No.795882

九番目の熾天使・外伝 ~短編㉑~

竜神丸さん

管理局の暗躍

2015-08-12 21:49:48 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:5396   閲覧ユーザー数:2014

時空管理局。

 

 

 

 

 

 

それは、数多の次元世界で活動する巨大組織である。

 

 

 

 

 

 

管理局の目的は、多次元世界においての平和維持。

 

 

 

 

 

 

しかしその平和維持の為に、犠牲となった命や世界は数知れず…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

某次元世界…

 

 

 

 

 

-ドガァァァァァン!!-

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

「に、逃げろ!! 殺されるぞぉ!!」

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

ある小さな街は、地獄絵図と化していた。道路は無惨に破壊され、住居や施設は激しく燃え盛り、住民の死体があちこちに転がっている。これらの大破壊は全て、一人の人物によって実行されていた。

 

『……』

 

“黒ひげ”ルイス・カトラー……仮面ライダーティーチだ。彼は右手に持ったカトラスガンナーから放たれる銃弾で建物を壊し、視界に入った住民を次々と射殺。この街の警備隊は既に壊滅した後で、街で平和に過ごしていた住民達はただ泣き叫び、ただ逃げ惑う事しか出来ない。

 

「うぇぇぇぇぇん、お母さんどこぉぉぉぉぉ…!!」

 

『ん…?』

 

破壊された建物が轟音と共に崩れ落ちる中、一人の少女が泣きながらその場に立ち尽くしていた。ボロボロなクマの人形を大事そうに抱える彼女の泣き声に気付き、ティーチはそちらに対しても無慈悲にもカトラスガンナーの銃口を向けようとする。

 

『処刑する…』

 

「やめろぉっ!!」

 

『む…!』

 

銃弾が放たれようとした時、一人の青年がティーチの右腕に掴み掛かった。それによって少女を狙っていた銃口は軌道がズレて、放たれた銃弾は少女ではなく近くの街灯に命中。ティーチは掴みかかって来た青年を強引に振り払い、彼の顔面を殴りつける。

 

「ぐっ!? く……君、早く逃げろ!!」

 

青年の叫びを聞いて、少女はその場から走って逃げ出した。それを見て安堵する青年だったが…

 

『…ハッ!』

 

「「!?」」

 

それをみすみす逃がすほど、ティーチは間抜けではない。ティーチが右腕を振った瞬間に重加速が発生し、青年と少女、そして周囲で燃え盛っている炎は時間がスローになってしまう。そして…

 

-ドシュンッ!!-

 

「う…!?」

 

カトラスガンナーの銃弾が、逃げようとしていた少女の背中を容赦なく貫いた。赤い鮮血が舞い、少女は重加速の中でゆっくりと地面に倒れ伏す。その直後に重加速が収まり、青年の動きも通常に戻る。

 

「あ、ぁ…あぁぁぁぁぁ…」

 

『フン……お前も、処刑する』

 

「…何故だ」

 

倒れたまま動かない少女の身体に触れた青年は、自身の掌についた血を見てショックを隠し切れない。ティーチはそんな彼にカトラスガンナーの銃口を向けようとするが、青年はティーチに掴みかかる。

 

「何故こんな事をしたんだ!! この街の人達は、何も関係ないだろぉ!!」

 

『非正規部隊から逃亡した裏切り者を処刑し、見せしめとしてこの街の全てを消去する……それが俺に下された命令だからだ』

 

「ッ……くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

『無駄だ』

 

≪BREAK≫

 

「がぁ!?」

 

殴りかかろうとした青年を、ティーチは逆にカトラスガンナーで殴り倒す。そして起き上がろうとした青年の背中を踏みつける。

 

『ジェイド・マークス……貴様を処刑する』

 

「少し待ってくれないかしら、ルイス」

 

『…!』

 

青年―――ジェイド・マークスの顔にカトラスガンナーを向けようとするティーチだったが、そんな彼を一人の女性が呼び止める。全身の黒タイツ、黒ビキニと前垂れが特徴的な紫髪の女性は「ふふふ」と妖艶な笑みを浮かべながら、ジェイドとティーチの下へと歩み寄って行き、ティーチは踏みつけていた足をジェイドの背中からどける。

 

「ッ……リリアナ・ファルシア、貴様…!!」

 

「はぁい、ジェイド♪ 残念だったわね。もう少し上手くやれば、私達を出し抜く事も成功したのに」

 

『リリアナ、この男は処刑対象だぞ。邪魔をするな』

 

「確かにその通りよ。でもねルイス、処刑する前に少しやらなければいけない事があるの」

 

「…?」

 

リリアナは倒れているジェイドの前でしゃがみ込み、彼の顎に優しく触れる。

 

「ねぇジェイド、あなた…………“奴等”と組んでるんでしょう?」

 

「!!」

 

図星だったらしく、その一言を聞いた瞬間にジェイドは顔がどんどん青ざめていく。リリアナはやっぱりといった表情で彼に問い続ける。

 

「あなたの事を調べてる内に、あなたがあの組織と繋がってる事が分かったの。わざわざ非正規部隊にまで潜入して情報を引き出そうとするなんて、あなたも物好きね……でも残念。こうして明るみに出ちゃった以上、私達は逃亡しようとしたあなたを確保しないといけないの」

 

「ッ…」

 

「ねぇジェイド。何処まで知っているのか、この私に教えてくれないかしら…」

 

「…!?」

 

その一言と共に、リリアナの両目の瞳が紫色から金色に変わる。彼女はそのままジェイドに抱き着き、彼の耳元で厭らしい声で懇願(・・)する。彼女の豊満な胸、美しい太腿が押しつけられ、ジェイドは身体が硬直して動けなくなる。

 

「ね、良いでしょう? お・ね・が・い♪」

 

「ッ…」

 

リリアナの舌が、ジェイドの首筋をペロリと舐め上げる。このまま、彼女の誘惑魔法に囚われてしまいそうになるジェイドだったが…

 

「―――アァッ!!」

 

「!」

 

『ッ…!!』

 

服の袖に隠し持っていたナイフを振り上げ、リリアナはギリギリでそのナイフを回避。ティーチがすかさずカトラスガンナーを発砲するが、ジェイドはその射撃をかわしてから戦極ドライバーとマツボックリロックシードを取り出し、戦極ドライバーを腰に装着する。

 

「驚いたわ。自力で魅了(チャーム)の魔法から抜け出すなんて」

 

「生憎、俺には婚約者がいるんでな……そんな誘惑に負けはしないぞ…!!」

 

≪マツボックリ!≫

 

「変身ッ!!」

 

≪ソイヤッ! マツボックリアームズ! 一撃・インザシャドウ!≫

 

マツボックリロックシードを開錠し、真上のクラックからマツボックリアームズが出現。それを戦極ドライバーに装填し、ジェイドは足軽を彷彿とさせる黒い兵士“黒影トルーパー”に変身。影松(かげまつ)という槍を両手で構え、ティーチがそれに応戦しようとしたが……そんな彼を、リリアナが再び制止する。

 

『リリアナ、何故止める?』

 

「私がやるわ。ちょうど試運転もしたかったもの」

 

『……』

 

ティーチを後ろに下がらせた後、リリアナは黒影と真正面から向き合いながら、取り出したゲネシスドライバーを腰に装着。胸元からラズベリーエナジーロックシードを取り出して開錠、真上のクラックから赤いラズベリーエナジーアームズが出現する。

 

「!? それは…」

 

≪ラズベリーエナジー!≫

 

「あなたがその姿で来るというのなら、私もそれに応じてあげるわ……変身」

 

≪ロック・オン……ソーダァ! ラズベリーエナジーアームズ!≫

 

ラズベリーエナジーロックシードがゲネシスドライバーに装填され、押し込まれるレバー。それと共にラズベリーエナジーアームズが降下してリリアナの頭に被さり、彼女にスーツを纏わせる。ラズベリーエナジーアームズは展開して鎧となり、彼女を“仮面ライダーカーミラ”へと変身させた。

 

「ッ……そんな…!!」

 

銀色のスーツ、赤い前垂れ、女性の胸をイメージした胸部の装甲、両腕に付いた薄い布のような装飾、そして胸部の装甲に描かれたエンブレム。

 

「フフフ…」

 

変身前と同じく踊り子を彷彿とさせる姿をしたカーミラは、手元に出現したソニックアローを右手に構える。

 

「虜にしてあげる…♪」

 

「…オォォォォォォォォォッ!!」

 

黒影は臆さず立ち向かい、跳躍してから影松を思いきり振り下ろす。カーミラはそれをヒラリとかわし、以降も振るわれる影松を無駄の無い動きでかわし続け、時には振るわれた影松を左手で掴み、黒影の腹部を右足で軽く蹴りつける。

 

「それだけかしら?」

 

「く…このぉ!!」

 

「遅い」

 

「ぐぁっ!?」

 

影松が左手で軽く弾かれた後、一撃、二撃、三撃と、黒影はソニックアローの連撃を受けてしまい、それだけで黒影は胸部を手で押さえながら膝をつく。元々、黒影が現在使用しているマツボックリロックシードはクラスCとスペックが低く、対してカーミラの使用しているラズベリーエナジーロックシードはクラスSという高い能力を有したロックシードだ。この時点で、二人の戦闘力には大きな差が出来てしまっていた。

 

「はっ!!」

 

「うわぁあっ!?」

 

ソニックアローを突き立てられ、黒影は地面に転倒。その間にカーミラは取り外したラズベリーエナジーロックシードをソニックアローに装填する。

 

≪ロック・オン……ラズベリーエナジー!≫

 

「上に気を付けなさい」

 

「!? な…ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

エネルギーが充填され、カーミラのソニックアローからラズベリー状の矢が上へと撃ち上げられる。すると撃ち上げられたラズベリー状のエネルギーが分裂し、無数の弾丸となって黒影に降り注いだ。一方的に攻撃され続けた黒影は戦極ドライバーが外れ、変身が解けてジェイドの姿に戻って地面に倒れてしまった。

 

「く、くっそ…」

 

-バキュウンッ!!-

 

「あ…!?」

 

『二度も変身はさせんぞ』

 

ジェイドが戦極ドライバーに手を伸ばすも、戦極ドライバーは装填されたマツボックリロックシードごとティーチの銃撃で破壊されてしまう。これで彼は、まともに戦う手段を完璧に失ってしまった。

 

「さぁ、ジェイド。本部に戻ったら、あなたの記憶を徹底的に覗いてあげる…」

 

「く…!!」

 

カーミラがソニックアローを向けながら歩み寄って来る中、ジェイドはフラフラの状態で立ち上がる。

 

(旅団のナンバーズに、迷惑をかける訳にはいかない……情報を知られるくらいなら…)

 

対抗する手段を失ってしまった今、相手に情報を知られないようにする方法は、もはや一つしかない。

 

それは…

 

「…アァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

『「!?」』

 

それは、自らを殺害する事。

 

ジェイドは自身の着ていた服を引き千切り、その下に付けていた時限爆弾を露わにする。カーミラとティーチが驚く中、ジェイドはカーミラの腰に抱き着きながら時限爆弾のスイッチを入れ、爆弾のカウントダウンが始まる。

 

「ッ……自爆する気…!?」

 

「はぁ、はぁ……せめて、貴様だけでも…!!」

 

予めタイムは短く設定してあるからか、この時点でカウントは10秒を切っていた。9秒、8秒、7秒とカウントが経過していく中、ジェイドは旅団の事と、ある人物の事を思い出す。

 

(旅団の皆さん、お役に立てなくてすみません…!! それから…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(メニス……こんな別れ方で、ごめんな―――)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-ボガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンッ!!!-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジェイドの意識はその瞬間、爆音と共にこの世から完全に消え去ってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数十分後…

 

 

 

 

 

 

「…一足、遅かったか」

 

「みたいですね…」

 

「……」

 

okakaとディアーリーズは、部隊を引き連れて街に到着していた。燃えていた建物は部隊の活躍で既に鎮火されているが、現時点で生存者は誰一人いない。その中で、二人は破損した戦極ドライバーとマツボックリロックシードを発見する。

 

「壊れた戦極ドライバーに、このマツボックリロックシード…………間違いない。俺の部隊から、管理局にスパイとして送り込んだ奴の分だ」

 

「ここにいないという事は……まさか…」

 

「死んだろうな。焼死体の匂いがする辺り、恐らく死因は自爆だ」

 

「…くそ!! また救えなかったのか…」

 

「確かアイツには婚約者もいたな……その婚約者さんに、俺は一体何て報告すりゃ良いんだか…」

 

-ピリリリリ!-

 

「ん? 団長から…?」

 

okakaが通信に出る中、ディアーリーズは破壊され尽くした街中を見て回る。引き連れた部隊の面々が住民達の死体を処理して回っているのを横目で見ていた時、彼はその死体の中にあの少女の死体も発見し、それがかつての美空と重なって見えた。

 

「ッ……どうしてこんな惨いマネが出来るんだ、時空管理局…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミッドチルダ、時空管理局地上本部…

 

 

 

 

 

「戻ったか、リリアナ、ルイス」

 

「あぁ。ジェイド・マークスの始末、及び見せしめも無事に完了した」

 

「情報も吐かずに自爆しちゃったけどね。もったいない事をした気分だわ」

 

マウザーの前には、自爆に巻き込まれたにも関わらず無傷なルイスとリリアナが立っていた。ルイスは今もなお仮面で顔を隠したままで、リリアナはラズベリーエナジーロックシードを指でクルクル回転させている。

 

「何にせよ、こちらの情報が知られずに済んだのであれば問題は無い。手間のかかる仕事が、また一つ無事に減ってくれた訳だ……それで、例の試運転はどうだったのだ?」

 

「完璧よ。ドライバーと錠前……この二つが、こんなにも面白い玩具だったなんて思ってもみなかったわ」

 

「念の為、もう一度調整はしておけ。有事に備えてな。ルイスは他のターゲットを始末しに回れ」

 

「了解した…」

 

マウザーの命令で、ルイスはすぐに部屋かた退室。それと入れ替わる形で、クリウスが部屋にやって来た。

 

「一佐殿、少し耳に入れておきたい話が」

 

「何だ?」

 

「実を言うと…………例の部隊(・・・・)が、また動き出そうとしているようです」

 

「!」

 

例の部隊。

 

その一言を聞いた瞬間に、マウザーは眉が一瞬だけピクリと反応し、ニヤリと笑みを浮かべる。

 

「また俺の邪魔をするつもりか。管理局を裏切った、あの女将軍めが…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

某次元世界…

 

 

 

 

「ふむ……良い風だ」

 

上空を浮遊する巨大マンタ。そのマンタの上に座っている軍服姿の女性は、淡い水色の長髪を靡かせながら嬉しそうな笑みを浮かべ、頬を赤く染めていた。

 

「待っていろウル、私がもうすぐ会いに行くぞ……フフフフフフフフ…♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それと同じ時刻にて、ディアーリーズは妙な寒気を感じ取ったという。

 


 
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