No.851525

恋姫†無双 ~乗り越えなければならないもの~ 第七話

どうも~…私の事、忘れられてそうな…?
本当にごめんなさい!本気で遅くなっちゃいました!!
…そしてなぜか今回短編集っぽくなってしまったorz
ようやくクライマックスに進みます

2016-06-05 00:22:34 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:1077   閲覧ユーザー数:970

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                               恋姫†無双

                          ~乗り越えなければならないもの~

 

 

                              『月に祈りを』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『神になろうとしてはいけない。』

 

 遠い昔、かつてまだ文字の読み書きすら満足にできなかった頃の北郷一刀が南郷拳無に言われた言葉だ。

 

 幼かった北郷一刀は、どんなものでも必ずハッピーエンドが来るものだと信じて疑うこともなかった。

 

 それは、子供のうちには誰でも持っている小さく儚く、なにより純粋な信仰。

 

 だがそれが打ち砕かれるまで大した時間はかからない。

 

 劇的な事件や、不幸な事故がなくとも、世界はいつでも必ず現実的で、夢の世界ではないと否応もなく認識させられる。

 

 転んだからと言って、必ず誰かが手を差し伸べてくれるわけでもない。

 頑張れば必ずなんとかなるなんてことが、あるわけない。

 落ちている木の枝を拾ったとして、それでサムライになれるわけなどない。

 泣いてねだって変身ベルトを買ってもらっても、当然変身できるわけもない。

 宇宙の果てから、光の巨人が怪獣を倒しに来るわけがない。

 机に引出しから、未来の猫型ロボットが現れるわけなんてないのだ。

 

 そして…妹をいじめる悪い奴らに立ち向かっても、正しい主張を持っていてちょっとくらい強くても、一人で多人数に勝てるとは限らないのも…また当然の理だった。

 

 もしもあの時、拳無と拳美が加勢に来なければ、一刀は無様に地面に這いつくばって傷つけられた妹を助けられずに、悔し涙を流していたことだろう。

 

 そして、この時一刀は言われたのだ。『神になろうとしてはいけない』と。

 

 拳無はよく、持って回った言い回しをしていたため、言葉の意味を理解することに難儀しなかったが、その言葉の意味は、力を持った人間に対する戒めの意味を持って、一刀の胸に深く突き刺さった。

 

『たとえお前がどれだけ強くなっても、万象を力だけで解決することはできない。』

 

 わかりやすく言えば、この一言に変換することができる。

 

 以降一刀は力を振りかざして、何かを主張することはほとんどなくなり、代わりに対話によって相手の理解と納得を得るために努力するようになった。

 

 おそらくは拳無の願った通りに進む道を修正できたことだろう。

 

 だが…外史で命を懸けて世界の存亡に抗った今の一刀には、別の意味を持って胸の奥を深く抉る。

 

 そしておそらく…優れた先見の明を持っていた拳無は、外史云々は想定外としても、いつか一刀がそれに気付くことも見越して、この言葉を伝えていたのだろう。

 

 どれだけの力を持とうとも、何かを成せるとは限らず…また全てを救い、全てを守ることはできない………神のごとく万能に救いを与えることはできないのだ、と。

 

 拳無は遠い昔から、一刀の性格を…その危険性を見抜いていたのだ。

 

 …………………いつの日か、北郷一刀が何かを守るために、救うために全てを捨ててしまわないように。南郷拳無は親友のことを深く心配していたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 実家から帰るバスの中で、北郷一刀は悩んでいた。

 

 それはあの晩に祖父、北郷直刀に聞いた北郷と南郷の歴史や、南郷一族の役割についてではない。

 

 実のところ、その内容は割り切れていたのだ。

 

 『ここは正史ではない』故に、『この外史の真実』が『正史の真実』と必ずしも合致するわけではない。

 

 北郷一刀はそれが、『真実である可能性がある説』の一つとして飲み込んだ。

 

 そもそも、真実かどうかを確定させられる場合ということは、自分に確かな真実がある場合か、どこかに確かな矛盾がある場合、そして相手に確かな嘘がある場合に限るのだ。

 

 だから、これは確定できることではない。したがってそこに悩んでいる訳ではないのだ。

 

「どうした一刀?カカカッ!わかる、わかるぞ一刀?じゃがもうちぃーっとばっかし、我慢じゃぞ?大きい方か?ん?」

 

「違ぇよ!なんでじいちゃんがバス運転してんのか悩んでんだよ!!確か記憶通りなら、じいちゃん去年免許返したよな!?大体このバスはどうした!?バスなんて持ってなかったよなッ!?」

 

 しかも持ってた免許は普通のマニュアルだったはずだ。

 

「カカカッ!なんじゃ一刀、もうボケたか?問題なんぞ、なーんもありゃせんわい!」

 

「あー………。」

 

 一刀は気が付いた。

 

 そうだ、この世界は正史じゃないんだ。だからこのじいちゃんは、免許をまだ返していないし、バスも持っているし、バスの免許もちゃんとあるんだ。そうだ、そうに違いない!

 

「拓実と源次を覚えとるか?ほれ、お前が小さい時に釣りに連れて行ったことがあったじゃろ?あの時じゃ。一緒におった間抜け面したハゲ!あれが拓実じゃよ!」

 

 突然別の話に変わって戸惑った一刀だったが、ちゃんと思い出せた。確かにそんな覚えがある、と。

 

「でーほれ、その時もう一人おったじゃろ?ほらあの白髪の眉間に皺のよっとる方じゃ。あれが源次じゃ。一刀は顔を見た瞬間に泣きd「わーーったよ!思い出したよッ!だからなんだよッ!?」…なんじゃ、これからがいいとこなのに、のぅ?」

 

 この世の誰が、自分の知られたくない過去を指して『いいところ』というのだ。

 

「あの時の事、実は源次の『とらうま』なんじゃぞ?」

 

「ぐっ…!小さかったんだから仕方ないだろう!そもそも、その話とバスの運転に何の関係があるんだよ!?」

 

「はわわ……あ、あのー…g…ゲフンッ!一刀さん、よろしいでしょうか?」

 

 じいちゃんとの話の最中、後ろの席から朱里が、おずおずと挙手していた。

 

「ひょっとして…なのですが、その…開拓の拓に実りの実って書く拓実さんと、源氏物語の源に次って書いて源次さん……だったりしましゅか?はわわ、舌噛んじゃいました…。」

 

 か、可愛い…!やっぱ俺の嫁の一人だ。可愛い!!

 

「おお、よくわかったのう朱里ちゃんや!そうじゃぞ!その字で合っとるぞ。」

 

「…………まさか…とは思うんですが、それってこっちの大手バス会社の社長の犬島拓実さんと、県警本部長の山倉源次さんじゃないでひょうか?はわわ、また噛んじゃった…。」

 

「しょっ、職権乱用の疑い!?」

 

 バス会社の社長+県警本部長=バス借りて無免許黙認?→オワタ\(^O^)/

 

 

「一刀、よう覚えておけ。世の中、力が正義じゃ!中でも権力は良いぞ?特に、権力持っとる他人を使うのが一番じゃ!!」

 

「祖父が孫に言うこっちゃねぇーーーー!!!!」

 

 一刀とてかつては大陸を統べた王。祖父のその理屈を正面から否定することはできないどころか、むしろ肯定するところも多い。

 

 権力のいい利用方法や、権力者をうまく操ることがどれほど利になるか…その程度で文句を言う程、一刀はもう子供ではない。

 

 …反董卓連合の時に、麗羽に兵その他諸々を言葉巧みに供出させた前科があるからな。それ以前にも、白蓮の言葉に甘えて(あの言葉を盾に)義勇兵を六千ほど供出してもらったりとか色々とまぁ、ね?

 

 それでも、と一刀は心から思うのだ。

 

 それを孫に教えるのは絶対に間違ってるッ!悪いことを教えるとか、普通におかしいだろうがッ!!

 

「一刀、ちょっと静かにしてくれへん?」

 

 巨大な湖水の水面のように静かな、若干の冷たさすら感じさせる声に振り向くと、そこには窓から愁いを帯びた表情でどこか遠くを眺める美女…もとい霞がいた。

 

 その姿はもはや一枚の絵画と言い換えてもいいほどに完成されていた。

 

 片肘をつき、下顎に拳をあててどこか遠くを…あの青空の果てを見ようとでもするかのような…。

 

 一刀はとても悪いことをしたと思った。

 

 誰にでも感傷に浸りたいときはある。それが今であったとしても不思議ではない。

 

「この運転がええねん。あんまり揺れへんし。これ、ひどなると………吐くで?」

 

「あ、はい。すみませんでした。」

 

 ………ただの車酔いでした。

 

 すっかり忘れていました。

 

 こうして、とても賑やかに俺達は帰る。…若干賑やかすぎる気がしないでもないけど。

 

 ちなみに、この後霞はサービスエリアに着くたびに最速で降りて、外で酔いを醒ます光景が見られたのだが…その速度は既に、神速を超えていたとは春蘭の言である。

 

 それと………霞のエチケット袋のストックの数については、彼女の名誉のためにも忘れようと思う。

 

 

 

「(コソコソ…)せ…華蝶仮面1号ちゃん、例の件はどうじゃ?」

 

「(コソコソ…)万事抜かりはありませぬぞ、華蝶仮面零号殿。先程けいたいでんわに来ためえるによると、しo…コホンッ華蝶ぱあぷるより『我、計画ノ第三段階ニ達セリ、ニイタカヤマノボレ』とのこと。しかし、本当によろしかったのですか?」

 

「(コソコソ…)儂が居らぬ方が良かろう…それに儂も、ほれ?偶には息子の面くらい見とかんといかんし、あっちの道場もいくつか破り頃(・・・)じゃろうしなぁ?………ところで、年寄りの儂が言うのもなんじゃが…お主ら、めーるのせんす、ないのぅ…。」

 

 なんか、サービスエリアでコソコソしている怪しげな仮面を被った老人と美女がいたとネットで話題になったとかならなかったとかは、特に知らない天の御使いであった。

 

 

 

 

 

 

 

トゥルルルルルル……トゥルルルルルル……トゥルルルルルル……トゥルルルルルル……ピッ

 

「はぁ~…これ何度目だよ。」

 

 本当に何度目になるかわからないが、通話を切って時間を確認する。

 

 現在、午後7時16分。

 

「これ、遅刻とかそういう次元軽く超えてないか?」

 

 真っ暗な公園で一人ポツンと突っ立てる男がいれば、避けて通られても仕方がない…と思う。仕方がないと思わないと、普通に避けて通られてる俺の精神が持たないから。

 

 一刀は溜息を吐きながらもう一度時間を確認する。先程確認してからまだ一分も経っていない。

 

 予定より少し早い時間に、一刀達は実家から帰ってくることができた。

 

 高速は空いていたし、検問どころかパトカーとすれ違うことすらなかった(天の御使いの祈りは天に届きませんでした)し、霞の言う通りなぜかじいちゃんは運転が上手かったからだ。

 

 帰ってきたら帰ってきたで、一刀には乃川との約束があった。

 

 曰く、彼女のことで相談があるということだ。軽くさわりだけ聞いてみたら、どうやら今の乃川の彼女は朱里と同じ趣味(・・・・・・・)を持っているらしい。………ある意味先輩として相談に乗ってやるべきだろう。俺も大いに悩んだからな。

 

 で、約束は午後6時だったはずなんだが…?

 

「連絡すらつかないって、どういうこったゴラァッ!!」

 

 そりゃ1時間以上待たされて連絡もつかないと来れば、貂蝉よろしく叫びたくもなる。…あのレベルの声は出せないけれども。

 

 いい加減帰るべきかと考え始めた頃、携帯の着信音が鳴った。

 

 着信は………穏からだった。

 

『もも、もしもし~?一刀さんでしょうか~?ま、間違えちゃいました?つ、壺はいりませんよ~!?化粧品も~、変な便利ぐっずとかもですね~~…!』

 

「いや、それもう愛紗がやったからさ。つい数日に。」

 

 いつも通りの間の伸びた声にいつもはない少々の緊張を感じつつも、思わず突っ込みを入れてしまった。相変わらず彼女達は文明の利器に弱すぎる…あ、朱里と紫苑と冥琳と華琳と桂花の5人は即座に覚えたな。

 

『あ…よかったです一刀さ~ん…。間違ってたらどうしようかと~…。』

 

「何も泣きそうにならんでも…っと、そういえばどうかしたのか?穏が電話をかけてくるなんて珍しいじゃないか?」

 

 本当に珍しい。穏はあの外史出身者の中でも抜きん出て機械音痴なので(テレビがただの窓だと思い込んで突っ込んで行ったことは今でも忘れていない)あまり電話に頼るということもしないのだが…。

 

『あ~それはですね~~、ちょうど手が空いたのが私だったからで~…あ、いえ!そ、それより~乃川さんとの話、まだかかりそうですか~?』

 

 何か今、話を強引に切り替えたような気がしたが…はて?

 

「いや…乃川の奴、来ないんだよ。携帯かけても出ないし、そろそろ帰ろうかなって思ってたとこ。」

 

『あれ~?そうだったんですか~?………おかしいですね~(ボソッ…)』

 

「ん?穏は何か知ってるのか?」

 

 

『い、いえいえ何にも!そろそろ戻られるんですね~!わかりました~、皆さんにもそう伝えておきますね~。』

 

「あ、ちょ、穏ッ!?」

 

 ………………………………もう切れてる。早ぇ~~~~~。

 

「…帰るか。」

 

 一応書置きを残していくあたり、お人好しの一刀のお人好したる所以である。書置きの内容は少々、棘だらけになってしまったが問題ないだろう。

 

 ………で、帰ってきたのだが?

 

「なんで電気消えてるの?」

 

 いつもなら、まだ皆起きているし、玄関以外も防犯の関係上何カ所かは点けている。

 

 なぜ今玄関以外電気が点いていない?

 

 俺は念のため周囲に気を配りながら、堂々と鍵を開けて正面から家に入る。

 

「ただいま~!」

 

 ………………………気配がない。ただの廃墟のようだ。って違う!ここ俺ん家!!

 

 一つ一つ、確実に電気を点けながら居間へ向かう。

 

 道中誰にも会わなかったが、その理由は今考えても答えが出そうにない。

 

 そして俺はゆっくり、ゆっくりと居間へ足を踏み入れた…!

 

パンッパパンッパンッパパパンッパンッパンッパパパンッパンッパパンッパンッパンッパパンッパンッパパパンッパンッパンッパパパンッパンッパンッ

 

 な、なんだッ!敵襲!?敵襲なのかッ!?

 

『ご主人様、お誕生日おめでとう~~~~!!!!』

 

 って、ゑ…?

 

 居間に足を踏み入れた途端、あちこちから破裂音がしたと思ったら、いつの間にか電気が点いていて、目の前には『ご主人様お誕生日おめでとう!』という横断幕がある。

 

 あれ、これって…?

 

「ん?おーい、アニキ大丈夫か?固まってっけど?」

 

「あーら、猪々子さんそんなこともわかりませんの?わたくしの華麗で優美などっきゅん誕生日作戦に感動してどう反応していいかわからずに困惑しているのですわ!おーっほっほっほっほっほ!」

 

「麗羽さまは何もしてない「斗詩さん、何か言いまして?」…いえ、なんでもありません。」

 

 若干一部が違う方向に盛り上がって見えるが、目の前の状況に一刀はようやく思考が追いついた。

 

 そういえば俺の誕生日今日だっけ、と。

 

 この数か月の間、彼女らの生活の面倒を見たり、この世界の常識を教えたり、自分の過去に向き合ったりと色々あったせいか………いや、元々正史にいたときも自分の誕生日を忘れていたことが…うん、それなりの頻度であった。

 

 何度鞘に怒られたことか…とそこまで考えて妹の鞘がいないことに気が付いた。鞘は体が弱く、それが原因で今回も来れなかったらしい。さぞ残念がったことだろう。鞘は俺ですら気付く重度のブラコンで、長いこと「兄さんのお嫁さんになる」と言い続けていたレベルだ。最近は小学校からの友達である新田…なんとかっていう、どこの馬の骨とも知れない男が言い寄っているらしいが………今度『オハナシ』しとくか。大陸を平定した皇帝舐めんなよ小僧(鞘より後輩でまだ中学生です)。

 

 

「ご主人様?」

 

 あいしゃがうわめづかいにこちらをうかがっている。あまりのかわいさに、ほんごうかずとはせいしんに9999のダメージをおった。

 

「ぐはっ!!!!………………あ、あぁうん、大丈夫。そっか、そういえば、今日俺の誕生日だっけ。」

 

「ご、ご主人様!?今血を!血を吐きましゅたよね!?はわわ!!」

 

「何を言ってるんだ朱里?俺がこの程度で死ぬわけないだろ?」

 

「そういう問題じゃないでしゅよね!?皆しゃんなんで普通に受け止めてらっしゃるのでしゅか!?!?」

 

 まったく朱里は心配性だな~、それに噛み過ぎだよ、あはは~!

 

 ほら見ろ、誰も気にしてないどころか普通に話を戻そうとしてるぞ?とりあえず、心配そうな顔をしている愛紗と朱里は頭を撫でておく。…悲しくなんてないぞ?

 

「苦労したのですぞ、主?方々との交渉に根回し、時には恫喝して従わせて、果てはまじのらいんを突破「マテ星、君は一体何をしようとしていたんだ!?欧州でも攻略する予定でもあったのか!?」…まさか、そんなわけないでしょう?」

 

 星、お前は一体どこに行く気だ。

 

「私はただ至高のメンマを手に入れようとしただけの事。」

 

「そんなことの為にマジノライン突破するな!謝れ!アメリカ軍に謝れ!ドイツ軍に謝れ!世界中のミリオタに謝れ!何故メンマの為に欧州を攻略した!?」

 

「騒がしいわね…桂花、さっき春蘭が何か料理(かもしれないもの)を作っていたわね?あれをここに。一刀の口の中にさりげなく流し込むわ。」

 

「はい只今!」

 

「待て華琳、桂花!俺を消す気か!?」

 

「にゃ~お兄ちゃん相変わらず人気者なのだ。」

 

「ねえねえお母さん、けーきのろうそくは歳の数なんだよね?」

 

「そうよ璃々。よく知ってるわね。偉いわ~。」

 

 紫苑、璃々ちゃん、ケーキに刺す蝋燭はそんなに本格的に太いやつじゃなくていいんだよ。

 

 この蝋燭、俺の肺活量で消せるのか?………男は気合で!…………………………………マテ、その蝋燭見たことあるぞ?確かこの間通販でやってたやつだ。風の強い時でも消えないサバイバル用の蝋燭じゃん?

 

 ……………………………男は気合だな(血涙)!!

 

 俺、北郷一刀は一つの覚悟を胸に座り、もはや山火事としか形容しようもない蝋燭たちに向き合った。

 

 だが…俺達が騒いでいる間も翠は普通に振る舞いつつも、ところどころに微かな暗い影を感じさせていた。

 

 そしてそれは………他のみんなも。わかった上でようやく見出せる微かな影。

 

 ……………………………ちょうどいいタイミングだと思った。

 

 だってそうだろ?これ以上彼女達が苦しんでいるなんて耐えられない。気付くことのできなかった俺がそう考えることすら、彼女達に対する冒涜かもしれない。でも…だから見て見ぬふりをするなんて、俺にはできない。そんなの(北郷一刀)じゃないだろう?

 

 だって俺は………………大陸を平定した、天の御使いなんだぜ?

 

 天の御使いは大陸の皆の希望の旗なんだ。こんなところで挫けてられるかよ…!

 

 

「皆、ちょっといいかな?」

 

 今まで騒いでいた皆が口々にどうかしたのか、何かあったかと聞いてくる。

 

 その目に悪意など欠片もなく、ただ無上の信頼と情愛が向けられていた。

 

 この場の誰も…北郷一刀も含めて誰も気付いていないが、先程まであれだけ騒いでいたこれだけの人間を、たった一言呼びかけるだけで注目させることは決して常人にできることではない。タイミングも、声のトーンも、そうそう簡単に見切ることはできない。

 

 そして……………………………………………北郷一刀は覚悟を決めた。

 

「これからのことについてなんだ。」

 

 大半が何のことかわからず首を傾げ、翠と星と朱里、華琳と桂花と穏だけが微かに視線を鋭くした。

 

「皆…こっちにはもう慣れた頃かな?」

 

 当たり障りなく、最初から説明するように話し始めた。

 

 皆それぞれの言葉で「大丈夫だ」と応えてくれた。

 

「それで主…『これからのこと』というと、どういう意味ですかな?」

 

 星は絶妙なタイミングで言葉を差し込んでくれる。これはもしかしてなどではない。間違いなく、俺を援護してくれているのだ。

 

 その証拠に、彼女の目が言っている。信じている、と。

 

 そう、ここが俺達の分岐点(ターニングポイント)だ。

 

「俺達はあの戦いを経て、ここに辿り着いた。でも皆が笑顔の裏で、大陸で失った大切なものの大きさに押し潰されそうになっていることを知った。」

 

 翠に言われるまで気付かなかった。

 

 どんな言い訳も既にただの言い訳でしかない。でも、それでも反省して次に生かすことはできる。

 

 皆の目に暗いものがにじむ。

 

 だけど、それに俺は打ちのめされている訳にはいかない。

 

 背負うんだ、彼女達の全てを。

 

「俺は考えた。確かに失われたものを取り戻す術は…ない。その全てがもう…手が届かない遥か向こう側にある。だけど、皆がこの世界で、失ったものの苦しみに蝕まれたままにしておくなんてことは…そんなことだけは絶対に、できないから。」

 

 一人一人の目を見て、俺は宣言する。

 

 宣戦布告を。

 

 愛紗にだけ、一足先に伝えた反逆を。

 

 神に誓う、神に抗うと。天の御使いは…天に反旗を翻す。

 

「皆、よく聞いて、考えて、答えてほしい。」

 

 拳兄…拳兄なら怒るかな?俺のことをいつも心配してくれていた、大切な親友。彼なら、俺を応援してくれるか、それとも俺を心配して止めるか…それすらわからない程に、あの日から遠く離れたところに来てしまった。

 

 でも………確実に言えることがある。

 

 俺は絶対に後悔しないということだけは、絶対のものだ。

 

 さぁ、新たな外史の扉を開こう―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆、俺はこれから、この世界を手に入れようと思う。この世界はこの世界の人達のものだけど、この世界に来た以上、皆のものでもあるはずだ。具体的には、まずこの国の総理大臣になる…この国を俺達のものにする。ゆくゆくはこの世界の全てを、この世界に生きる全ての人達を、笑顔にできるような世界にしたい。それは身分も、人種も、宗教も問わない。当然出身も。どこでも戦争のない、戦争の起きない、そんな世界にしたい。でも、それは俺一人じゃだめだ。一人の力じゃ…何にもできない。だから………皆、俺に力を貸してほしい。この世界を………俺達のものにしよう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 北郷一刀の言葉と、その言葉に応える声をかなり離れた民家の屋根の上から聞く者がいた。

 

 それは、世界の黎明から彼らを見守る存在であり、彼らを肯定する存在だった。

 

 それは、つい先日知った奇跡から来る熱い感情を胸の奥にしっかり仕舞い込みながら、真っ二つに砕けた月を見上げた。

 

「この世界でもご主人様は変わらないわねん♪でもまさか『この世界』に辿り着くなんて想像もしていなかったわよん?」

 

 肯定する存在はこの世界に想いを馳せる。

 

 『あれ』は、この世界を守ろうとした存在の、戦いの証だ。

 

 肯定する存在は会ったことのない、この世界で戦った救世主に小さく祈りを捧げ、かつてあの世界を救った救世主に視線を戻した。

 

「…ご主人様なら変えられるかしら?」

 

 肯定する存在は思う。

 

「外史の行く末を。定められたプロットを、切り開いたご主人様ならあるいは………いいえ、それはご主人様が選択することねん。で・も・安心して頂戴ねんご主人様ん♪どんな選択をして、その果てにどんな結末が待ち受けていたとしても、あたしは『肯定』するわよん。それがあたしたちの存在意義だもの。」

 

 その目はいつになく静かで、水面のように薙いだ色をしていた。

 

 肯定する存在の名は貂蝉。

 

 かつて北郷一刀達と共にあの外史を駆け、彼らに世界を救う戦いへの道筋を示した肯定の管理者だった。

 

 

あとがき

 

どうも、心は永遠の中学二年生です。

 

遅くなってしまい大変申し訳ありません!!

 

リアルが忙しいのと軽いスランプでここまで遅くなってしまいました・・・。

 

そして、今回わかりました・・・私は人の心を動かすようないいセリフが苦手っぽいです。

 

あと、心の描写とか諸々・・・。

 

霞の車酔いの描写・・・あれ、実は私の実体験なんです。

 

かつて、修学旅行の時に車酔いで外を見ていた私が、周りにはそう見えていたそうですので、そのまま引用しました。

 

今回気付いていただけたかどうかわかりませんが、『乃川と一刀がいつ約束をしていたか』っていうのは、実は伏線回収なんです。

 

詳しくは第四話参照・・・してわかりますか?伏線分かりにくいかも??ヒントは愛紗を呼び出すあたりです!

 

次は早めに書きたい・・・。

 

あと、この後殺気が途轍もない事態になりかねない短編を投稿します。

 

皆さん、どうか心穏やかに読んでください。

 


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