No.842938

「サンダーストリーク」開発主任 シド技術大尉のレポート

SiSさん

本作は先日無事終了したフレームアームズ部隊コラボレーションコンペ【ヘレグルックス】内で開催された、
「オレンジライダー」に加えられた1機についての設定をレポート形式で綴るものです。

小説、と言うにはやや毛色が違いますがご容赦下さい。

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2016-04-17 23:02:37 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:1995   閲覧ユーザー数:1910

「サンダーストリーク」は10機のカスタムフレームアームズで構成されたオレンジライダーと呼ばれる隊の特務部隊の4番目の機体である。

 

本機の専属パイロットであるシュウジ・シキシマ中尉より示された改修の基本コンセプトは

「敵拠点の強襲およびその制圧への特化」であり、それは端的に言えば「常に動き続けられることである」とされた。

 

中尉曰く、中尉の得意とする強襲制圧戦においては一対多あるいは少数対多となることは確実であり、

数の不利を得ない様に乱戦とすることを戦略の基本として見据えるものであるが、

即ちその様な戦場においてはこちらが足を止めるということは即ち相手から見れば的が確実となり、

集中砲火の危険性を孕むこととなるため、

常に動き攪乱し続ける必要があるという点による云々…

 

などと延々と聞かされたが、中尉が言うほど簡単なものではない。

 

我々はその後この機体の開発には大いに手を焼かされることになった。

 

 

まず、中尉の提示したコンセプトを実現するために必要な要素は

「軽快な運動性」と「エネルギーや冷却等を考慮せず全力で動き続けられること」と考えられた。

 

前者においては中尉とともに配備されたベース機(閃電)の段階で既に運動性は高く、

背面など被弾の可能性の低い装甲の一部を省くなどことで一定の目処が立ったが、問題は後者であった。

 

何しろ、人に例えれば「100メートルダッシュをいいと言うまで続けろ」という種の要求である。

 

ユビキタスエネルギーを利用するFAにおいては、

火力の高い武器を使用し続けない限りは消費エネルギーに対する不安はほぼなかったが、

一方で最大あるいはそれに近しい定格以上の出力を継続した場合に発生する熱については無視できるものではなく、

想定される用途を考慮すれば機体がオーバーヒートしない様に調整しながら戦うといったことは至難であり、

排熱問題は本機における最大の課題となった。

 

最終的には胴体に追加した2対の大型冷却フィン(通称「マフラー」)を主体としつつ、更に全身に満遍なく追加した放熱機と、

周囲の熱を吸収・蓄積する素子と逆に任意に放出できる金属とを組み合わせた特殊合金製ブレードを用いる

試作のヒートソードを主兵装として追加することで、ある程度の解決の見込みが立つこととなった。

 

 

しかし、この段階において稼働試験を行った中尉からは更なるリクエストが提示された。

曰く、「手数が足りない」「突出力が不足している」というものである。

 

元より運動性を確保するために拡張性を犠牲にしていた面は否定できなかったが、

武器の搭載量を確保するべく拡張性を増して全備重量が増せば機体の慣性質量の増加に直結する相反するものであり、

また突出力を増そうとする場合もスラスターやそれに伴うのプロペラントの追加が必要であり、

同様に慣性質量増大による運動性の低下が懸念されることとなる。

 

幾つかの追加武器の携行、背部大型エクステンドブースターの追加を試験させてみたが、

どれも中尉からの色よい返事は得られなかった。

 

 

既存のプランに行き詰まりを感じてた我々は改めて中尉と共に、

それまでの試験データと入隊時に持ち込まれた過去の戦闘データを見直すことになったが、ここで一つの気づきを得ることになる。

 

中尉の戦闘機動は基本的にOS任せのパターンではなく、極めて繊細なマニュアル操作で行われており、

またそれにより腕や脚などフレーム全身による運動能力を使い切るようなことを行っていたのである。

 

つまりは、スラスター任せの単純な機動ではなく、人で言えば手足の筋肉の力を存分に使い切るような機動を主体としていたのである。

 

 

ここに来て我々は漸く中尉の違和感の理由を理解し、あるべき改修の方向性を得た。

それはざっくり言えば以下のような2つのテーマに分けられる。

 

・フル装備においても四肢の動きを阻害しない

・重心バランスの最適化/余剰モーメントの低減

 

 

まず、四肢に対しては極力余分な装備を省く方向で改められた。

腕については武器搭載の都合で拡張性は確保しつつも装甲はシンプルな轟雷のものに差替え、

脚部に至ってはハードポイントを一切除去した割り切った設計へと変更した。

 

その分の拡張性については、腰部に新たに追加したスカートバインダー「陽炎」に補わせることとした。

 

 

 

この陽炎は簡易なアーキテクトとも言える可動性を確保したフレームに大型のスラスター4機と2枚のバインダーを組み合わせており、

バインダー自体は各3つの交換式プロペラントタンクとハードポイント、小型のスラスターで構成している。

 

これを背面ではなく腰部に装着し、各スラスター、バインダー本体ともに独立可動することで

脚部の動きを阻害せず上半身との重心バランス最適化を計っている。

 

 

 

武装については中尉が試作ヒートソードの耐久性難を訴えたこともあり、スペアブレードを携行し交換できるようにするとともに、陽炎にナイフ、手榴弾など各種の汎用装備を搭載可能にすることで手数の問題は改善することが出来た。

 

 

 

これに加えて、左腕に大型のパイルバンカーを追加した。このパイルバンカーは射出式のアンカーが併設されており、アンカーで敵機を引き寄せて貫いたり、そのまま敵機を質量兵器として振り回すようなことを想定していたが、後に中尉はこれを移動に使うといった我々の想像しないような用途を見いだすに至った。

 

 

 

かくしてサンダーストリークは一応の完成を見た。

一応、というのはこの機体が完成しているとは我々は思いがたいからである。

 

中尉は改修した本機をようやく気に入ってくれたようだが、一方で機体を存分に振り回し始めたのだ。

前述のように中尉は機体を存分に使いこなす乗り方をするため、特にフレームの疲労が通常の機体よりも高かったのだ。

 

フレームそのものを高精度のパーツで構成しても時間稼ぎにしかならず、出撃毎のオーバーホールを要することになった。

 

そのことを考慮してもなお補ってあまりある戦果をあげているのは確かなのだが…この整備士泣かせの機体が完成しているとはとても思い難いのだ…。


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