No.806292

司馬日記53

hujisaiさん

その後の、とある文官の日記です。
本作を覚えていらっしゃる方は既に僅かかもしれませんが、ほそぼそと書いて参ります。

2015-10-04 23:38:09 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:10266   閲覧ユーザー数:6735

8月31日

管理職・係長職の研修計画に圧迫面接というものが加えられることとなった。

精神的な強さ、臨機応変能力、忍耐性等を育成もしくは試験する為ということで各国にて試験官を選出することとなっているが、呉・蜀、特に蜀にて人材が乏しい為に魏からの派遣を依頼する旨の文書が回ってきた。

詠様は

「まぁ分からないではないのよ。そもそも桃香はこの研修にいい顔してなかったし、蜀は桃香の性格についてく流れがあるからこういう底意地の悪い役が向いてる娘ってあんまりいないのよね。そこいくと魏は国王を筆頭に桂花に桐花、風に秋蘭と性格にクセの強いのが揃ってるから頼りたいってことでしょ?」

と言われたが、皆様高位の方々なのでお時間を頂くのは難しいのではないでしょうかと意見させて頂いた。

元直と子敬はその人達はきつすぎるのでもう少し柔らかい人を選んで欲しいと口を揃え、例えばと言って稟様の名前を挙げたが先の方々と同様に御多忙と思われ一旦詠様と私の方で預かることとした。

ところで二人には稟様も中々に厳しい方と思うがそれでも良いのかと聞いたところ、

「何言ってんの!?あの中じゃ全然優しいじゃん!」

「そーそー、魏で唯一性格いい人だよ!?」

とこれまた口を揃えた。

 

…先の方々は一体、他所からどう思われているのだろうか。

 

9月2日

多少なりとも女性らしさの勉強をしたいのでと伯道に頼まれ、折りよく開催されていた水着の展示会を凪らと共に見に行った。

知り合いでは太史慈殿がもでるをやっており、ばにーがーるという衣装を来ていたが何故か内腿に墨で『正丁』と書かれていた。

観衆(といっても女性ばかりだが)が太史慈殿を見る度何事かひそひそと話をしており、伯道がその文字はどういう意味なのかと太史慈殿に聞いたが太史慈殿も

『詳しい事は分からないが一刀様に愛されてる女であるという印だからと言って雪蓮に書かれた』

と言っていたが、愛されている証であるらしいので本人は満足そうであった。

私も件の文字の意味は分からず凪に聞いたところ、顔を赤らめて『自分も知らないが公達様の私小説を読めば分かるかも』と妙に挙動不審な体で答えた。

 

自分は一刀様の御愛情表現についての流行に疎い、今度調べてみよう。

 

9月4日

三国合同残暑払いが行われた。

酒席の中での天下取りの話から一刀様が天の国の故事で鳴かぬホトトギスについて歌った三首を御紹介され、さしずめ雪蓮、華琳は『鳴かせてみせよう』の口だろうねと仰った。

すると一刀様の隣席に侍られていた孫策様が面白がり、誰か気の利いた歌を詠める人は居ないかしらと以後互推の形で幾人もが詠んでいった。

 

鳴かぬなら 御飯を食べよう 不如帰(許褚殿)

鳴かぬなら 私が歌うよ 不如帰(張角殿)

鳴かぬなら おひるねしよう 不如帰(呂布殿)

鳴かぬのも 普通のことだろ 不如帰(白蓮殿)

鳴かぬなら 一先ず飲もう 不如帰(厳顔殿)

鳴かぬなら 鳴きたくさせます 不如帰(張勲殿)

 

鳴かぬなら 寝所で待つわ 不如帰(曹操様)

と曹操様が一刀様に流し目をされながら詠まれると、孫策様はあらそっち方向に来たのねと言われ、次いで公達様が

 

鳴くよりも 鳴かせて下さい 不如帰

 

と詠まれ更に詠様が平たい目をしながら、

 

鳴かぬなら せめて増やすな 不如帰

 

と詠まれると皆の生暖かい笑いと共に何故か一刀様が申し訳なさげに頭を掻かれた。

孫策様がそろそろおしまいかしら、と言われると凪が是非亞莎の歌を聴いて下さいと隣席で遠慮し縮こまる彼女を立たせた。

亞莎は衆目の前で恥ずかしげに『あの、不如帰も他に素敵なつがいいるのに私なんかに捕まっていたら可哀想ですから』と言って

 

 

 

鳴かぬとも 放してあげます 不如帰

 

 

 

と詠んだ。すると座中から『うわぁ』『そうくるか』『無欲は卑怯』等歓声ともため息ともつかぬ声が方々から上がり、

何故か孫策様がにこにこしながら『勝者亞莎、もってけドロボー!』と言われながら一刀様と亞莎を酒席から追い出して御寝所の方へと追いやられ、酒席は散会となった。

 

9月7日

外回りの後、残業前に庁舎の大風呂へ行ったところ、御伽番だと言って意気揚々と出勤していった叔達と珍しく一緒になった。

後から洗い場に来た叔達をふと見ると乳房に『一』、臀部に『下』のような文字(?)が書かれており、先日の太史慈殿の件を思い出しそれは何かと聞いてみた。

すると誇らしげに一刀様の御印を頂いた回数であり胸で一度、後ろから三度という意味だと言い、閨房から直接風呂場へ行ってすぐに洗い落とす事を条件に一刀様にお願いして書いて頂いたと言う。

 

あまりはしたないお願いをするものではないと嗜めたが、姉様こそ一度や二度で感極まってあっさり失神するようでは女の務めを果たしておりません、私ほどではありませんがその大きな脂肪の塊は飾りか何かですかと反論されてしまった。

…一番最近の御伽では一刀様の灼熱の爆発は二度目までは覚えているが、その後の溶岩の奔流と言うか、桃色な幸福の大嵐に心身を吹き飛ばされてその先の記憶が定かでない。私は実は妹の言う通りなのではないだろうか?

 

それはそうとして、太史慈殿にはこの件を教えるべきだろうか…

 

9月9日

先の面接官の人選について詠様に伺ったところ、暫く思案顔をされたのち『猫の手も借りたいところでこの研修、ボクもちょっとどうかと思うしねぇ…七乃に依頼して』と言われた。

 

9月10日

張勲殿に先の研修の面接官を依頼したところ、怪訝な顔をされて考えるような素振りを見せた。

ややあって、誰からの推挙かと聞かれたので詠様であると答えると納得されたような表情をされ、では顔良さんと二人でならお受けしますと答えられた。

張勲殿にこの話をしたのは今日が初めての筈なのだが、顔良殿には了解を取らなくて宜しいのかと聞いたところ問題ないとの回答であった。

 

9月11日

元直と子敬に、圧迫面接の試験官として張勲殿と顔良殿を派遣することとなったと報告したところ、

二人とも即座に研修を中止すると言いだした。何故かと聞くと

「あんた本当に仲達ね…張勲とか、あんな蛇みたいな女の圧迫面接なんて受けたら心病むに決まってるでしょ!?」

「斗詩もさぁ、普通にしてりゃ普通かもしれないけど逆鱗触ったら調教室経由で心も体も病院送りよ?なんであたしらが楽する為に部下育てなきゃいけないところで自分の首絞めなきゃいけないの!?」

と呆れられた。

 

お二方とも優秀だが温和な方なので不向きであるからかと思ったが、元直らの見立てでは全く違うらしい。

一方詠様は既にこの結論を予想されていたようで、ニヤニヤと笑われながらこの研修は三国とも取りやめる方向で調整しようと仰られた。

 

9月13日

公達様がふてくされた表情で通達の回覧をされた。

一刀様からの通達であり、内容としては臀部や内腿等に墨書き・貼り刺青等を行う事を自粛するようにとの内容であった。

不機嫌至極の公達様が言われる事には、

「あんの近親上等姉妹、あいつらのせいよ!あいつらが三国塾の高等部の臨時授業にいらした一刀様に先生見て見てーとか言ってスカートめくって『一刀様専用→』とか『←開発済』とか初等部が居る前で見せたりするからっ、まったくこっちはいい迷惑よ!」

との事であった。

ちょっと御意図が分からず、子丹御嬢様の方を伺うと目を合わされずに『まぁ、個人の性癖は個人的に楽しめってことよ』と言われた。

 

9月15日

逢紀が昼休みに昼寝をしていたが、午後の始業になっても起きなかった為揺り起こして注意した。

彼女は新人にしては働きや態度は特段悪いという事は無いが、どうにも大雑把であったり緊張感に欠けるところがある。

詠様にふとそう漏らすと、

「いいのよあんなもんで。あんたとか月とかみたいに一瞬も気を抜かずにあいつの事見てるなんてそっちの方がおかしいのよ」

とにべもない。

 

9月16日

昼食後に逢紀に仕事中に眠くなったりすることは無いのかと聞かれ、

夜に確り睡眠を取り、一刀様の御為と思い仕事に集中していれば眠気を催すことなど無い筈と答えた。

すると傍で聞いていた子敬がウソよ逢紀、明日仲達絶対居眠りするから見ててと言うや、

『ねぇ仲達、最近一刀様に抱かれたのって八日前だっけ?忘れちゃった?忘れる筈無いわよね、一刀様とのだぁいじな思い出。って言うかぐっちょんぐっちょんの超えろえろ時間?前掛けの隙間からおっぱいゆるゆる揉まれてべろちゅーしながらびちょびちょな所を奥までぬぷぬぷされつつぎゅーって抱きしめられてボロボロ泣くほど良かったんでしょ?そんなに良かったのに夜思い出さないで寝たらむしろそれって不敬じゃない?不敬よね?やっぱ寝る前一度は反芻しないと。まあそこでちょっと何ていうの?多少火照る体を処理したりするのってむしろ敬意よね、思い出してぬるりともしないとかやっぱ失礼だし。うんまあむしろすればするほど一刀様の男の魅力の証明みたいな?それじゃちょっと仲達悪

いんだけど、こないだあんたと寝たときの事絶対全部覚えてる一刀様にお茶出してきてくんない?』

と言われた後の事は良く覚えていない。

 

どのように業務をこなしたか、予備の下着を二着とも使いきった経緯も判然としないが、気がつけば半裸で朝を迎えており自分の寝台は丸ごと洗濯した方が良いような有様だった。

 

9月17日

不本意だが、執務机に何度も頭を打ちつけるほどに居眠りをしてしまった。

逢紀や子敬はニヤニヤしていたが、彼女らの手前寝てしまう訳にも早退する訳にも行かない。

 

9月18日

昨日と全く変わらない。

額と瞼を腫らした私を流石に異常に思われたらしく詠様にどうしたのかと聞かれたが理由は明確だ、夜な夜な一刀様との情愛に溺れる妄想に耽ってしまっているからだがそのような事を言い訳になどできる筈が無い。

自覚が足りない為ですと謝罪したが、その後子敬と逢紀が何事か詠様に耳打ちすると詠様はこのクソ忙しい時期にそういう事面倒臭いからやめてよねと怒られ、二人は平謝りしていた。

 

9月19日

目が覚めたら夕方であった。

昨日夕方、詠様が一刀様を連れてこられ『寝かして!こいつ寝かして、仕事になんない!』と私を指差されると一刀様は私を寝室へお召しになり、添い寝をされながら良く休むようにと仰って頂いた。態々の親しい御指導に感動に打ち震えながら休む様に致しますと申し上げたが、心身とも昂ぶってしまい一向に眠れずに困っているとじゃあ少し運動をしようかと言われ、御寵愛を体の奥に賜って漸く幸福の絶頂のうちに眠りにつく事が出来た。

御多忙な一刀様は私が目を覚ました時には既にいらっしゃらなかったが、眠りに落ちる前に一刀様の腕に抱かれていた事は鮮明に覚えている。

 

夜にはやはり一刀様の御優しくも男らしい御愛情を想い出し体の疼きを処理することもあったが休むようにとの御言葉も思い返され、睡眠も取れるようになった。

 

いと容易く女一人の健康を復される一刀様は薬師の如き、いや神仙の如きお方だ。

 

9月21日

亞莎と庁内食堂で夕食を摂っていたところ、太史慈殿が来られ相席した。

ふと思い出し、先の展示会で書かれていた内腿の文字ですがと言いさすと満面朱にして『雪蓮に騙されました』とまくし立てた。

実際に一刀様は太史慈殿とされる時は七度ほど、と聞いてみたかったが止めておいた。

亞莎もちらちらと私と太史慈殿を見比べながらもの言いたげにしていたが、同じことを聞きたかったのかもしれない。

 

食事が終わると太史慈殿は『これから張昭殿と圧迫面接の訓練なのだが圧迫面接とは何なのでしょうね』と言いながら去っていった。

圧迫面接研修は取りやめとなったはずであったが???

 

9月23日

休暇であったが特にする事も無く、久しぶりに射の練習をする為弓道場にいってみた所、黄忠殿が先に鍛錬されていた。

会釈したのち離れて数度射ていると黄忠殿が傍に来られ、文官でいらっしゃるのに射も御上手ですねと言われた。

名手として知られる彼女であるので社交辞令には違いないが、そこから業務の事等を雑談しているうち彼女の娘御の話に及ぶと不躾なお願いですがと前置きして私に璃々嬢の短戟の手ほどきをして欲しいと言われ驚いた。

そもそもが私は文官で手遊び程度の腕前でしかなく、彼女自身は言わずと知れた射手、蜀には他にも五虎大将を始め武芸に秀でた方々が多く居られるので私如きが教える事など何もないのではと申し上げたが、璃々嬢は未だ膂力が足りず弓や大剣は手に余るのだという。加えて広い戦場よりも市外や屋内戦等を鍛えたい意向があり、私か私が忙しければ同系の戦闘技術を持つ士季に教えを請いたいとの事であった。

 

個人的には吝かでないのだが妹や弟子達を差し置き他国の子女にかまけているようではどうかと思い、検討させて頂く事とした。

 

9月24日

姉妹弟子そろって夕食をとりながら、黄忠殿からの話をどうだろうかと諮ってみた。

伯達姉様はいいんじゃないかしらとだけ仰り、叔達はあの娘(璃々嬢)は魏の大いなる脅威となる可能性があります、利敵行為となりかねないので反対ですと述べた。

もう一人の師として指名されている士季に意見を求めると

『正直、黄忠の意図が余り読めないんですけどねぇ…ま、次世代はあの娘と孫尚香が軸でしょうから渡りをつけておく意味はあると思いますよ?特にまだ入職してない恵達(司馬進、六女)様達はね』

と言い、それに幼達(司馬敏、八女)は迷わず共に参加し璃々様に学びたいと答えたが恵達と雅達(司馬通、七女)は難しい顔をして重大な岐路かもしれませんので少し考えさせて下さいと述べた。

少しなら良いが余り長く回答を待たせては先方の都合もあるので早急に考えるようにと妹らに指示すると、士季が『それよか仲達様こそ璃々ちゃんに教えてもらったらどうです?あの娘噂じゃ相当なやり手できゅうきゅう搾り取ってるらしいですよ』

 

と言いながら親指を人差し指と中指の間に挟んで振って見せた。おそらく房事の事を言っているのだろうと察したが、腹立たしいので気付かない振りをしておいた。

 

 

恵達らは迷っていたようであったが翌日には共に武芸に励みたい、また毎鍛錬日毎に璃々嬢との茶席を設けたいとの事であった。

多少幼いものの璃々嬢の挙措振る舞いは常々立派なものであり、他国の優秀な子女との交流は有用なものと思われたので先方さえ良ければそれでという事となった。

妹達も皆文官志望であるにも拘らず感心なことではある。

 

9月25日

最近許攸の勤務態度が改善されたように思われる。

勤務当初は一刀様に対してぞんざいで軽んじる風が明確であったが、今日は

「ね、ねえ!何かあたしにして欲しいことない?遠慮されるとこっちが困るんだからね!」

等と言って一刀様に纏わりついていたが口調は柔らかく、どことなく一刀様を慕う風が感じられた。

陰で逢紀を呼び、改善が見られるが言葉遣いを改めさせるようにと指導すると

「あ、そこは照れ隠しなんでちょっと難しいかもしれませんが良くなりましたよね?一刀さんがずぷっと一発決めてくれましたら覿面ですよ、私の首もあったまるってもんです」

という返事であった。

 

9月26日

黄忠殿に先の件について承諾の旨御連絡した。

才媛揃いで鳴らす司馬家の方々と親しくして頂けて光栄ですわと言われたがお門違いの武芸を指導するには臍を誉められたようなものだと元直と子敬に語ると、

「関係ないけど一刀様ガチでヘソとか誉めるよね」

「そうそう膝の形とかさ、もう無理でしょってとこまで寝床じゃ褒めちぎるから勘違いする女多いよね」

等と話していた。加えて何故黄忠殿は私等に指南させようと思われたのだろうかと聞くと、

「んー…紫苑が言うように得物が重いのは無理って言うのはあると思うわよ、うちの連中の得物皆重いし私が教えられるのも剣しかないしね。それとさぁ、現実問題一刀様もう戦場の最前線には出ないでしょ?そうすると武官で日常的に傍に居る為には身辺警護、暗殺対応能力の方が求められてるからじゃない?」

「それ系でいくと思春と明命も候補なんだけど、思春は性癖がアレ過ぎるし明命は璃々ちゃんのおっぱい見た瞬間に速攻で断ると思ったのかもよ」

とのことであった。

 

…ところで一刀様には肢体について御伽の度に過分にお褒め戴くばかりで苦言を拝した事が無いのは、そういうことだったのか…

自戒せねば。


 
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