No.751563

【真・恋姫†無双if】~死を与えることなかれ~15話

南無さんさん

こちらは真・恋姫†無双の二次創作でございます。
今、投稿して気付いたのですが、投稿作品が50を超えました
これも皆々様の支援、コメントのお蔭でここまで続けることが出来
非常に感謝しております、誠にありがとうございます。
とはいえ、自分の作品を読み返してみると、駄文だなと

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2015-01-15 12:46:05 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:5966   閲覧ユーザー数:4921

戦場に激しい金属音が未だに鳴り響いていた。もう、始まってから

 

四刻程経過しているだろうか。この音が途切れる気配が一向に無い。

 

二人の王を見守っている両軍は、瞬きするのも惜しいくらいに見に徹し、

 

その至高なる武術に感嘆を漏らしていた。

 

 

「ぐ…!!わかっていた事だけど、孫策の剣速が凄まじい。そして、何より一撃に重みがある。

流石は江東の小覇王の異名を持つだけの事はある。でも…!!」

 

「…巧く受け流されている。剛には柔をと言った所か。正直殺りにくい相手だが…!!」

 

 

―――――勝つのは私だ…!!―――――

 

 

両人、勝利への執念を心に宿らせながら、更に激しい技の応酬を繰り出していた。

 

だが、その最中、二人の姿を目で追っていた、魏軍の将、春蘭は自らの武の無さを痛感していた。

 

自分は主君を守る魏随一の猛将であると自負していた。

 

どんな豪傑が相手でも、負ける事は無い、そう思っていた。

 

それが、どうであろうか、雪蓮には敗れ守るべき主君を危険な相手と闘わせてしまった。

 

春蘭は唇を強く噛んだ。

 

 

「…姉者。よもや自分一人だけ責任を感じているのではあるまいな」

 

「………」

 

 

春蘭は秋蘭の問いに応じない。

 

 

「そんな自意識過剰の馬鹿女はほっときなさい秋蘭」

 

 

つっけんどんな口調で桂花は秋蘭を止める。

 

 

「…姉者に向かって馬鹿女とは何だ」

 

「だってそうじゃない。自らの力を過信して、自分の愚かさ故に

 華琳様を危険な目に合わせてしまったと考えている奴を馬鹿と言わずに何て言うのよ」

 

 

心を見透かされてか、春蘭はぎくりと身を震わせた。

 

それを観ていた桂花は口調を穏やかなものとして春蘭に語りかける。

 

 

「…馬を飛ばしながら此処に来る途中、華琳様は貴女達と孫策の戦闘を凝視していたわ。

 多分わかっていたのよ。あの時から一騎撃ちを申し込まれるってね」

 

「…何が言いたいんだ」

 

「つまり、華琳様が孫策相手に伯仲しているのは貴女達のお蔭なのよ」

 

「馬鹿な事を言うな。私は孫策に容易く敗れた。

 それが、どうして華琳様の互角の理由になっている」

 

「言ったでしょ、ここに来る途中、貴女達を凝視していたって。

 華琳様は春蘭より単純な武が劣ってるから、孫策が武を奮う剣速を計っていたのよ」

 

 

事実、華琳は春蘭らの下に向かう最中、食い入る様に雪蓮の一挙手一投足に気を配っていた。

 

その際、人差し指でトントンと太腿を叩きタイミングを計ったり、

 

次に繰り出される攻撃は何処を狙い、それがわかる癖はないかと入念に凝視していた。

 

全てはこの様な展開になると、予期していたから自馬の手綱を桂花に引かせ、

 

その後ろに騎乗したのであった。

 

しかし、雪蓮の癖、剣武の情報を得たとしても、直ぐ様実践に生かせるなど、凡人には不可能。

 

だが、武を奮うのは乱世きっての天才、華琳。その天から授かった比類なき才が、

 

あの疾風の剣速相手に互角に渡り合っているのである。

 

 

 

「だが、いくら剣速を計りきれたとしても、それだけで孫策と互角に闘うのは不可能だ」

 

「…華琳様は互角に渡り合っているじゃない」

 

「それは、華琳様が私よりも強いから、情報など得て無くとも互角に渡り合っていた。

 結局は何もしていない、役に立っていない愚か者なのだ。…私は」

 

「それは間違っている、姉者」

 

 

秋蘭は食い気味に否定した。

 

 

「単純に武力で比べたら華琳様は姉者より劣っている。

 しかし、ここまで善戦しているのは姉者のお蔭なのだ」

 

「では、何故、対等にやり合っているのだ。私より弱ければ、既に決着はついている筈だ!!」

 

 

春蘭はもう聞きたくないと言わんばかりの怒号を響かせた。慰めは要らない、

 

これ以上哀れになりたくない、と言う思いから声を大にして張り上げたのだ。

 

そして、地に手を付け悔しさ、情けなさから何度も地面を叩いた。

 

 

「華琳様を観ていて気が付かないか、姉者」

 

 

春蘭の肩に手を添えて優しく諭すように語る秋蘭。

 

 

「柔は剛を制す。どんな重い一撃でも流れに逆らわず、柳の葉の様に受け流してしまえば

 筋力にさほど影響を及ぼさず、守勢を崩される事はない。華琳様は今、正にそれを行っている」

 

「………」

 

「だが、柔の剣は予測と見切りが、全てを握っていると言っても過言ではない。

 ましてや、あの孫策の神速の剣術、初見で見極めるなど不可能」

 

「だから、僅かな時に華琳様は孫策の剣筋を頭に叩き込んだのよ。

 春蘭、今、貴女がすべきなのは、首を垂れる事じゃないでしょ、違う!!」

 

 

秋蘭に続き桂花は語気を強め開口した。あんたは気付いてる筈よと言う想いを秘めながら。

 

その想いに応えたのか、春蘭は身体の中に蔓延る負の感情を雲散させようと咆哮を上げた。

 

 

「おおおおおおおぉぉぉぉ!!!!!!」

 

 

秋蘭、桂花以外の魏軍一同が不意の咆哮に驚き、春蘭に目を向けるが、直ぐに華琳へと視線を戻した。

 

一騎打ちを繰り広げている二人は、集中力が極限まで高まっている為、

 

眼前の敵から目を離す所か、攻撃の手を緩めなかった。

 

そして、春蘭は思いの丈を吐き出し勢い良く立ち上がり、秋蘭に、

 

 

「私を殴ってくれ」

 

 

と、真剣な表情で頼んだ。秋蘭は一瞬、戸惑ったのだが春蘭の意思を汲み取り、

 

思いっきり横っ面を引っ叩いた。

 

 

「…よし、これでもう私は迷わない」

 

 

春蘭の顔は晴れやかな表情になっていた。その隣に居た桂花は

 

 

「…やれやれ、これだから武官は嫌だわ。暑苦しいったらないわね。

 それに、相変わらず単純なんだから」

 

 

子馬鹿にし大袈裟に両腕を上げ嘆息するが、口角が釣り上がっていた。

 

どうやら、口には出さないが、春蘭が何時もの調子に戻って嬉しく感じているようだ。

 

 

「単純とはなんだ、桂花!!」

 

 

春蘭が大声だし桂花に反論するが、一転して

 

 

「…まぁ、その、なんだ。あ、ありがとう…な、桂花」

 

 

赤らめた頬を人差し指でポリポリと掻きながら、柄にも無く桂花に感謝を述べた。

 

 

「は、はぁ!!べ、別にアンタの為じゃないし、か、勘違いするんじゃないわよ!!」

 

 

桂花もまた、赤らめた顔で否定し瞬時にそっぽを向いた。

 

 

「…秋蘭にも心配をかけた。私はもう大丈夫だ」

 

「…そうか、それは良かった」

 

「今回の件で私は力だけでは勝てないと知らされた、ならば華琳様の一番の剣として、

 敵に応じた柔軟性、ある程度の知略を身に着けなければならないな」

 

「そう思えたのなら、姉者はもっと強くなれる」

 

「…そうね、まぁ期待はしないけど」

 

 

空間に蔓延していた重い雰囲気は春蘭が立ち直ったお蔭で雲散されていった。

 

後は華琳の一騎討ち、魏軍に所属している将兵は手出し出来ないと心得ている。

 

三人は春蘭の誓いを聞いた後、静かに行く末を見守っていた。

 

皆、その胸にどんな逆境でも華琳が負ける筈が無いと、魏軍一同そう確信していたが、

 

一人だけ、華琳の行く末を案じている者が居た。

 

 

(…単純な力量では、やはり華琳様に分が悪い。しかし、

 孫策が、あの様な状態が続くのなら勝機は十分に訪れる筈。

 …貴女を信じております。華琳様)

 

 

 

 

 


 
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