No.744351

【獣機特警K-9ⅡG】狙われた恋人たち(前編)【交流】

古淵工機さん

2014-12-18 23:04:30 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:812   閲覧ユーザー数:774

その日、ラミナ市近郊では不可解な事件が起こっていた…。

 

「じゃあフミやん、次どこ行く~?」

「そうだなぁ、じゃあそこの角の店にでも行くか?俺が見つけたんだけど隠れた名店でさあ」

と、幸せそうに歩いているカップル。男のほうはオオカミ形ファンガー、女のほうは黒ネコ形のロボットである。

ここまではごくごくありふれた光景。だが、悲劇は突然訪れたのである…。

 

「うっ…!?」

突如、胸から大量の血しぶきを吹き上げ、倒れこむ男。

「フミやん?…フミやん!そんな…」

 

「おい!男が血を流して倒れた!!」

「大丈夫か!?…駄目だ、死んでる!」

「そんな…いや、いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」

騒ぎ立てる人々、そして愛しの彼氏の亡骸を抱き、号泣する彼女。

だがこれは、ほんの事件のひと欠片に過ぎなかったのだ。

…翌日、ラミナ警察署会議室。

「…というわけで、昨夜だけでも、このようにカップルや夫婦を狙った犯行が多発しています」

モニターパネルの前で捜査資料を読み上げるのは、捜査課の課長ジース・ミンスター。

「由々しき事態だな。連続殺人ともなると我々も黙っていられん」

と、モニターを見つめながら考え込むのは、ラミナ警察署の署長エルザ・アインリヒトだ。

「しかし署長。妙なところがあるんです」

「妙なところ?」

「ええ。一連の事件を拾い集めましたが、今回殺害されているのはいずれも男性ばかり。女性のほうには傷ひとつ付いていない様子です」

「…とはいえ、幸せの真っ只中にいた彼女らの心には深い傷が刻まれただろうな…いずれにせよこのような禍々しい事件を許すわけにいかん。すぐK-9隊に捜査依頼を回そう」

 

…そしてK-9ルーム。

「…なるほど、そんなことが…」

と、エルザの話を聞き戦慄しているのは隊長の久遠・ココノエ。

「ああ。ただ殺人というだけでも忌々しい限りなのに、わざわざカップルを狙った犯行だ。狂気の沙汰としか思えん」

「わかりました。…そういえばイシスさん、ナタリアとソウは?」

「あの二人ですか?あの二人は今デート中で…!?」

と、答えかけたイシス・ミツザワの耳に内蔵されていた通信機の着信ブザーが響く。

 

「はい、こちらイシス…ナタリアちゃん!?どうしたの!?ナタリアちゃん!!」

通信機の向こうでは、ナタリア・天神・フタロイミツィが応答していた。

その声は涙ぐみ、悲痛にまみれていた…。

『…こちらナタリア…先輩が…ソウ先輩が…ッ!』

…ロボット管理センター。

メンテナンスベッドの上には、腹に穴をあけられ、内部メカが露出した状態で三沢颯が寝かされていた。

「ひどい状態よ。彼がロボットだからまだ助かったほうだけど…後10センチ射線がずれていたら動力炉をやられてソウ君は死んでたかもしれないわ」

と、コンソールパネルをチェックしているのはテレジア・アウディ博士だ。

「先輩…」

「うっ…な、ナタリア、ちゃん…はぁ、はぁ…」

激痛に耐えながらも、何かを伝えようとするソウ。

「先輩!?」

「ダメだソウ君!君は重傷なんだぞ!喋ったら…」

と、制止するクオンの叫びをさえぎるかのように、ソウはさらに続ける。

「ガッ…隊、長…ザザ…僕は…見たんです…、物陰に…ジッ…隠れ、て…僕を狙っ…ビュ…てきた・奴が…」

ところどころ、ノイズが交じっていたが、それでもソウは必死に当時の状況を伝えた。

 

「なんだって!?犯人の姿を見たのか!」

と、驚きを隠せないジョナサン・ボーイング。

「ソウ君、その映像もあなたの電子頭脳に記録されてるはずよ!」

「…それ・なら…ジジ…ブッ…テ、テレジア…博士、に…ガガ…」

目に涙をためながら、ソウを止めるナタリア。

「先輩ダメですっ!安静にしててください!!」

「ザッ…ご、ごめ、ん…」

テレジアはひとつため息をつくと、ソウが見たという記録映像を再生した。

しばらくしてクオンは息を呑んだ。

「…あれは…あのシルエット、男性じゃない…だと?」

「ええ、同時刻に似た被害にあったロボットからも映像記録を抜き出したのだけれど、それと似たような姿を見たという証言も出ているわ。ただ、強い電磁妨害が出ていて犯人の顔までは…」

「ガッデム!どこのどいつだ、カップルの幸せなひと時をいとも簡単に踏みにじっていきやがって…」

と、ジョニーが吼えていると、ドアが開き、生活警備課のミウ・カワグチとテムナ・ツルハシが入ってきた。

 

「…それなんだけど、現場付近にこんなものが落ちていたわ」

ミウが手にしていたのは、小さな紙切れ。

「せや。なんでや知らんけど、ソウが倒れた近くに落ちててん」

「どれ…」

と、クオンがその紙切れを開くと、ここにはこんな一文が。

「なになに、『われら正しき新世界を創造する者なり。美しく艶やかなる者だけが織り成す世界を作らん』…?ミウ、一体これはなんだ?カルト宗教か?」

「あたしも詳しいことはわからないんだけど、艶やかなるってところがどうもひっかかるんだよね…」

「それにこの下に書かれてる意味深な図形や。なんやウチにはさっぱりわからんねやけど…何かあるでコレ」

 

「イシスさん!」

「わかりました。私のスキャニング・アイで分析してみます」

と、イシスの両目から『瞳』の映像が消えると、目全体が青白く発光してカードの表面を照らしていく。

やがて、イシスの目に『瞳』が再び映し出される。

「解析完了!こ、コレは一体!?」

「どうしたの!?イシスさん!」

「…このマークは…『ビューティーエンパイア』です!!」

 

ビューティーエンパイア。

プラネットポリスの記録によれば、宗教的な過激派集団のひとつであり、構成員はすべて女性。

彼女たちは『女性こそが世界の絶対美、絶対正義』という理念を持っており、男性を穢れの象徴として嫌悪する集団だそうだ。

 

「おい待てよ。つまり奴らの狙いは…?」

ジョニーの質問に、答えるイシス。

「女だけの世界を作ろうと…そういうことかも知れませんね」

するとクオンは握り拳を作り、歯を食いしばった。

「…馬鹿げてる…あいつらの言う正しい世界に男はいらないって言うのか…!」

「隊長…」

「確かに男と女じゃ価値観も考え方も違うさ。喧嘩することだってある。だからって、これはいくらなんでもやりすぎじゃないか…!!」

 

女だけの新世界を作らんと動き出したテロ集団『ビューティーエンパイア』。

果たしてプラネットポリスは、K-9隊は、この脅威にどう立ち向かうのか!?


 
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