No.744961

【獣機特警K-9ⅡG】狙われた恋人たち(後編)【戦闘】

古淵工機さん

2014-12-21 22:50:47 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:804   閲覧ユーザー数:771

謎の組織『ビューティーエンパイア』による、男性連続殺害事件を受けて出動したK-9隊。

今回は念のためということでクオン、イシス、ナタリアのほか、

それに煌月空、筑波未来、ベルタ・カシイ・アインリヒトの6名、つまり女性のみでの出動となった。

 

「まもなく目標に到達します」

「やはりな…トリッカーズの怪盗ディアが奴らの集まりそうな場所を発見したとの情報だからな…」

ナインキャリアーが着いたのは、ラミナ市郊外の草原に立つ古びた教会。ところどころが朽ちているところを見ると廃墟なのだろう。

その廃墟の中では、どす赤いケープを羽織った女性たちがずらりと並んでいた。

 

「偉大なる聖母様…ラミナ市内のB35ブロックは浄化完了しました」

「そう、ご苦労様です。そちらは」

「そ、それが、D77ブロックはあと一歩でしたが警察にジャマされまして…」

「で?あなたは確かもう一人一緒だったはずよ」

「…ええ、彼女なら反陽子爆弾で自爆すると」

「ふふ、それならよろしい。さて、本日の集会ですが」

と、なにやら怪しげな会話を繰り広げる女性たち。

だがその直後、重い扉が開け放たれるとその集団に向けてクオンの怒号が響いた!

 

「そこまでだ!お前たちのたくらみは知れた!全員殺人の現行犯逮捕だ!!」

目の前にいるひときわ背の高い美女…、周囲の女たちに『聖母様』と呼ばれていたテラナーの女性は微動だにせず、微笑んでいた。

「あらあら、警察の皆さん…こんなところにたどり着けるはずはなかったのですけど…貴女方も私たちの活動に興味を?」

その言葉に切り返すのは、イシスとミライ。

「さっきの話を聞いていなかったのかしら?あなたたちを逮捕しに来たんですよ」

「さぁ!もう逃げられないぞ!全員お縄につけ!!」

すると聖母は微笑み混じりに答える。

「まぁ、わたくしを逮捕…でもあなた方、ひとつ考えたことはないかしら?」

「なんですって!?」

困惑するソラを尻目に、さらに聖母は続ける。

「…考えても見なさい。今あなたたち警察の署長や総監など、幹部クラスには女性が多く就いているわよね」

「そ、それがどうかしたの!?」

「これがどういう意味かわかるかしら…そう」

と、ひとつため息をつくと、聖母の口元がいびつに上がる。

 

「…これは女性が男性よりも優れているという証拠なのよ」

「だ、だからなんだってんだよ!?」

「つまり全てにおいて女性は優れている。そして美しい…対して男というものは私たち女性に比べ劣っているということよ」

「そんな!言っていることがわからないわ!」

「ふん、我々の崇高なる理念、止められるものなら止めてみなさいな!男は滅ぶべくして滅ぶ運命にあったのよ。おーっほほほほほ!」

高笑いする聖母。それを見ていたクオンは、窓の外に向けてサインを送る。

「ぎゃあ!」

「ぐえっ!!」

突如、女性信者たちに次々と光の弾丸が当たる。屋外で待機していたナタリアが狙撃をしたのだ。

「!?な、何なの!?」

「…その理念のためにどれだけの命が奪われたか…あなたはわかってるんですか!?」

「くっ!生意気なチビめ!!撃ちなさい!多少怪我させても構いません!!」

「ソウ先輩の…ソウ先輩の仇っ!!」

ナタリアが二発目のビームを放とうとしたそのときであった。

 

「きゃあっ!!」

突如、閃光がナタリアの右肩を掠める。敵にもスナイパーがいたのだ!!

「し、しまった!?ナタリアが!!」

「ナタリアちゃん!!」

「ぐっ…うあぁぁ…右腕が…わたしの右腕…が…!!」

腕を引き裂かれたナタリアの右肩からは、千切れたケーブルや焼け溶けたフレームがのぞき、青白い火花を散らす。

その痛みにもだえ苦しむナタリアに、聖母は銃を向ける。

 

「っ!?」

「やはりあなた方には私たちの理念は理解してもらえないようね。仕方がありません…そのような異端分子には死という名の褒美をあげましょう」

「いや…そんな…、ソウ先輩…わたし…!」

恐怖の余り、愛する人の名を口にするナタリア。迫る銃口。

ナタリアが目をつぶり、自らの死を覚悟したまさにその時だった。

「ぎゃああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

悲鳴を上げたのは聖母のほうだった。ソラのバレーボール型爆弾が聖母の近くで炸裂し、その爆風で信者もろとも吹き飛ばされたのだ。

「このまま…このままあなたを放っておいたら、あたしの友達も…ナタリアちゃんもソウ先輩もカイ君もみんな殺されちゃう…そんなの、そんなの許さない!!」

ソラの目は今までにないほどの怒りに満ち溢れていた。

 

「せ、聖母様…」

「くっくくくく…あーっはっはっはっは!」

「何がおかしいの!?もう一回吹き飛ばされたいわけ!?」

食って掛かるソラに、聖母は狂った笑みを浮かべながら切り返す。

「ふふふ…あと一歩、あと一歩で理想の世界が作れたものを…最早これまで…だけど最期にひとつ言っておくわ。男など生かしておいたら永遠に平和な世界は訪れないのよ…」

聖母は懐からレーザーガンを取り出すと、自らのこめかみに当てた。

「なっ!?何をするつもり!?」

「やめろ!血迷ったか!?」

ほかの信者たちも同様に、自らの頭に銃口を当てる。

「さらば!忌々しき現世よ…!!」

その聖母の言葉とともに、女たちは一気に引き金を引いた!!

 

かくして戦いは終わった。

後に残されたのは、レーザーガンで頭部を吹き飛ばされた女たちの亡骸だった…。

事件終結後、クオンはエルザに連絡を入れていた。

 

「…そうか、ご苦労だったな。ナタリアはどうした?」

「ナタリアならロボット病院へ搬送しました。損傷がひどかったので…」

「……ふむ、それは気の毒だな。彼女にはしっかり修理を受けてもらわんとな。イシス、その他の状況は?」

「それが…中核のグループですが、全員自殺しました…」

「そうか。いずれにせよご苦労だった。末端のグループはわが署と周辺各署が順次逮捕している。各員、帰路もどうか気をつけてな」

「了解」

…さて、ラミナ警察署に帰還したクオンは、ソウとナタリアを見舞うためロボット病院を訪れた。

「まさか…ナタリアちゃんも入院する羽目になるなんてね…」

「だって…先輩をここまで傷つけられて、どうしても許せなかったから、懲らしめてやろうとしたんです。それなのに、わたしったら…」

「いいんだよ、悪いのは犯人さ。それより…まさか君が僕と同じ病室だなんて思わなかったよ」

「あら、私もですよ先輩w」

「ナタリアちゃん…」

「ソウ先輩…」

「ナタリアちゃん…///」

「ソウ先輩…///」

 

その様子を見ていたクオンは…やや呆れ顔だった。

「おいおい、またやってるよ…二人ともー、見た目以上に損傷率高いんだから安静にしてないと…」

「大丈夫です隊長!そんなの愛の力でどうにか…」

「そうですよ!わたしと先輩のラヴパワーにはこんな痛みなんて…」

と、ガッツポーズをとった瞬間、ソウとナタリアの傷口から青白い火花が飛び散った!

 

「「アギャガガギャウガピィィ…イ、イタ・イッ、ザザッ…!!」」

「あーぁ、だから言ったのに…」

 

結局、ソウとナタリアの入院は、三日延びてしまったのであった。


 
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