No.826007

恋姫OROCHI(仮) 肆章・壱ノ壱 ~松平の謎~

DTKさん

どうも、DTKです。
お目に留めて頂き、またご愛読頂き、ありがとうございますm(_ _)m
恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、65本目です。

長尾と孫呉の面々の洛陽到着翌日の大評定です。

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2016-01-20 23:34:01 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:4395   閲覧ユーザー数:3259

 

 

 

 

剣丞たちが呉と越後の面々を引き連れて帰還した翌日。

全員を集めた大評定を開くことになった。

前回と同様、進行役には俺と剣丞が就いた。

 

「え~、それでは、大評定を開催します」

 

剣丞の言葉で評定が始まる。

 

「まずは、雲梯の製作状況を…真桜、報告してくれ」

「了解や」

 

俺の言葉を受けて、真桜が立ち上がる。

 

「まぁ、有り体に言えばほぼ完成や。あとは組み立てるだけやけど…」

「けど?」

「過去に行く時って、こういうんもそのままいけるもんなん?城から出すことも考えて、組み立てなかったんよ」

「ふむ…そこのところどうかな、管輅」

「はい」

 

剣丞の呼びかけに、スッと音もなく現れる管輅。

 

「問題ありません。そのまま過去へとお運びいただけます」

「なるほど。じゃあ真桜、ちゃっちゃと組み立てちゃって」

「はいな」

 

これで函谷関の紫苑を助け出す目処が付いた。

俺はホッと一息をつく。

 

「それじゃあ、次は壬月さんの件だね」

 

剣丞が議事を進めてくれる。

 

「壬月さん。今までにあったこと、改めて皆に話してくれるかな?」

「うむ、分かった。少々長くなるが、お歴々の方も、しばしお付き合い下され」

 

一座を見渡しながら、少し頭を下げる壬月さん。

 

「話は剣丞ら、駿河が消えたところまで遡る…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

――――

――

 

 

 

「……というわけで、私は三河を脱し、潜伏していたところ、一刀らに救出されたという訳だ」

「「「……………………」」」

 

壬月さんの独白が一息つくと、座は、特に戦国メンバーを中心に、水を打ったような静けさになる。

 

「ついに動きおったか」

 

一葉がポツリと呟く。

 

「その家康…葵って娘、そんなにやりそうだったの?」

 

俺は隣の剣丞に聞いてみる。

 

「う~ん…何とも言えないけど、徳川家康っぽいところはあったかな?」

 

いわゆる腹黒っぽいってことだろうか?

 

「そう言えば…」

 

と、壬月さんが何かを思い出したように呟く。

 

「その、徳川家康、というのは、松平元康のことなのか?」

「え、あ~…その……」

 

未来に関わることなので、どうしたものかと剣丞に目で振ってみる。

剣丞は少し逡巡した後、一つ頷いた。

 

「…うん。葵がもう少し先に名乗ることになる名前だよ」

「そうか…なら、あれは……」

「何か気になることでも?」

「あぁ。意味が分からなかったので話さなかったが……一つ、松平がおかしなことを話していたのだ」

 

 

 

 

 

 

「あれは一度だけ、私が幽閉されていた座敷牢に松平が訪ねてきた時だった」

 

 

 

――――――

――――

――

 

 

 

 

 

「松平殿!」

 

牢の外に、葵が悠希を引き連れて現れた。

その後ろには護衛の兵が数人控えている。

 

「これは如何な存念か!?事と次第によっては、殿が黙ってはいませぬぞ!」

「知れたこと。私たちが目指す天下に、久遠殿を含め、あなた方が不要だというだけのこと」

「馬鹿な!ここで私一人討とうと、剣丞を中心にした同盟で、畿内を始め一つに…」

「それが間違ってると言っているのです。本来、正しき歴史では織田信長は本能寺で凶刃に倒れ、その後、天下は豊臣秀吉が引き継ぎ、そして最後にこの私、徳川家康がこの日ノ本を太平に導くのです」

「世迷い言を…」

 

訳の分からない言葉を並べる葵。

壬月には狂っているようにしか見えなかった。

 

「正しき流れでは、あなたが舞台から消えるのはもう少し先のことですが…その程度は瑣末な差。誤った流れを正すためには止むを得ないでしょう」

 

葵はまるで汚いものを見るように壬月を見下す。

壬月は睨み返すが暖簾に腕押し。

いや、そもそも視線は交錯しているが、見えてるものは違っているようだ。

 

「葵さま、そろそろ…」

「あぁ。それでは壬月殿、またいつか…」

 

そのまま踵を返し、二度と壬月を顧みる事はなかった。

 

 

――

――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「「…………」」

 

今度黙りこくったのは、俺と剣丞だった。

さぁっと背筋が冷たくなる。

何故その松平元康…葵は『本当の歴史』を知っているのか?

剣丞を見るが、今度は剣丞もすぐ首を横に振る。

自分が教えたわけじゃないし、真実を伝えるのも止めておいた方がいい、ということだろう。

その方が良い。

前に華琳にも言われたことがあるけど、知ることでおかしくなることもある。

特に…

俺はバレないようにひよを見る。

見た感じ、気付いてないようだけど…

 

木下藤吉郎。後の天下人・豊臣秀吉。

 

自分がそうなる未来があると知ったら、彼女は腰を抜かしてしまうだろう。

 

「それで壬月さん。他に何か気付いたこととかあるかな?」

 

話題が深入りしないうちに剣丞が話を元に戻す。

 

「あぁ…そうだな。詳しい日取りは覚えていないが、夕刻だったのにいきなり強い光が差し込んできたことが一度あった。今思えば、そのときに時を越えたのだろう」

 

間違いないだろう。

 

「あとそうだ。私を救出してくれた部下が言っていたが、綾那と歌夜の手引きだと言っていたな」

「綾那と歌夜が…」

「綾那さま…歌夜さま…」

 

小波が沈痛な面持ちで名前を唱える。

話の流れから、小波の同僚(上司?)なのだろう。

 

「それで壬月さん、二人は?」

「分からん。私はそのあと逃げに逃げて、野盗紛いに身をやつした。情けないことだがな…一刀たちと合流するまでは先ほど話したとおりだ」

 

壬月さんは野盗紛い、と言ったけど、鬼に襲われている人を助けて、それが噂となり、俺達は壬月さんに辿り付く事が出来た。

義に篤い、柴田勝家そのものと言えるだろう。

 

「そうだ。翠、タンポポ」

「なんだ?」「なぁに?」

「方角的に壬月さんは多分、漢中方面から来たらしいんだけど、漢中には誰が居るんだ?」

「え~っと、漢中には鈴々と星に桔梗…それと璃々が居るはずだぜ」

「えっ!?なんで璃々ちゃんまで!?」

「成都でお母さんに着いていくって聞かなかったんだよねぇ~。さすがに関中までは連れて行けないって、漢中に残ってもらったんだよ」

「そうなのか…」

 

戦場になるかもしれないのに、璃々ちゃんが居るんじゃ心配だな…

 

「そうだ。私からも聞きたいことがあるんだ」

 

翠が珍しく質問をしてきた。

 

「何かあるのか、翠?」

「剣丞たちに聞きたいんだけど、もしかしてその松平?ってのはこう…字がたくさん書いてある旗を使ってたりしないか?」

「字?」

「あぁ。なんか難しい字が七、八文字くらい並んでてさ…」

 

手で宙をわしゃわしゃしているが、翠の記憶力じゃ、ここが限界みたいだ。

タンポポに視線を動かすとお手上げのポーズ。

 

「きっとそれは、厭離穢土欣求浄土、なの」

 

という声が上がったのは、剣丞の側に居た鞠ちゃんから。

彼女は議事録用の筆を取ると、さらさらっと文字を書いていく。

…メチャクチャ達筆だ。

書き終えた札を、翠に向けて突き出す。

 

「これだ!あとこれと一緒に、金色の扇みたいなのもを掲げてたな」

「……それらは全て葵さまの……松平家の馬印です」

 

小波が、どこか苦しそうに答える。

 

「なんで翠姉ちゃんがそんな事を知ってるの?」

「あぁ。それらを掲げた部隊が、五丈原に展開してたんだ」

「なんだって!?」

 

五丈原はいくつかある、関中から漢中への入り口だ。

そこに松平軍が展開していたとなると、漢中は松平家の勢力下にある可能性が高い。

ということは、何らかの形で鈴々たちが漢中から排除されたということか…

 

「しかも、鬼から逃げる私達の行く手を阻むように展開していたんだ」

「ってことは、葵たちは鬼…敵と通じている可能性もあるのか…」

 

異変に端を発した松平家の反乱。

全て仕組まれた策略の可能性すらある。

思っていたより事態は深刻なようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう、壬月さん。すごく参考になった」

「あぁ、役に立てたのなら良かった」

 

壬月さんは一座に一礼をする。

 

「それじゃあ、今後の方針だけど…」

「ちょっといいかしら、一刀、剣丞」

 

珍しく大人しく会議に参加していた雪蓮が発言を求めてきた。

 

「あぁ、うん。なんだ雪蓮?何かいい案でもあるのか!?」

 

ついつい嬉しくなって声が気持ち大きめになる。

 

「あのさぁ、少しくらい休まない?」

「…………ん?」

 

どゆこと?

 

「聞けば、みんな結構働き詰めだって言う話じゃない?ここいらで大休止を取るべきだと思うのよね~」

「そんな姉様、何を仰るんですか!私たちがこうしている間にも、みなが苦しんで…」

「別にここで私たちが数日休んだところで『過去』は変わらないわよ」

「それは…そうですが……」

 

雪蓮をたしなめるつもりが、逆に言いくるめられた蓮華。

確かに雪蓮の言ってることにも一理ある。

ここでどれだけ時間を過ごそうと、過去に戻るポイントは変わらない。

早くも時間跳躍のシステムを理解しているところ、さすがは雪蓮といった感じだ。

だけど、それでも休むのはどうなのか、という蓮華の気持ちも分かる。

 

「余も賛成じゃ」

「お姉様っ!?」

 

戦国からの賛同の声は一葉だ。

 

「人数もかなり増えてきたことじゃ。酒でも酌み交わしながら、その人となりを知ることも必要じゃろう。さもなくば、背を預けることも能わんぞ」

「あら、あなたとは気が合うみたいね。今晩、一杯どう?」

「うむ、余もそう思っておったところじゃ」

「「あっはっはっはっ!!!」」

「「「………………」」」

 

戦国・三国の享楽人同士、完全に通じ合ったようだ。

一葉のストッパーである幽は、薄い笑いを浮かべながら肩を竦めてお手上げ状態。

そして、雪蓮のストッパーである冥琳はこの場にいない。

どうしたものか。

俺と剣丞は視線を泳がせる。

 

「一刀に剣丞や。もう、こうなっちまったら流れは止められねぇよ」

「そですねー。それにここらで休養も悪くない手だと思いますよー」

「私も、一葉さまと孫伯符殿のご意見に賛成です」

「働き詰めというのありますし、ここで親睦を深めておくというのも、確かに必要なことかと」

 

風×2と戦国の臥竜鳳雛の意見も同じようだ。

剣丞を見やると、笑って頷いた。

答えは出たみたいだ。

 

「分かった。それじゃあ…三日間、大休止を取ろう。その間は自分の体調を考えて休養に当てたり、三国・戦国間の親睦を深めたりしてくれ。戦国のみんなは気軽に俺達に声をかけてほしい。お望みなら、街の案内もするよ」

 

 

 

 

 

こうして恋姫たちは、束の間の休息に入るのだった。

 

 

 

 

 


 
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