東方放浪録2~アリパチェ

 

【パチュリー】

 

 紅魔館にある図書館の薄暗い中で私はいつものように本を広げながら知識を得たり

魔法やスペルの研究を続けていた。

 

 だけど今私が没頭していることはそれとは違ってどっちかというと娯楽に寄った

魔法を研究していた。

 

 外の世界からやってきたという本を咲夜からもらって見た時に興味を持った。

火薬を打ち上げてはるかに高い空中で火の花を咲かせるような画が載っていたのだ。

 

 それを見て興味を持った私は研究を始めた。

それこそ時間を忘れて小悪魔やレミィに怒られるほど夢中になっていた。

しかし、これを完成させたらすごい満足感を得られそうな気がしていた。

 

 それに、これをアリスに見せたら喜ぶかもしれないし。

そう考えてると二人で一緒にいるときのことが脳内で再生されて私のことを

優しく見てくれるアリスの微笑んだ姿が浮かんだ。

 

「もう少しがんばろうかしら…」

 

 別に急ぐ用でもないし、我ながら少し無理している気がするけれど、

アリスに見せたいというのを一度考えてしまったら休んでる時間が勿体無いと

思ってしまうのだから仕方がなかった。

 

 

***

 

【アリス】

 

「今日も雨か…」

 

 湿度の高い魔法の森とはいえこれだけ雨が続くのも珍しいな…。

まぁ、人形の手入れしたり動かしたりスペルの勉強したりやることは山ほどあるけど

そんな中、何となく窓から外を眺めながら紅茶を飲んでいると

人影がこちらに向かってくるのが見えて、いつもの迷った人間だろうかと思ったら

徐々に姿が露になっていくにつれ見覚えのあることがわかった。

 

 いや、見覚えがあるどころではなかった。

 

「パチュリー!? どうして?」

 

 体の弱い彼女がこんな日に来るわけないのだけど、心配になった私はすぐに家を出て

パチュリーの傍まで駆け寄った。ぬかるんだ土を蹴って自分の服が汚れることなんて

構わずにパチュリーに近づいてから抱き寄せた。

 

「アリス…?」

「大丈夫?」

 

 パチュリーの傍までいってから薄い魔力の膜を傘代わりにしていることに気付いた

私は顔が熱くなってパチュリーから少しだけ離れた。

 

「あ、ごめん」

「ううん、心配してくれたのよね。ありがとう…」

 

 とりあえずこのままじゃパチュリーも消耗してしまうから早く家の中へ

入ってもらうことにした。相変わらず散らかってるけれどパチュリーは気にせず

私が座っていた席の向かい側の方に腰をかけていた。

 

「どうぞ」

「ありがと」

 

 パチュリーと会ってから少しずつ勉強しているハーブティーをパチュリーに

合わせて独自に配合して淹れてみた。ダメ出しされてもまたがんばろうという気持ちに

なる。

 

 お茶に口をつけたパチュリーは何とも読み取れないような表情のままカップを

テーブルに置いて、ふぅと一息吐いていた。

 

「どう?」

「味はアレだけど、気分はけっこうよくなったわ」

 

「精進するわね」

「えぇ…」

 

 片付けした後、座りながら窓の外をずっと見ていたパチュリーに声をかけた。

 

「今日は何か用だった?」

「そうね…、ちょっと見てほしいものあったけど…」

 

 考えたらこの雨じゃ無理があるわね、と呟いていたのを聞いた私は詳しいことを

パチュリーから聞いた。

 するとパチュリーが小脇に抱えていた一冊の本に関係あるらしく、

紅魔館の図書館で一緒にいたときみたいに本を開きながら詳しいことを私に教えてくれた。

何だかこうしているのも久しぶりな気がする。

パチュリーが本の話をしているときの真剣な表情を見ているとドキドキする。

 

「わかった?」

「そうね…で、パチュリーは魔法の理論で似たようなものを作ったわけね」

 

「そうね」

「でも打ち上げるのはどうするの?」

 

「…」

「まぁ、それもわかってるけど。私が打ち上げようの人形を作ればいいだけだし」

 

「いいの?」

「えぇ、何だか楽しそうじゃない」

 

 相変わらず表情の変化は乏しいけれど、わずかに変わる表情に気付けると

何だか特別な気持ちに浸れて嬉しくなる。

 

「ちょっと待ってなさいよ、今準備してくるわ」

「私も手伝うわ」

 

 そして別の部屋で二人きりで作業を始める。特に難しくもない作業だけど

パチュリーとしていると何だか落ち着くというか、いい匂いしてドキドキしたりも

 

するけどこれが幸せという気持ちなんだろうか…。

 

 二人で意見を取り入れながら何とか完成した人形にパチュリーの開発した設置タイプの

魔力が篭った札を貼り付けた。

 

 それから部屋を出てから外を見ると雨の降り方も弱くなっていたのを見て

パチュリーの手を握って軽く引っ張った。

 

「じゃあ、さっそく試しにいきましょう」

「でも、雨…」

 

「あぁ、大丈夫よ。私が近くにいいとこあるの知ってるから」

「そう…」

 

 私がそう言うと少し安心したのか、握っていた手の力みが少し緩んでいた。

それと少し汗ばんでいるのが気になる。具合でも悪いのだろうか…。

 

 

***

 

「ゴホッ」

「パチュリー…?」

 

「いや…なんでも・・げほっ…だいじょうぶ…」

 

 明らかに顔色が悪くなっているように見える。

パチュリーの体調のことを考えるなら今回は中止にするべきなんだけど…。

準備をしている最中のパチュリーの楽しみにしていそうな顔を見ていたら

中止にするという選択肢は選びにくかった。

 

「パチュリー、ちょっとごめんね」

「!?」

 

 苦しそうにしているパチュリーの体を私は勢いよく持ち上げた。

お姫様抱っこのようにされたパチュリーは驚いた顔をしながら私を見上げていたのが

可愛かった。

 

 それに私の方も持ち上げた時、驚いた。それほどパチュリーの体が軽かったから。

しかも私の腕にぴったりフィットしていて全く負担にならなかった。

 

「ちょっ、恥ずかしいんだけど…」

「目的地に着くまで我慢して」

 

「わ、私だって飛べるし…」

「今は少しでも体を休めておきなさいよ」

 

 これじゃどっちが年上かわからない。それほど今のパチュリーは幼く見えた。

顔を赤らめて恥ずかしがって文句を言っている姿が子供っぽくて可愛い。

 

 このままずっとこうしていたい気持ちもあったけど、せっかくパチュリーが

用意してくれた魔法の花火を見てみたかったから私はパチュリーを抱きかかえたまま

外に出て目的地まで飛んでいった。

 

 場所は魔法の森から出てすぐ、見晴らしのいい小さな丘がある。

そこは森と気候がまったく違って湿度も低く心地良い風が吹くところで

ちょうど今は雨雲にかかっていなく綺麗な星が見えていた。

 

 星…?

そういえば準備に夢中になりすぎていて気付いたら夜になっていた。

気付けなかったのはそれまでずっとパチュリーのことを考えていたからかもしれない…。

 

 丘に大きい木があって私達はそこに向かうとパチュリーを下ろしてから札を貼り付けた

大量の人形たちを操って空高くへと飛ばして時間差で爆発するようにしておいた。

 

 そして二人でゆっくり楽しむために私もパチュリーの隣に座るとパチュリーが

私の肩に頭を乗せてきてドキッとした。

 

 すぐ傍にパチュリーの息遣いと匂いを感じて、そして珍しく向こうから手を繋いできた。

 

「よかった…。貴女と見たかったのよ」

「それで無理してがんばったの?」

 

「えぇ…」

「バカね…。でも、嬉しい。ありがとう、パチュリー」

 

 ドン!

 

 火薬と似た輝きの火花が空一面に輝くように広がっていった。

それが何度も何度も時間を置いて大きな音と共に花が開くのを愛でるように

全てが終わるまで二人きりで手を繋いだまま空を見つめていた。

 

 そして最後に出てきたのは花ではなく文字で。

「アリス、愛してる」の字だった。

これは予想外過ぎて驚いた私はパチュリーの顔を見た。

 

「ふふ、その顔が見たくてがんばったわ。これまでの感謝と気持ちを込めて…。

そしてこれからも…」

「うん、それはもちろん。それにその気持ちもすごく嬉しかった」

 

「あら…珍しく素直ね」

「それはお互い様でしょ」

 

「それもそうね」

 

 くすっと小さく笑うパチュリー。普段は仏頂面で感情による表情の変化も少ししか

ないのに珍しいくらい可愛らしく笑っていたからドキッとしてしまった。

 

 だから私の方もいつもよりは積極的にパチュリーに行動で気持ちを示した。

 

 チュッ…。

 

「ん…///」

 

 良い雰囲気のままずっとこうしていたかったけれど、

パチュリーの体に障りそうだったから少しだけ二人の世界に浸ってから帰ることにした。

 

 その日は私の家に泊めることにして、翌日二人で軽い食事を済ませてから私が紅魔館に

パチュリーを送り届けた。

 入り口にいた門番にパチュリーを預けて私とパチュリーはお互いを見つめながら言った。

 

「またね」

「えぇ」

 

 素っ気無いほど簡単な言葉だったけど、二人の間ではそれ以上の気持ちが

こめられていることを知っていたから、今はこれだけで十分だった。

 

 そして飛びながら帰る途中、パチュリーと握っていた手を見ながら思い出して

嬉しくてしばらくニヤニヤが止まらなかった。今日は一日いい日になりそうだわ。

 

お終い。

 


 
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