No.81547

想い伝う時

BLOさん

魔法少女リリカルなのはシリーズより
【なのフェイ】百合CPです

色付いた日々の続編です
夕日って綺麗ですよね~

2009-06-28 22:45:48 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:813   閲覧ユーザー数:766

 想い伝う時

 

「なのは、途中で寄りたい所があるんだけど良いかな?」

「寄りたい所?うん、良いよ」

アリサ達と別れ2人での帰宅途中、茜色に染まった商店街を歩く。

最近は仕事も忙しく、学校が終わったら管理局へ出向く日々になっている。

学校でもアリサ達にまだ恋人になった事を明かしていない為、2人きりにチャンスも余りない。

好きな人が目の前にいるのに触れられない。

好きな人が目の前に居るのに手をつなげない。

はっきり言ってそろそろ隠すのも、我慢するのも限界だ。

「はぁ・・・」

「あれ?どうかしたのフェイトちゃん」

思い出したら、おもわずため息が出てしまった。

やっぱり、このままじゃ良くないよ。何とかしないと・・・。

やっぱり、昨日考えたお願いをなのはに言うしかないかな。大丈夫、何度もシュミレートしたし、上手くいく。今日こそ伝えるんだ。

「もしも~し、フェイトちゃ~ん」

「な、何なのは?」

「さっきから何度も呼んでるのに・・・調子でも悪いの?」

「そんな事は無いよ。ただちょっとね、考え事をしてたんだ」

あぅ、心配をかけちゃった。

「ねぇ、フェイトちゃんどこに行くの?」

「・・・海鳴臨海公園だよ」

あそこは2人にとって特別な意味を持つ―――私がなのはに告白されて、告白した場所。そして、私となのはの初デートの場所。あそこは2人の出発点。だから、今度もあそこから始めたい。

「そ、そうなんだ」

心なしかなのはの顔も赤くなっている。

いつもならその可愛い顔ずっと眺めているところだけど、今日はダメだ。

 

 

      ◇

 

 

海を紅く染めながら太陽が沈んでいく。人影もまばらで、寂しい感じがする。

「今日は、なのはにお願いがあるんだ・・・」

「何かなフェイトちゃん?」

そんな公園で、あの日のように私はなのはと少し離れて向き合っていた。

そう、少しだけ・・・今の私となのはの距離は後ちょっとだけ。

でもこのままでは、行動しなければ絶対に埋まることの無い距離・・・。

「なのは」

名前を呼んだだけで幸せにしてくれる人。私の想いを受け入れてくれた人。心の底から慕える人。

だから、もっと幸せになる為に、私頑張ってみるよ。

 

「・・・私は、アリシア姉さんの代わりとして母さんに造られた人造生命体でした。母さんに言われた通りジュエルシードを集める、そしていつか笑って貰う事だけが全てでした」

覚えているのは暗くて冷たい部屋、けして消えることの無い痛み。いつ始まったのか、いつ終るのか、何も分からない今日の時間。

そして、私には笑ってくれない母さん。

「目の前の現実から目を逸らして、ずっと逃げてた・・・」

夢に逃げ込む事で、私はバランスを取っていた。

心を殺す事で、私はバランスを取っていた。

でも、本当は寂しかったんだ。

「ファイトちゃん、何でその話をするの?お願いって何?・・・ぜんぜん分からないよ」

なのはが悲しそうな顔をしている。優しい子だし、こんな話をしているから当然かもしれない。

でも、ごめんね。今だけは許して・・・。

「なのはが全力で私にぶつかってきてくれて、なのはが何度も私を受け止めようとしてくれて、なのはが私の名前を呼んでくれて―――嬉しかったんだ」

何をやっても認めて貰えなかった。どんなに頑張っても、母さんは私を認めてくれなかった。

だけど・・・なのはは名前で呼んでくれた、なのはは私を、『フェイト・テスタロッサ』を認めてくれたんだ。

「なのはにスターライトブレーカーで落とされた後、母さんに必要ないって捨てられた。ここで終っちゃうんだなって、私はもう終わりだって思って、諦めちゃったんだ」

あの時は信じていた―――信じ込もうとしていた事が崩れてしまった。もう、ダメなんだって思ってしまった。

「でも、なのはは諦めなかった。クロノ達と一緒に母さんを止めようとしてくれた。まだ間に合うんだって、まだ続きがあるんだって教えてくれた」

結果的には母さんは虚数空間に身を投げてしまったけど、助けようと努力してくれたことは忘れてはいけない。忘れられるはずも無い。

「事件が終わった後でも・・・なのはは・・・」

いけない、しっかりしないと・・・ちゃんと伝えないと。言葉にしないとダメなんだ。

「なのはは・・・私の手を取ってくれた、私を友達にしてくれた」

あんな風に言って貰えたのは初めてだった。私を必要としてくれて手を取ってくれた。友達だって言ってくれたんだ・・・。

「フェイトちゃん?」

友達が増えて楽しみも増えた。アリサ達にいたっては更に仲のいい友達だ。

そして、なのはが・・・なのはが私の想いを受け入れてくれて、沢山の幸せをくれてる。

「なのは、ありがとう・・・」

「フェイトちゃん、泣いてるの?」

なのはにお礼を言えて安心したからか、私の両目からは涙が零れていた。

「あはは・・・ごめんね。泣くつもりは無かったんだけど」

泣くつもりは無かった。でも、涙はなかなか止まらない。

「でも、良いんだ。なのはだったらどんな私も見て貰いたいから・・・」

「にゃはは・・・何だか恥ずかしいよ」

「そ、それでね。なのはにお願いがあるんだ・・・」

幸せは独り占めしたらあかんで~と、笑っているはやてが背中を押してくれた。そういえば今回もお世話になったんだなぁ。

「うん、フェイトちゃん。悪いけど、ちょっとだけ良いかな?」

「え?何か問題があったかな・・・」

まだお願いも伝えられてないけど、真剣な顔のなのはを見たら黙るしかなかった。

「さっきのフェイトちゃんの話は少し間違っているよ。あの時、お友達になれたのはフェイトちゃんが私の名前を呼んでくれたからだよ。それに告白してくれてありがとう。私を幸せにしてくれてありがとう。お礼を言いたかったのは私も同じだよ」

なのはにお礼を言われた。ありがとうって私に言ってくれた。

「フェイトちゃん、ごめんね。お願い少し後にして・・・」

黄昏時、紅く染まった世界の中で少女達は抱き合って泣いていた―――

 

 

あの後「私もそうしたかったから」と、なのはからOKを貰えた。

「明日から覚悟しといてね」と笑顔で去ったなのははちょっと怖かったけど、アリサ達に明日報告するよ。

 


 
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