No.827409

真 恋姫無双 もう一人の大剣 8話

チェンジさん

チェンジです。

2016-01-29 01:05:17 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:1992   閲覧ユーザー数:1825

 

「では炎、報告を」

 

「了解」

 

呉の面々が出揃い各々が報告を出し合う。

 

客将の炎も当然その一人。

 

用意された椅子から立ち上がる。

 

「最近の賊討伐の計五回の内、三回共通点があった」

 

「共通点ですか?」

 

「ああ。これだ」

 

穏の発言に返事をして、懐から一枚の布を取り出す。

 

「それは・・・・布か?」

 

「黄色いわね。その黄色い布が共通点ってわけね」

 

「察しが良くて助かる。三回討伐した賊は全員この布を身に着けていた」

 

「全員とは・・・また奇妙じゃな」

 

「以上だ。俺は細かいことを考えるのは無理だ。軍師達に判断をゆだねる。任せた亜紗!」

 

「ええ!?私ですか!?が、がが、頑張ります!」

 

「炎、あまり亜紗をいじめてやるな」

 

「ははは、亜紗の反応はいつ見ても面白い」

 

「う~、やっぱり炎様は苦手です」

 

和気あいあい。

 

最後の報告者である炎の報告が終わり、張り詰めていた空気が緩み、明るい雰囲気になってきた。

 

そこに一人の兵士が慌てて駆け込む。

 

「ご報告いたします!」

 

「聞こう」

 

誰よりも早く反応し、返答したのは蓮華。

 

「(早い。前の忠告が効いたか)」

 

「蓮華様のお部屋から物音がしたと思い、失礼ながら部屋の中を覗くと・・・部屋が荒らされていました」

 

炎以外の将は皆驚いていた。

 

炎の侵入の騒動があったせいで、罠の情報が洩れた可能性があったことで、罠を再び張ることはなかった。

 

結局、内部・外部どちらからの犯行かもわからないまま現在に至る。

 

驚きがありつつも、皆内心諦めつつあった。

 

「雪蓮、その泥棒俺が見つけるよ」

 

「え?・・・・・そっか、そうね。炎なら見つけられそう」

 

「俺が侵入して、罠が張れなくなったんだから責任は俺にある。まずは周辺にいた侍女から話を聞こう。コソ泥はすぐに見つかる安心しろ」

 

 

数日かけて炎は調査を進めた。

 

調査といっても人を呼び、問答を繰り返す作業だった。

 

始めた当初は問答にかかる時間は短かった。

 

しかし、問答が進むにつれ、一人にかかる時間が長くなっていった。

 

ある日の午後。

 

女性と男性の二人を縄で縛り、蓮華達の前に連れてきた。

 

「こいつ等が物盗りの犯人だ」

 

蓮華の部屋の世話をする侍女。

 

そして数日前、蓮華の部屋が荒らされていることを報告しに来た兵士だった。

 

「その兵は以前、報告しに来た兵だな」

 

「ああ。どちらも俺の思った通り蓮華の部屋の警備、世話が担当だ」

 

難しいことは何もしていない。

 

この侍女と兵士の担当は同じ。

 

お互いがお互いを監視し合う人間だったからこそ、その相手さえ引き込んでしまえば問題はなかった。

 

監視し合う同士が口裏を合わせればいいだけ。

 

部屋を荒らした後、すぐに報告に行けばいい。

 

第一発見者になれば自分の都合のいいように報告することもできる。

 

この疑わしい者を即打ち首にしないという呉の将達の心情も自分たちにとっても都合が良かったんだろう。

 

さらに兵や侍女全員が疑わしい。

 

嘘を嘘とは自信をもってはっきり言えはしない。

 

証明ができないからだ。

 

炎だって証明はできないが、呉の者達は炎が嘘を見抜けることは知っている。

 

つまり、この二人の唯一の誤算は。

 

「こいつ等がここから逃げだす前に俺が来てしまったこと」

 

「貴様の能力を疑うわけではないが、こいつ等が盗ったという証拠はあるのか?」

 

「そりゃあ現時点ではないけど、こいつ等の家やら倉を調べれば出てくるだろ」

 

炎の言った通り、二人の家からは多くの盗難品が存在した。

 

蓮華の部屋から盗んだものは当然のこと、その他の店の商品も紛れていることが後に分かった。

 

この二人の処遇の関することで蓮華、炎、軍師達が集まって議論。

 

打ち首に異論はないはずと思われていたが、炎だけは断固拒否。

 

処罰は追放に止めてはくれないかと主張。

 

炎のその発言を好機と見たのか二人は突然の反論。

 

炎の指示に従って物を盗んでいたと主張。

 

周りの軍師や蓮華は呆れかえる。

 

「ではもしそうだとして、炎が呉に来る前の盗品はどう説明を付ける」

 

「そうです。それに炎様がここに来てからの盗難はたった一回です」

 

「う・・・・」

 

言葉に詰まった二人。

 

その横でただ一人首を縦に動かして考えていた。

 

「なるほど・・・・一理ある」

 

「炎?」

 

「盗難が始まって数件。そんな時期に曹操から離れ、呉にやってきた男。おまけに犯人を見つけたのは俺だ。指示を出してたんなら誰が犯人か知ってるわな」

 

「炎、何を言っている!?」

 

「案外無視できないぞ。条件は揃ってる」

 

「私達は貴方の人と様をよく知っている。この呉に尽くしてくれたじゃない」

 

「話にならないな。蓮華、たかが数か月暮らしただけで俺の何がわかるんだ。それにこいつ等だって、兵として侍女としてお前らに、呉に尽くしてきた」

 

「なっ・・・」

 

「つまりは証拠がないんだよ。俺が主犯であることと、そうでないことのな。俺も容疑者の一人ってわけだ」

 

椅子から立ち上がる。

 

「炎!どこへ行く!」

 

「炎蓮のとこ」

 

扉を開いて部屋から出る。

 

突然のことに、他の将は閉まった扉を見つめる。

 

数秒後、我に返って炎の後を追った。

 

廊下に出ると炎の姿はもうない。

 

「炎蓮様の部屋へ急ぐぞ」

 

 

炎蓮の部屋では炎蓮と炎が対峙。

 

「なんだ?炎?俺は忙しいんだがな」

 

「昼間から酒を飲んでいる奴が何を偉そうに・・・・」

 

「知ってるぜ」

 

「は?」

 

「お前のとっ捕まえたコソ泥に指示を出してたのはお前だって言うんだろ?面白いじゃねえか。本当にそうなら、お前ら三人の首を即落とすところなんだがな」

 

南海覇王を腰から少しだけ引き抜き、刃を見せる。

 

「兵たちが広めたんだろ?」

 

「なんだ知ってたのか?情報が広まるのは早いもんだ。こえーこえー」

 

「そうだ。今俺は疑わしき立場に立たされている。俺が無実という証拠がほしい」

 

「で?」

 

「現在をもって、俺を呉の客将という地位を外し、呉から追放しろ」

 

その発言に炎蓮は怒気を混ぜる。

 

「おい。甘いこと言ってんじゃねえぞ。あいつ等二人の言ったことが事実なら、俺は今、目の前にいる盗難の主犯を見逃すことになる。ここでその首を落としてもいいんだぜ」

 

「今の王はお前じゃない。雪蓮だ。最終的には雪蓮の指示にお前は従わなければならない」

 

「そんな建前知ったことか。あいつは俺の娘だ。あいつが俺を御すことができるわけねえだろ」

 

「それができると思ったからお前は王位を譲ったんだろうが」

 

「ふん。雪蓮のことなんざ知るか。今ここで貴様の首を落としてやるよ」

 

「話を逸らしたな。図星だろ。第一お前が俺の首を落とせるかよ。久しぶりに会った数日前を思い出せ」

 

「剣を持ってない素手のお前なんぞ楽勝だ」

 

「言ったな、くそババア」

 

炎も怒気を交え、炎蓮の放つ殺気に対する。

 

しばらくこの状態が続き。

 

「ふっ」

 

「はっ」

 

「「はっはっはっはっは!!」」

 

二人は笑う。

 

「いいだろう。雪蓮には俺が言っとくよ」

 

「助かる」

 

「どうだ俺の娘たちは?」

 

「ああ、良い奴らだ」

 

「お前の眼鏡にはかなったか?」

 

「どうだろうな。比べる対象が華琳だけじゃ何とも・・・・ただ、現時点での二人を比べたら華琳が上だが、これから先の成長でいい勝負になる。能力じゃない、雰囲気の話だ」

 

「そうか。次はどこに行く?」

 

「西涼だろうな。曹騰様が薦めた方だ。まず間違いないだろう」

 

「馬騰か・・・・・あいつはやめとけ」

 

「何故?」

 

「馬騰は今、病に伏しているらしい。どうやら不治の病だ」

 

「馬騰様が!?まじかよ・・・」

 

「見舞いくらいは行ってもいいが、仕えるという目的なら薦めはしない」

 

「・・・・・・・・・わかった。短い間だったが楽しかった」

 

「ああ、こっちこそ礼を言わせてもらうぜ」

 

炎が炎蓮に背を向け、部屋を出る。

 

「・・・・・・・・元気でな」

 

 

炎蓮が雪蓮に説明。

 

雪蓮は初めは驚いたが、承諾してくれた。

 

炎は雪蓮の顔から悲しみが読み取れた気がした。

 

将全員に炎の追放を話すと、一部から反論。

 

冥琳や穏、亜紗は炎蓮が雪蓮に話していたことで、ある程度理解していた。

 

軍師とそれ以外という形で討論があったが、最終的には雪蓮が黙らせた。

 

特に蓮華や思春からの反感は強かった。

 

最後まで雪蓮や炎蓮に反対し、炎を気遣っていた。

 

炎はむしろ当然のことのように身支度を進めていった。

 

そして滞在最終日。

 

追放される身分の者の見送りなど不要。

 

炎が呉を立ち去る際、誰も立ち入りを許さなかった。

 

「見たことある光景。・・・・・流石思春だな。炎蓮と雪蓮に気づかれない程成長したか」

 

「む」

 

思春がどこからともなく現れる。

 

「蓮華様を連れてくると気づかれてしまうのでな」

 

「何もそんなことは聞いてないんだが」

 

「・・・・・・・」

 

顔を赤らめる。

 

「すまない。」

 

「何で謝る。俺の言い出したことだぞ。それにお前は蓮華と一緒になって反対してくれたんだろ?責めるところなんか何一つないさ」

 

「また・・・・戻って来るんだろう?」

 

「・・・・・さてな。この追放の目的は俺が主犯でないってことを証明するためのものだが・・・・俺の旅の本来の目的は主君を探すことだ」

 

「・・・・・・・」

 

「他の諸侯の王を見て回って・・・・・蓮華が一番良かったって思えたらまたくるかもな」

 

「そうか・・・・・ならば、私はそれまでにお前を超えていよう。蓮華様も立派な王になられているはずだ」

 

「ああ、楽しみにしておくよ。じゃあな」

 

炎が思春に背を向けた瞬間、思春は足音をたてず炎に忍び寄る。

 

炎の背中まであと少しのところで思春は曲刀を抜き、切りかかる。

 

「しっ!」

 

 

「バカ野郎。とっくに気づいてるよ」

 

「まあまあ」

 

「はあ・・・・元々、あいつは・・・・・炎は人と接するのは得意じゃあない」

 

「そうですな」

 

「俺に久しぶりに会った時もずっと泣いていやがったからな」

 

「小さき頃の話でしょう。炎は人見知りです。泣き止ませるのは一苦労でしたな」

 

「今回のことだって同じようなもんだ」

 

「そうですか?」

 

「あいつはあいつで少し困惑したところがあったんだろう。曹操の元以外に心地いい場所が見つかったんだから」

 

「随分とはっきり言いますな」

 

「曹操は何があったかは知らんが、炎が出ていく理由になった要因があるんだろう。だが、呉はそうじゃなかった。炎はあいつ等との別れを惜しんだんだろうな」

 

「と言いますと?」

 

「今回の騒動は一種の照れ隠しだ」

 

「ほう」

 

「自分も居心地が良かった。それだけならまだしも、呉の陣営からも絶大な信頼を寄せられていたことにあいつも驚いただろう」

 

「儂等もその一人ですな」

 

「茶化すな」

 

「はいはい」

 

「そんな奴らに別れを告げるのは辛いし、照れくさくもあったんだろう」

 

「ふむ」

 

「今回の騒動で、見送りをされなくて本人もほっとしてるだろうな。全く世話が焼ける」

 

「冥琳達もそう考えていますか?」

 

「いや、あいつ等はこれは純粋に炎の疑いを晴らすためと思ってるだろう」

 

「なるほど」

 

「照れ隠しのためにこんな騒動を起こしたんだ。やってられねえぜ」

 

「・・・・・でも最後は手を貸したんですな」

 

「・・・・・・・ああ」

 

 

「前よりは早くなったが、まだまだだな。思春」

 

思春の斬撃を大剣で受け止める。

 

「お前はまだまだ強くなる。俺を超えるなんてあっという間だ」

 

「ふん」

 

曲刀に込める力を抜き、大剣から離れる。

 

「後悔するぞ。蓮華様の成長を近くで見られないのだからな」

 

「だろうな。仕えている主君が成長していく様を見るのは仕える者としては言い表せない喜びがある。俺は昔それを味わったからな」

 

「曹操か」

 

「ああ。優秀すぎてビックリした」

 

「嬉しそうに話すな」

 

「ああ。あの頃は良かった。素晴らしい時間だった。・・・・・思春」

 

「なんだ」

 

「蓮華は立派な王になる。断言できる。俺が経験したあの喜びを今度はお前が共有するんだ。あれはいいぞ」

 

「期待しておこう」

 

「俺もお前が強くなることを期待して、楽しみにしておこう」

 

「ああ。待っていろ」

 

「・・・・・・じゃあな」

 

「ああ。・・・・・・ありがとう」

 

「おう」

 


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