No.762518

リリカル龍騎 -深淵と紅狼ー

竜神丸さん

第8話:三人目

2015-03-05 23:29:21 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2947   閲覧ユーザー数:1463

『私が想定していた者とは、違う人間が変身したか…』

 

ミラーワールド、とあるビルの屋上。そこに金色の鎧を纏った一人の仮面ライダーが、腕を組んだまま地上を見下ろしている姿があった。

 

『まぁ良い。モンスター狩りを積極的にやってくれるのであればな……問題は他の仮面ライダー達……そして、仮面ライダーアビス……二宮鋭介だな…』

 

金色の仮面ライダーは少し考える仕種をした後、すぐにその場から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バニングス家の屋敷…

 

 

 

 

 

 

「ぜぇ……ぜぇ……はぁ……はぁ…」

 

「…お前、体力って物が全然無いんだな」

 

「ア、アンタの体力の方がおかし過ぎるわよ……はぁ……はぁ…」

 

トレーニングルームにて、二宮とアリサの二人がトレーニングを行っている最中だった……と言ってもアリサは途中でバテてしまっており、二宮は今も片手でダンベルを何度も持ち上げ続けている。ただしこれは二宮がアリサに課したトレーニング内容が過酷なだけであり、普通ならアリサのように倒れてしまうのが当たり前。それにも関わらず二宮は現時点でほんの少量しか汗を掻いておらず、まだまだ余裕そうな表情を見せている。

 

「お疲れ様です、アリサお嬢様。まずは水分補給をなさって下さい」

 

「あ、ありがとう鮫島…」

 

「二宮殿も」

 

「あぁ」

 

鮫島から水分補給用のスポーツドリンクを受け取り、グビグビと喉に流し込んでいくアリサ。二宮も同じようにスポーツドリンクを受け取るが、少量飲んでからすぐにトレーニングを再開する。

 

「ふぅ……ライダーとして戦う為にも強くなりたい。そう言ったのはバニングス、他でもないお前だろうが? わざわざこんな面倒な事に俺も付き合ってやってるというのに、そんなあっさりバテてどうすんだ」

 

「あ、あのねぇ……トレーニングに半日以上も時間をかけるなんて聞いてないわよ…!! アンタ、何でそんなに体力が持つのよ…!!」

 

「ライダーとして戦ってるんだから当たり前だろう? 戦ってる途中で体力が尽きて、そのままモンスターに殺されるなんてシャレにもならんからな。まぁ俺の場合、元の職業が職業だったんだがな」

 

「元の職業……そういえば、二宮殿が所有していた名刺にも企業名が書かれていましたが…」

 

「前に所属してた企業で、秘書とボディーガードの両方をこなしてた時期もあったからな。嫌でも鍛えなきゃどうしようもなかったのさ(まぁ、そんな長続きした訳じゃねぇけど)」

 

「ボディーガード……道理でそんなに体力がある訳だわ」

 

「そう言うお前は、悲しいほどに体力が無いよな」

 

「うるさいわね!!」

 

「まぁまぁ。アリサ様も二宮殿も、今日はこの辺で済まれてはどうでしょうか? 流石にこのようなトレーニングを毎日続けられては、お二人の身体が持ちません」

 

「…まぁ良い、今日はこの辺で終わりにしてやる。こんなタイミングでモンスターに出て来られても困るしな」

 

「そうして頂戴……はぁ疲れたぁ~…」

 

アリサは安堵した様子で、床に大の字になって倒れ込む。二宮もダンベルを下ろし、近くの器具にかけてあったタオルを手に取って頭の汗を拭き取る。

 

「はしたない恰好だな。金持ちのお嬢様とあろう女が」

 

「誰の所為よ誰の」

 

「体力の無いお前が悪い」

 

「いい加減しつこいわぁ!!」

 

「ほっほっほ…♪」

 

しつこいくらいに体力の無さを指摘されたアリサが怒鳴り、二宮は彼女を弄るのが楽しいからか小さく笑みを浮かべ、鮫島はそんな二人の様子を微笑ましいかのような表情で見ているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数時間後…

 

 

 

 

 

 

「―――それで、そんなに疲れてるんだね」

 

「そういう事。本当、この馬鹿の所為で今も身体中がだるいわよ…」

 

「悪かったな、体力馬鹿で」

 

アリサと二宮はすずかと合流し、再びこの三人で街中を歩いていた。アリサは未だに身体がフラフラしているのに対し、二宮はやはり涼しい顔で缶コーヒーを飲んでいる。

 

「ところでバニングス。わざわざ月村と合流して、今日は俺を何処に連れて行くつもりだ?」

 

「前に言ったでしょ、私達の知り合いに挨拶させて回るって。私達の友達に、高町なのはって子がいるのは前に話したわよね」

 

「あぁ、何だっけか……時空何たらとか言うのに所属してるんだったか?」

 

「そう。そのなのはの家族が経営してる喫茶店が翠屋、今私達が向かってるのがその店よ。ついさっき、高町一家の方にも連絡は入れておいたから」

 

「はん、用意周到な事で…」

 

「そんな面倒臭そうな顔しないの。一応、高町家にもアンタの事を知らせておいたわ。信用の出来る人達だから安心しなさい」

 

「はいはい、分かったよ」

 

二宮は缶コーヒーを飲み干した後、空になった缶を近くのゴミ箱に向かって投げる。缶は見事ゴミ箱に入り、それを見たアリサとすずか、更に近くを通っていた人達も「おぉ」と声を上げて拍手するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「着いたわ、ここがその翠屋よ」

 

「ふぅん、ここが…」

 

その後、三人は喫茶店―――翠屋まで到着。アリサが最初に扉を開け、その後からすずかと二宮が続く。そんな三人を、一人の女性店員が出迎える。

 

「いらっしゃいませ……あ、アリサちゃん! それにすずかちゃんも」

 

「こんにちは、美由希さん」

 

「お久しぶりです」

 

「いらっしゃい二人共! お父さん、お母さん、アリサちゃん達が来たよ!」

 

女性店員―――高町美由希はアリサとすずかを見て嬉しそうな表情をした後、店の奥にいるであろう父と母に呼びかける。その後に、アリサとすずかの後方で店内を興味深そうに見渡している二宮の存在に気付く。

 

「えっと、もしかしてあなたが…」

 

「はい、電話で言ったのがこの人です。ほら、アンタも挨拶しなさいよ」

 

「ん? あぁ、そうだったか……初めまして。二宮鋭介です」

 

「おぉ、礼儀正しいね。私は高町美由希よ。よろしくね、二宮さん」

 

「こちらこそ、美由希さん」

 

「立ち話も何だし、店の奥で話そっか。ちょうど休憩の時間帯だし、お父さんとお母さんもあなたの事について話を聞きたがってるし」

 

「分かりました」

 

美由希に案内される形で店の奥に入って行く中、二宮はアリサに耳打ちする。

 

(まさかお前、ライダーの事まで話してないだろうな…?)

 

(今はまだ話してないわよ。まぁどうせこれから話す事になるだろうから、説明の方はよろしく頼むわ)

 

(ちょっと待て、何で俺が説明なんてしなきゃならん。面倒極まりないんだが)

 

(だって私よりアンタの方が詳しいじゃない。逃げ道を確保しようたって、そうはいかないから)

 

(…お前への説明を怠ったのは失敗だったか……分かったよ。非常に面倒だが仕方ない)

 

上手い事アリサに言いくるめられ、ライダーやモンスターの詳しい説明を怠った事について軽く後悔する二宮。しかしそこはちゃんと説明しなかった自分が悪いと理解し、諦めた様子で店の奥にある席に辿り着く。そこには美由希と同じ黒髪の男性店員、そして長い茶髪の女性店員が座っていた。

 

「やぁ、君が二宮鋭介君だね。僕は高町士郎だ、よろしく」

 

「妻の高町桃子よ。よろしくね」

 

「初めまして。改めて、二宮鋭介です。こちらこそよろしくお願いします」

 

「……」

 

士郎と二宮が固い握手を交わすのを見て、アリサは思った。

 

(コイツ、猫被ってやがる…!!)

 

「まぁ立ち話も何だ、取り敢えず座ってくれたまえ。美由希、彼等にケーキを出してあげてくれ」

 

「は~い!」

 

「では、お言葉に甘えて」

 

何処か猫を被ったような口調で話す二宮に違和感を覚えるアリサだったが、ひとまずは彼に続いてアリサ逹も席に座る事にした。美由希が二宮達三人のケーキを用意するべく店の奥へと向かう中、士郎が話を進める。

 

「アリサちゃんから話は聞いているよ。君も色々と、大変な状況のようだね」

 

「今はもう慣れましたよ。というより、慣れなければどうしようもない状況ですから」

 

「ふむ、ヤケに順応性が高いみたいだね。違う世界からやって来るなんて、普通の人なら混乱するような事態だろうに」

 

「その件については、こちらもまだ驚きは隠せずにいます。ただ……俺の場合も、非現実な事態の中に身を投じている真っ最中ですので」

 

「非現実な事態、か……君が良ければ、僕達にも話してくれないかい?」

 

「…分かりました」

 

二宮は懐からアビスのカードデッキを取り出し、士郎と桃子に見えるようにテーブルの上に置くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「仮面ライダーにモンスター、そしてミラーワールドか…」

 

「鏡の世界に、もう一つの世界があるなんて…」

 

「凄い、まるで漫画やアニメみたい…!」

 

二宮から仮面ライダーやミラーモンスター、そしてミラーワールドに関する話を聞かされた高町一家。テーブルの上にはアビスラッシャー、アビスハンマーなどアビスの所有するアドベントカードが一通り並べられており、士郎はアビスラッシャーのカードを不思議そうに見つめ、桃子と美由希も純粋に驚いた表情を見せる。そんな中で二宮は、美由希から出されたショートケーキを味わっており、アリサとすずかも同じようにショートケーキを頂いている。

 

「という事は、例の連続失踪事件も…」

 

「モンスターの仕業で間違いないかと。ちなみに言わせて貰うと……アリサ・バニングス。彼女も数日前に、そのライダーになったばかりです」

 

「え、アリサちゃんも!?」

 

「…はい、そうなんです」

 

アリサも同じようにウォルフのカードデッキを取り出し、士郎達に見せる。

 

「彼女のカードデッキは元々、月村の屋敷で見つかった物だったんですが……諸事情で月村ではなくバニングスがライダーに変身し、モンスターを退治しました」

 

「ふむ、なるほど……つまり、人を襲う鏡の世界のモンスターと契約し、その力を得て戦う戦士……という認識で良いのかな? ライダーについては」

 

「はい、簡潔に言えばそういう事になります」

 

「モンスターと戦う戦士かぁ……まるで特撮番組とかでよく見る、正義のヒーローみたい」

 

「正義のヒーロー、ですか……俺には遠い言葉だな」

 

「え、何か言った?」

 

「あぁいえ、何でもありません」

 

二宮がボソリと呟くも、美由希や桃子には聞こえなかったようだ……最も、士郎だけは今の呟きを聞き逃さずにいたのだが。

 

「さて……君の話が正しいのであれば、ライダーとして戦うのは非常に危険な事だ、今すぐにでもアリサちゃんにはライダーをやめて貰いたいところ。しかし残念ながら、彼女はライダーをやめる事は出来ない。そうだね?」

 

「はい。今バニングスがライダーをやめようとした場合、契約しているモンスターが今すぐにでも彼女を捕食しにかかる事でしょう」

 

「そのライダーというのは、他の人が代わりにやる事は出来ないのかしら?」

 

「他の人が代わりに、ですか……俺は試した事が無いので、その辺はよく分かりませんね。ただ、仮に別の人間に交代出来たとしても、ライダーの力を手離した後にまた別のモンスターに狙われる可能性も、決して無いとは言い切れません。その点を考えると、モンスターから身を守る手段がある以上、今カードデッキを手離すのはあまり得策ではないかと」

 

「なるほど。そう都合良くやめられるほど、簡単な話ではないか……アリサちゃんの両親は、この事は?」

 

「まだ伝えていません。ただ、いずれは両親にもちゃんと伝えるつもりではいます」

 

「俺もバニングスの屋敷に居候させて貰っている以上、彼女には借りという物があります。彼女が戦いの中で死ぬ事が無いよう、俺が彼女をサポートしていくつもりです」

 

「確かに、今はそれしかないみたいだね…」

 

その時…

 

-キィィィン…キィィィン…-

 

「「「「「「!」」」」」」

 

彼等の脳内に耳鳴りが聞こえて来た。初めて耳鳴りを聞いた士郎達は驚き、特に美由希は戸惑った様子で周囲を見渡す。

 

「二宮君、これは…」

 

「えぇ……近くにモンスターが出ました。向かわなければなりません」

 

二宮はテーブルの上に並べていたカードを纏めてカードデッキに収納し、店の窓ガラス前まで移動する。アリサもカードデッキを手に持ち同じように移動しようとする。

 

「アリサちゃん」

 

そんな彼女を、士郎が後ろから呼び止める。

 

「君がなのはの友達である以上、僕は君に一つだけ言っておきたい事がある」

 

「何ですか?」

 

「君は自分の意志でライダーになった……その選択に、後悔の無いようにね」

 

「…はい!!」

 

アリサは力強く答えた後、二宮の隣に立ってから両者共にカードデッキを窓ガラスに突き出し、Ⅴバックルが二人の腰に装着される。二宮はカードデッキを持った左手を顔の前からⅤバックルの横まで来るように素早く動かし、アリサはカードデッキを持った左手を左腰に持って行ってから右手拳を胸の前まで動かし、そしてあの言葉を叫ぶ。

 

「「変身!」」

 

その言葉と共にカードデッキがⅤバックルに装填され、二宮は仮面ライダーアビスに、アリサは仮面ライダーウォルフへの変身を完了する。アビスは左腕に装備されたアビスバイザーを撫でるような仕種をしてから、ウォルフは吸った息を大きく吐き捨ててから、窓ガラスを通じてミラーワールドへと突入して行く。

 

「今のが、仮面ライダー…!」

 

「二人共大丈夫かな、お父さん…」

 

「…彼女の意志は本物のようだ。僕達はただ、信じて待つだけだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いた、アイツ等ね!!」

 

「二体もいるとはな。実に面倒だ」

 

「「ギギィ!?」」

 

ミラーワールド、翠屋前。ライドシューターに乗ってやって来た二人は、巻貝型モンスター―――シェルクロウラーと真珠貝型モンスター―――シェルクリッパーの二体を発見。ライドシューターに乗ったまま二体を跳ね飛ばした後、二人はライドシューターから降りて二体の貝殻型モンスターと対峙する。

 

「「ギギギギギギ…!!」」

 

「さて、気を抜くなよバニングス」

 

「えぇ、分かってるわよ!!」

 

≪SWORD VENT≫

 

≪STRIKE VENT≫

 

アビスは一本のアビスセイバーを、ウォルフはハウルフォレスターの前足を模した鉤爪“ハウルクロー”を召喚。アビスとウォルフが構えた瞬間に二体の貝殻型モンスターが飛びかかり、二人に襲い掛かる。

 

「ギギギッ!!」

 

「うわ、ちょ、危なっ!?」

 

「ギィッ!!」

 

「猪口才な…!!」

 

シェルクロウラーは右腕に付いた巻貝状のドリルを回転させながらウォルフに襲い掛かり、ウォルフはハウルクローでそのドリルを上手く弾き返すも、攻撃を防いでばかりで攻撃が出来ない。一方でアビスは迫って来たシェルクリッパーのパンチやキックを回避しつつ、隙を見てはシェルクリッパーの背中を斬りつける。しかしそれほどダメージが無いようで、シェルクリッパーは真珠型の爆弾をアビスに飛ばしてから距離を取り、アビスは左腕のアビスバイザーで防御してからアビスセイバーを一度地面に刺す。その横に、シェルクロウラーのドリルを喰らったウォルフが吹っ飛ばされて来た。

 

「あいたっ!? こんのぉ~…!!」

 

「相手にペースを乱されるな!! キツいようならあの狼を呼べ!!」

 

「ッ……その方が良さそうね…!!」

 

「ギギッ!!」

 

シェルクロウラーが飛びかかる中、しゃがみ込んだウォルフは一枚のカードを抜き取り、ハウルバイザーに装填する。

 

≪ADVENT≫

 

「ガルルルルァッ!!」

 

「ギガァッ!?」

 

「OK、ナイス狼!!」

 

音声が鳴ると同時にハウルフォレスターが何処からか出現し、シェルクロウラーを体当たりで弾き飛ばす。ウォルフがガッツポーズする中、アビスは手に持っていたアビスセイバーをシェルクリッパーに投げつけ、すぐさま別のカードを装填する。

 

≪ADVENT≫

 

「お前等も行って来い」

 

「「グルォォォォォォッ!!」」

 

「ギィーッ!?」

 

アビスラッシャー、アビスハンマーの猛攻によりシェルクリッパーが吹き飛ばされ、シェルクロウラーと激突して転倒。二体が倒れた状況をチャンスと見たアビスとウォルフは、すかさずカードを装填する。

 

≪FINAL VENT≫

 

≪STRIKE VENT≫

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ…!!」

 

「ふぅぅぅぅぅ…」

 

ウォルフはその場で一回転してから姿勢を低くして構え、アビスはアビスラッシャーの頭部を模した手甲―――アビスクローを召喚。ウォルフはその場から飛び上がり、アビスはアビスクローを装備したまま二体の貝殻型モンスターに狙いを定める。

 

「ふんっ!!」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「ギギィィィィィィィィィィィィィィィィ!?」

 

アビスクローから凝縮された水流弾、そしてハウルフォレスターの咆哮に乗ったウォルフの飛び蹴りが同時に飛来し、シェルクロウラーを木端微塵に粉砕。しかし命中する直前に回避したシェルクリッパーは、二人から逃げるようにその場を立ち去って行く。

 

「あ、コラ逃げるな!!」

 

「逃げた方は俺が仕留める、バニングスは先に戻ってろ」

 

逃げたシェルクリッパーを追うべく、アビスはウォルフを置いて追跡を開始。シェルクリッパーが大きくジャンプしながら逃げて行き、アビスも同じようにジャンプしながらその後を追いかけて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギギギギギ…」

 

その後、翠屋から遠く離れた位置の公園まで逃げ込んだシェルクリッパー。しかし、そこは決して安全な場所ではなかった。

 

何故なら…

 

 

 

 

 

-ドシュンッ!!-

 

 

 

 

 

「ギィッ!?」

 

その公園は、ライダーの狩り場だったのだから。

 

「ほぉ、これで二匹目という訳か…?」

 

狙撃されて倒れたシェルクリッパーを、一人の戦士が見下ろした。

 

蠍の尻尾を模した頭部のポニーテール状の装飾。蠍の鋏を模した両肩の鎧。薄紫色のボディ。カードデッキに刻まれた蠍の紋章。

 

蠍の力を司る戦士―――仮面ライダースコープは、手に持っていたデモンバイザーのスリット部を横に開き、スコープの紋章が描かれたカードを装填する。

 

≪FINAL VENT≫

 

「キシシシシシ…!!」

 

「ギギッ!?」

 

音声と共に、サソリ型モンスター―――デモンポイズナーが地中から出現。立ち上がろうとしたシェルクリッパーの身体に、デモンポイズナーの尻尾の毒針が深々と突き刺さる。

 

「ッ!? あれは…」

 

駆けつけたアビスが慌てて近くの木の陰に隠れる中、デモンポイズナーはシェルクリッパーに尻尾の毒針を突き刺したままブンブン振り回し、スコープのいる方向へと投げつける。シェルクリッパーが投げ飛ばされた先では、既にデモンポイズナーの尻尾を模した槍―――デモンスピアーを構えているスコープがいた。

 

「はぁっ!!」

 

「ギッ!? ギ…ギギィィィィィィィィィィィィッ!!?」

 

スコープの突き立てたデモンスピアーの刃先が、シェルクリッパーの身体にズドンと突き刺さる。その衝撃に耐えられなかったシェルクリッパーは爆散し、爆風の中から出現した魂をデモンポイズナーが摂取する。

 

「よし。これで二匹目だ…」

 

デモンポイズナーが再び地中へと潜った後、スコープはその場から歩き去って行く。その一方で…

 

「馬鹿な……三人目のライダーだと…!?」

 

木の陰から見ていたアビスが、新たな仮面ライダーの存在に驚きを隠せずにいたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここから、仮面ライダー達の運命は交差していく―――

 


 
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