No.855081

16-06/24 降臨・デスティニー吹雪!(SS)

先日の作品で予告した通り、今回はデスティニー吹雪の
登場シーンのSSです(誰得)

悪名高い、アニメ版「艦これ」3話を改変したいと、
妄想全開で書きましたwwww

2016-06-25 00:00:42 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:770   閲覧ユーザー数:749

(アニメ艦これ・3話のあのシーンから…)

 

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「やだ、髪が痛んじゃう…」

 

如月は、硝煙混じりの潮風にさらされた髪を、そっと整えた。

その彼女を、深海棲艦の艦載機が狙ってる事など、知る由もなかった。

 

満身創痍になり、戻るべき艦も失った艦載機は、

せめて艦娘を1人でも道連れにしようとしていた。

 

自らの運命も知らず、如月は自慢の髪を整えていた。

そして気付いた時には…既に艦載機が目の前に迫っていた。

 

 

『 轟 沈 』

 

 

如月の心に、その2文字が焼き印の様に深く熱く食い込んだ。

脳裏にも、鎮守府の仲間達の顔が消えては浮かび、浮かんでは消えていく。

 

長門秘書艦、陸奥さん、赤城さん、間宮さん、

夕立ちゃん、島風ちゃん、睦月ちゃん、吹雪ちゃん……

 

 

会いたい…!

 

 

もう一度、みんなに会いたい…!

 

 

会いたいよぉ…っ!!

 

 

如月の噛み締める様な願いをあざ笑うかの様に、

艦載機はまっしぐらに突っ込んでいく。

 

それは、恐怖で動けなくなった非力な獲物を狙う、狡猾な蛇--

 

今まさに、獰猛な毒牙が、哀れな獲物を引き裂こうとしていた。

 

 

 

瞬間……!

 

 

 

 

独特の鋭い射出音を伴って迸った一条の光芒が、艦載機を撃ち抜いた。

光芒は艦載機を爆発ごと呑み込み、影も残さず吹き飛ばした。

 

「!?」

 

爆風のかすかな残滓から身を守る事も忘れて、呆然としている如月に、更なる衝撃が--

--大破状態の艦載機がもう1機接近していた。

 

だが如月には、第2の接近に気付く余裕はなかった。

もうひとつの存在--光芒を放ったと思われる『もの』が、急速に接近していたからだ。

 

『それ』は有り得ない位の高速で迫り、大きな武器の様なものを抜き放った。

 

 

(攻撃!?)

 

 

如月は反射的に身を伏せたが、『それ』は如月を無視して--或いは守る様に--艦載機に肉薄して、そして……

 

 

「やぁぁぁーーッッッッ!!」

 

 

気合と共に、艦載機を両断した。

その斬撃の余波は、爆風すらもかき消し、吹き飛ばす程だった。

 

その時--驚きの余り、思考や判断が追いつかない如月だったが、

その耳は気合の中に『馴染みのある声』を捉えていた。

 

 

 

 

「なななななな、何なにナニ!?!?ナニなに何!?!?」

 

余りにも衝撃的過ぎる出来事の連続に、如月は混乱していた。

 

自分が轟沈を免れた…それは理解出来る。

その危機を、『謎の存在』が助けてくれた…それも分かる。

 

ならば『それ』は、一体何なのか?

 

 

その時になって初めて、如月は『それ』の姿を--

--すぐ目の前で、背を向ける形で宙に佇んでいる存在--を見た。

 

 

逆光のせいでシルエットはぼやけているが、『それ』は人の姿をしていた。

頭・そして1対ずつの手足が、『人の姿』と認識させるのだ。

 

だが…細かい部分が、人とは大きくかけ離れていた。

 

 

腕と脚は、鎧を髣髴とさせる装甲で覆われていた。

それは、堅固でありながら軽そうな印象を与える、不思議なものだった。

 

左手には細身の砲が、右手には大業物の剣が、それぞれ握られていた。

これが敵の艦載機を吹き飛ばし、また断ち切った武器である事は、まず間違いない。

 

背中には何らかの推進器と見られる機械。そして……

 

 

そこからは、膜状の光が噴き出していた。

 

それは、翼の様な幻想的な輪郭を形作っていた。

そのせいなのか…一瞬『オーロラの羽衣をまとった妖精』の様にも見えた。

 

 

光の翼を広げた者--

 

それは、天界から降臨した天使なのか、

或いは、魔界から現れた堕天使なのか…

 

 

 

 

『それ』は一体何なのか--

 

如月の知る限り、そんな武器・装備を持つ艦娘は存在しなかった。

それどころか、艦娘であるか・深海棲艦であるか…敵か味方かどうか、それすらも判断がつかない。

 

戦おうか、逃げようか、どうしようか…如月が判断に迷っていると、

『それ』が振り向いて……

 

 

「如月ちゃん、大丈夫?」

 

 

如月に声をかけた。

それは間違えようもない、日頃から耳にして、慣れ親しんだ声だった。

 

 

「ふ…ぶ、き……ちゃん?」

 

 

如月の口から、無意識のうちに声の主の名が出た。

声の主…吹雪は、2つの武器をしまいながら、もう一度声をかけた。

 

「如月ちゃん、大丈夫?怪我してない?」

 

2回目の呼び掛けで、混乱状態にあった如月の頭も、多少落ち着いてきた。

 

「う…うん、大丈夫。ちょっと怪我しただけよ…」

 

多少のダメージを負ってはいるものの、轟沈に至る程ではなかった。

とは言うものの、如月の心は完全に落ち着いた訳ではなかった。

 

あれだけの攻撃を、本当に吹雪がやったのか?

本当だとしたら、一体どんな武器なのか?

それ以上に、艦娘が空を飛ぶものだろうか?

しかも、あんなスピードで?

何より、優雅でありながらも力強い姿は何なのか?

 

 

しかし--

今だ混乱覚めやらぬ如月は、たった一言を絞り出すだけで精一杯だった。

 

 

「吹雪ちゃん…本当に、吹雪ちゃん…なの?」

 

 

如月の問いに、吹雪は微笑むだけだった。

 

「うん。でも…ちょっとだけ違うよ」

「違う…?」

 

 

「今のわたしは……『デスティニー吹雪』!」

「デスティニー…吹雪…!」

 

 

吹雪は頷いて、如月に手を差し伸べた。

 

「さぁ、帰ろう。わたし達の鎮守府へ!」

 

如月は手を伸ばして、吹雪と手をつないだ。

 

「うん、帰ろう。わたし達の鎮守府へ!」

 

 

 

 

如月と手をつないだまま、デスティニー吹雪は

光の翼を広げて空へと舞い上がった。

 

冷たく、固く、武器を内蔵したデスティニー吹雪の手。

しかし如月には、いつもの吹雪の手--温かく、柔らかい、いつもの友達の手に感じられた。


 
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